神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

わんだふる神姫ライフ 第32話

「いや~、まいった、まいった。完敗だよ!」
 目の前で巨体を揺すりながら大笑いする桜庭さん。テーブルに置かれた缶コーヒーが、
その振動を受けてカタカタと揺れている。
「それにしてもよう、一ノ瀬ちゃん。さっきから気になる事がひとつあるんだけどなあ」
「な、なんですか。気になる事って?」
 テーブルから落ちそうになった缶コーヒーを慌てて受け止めながら、あたしは声だけ桜
庭さんの方に向け、次の言葉に耳をかたむけていた。
「いや、それなんだがよ。コレは一体なんだい?」
 ビクッと身体を震わせあたしが視線を前方に戻すと、さっきまでとは一変して桜庭さん
が真剣な表情を浮かべ、テーブルの一点を指差している。
「え~、それはトロンです。信じられないだろうけど……」
 あたしの視線の先には、とろける悪魔と化したトロンが何故かピクン、ピクンと身体を
痙攣させ、口元にだらしのない笑みを浮かべテーブルの上に寝そべっていた。
 
                    わんだふる神姫ライフ
               第32話   「ナイトメア」
 
『ふ~む。では、コレがわらわと戦っていたストラーフというのかや。トナリよ?』
 恐る恐る、手にした扇でトロンを突付きながら狐姫があたしの方を向くと、そう尋ねて
きた。さっきのマジになったトロンの迫力にはあたしも思わずビビったほどであり、まだ
心配そうにまだトロンを突付いている狐姫を見て、正直変なトラウマを受けてなきゃいい
なと、あたしは内心眉をひそめていた。
 でも、当の本人であるトロンは、何度も自分を突付く狐姫のことを鬱陶しそうに薄目を
開けてチラリと睨んだだけで、もう狐姫には興味がない、といった様子でプイと反対側に
顔を向けてまう。
「それにしてもよ~。なんか縮んでないかい、トロンの奴?」
 一応は納得してくれたようだが、それでもなお、テーブルの上の物体を怪訝な目で見て
いた桜庭さんがポツリとつぶやく。
「やっぱり桜庭さんも、そう思いますか?」
 桜庭さんの疑問は、実はあたしも以前から抱いていた物だった。寝ぼけモードのトロン
の顔の輪郭がタルんで見えるのはともかく、その身長は他の神姫と比べると妙に低く見え
たのだ。
 
今までは、光の屈折現象かなんかが原因でそう見えるのだと自分に言い聞かせてきた
のだが、やっぱりこれは現実のようだった……
 
 もっとも、ふたりが奇異な目をトロンに向けるのは、ある意味しょうのないことなのだろう。
 あたしだって目の前のたれあくまと、戦っている時のトロンが同一人物(神姫)とは、いま
だに信じられないのだから。
 だいたい、基本的に性格がゆがんでいるというのは同じだとしても、このふたりには、あ
まりに差があるように思えてならない。
 寝ぼけトロンが、全てにおいてやる気のなさとだらしなさが具現化したような性格と中性
的なイメージがあるのに比べて、バトル時のトロンは多少厭世的な雰囲気があるものの、
凛としたその姿は口調もふくめて、まるでやんちゃな男の子といった感じだった。
「それにしても、あの時の爆発には驚いたよなー」
 ひとり延々とトロンのことを考え続けていたあたしは、いきなり投げかけられた桜庭さ
んの蛮声に我に返った。
「へ? 爆発?」
 あたしはその時になって、ようやく狐姫とのバトルでフィールドのスーパーが大爆発を
起こし、そのことを疑問に思っていたのを思い出した。
 あの爆発はあたしたち三人にとってもナゾだった。その答えを知るのは、そう、その張
本人だけだ。
「ねえ、トロン。あのスーパーの爆発、あんたいったい何をしたの?」
『ア~、アレ? アレはネ、店のなかに小麦粉をバラまいただけだヨ』
「小麦粉? 小麦粉って料理に使うアレ? なんでそんなもんで……」
「なるほど、ありゃあ粉塵爆発だったのか!」
 あたしたちの会話を聞いていた桜庭さんが両手を打ち鳴らしながら叫んだ。
「粉塵爆発って、なんなんですか?」
「ああ、粉塵爆発ってのは、大気などの気体中に、ある一定の濃度の可燃性のある粉塵が
浮遊した状態で火花なんかにより引火して大爆発を起こす現象なんだけどよ。普通は工場
なんかでアルミニウム金属粉なんかが引火して爆発するってパターンなんだが、トロンの
奴はきっと小麦粉で代用を……って、どうした! 一ノ瀬ちゃん?」
 小難しい話が死ぬほど苦手なあたしが、ソファーにもたれ掛かりながら瀕死の状態になっ
ていると、桜庭さんが驚いた様子で話しかけてきた。
『リンは頭よくないからねェ。ムズカシイ話をするとこうなっちゃうのサ。だいたいリンのCPU
は8ビットくらいしかないシ』
「あたしは大昔のゲーム機か?」
 億劫そうに身を起こすと、腰のあたりをポリポリと掻きながらぽつりとつぶやくトロンに、ぐ
ったりとしながらとりあえずツッコミを入れる。
 ようやくトロンがバトル中に粉まみれになっていた理由に合点がいったあたしだったが、
それよりも思った以上に博識な桜庭さんに驚きを隠せず、同時に先のバトルで感じていた
もうひとつの疑問を思い出し、そのことを尋ねてみた。
「あの桜庭さん、さっきのバトルで狐姫が使ってたあの足捌きはいったい……」
「ああ、あれか? あれは、俺が日本舞踊をやってるもんで、それを見ているうちに覚え
た狐姫が、それをデフェンスに応用したみたいだな」
「に、日本舞踊?」
『さすがは最後のショゴス! ボクの想像のななめ上を行ってるヨ……』
 確かに狐姫の舞うような足捌きに、もしや? と思っていたが、桜庭さんのミスマッチ
極まりないこのセリフにあたしは驚愕してしまった。トロンも愕然としながら流れ落ちる
汗を手で拭っている。
『ほほほ、わらわの舞いは、それは美しいと評判なのじゃ。機会があったら一曲披露して
やるぞ、トナリよ』
「そ、そうね。楽しみにしてるわ……」
 なんかこのふたりが着物姿で舞ってる姿はいろんな意味で幻想的なんだろうな~、
などと失礼な空想にふけっていると、桜庭さんは、ふと思い出したように話しかけてきた。
「そう言えば、レスティーアとの再戦をヴァーチャルバトルでやるって噂を耳にしたんだ
が、リアルバトルじゃ都合でも悪いのかい?」
 さも不思議そうに尋ねてくる桜庭さんに、あたしは咄嗟にどう答えていい物か迷ってし
まった。実際この店でもそうだが、現在の神姫バトルはリアルバトルが主流であり、あた
しのようにヴァーチャルバトルしかしないオーナーというのはかなり珍しい存在のようだ
った。そんな現状では、リアルバトルをごく普通のものと考えている風な桜庭さんにあた
しの胸のうちを話しても、きっと理解してはもらえないだろう。
 あたしが返事に窮し黙っていると、桜庭さんは短く刈りそろえた髪に乱暴に爪をたてな
がら何かに納得するようにつぶやいた。
「まっ、そこらへんは人それぞれか……それに今のリアルバトルが当たり前みたいな風潮
がなければ、あんな事件も起きなかったかもしれないしな……」
「事件?」
 おうむ返しに聞きなおすあたしに、桜庭さんが意外そうな顔をする。
「半年ぐらい前に各地の神姫センターや、ここみたいな個人経営のショップに無差別にリ
アルバトルを挑んできた神姫のことさ。結構有名な話なんだが、知らなかったのかい?」
 その言外に、少し呆れたと言うような響きを含んだ桜庭さんの声にカチンときたあたし
だが、確かに以前、そんな事件があった事をニュースや新聞で見て神姫をそんな事に使う
なんて随分と身勝手な人がいるものだと、ひとりで腹を立てていたのを思いだした。
 
でも、確かこの事件って……
 
「あれ? その神姫って、確かどこかの神姫ショップを襲った時に返り討ちにあって破壊
されたって……ひょっとしてその店って……」
 あたしはピンと閃くものがあり、身を乗り出して桜庭さんを問い詰めよった。あたしの
迫力に気おされたのか、桜庭さんはソファーに身体をめり込ませ、首を縦に振った。
「ああ、どうやらその店ってのは、ここの事らしいんだがな……」
 確かにあの事件が終結した神姫ショップの名前は、当時のワイドショーなどでも一切公
表されなかったけど、まさかDO ITのことだったなんて、あたしはにわかには信じら
れなかった。
「まあ、あくまで噂の域はでないんだが、あながち作り話ってわけでもないんだよ。俺は
当日、ここにはいなかったんだが、あの日を境にこの店にいくつか異変があってな」
「異変……ですか?」
「ああ。まず事件の翌日から一ヶ月もDO ITが臨時休業したってのがひとつ。そして
あの日以来、当時の常連がごっそりと店に来なくなったってのが、もうひとつの理由だ」
 遠い目をしながら話を続ける桜庭さんを、あたしは黙って見つめていた。店から姿を消
した常連のなかには、桜庭さんの友人や知り合いも何人かいたらしい。
 そして、彼らに連絡をとってみても、当時の話になるとみな貝のように押し黙り、何も
語ろうとしないのだそうだ。
「でも、店長さんはこの事を知っているはずですよね?」
 ふと思いつき、そう聞いてみたが、桜庭さんは苦虫を噛み潰したような顔をして首を横
に振るだけだった。
「その店長が頑なに沈黙を守っている奴の筆頭なのさ。まあ、自分の店でそんな物騒な事
件が起きりゃあ口が堅くなるのも当然だろうが……それに姫宮たちもこの件は一切話そう
としねえしな」
「ひ、姫宮先輩があの事件に関わっていたというんですか?」
「あくまで噂だが、な。あの日、この店にきていたらしい」
 思いもしなかった人の名前がでてきて動揺してしまったが、姫宮先輩はあたしにならひ
ょとして詳しい話をしてくれるのでは、と微かに思っていると、桜庭さんがあたしの心を見透
かしたように静かに話しかけてきた。
「……もし、姫宮から話を聞こうってんなら止めたほうがいい」
「な、何故で……」
 ギクリとしながら振り向くと、桜庭さんは見るものを震え上がらせるような迫力を秘め目
であたしを見ていたが、その瞳の奥に悲しみの色が浮かんでいるのに気づき、あたしは
それ以上言葉が続かなかった。
「あの事件で、かなりの数の神姫が破壊されたらしい。もし姫宮があの日、ここに来てたの
ならそれを目の当たりにしたはずだしな……俺たちが店長や姫宮たちに必要以上に説明
を求めねえのもそれを思ってのことなのさ。いまさら昔の傷口を広げるような酷なことはした
くねえしな……」
「…………」
 好奇心から先輩たちに対する思いやりを欠いていた事に気づき、うな垂れていたあたし
を励ますように明るい声が頭上から投げかけられる。
「まあ、もう済んだことさ。いつかはあの事件も記憶の奥に忘れ去られる。そんときゃあ、
レスティーアも“黒騎士”に戻るかもしれねえしな」
「黒騎士?」
 聞きなれない名に首を傾けていると、桜庭さんは意地の悪そうな笑みを浮かべながら話
を続けた。
「やっぱり知らなかったか。今でこそノーマルのサイフォスにしか見えねえが、あの事件
の前にレスティーアが呼ばれてた二つ名さ……もっとも、本人からすりゃあ皮肉以外のな
にもんでもないだろうがな」
 意味がわからず、桜庭さんにあたしが問いかけようとすると、今まで無言であたしたち
の会話に耳を傾けていたトロンがポツリとつぶやく。
『あのサァ、ショゴス。それってどんナ……』
『これっ、美雪よ。そろそろ時間じゃぞ?』
 珍しく口ごもりながら桜庭さんに話しかけるトロンの声を、壁にかかった時計を扇で指
しながら狐姫の甲高い声が遮る。
「おっといけねえ。もうこんな時間か? 一ノ瀬ちゃんよ、俺ちょっと野暮用があるんで
今日はこれでふけるわ」
「あ、はい。あの、今日は色々ありがとうございました」
 ソファーを軋ませながら腰を上げる桜庭さんに、あたしは反射的に立ち上がるとペコリ
と頭を下げた。片手を上げながらドスドスと地響きを立て去っていく桜庭さんの背中に、
ねむそうなトロンの声が投げかけられる。
『ンッ、南極までは遠いから気をつけて帰るんだゾ、ショゴス! それとヤボ用ってなん
なんダ?』
「おう、これから習い事があってな! 今日は華道の稽古と俳句の歌合せがあるんだよ」
「『…………』」
 自動ドアの向こうに消えていく桜庭さんの後ろ姿を見送りながら、あたしとトロンは、
おそらく同じことを考えていただろう。
 
                      聞くんじゃなかった! と。
  
     ※
     
 桜庭さんが去った後も、休憩所のソファーに腰掛けたまま、あたしはゆっくりと辺りを
見回した。
 通路の奥で、ひとつだけ点滅を繰り返す照明や周りの壁。そしてあたしが座っているソ
ファーもそれなりに歳月を感じさせ、お世辞にもキレイとはいえなかった。
 もうかなり時間も過ぎているというのに、耳を澄ませばバトルの結果に一喜一憂する人
たちの放つざわめきや、自分の神姫と楽しそうにおしゃべりをするオーナーたちの声が微
かに聞こえてくる。
 
       ここにいる人たちは何も知らない。少し前のあたしのように……
 
 あたしがトロンと出会い、まだ二ヶ月もたっていないけど、この店でそんな大変な事が
あったなんてまるで知らなかった。
「信じられない。ここで大勢の神姫が死んだなんて……」
『……ショゴスも言ってたでショ? もう終わった話だっテ』
 思いつめたようにつぶやくあたしに、天井を見上げていたトロンが口を開いた。
『ダイジョーブだヨ。どんな神姫がでてきてモ、ボクがリンを守ってあげるからサ!』
 どこからそんな自信がでてくるのか、今にも倒れ込まんばかりにねむそうな顔で腰に
手を当て、鼻息も荒く言い切るトロンを見ていたあたしは、こみ上げてくるおかしさをこら
えることができなかった。
「ぷっ、あはははは! あんた、どこからそんな根拠レスな自信が湧いてくるわけ?」
 どうにも耐えられずおなかを抱えて笑い出すあたしを、トロンが憮然とした表情で見て
いるのに気づくと、滲んでくる涙を指でぬぐいながらトロンに謝った。
「ご、ごめん。まさかあんたの口からそんなセリフを聞くとは思わなかったから。でも、
トロンの言うとおりかもね?」
 テーブルの上に差し出した手によじ登ってくるトロンを見つめながら、あたしは小さな
声でつぶやいた。
 
「もう、“悪夢”は終わったのだから……」
 
 
 あたしのつぶやきに呼応するかのように、点滅を繰り返していた照明が……消えた。
 

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ナインプロジェクト トルエノ&ヴィント編 その1

ふぅ、ようやく涼しくなってきて秋らしくなってきましたね。
これからは夜も長くなって、ますます神姫関係の製作に集中できそうです。

さてさて、前回のドル・ドナ&ケルヴィムの完成からずいぶん日数が過ぎましたが、いたずらに時を過ごしていたわけではありません!
例の、あのヒトの製作にかかっていたのですが、うまくいかずに凹んでいただけデス

というわけで、ここ数日は息抜きの意味も込めてドル・ドナの取り巻き、「トルエノ」と「ヴィント」の製作を行っていました。

割とどうでもいい余談なのですが、いまだ完成をみないモノも含めてナイン全員の装備のイメージは、漠然ですが早い段階から纏まっていました。

ところが、今回のケルヴィムの完成で一部の装備のイメージが大きく変わることになります。
もともとケルヴィムは、火器満載の非人型の装備というイメージがあり、それを護衛するために作られたトルエノとヴィントの装備は、人型のプロポーションを持ちながらも異様に手足の長いフリーキーな体躯になるように考えていました。

ですが、完成したケルヴィムは当初のイメージとはまるでかけ離れたものになってました。
こうなると、トルエノたちの装備も大幅なイメージ変更が必要です。
色々考えたんですが、トルエノたちの新装備は無骨、というか不細工っぽいほうが、よりケルヴィムが引き立つという結論に達しました(笑)。

どうせチャレンジするなら、パワードスーツのように着込むようなタイプにしてみようと思い、それっぽいものがないかとプラモ墓場を漁ってみました……。

CIMG0800.jpg

で、発掘してきたのがコレ!
アリイだかイマイ(現在はバンダイ)製1/72スケール、リガード。
デザインは自分好みなのですが、たしかこのスケールはかなり巨大なハズ。さっそく確認を……。

CIMG0803.jpg

とりあえず、ランナーから切り出してみたのですが、ちょっと大きい…かな?

CIMG0804.jpg

さらに一部を切り抜き、軽白子にかぶせてみたんですが……う~ん、び、微妙?
しかも、やはりチト大きすぎかなぁ。いかんせん、トルエノとヴィントの装備は、ほぼ同じ形状なのでコレが二体並ぶとドル・ドナがかすんじゃうような……。



とりあえず、リガード案は保留にして、先日、某所に使えるものがないかと物色に行ってきました。
目指すブツは、「サクラ大戦」に出てきた「光武」とかいうパワードスーツ(?)。
ずいぶん前に発売していた品なので、ある意味賭けだったのですが……物の見事にありませんでした(泣)。
いやまあ、現実にはあることはあったのですが……なんか可変するタイプのヤツなんですよねぇ。
デザインも、私が知ってる光武にくらべるとあか抜けてるし、なによりお値段が……。

覚悟はしてましたが、見事な空振り……。
このまま帰るのも癪なので、失意にうなだれながら他に使える物がないか店内を物色していると、とある製品が目に入ってきました。

おおっ!? コレはSF3D? な、なつかしい。まだこんなの売ってたんだ?

良く見てみれば、これもみごとなくらい不細工体型! なつかしさも手伝って、手に取ってマジマジと見ていたのですが、なんだかパッケージに見慣れない文字が……。
えっ、マシーネンクリーガー? 何コレ、SF3Dじゃないの?

思い起こせば、あれはジュラ紀のころ……当時バイブルとして読みふけっていたホ〇ー〇ャ〇ンに載ってたのは、確かSF3Dというタイトルだったような……これ、パチモン?

CIMG0801.jpg

まあ、そこらへんはどうでもいいことだったので、とりあえず一個買ってみました。

CIMG0802.jpg

う~ん、これこれ。やはりこの無骨なデザインはイイですなぁ。
まあ、問題はサイズか合うか否かなんですが……。
迷っていても埒があかないので、さっそく仮組みして軽白子に無理やり装着!

CIMG0805.jpg

……。

CIMG0806.jpg

…………。

CIMG0807.jpg

………………。



……別に、ネタでやってるわけじゃないんデスヨ? 

なんか今回の製作は、前途多難な予感がします(ハァ)。

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わんだふる神姫ライフ 第31話

『くっ、ゆ、許さん。許さんぞ、ストラーフッ!』
 あたしの声に我に返った狐姫が、逃げていくトロンに気づくとゆらりと立ち上がる。そ
の身体はわなわなと震え、目は血走っていた。
『わらわがその身体、八つ裂きにしてくれるわっ!』
 狐姫が叫びながら両手の鉤爪を振りかざすと、狐姫の背部に唯一残った長大な箱状の
パーツが突然持ち上がった。
「あれは」
 何のために付いているのか最初はわからなかったけど、ようやくあたしにもアレがなん
のか理解できた。
 
            縦一列にズラリと並んだ噴射口のような物、あれって……
 
「トロン、避けてっ!」
 あたしの叫びを掻き消すように玉面の最後のパーツ、大型のブースターユニットが咆哮
をあげる。
 爆音を響かせ、背後に九つの光の尾をたなびかせながら狐姫がトロンに襲いかかる。
『え? うわっ!!』
 あたしの声と、背後から響く轟音にトロンが振り向いた時、照明の光を反射する刀身が
トロンの身体を切り裂いていた。
 
                      わんだふる神姫ライフ
 
               第31話  「玉面公主 そのさん」
 
『がはっ!』
 背後からわき腹の辺りを抉り取られたトロンが、バランスを崩し転倒してしまう。
「トロンっ!」
 ピクリとも動かなかったトロンだが、あたしの声に反応すると、緩慢とした動きでよう
やく身体を起こそうとした。
『ぐっ、……ゴフッ!』
 わき腹を押さえながら立ち上がろうとしたトロンが突然片手で口元を押さえると、激し
くむせ返った。その指の隙間から赤黒い血のようなものが噴き出し、トロンの手を伝い
落ちアスファルトの上に小さな血溜りをつくる。
「トロン、大丈夫なの? しっかりして!」
『ほほほ、いい気味じゃっ。これはわらわを愚弄した罰と思うがよいぞ。ストラーフ!』
 こ憎たらしい狐姫の声が、心配するあたしの声を無常に遮る。思わず睨みつけると、
狐姫は急に顔色を変え数歩後退る。
『な、なんじゃ! その目つきは? ほんに凶暴な娘じゃ。よいか、ガラ女よ。もう勝敗
は決した。お主もこのストラーフのオーナーならば早々に降参し、こやつを楽にしてやっ
たらどうじゃ?』
「くっ」
 いかにも人を小馬鹿にしたような狐姫の口調に腹が立ったが、それしか選択肢がない
のはあたしにもわかっていた。
 でもこの時、うつむき、息も絶え絶えのトロンの身体がかすかに震えたことに、頭に血
が上っていたあたしは気づかなかった。
『リン。ひとこと……言っておくけど……降参なんて…大却下……だよ?』
「え?」
 降参を表示するボタンにあたしの指先が触れた時、インカムに荒い呼吸と切れ切れのト
ロンの声が聞こえてきた。
『なんとか…この場所まで……辿り着けたんだ。まだ…勝負はついて…ない』
「場所?」
 あたしはトロンの言葉に、コンソールのカメラに映るありふれた風景を食い入るように
見入った。
「あれっ? ここって……」
 しばらくして、あたしはこの場所が、バトルが始まった時にトロンが立っていたスター
ト地点であることに気がついた。
 
               でも、いったいここが何だって言うの?
 
『ほほほ、苦しそうじゃのう、ストラーフよ』
 トロンの真意がわからず眉をしかめていると、狐姫の楽しそうな声が聞こえてきた。
『じゃが、このまま苦しませておくのもあまりに不憫、わらわが楽にしてやろうぞ。さて、
わらわに一寸五分に切り刻まれるのと、玉面どもに隙間もみえぬほど穴だらけにされる
のと、どちらが望みじゃ? ストラーフよ』
 トロンから離れた位置に立ち、ボロボロになったトロンを、愉悦を浮かべ見下ろしてい
た狐姫が、小鳥がさえずるような声で尋ねてきた。
『さすがは……お優しい狐姫様だ。あまりの温情に…ボクはさっきから滂沱と流れる涙を
止めることができないよ』
 苦痛に顔を歪め、なんとか片膝をついたトロンが呼吸を整えながら皮肉たっぷりな笑み
を浮かべる。涙ひとつ浮かんでいないトロンの瞳に、わずかに狐姫の頬が引き攣る。
『でも、罪深いボクに最後を選ばしてくれるというのなら、できれば狐姫様自らの手でこ
の身を引き裂いてほしい……それが愚かなボクにできる、たったひとつの贖罪だから』
 何を考えているのか、自分の胸に手を当て、悔恨の表情を浮かべながらこれ以上は耐
えられないといった風におおげさに頭を左右に振り始めるトロン。
 これが舞台の上ならそれなりに絵になっているんだろうけど、状況が状況だけに滑稽な
猿芝居にしかみえない。
『ふんっ、そう言うと思ったわ! だが、その手には乗らんぞストラーフ。わらわが見たとこ
ろでは、お主にはもうたいして余力も残ってはおらぬ。どうせ甘い言葉でわらわを招き寄
せ、隙をみて襲いかかるつもりなのじゃろう?』
 まるで汚いものでも見るような目でトロンを睨みつける狐姫。
『ほほほ、お主の田舎芝居は充分に堪能したぞよ。褒美をとらすぞストラーフ。わらわの
玉面で灰と化すがよい! この雌狐めっ!』
 いつの間にかトロンの背後に移動していた二機のガン・ポッドが、トロンの頭に照準を
合わせる。ガン・ポッドに気づいているはずなのに、当の本人はまったく気にした素振り
もみせず、ただ眼前の狐姫を見ていた。
『いやだなぁ、ボクがお美しい狐姫様を裏切るはずないじゃないか。だいたい、狐はキミ
の方でしょ? ボクは、あ・く・ま♪』
 わき腹を押さえながらニタリと唇の端を耳まで吊り上げるトロン。後ろ手に隠していた
アンカーガンをすばやく抜き放ち、狐姫の顔に銃口を向けるやトリガーにかけた指に力
を込め一気に引き絞る。
『なっ!?』
 自分めがけて飛来する鋭い鉤爪を、狐姫は咄嗟に首をひねり間一髪で避けてしまった。
起死回生を狙ったトロンの一撃は、虚しく狐姫の背後へと飛び去ってしまう。
『くっ! ……ふぅ、こ、こんな事じゃと思ったわ。この抜け目ない策士め! じゃがこれで
万策つき、手も足も出まい?』
 自分の頬にできた赤い線を気にしながら狐姫はトロンを睨みつける。トロンの背後のガ
ン・ポッドの銃口が輝き、エネルギーの収束が始まる。
 だがトロンは絶体絶命の状態に置かれながらも、微笑んだままだった。
『……確かに、ボクにはもうキミに飛び掛るだけの余力はないんでね。それは<彼>にや
ってもらうことにしたんだよ』
「彼?」
 ニンマリと笑いながらつぶやくトロンの言葉に、あたしは怪訝な顔をする。狐姫もあた
しと同じような表情を浮かべていた。
 意味を成さないトロンの言葉の真意を知ろうと、食い入るように画面を見ていたあたし
は、狐姫めがけて構えていたアンカーガンが、猛烈な勢いでワイヤーを巻き取り始めてい
ることに気がついた。
 かなりの衝撃があるのか、身体の痛みに顔をしかめながら、グリップをしっかりと両手
で握りなおすトロン。
『ん? なんじゃ、この線は?』
「お、おい、狐姫、後ろだっ!」
 自分のすぐそばを掠めるように通過し、とうの昔に地に落ちたはずのワイヤーが、いま
だにピンと張り詰めかすかに振動しているのに気づいた狐姫が、桜庭さんの大声に身体
を震わす。
『うしろ? ……な、なんじゃあ────っ!?』
 怪訝そうな表情で振り向いた狐姫は、自分の肩越しに貼り付けたような不気味な笑みを
浮かべた男の顔に気づき、素っ頓狂な声を上げる。
『へぷっ!』
 男の表情のあまりの異様さに足がすくんでしまったのか、さすがの狐姫も回避が間に合
わず、自分の身長を超える男の体当たりをもろに受けてしまう。
「あ、あれって、サンダース軍曹?」
 もの凄い勢いで狐姫の背中にぶつかった気味の悪い男は、バトル開始時にトロンがいた
ずらしていたファーストフード店のマスコットキャラクター、サンダース軍曹の人形だった。
『あわわわっ!』
 油断していたうえに背後からの思いもよらぬ衝撃に、大きくバランスを崩した狐姫が猛
烈な勢いで前方に、トロンの方へと吹き飛ばされる。
『ふふふ、いらっしゃ~い』
 もはやモチーフそのものといえるほどの悪魔的な笑みを浮かべたトロンが、アンカーガ
ンを投げ捨てると、自分めがけて飛んでくる狐姫の腕をつかみながら小柄な彼女の身体
を背負うようにして内側にもぐり込む。
『うおぉぉぉっ!』
 激痛に顔を歪めながら、残ったすべての力を込めてトロンは右足を真上に跳ね上げ、狐
姫を前方に投げ飛ばす。
 あたしでも思わず見惚れるほどの見事な背負い投げを受けた狐姫が、ものすごい勢いで
弧を描きながら路面に叩きつけられる。
『ぐはっ!』
 アスファルトの破片を撒き散らしながら、肺(?)に残った空気をすべて吐き出し、狐姫の
顔が苦痛に歪む。
『お、おのれ。ぎょ、玉面……よ』
『そうは……させるかっ!』
 薄れいく意識のなかで、ガン・ポッドに攻撃を命じようとする狐姫に、トロンが最後の力を
振り絞って飛びかかる。
 自分に攻撃を加えようとするガン・ポッドには目もくれず、呻きながらも起き上がろうとす
る狐姫を乱暴に引き倒すと、トロンはブーツに括り付けたナイフを抜き、狐姫の背後に唯一
残ったブースターユニットの基部に渾身の力を振り絞ってその刀身を突き立てた。
 トロンのナイフがつけ根までめり込むと、二機のガン・ポッドは先程までの統制されてい
た動きが嘘のように、急にめちゃくちゃな動きを始めた。
 それを横目で見ていたトロンが、ナイフの柄を握りなおすと一気にブースターユニットを
切り裂いた。
 ブースターユニットの中に、ガン・ポッドのコントロールに必要なシステムが内蔵されてい
たのか、鮮血のようなスパークを起こしながらブースターがにぶい音を立て地に落ちると、
大きく機体を震わせたガン・ポッドも折り重なるように落下してしまいピクリとも動かなくなる。
『さあ、これで万策尽きたのはそっちのほうだね。降伏か死か? どっちを選ぶ?』
 荒々しく狐姫の髪をつかむと、その顔を持ち上げ、細い首筋にナイフの切っ先を押し付
けるトロン。狐姫の透けるような肌に、小さな紅い珠が浮かぶ。
『わ、なんじゃこれは? 痛い、痛いのじゃ! これ美雪、なんとかせいっ!』
 痛みのために完全に正気にもどった狐姫の慌てふためく声と、全身を襲う激痛に耐える
トロンの必死の表情に気圧されたのか、こっちを睨んでいた桜庭さんは大きく息を吐くと、
両手を挙げながらニヤリと笑った。
「わかったよ。降参する。あんたたちの勝ちだ」
「『ふうっ~』」
 あたしとトロンの口から、同時に長いため息がもれた。
                         ※
『うわ~ん、これは夢じゃ幻じゃ! わらわが負けるはずはないのじゃ~~~ッ!』
『まったく……いい加減、機嫌をなおしなよ。狐姫』
 路上に仰向けになりながら、陸揚げされたマグロのようにビチビチと跳ね回る狐姫を、
わき腹を押さえながらトロンは呆れた顔で見下ろしていた。
『うるさい! あっちに行けっ。どうせわらわをあざ笑いにきたのであろうが?』
『そんなことないって、ボクの身体を見てごらんよ。狐姫よりボロボロだろう? この勝
負どっちが勝ったっておかしくなかったんだ。ほらっ、もう立ちなって』
 これ以上はないだろうといったふうに頬をふくらました狐姫が、拗ねた瞳でしばらくト
ロンの姿と、差し出された手を交互に見ていたが、渋々その手につかまると立ち上がっ
た。
 
へ~、結構いいところもあるんじゃない、トロンのやつ。
 
 あたしがトロンの意外な一面に感心していると、何を思ったのか突然トロンは狐姫の首
を乱暴に掴むと、無言で背後の電柱に叩きつけた。
『かはっ?』
 驚きに顔を歪ませトロンを見つめる狐姫。なんとか自分の首に食い込む腕を振りほどこ
うとするが、トロンの腕はピクリとも動かない。
「トロン。あんた何やってんの? 決着はもうついたのよ!」
 あたしの声にはまったく反応せず。妙に陽気な、それでいてどこか押し殺したような口
調でトロンは狐姫に話し始める。
『あ~、そうそう。そういえばボク、思い出したことがひとつあってね。狐姫、キミはさっき
リンのことを色々と言ってたみたいだけどさ……ボクの目の前でリンを侮辱することは誰
であろうと絶対に許さない! ……それだけは覚えておいてほしいんだ』
 トロンの迫力に、あたしは硬直してしまった。桜庭さんも唖然としたまま身動きひとつ
しない。
 恐怖のために引き攣った狐姫の顔を、しばらくながめていたトロンの金色の瞳がこぼれ
んばかりに大きく開かれ、猫のような瞳孔が糸のように細くなる。形の良い唇がメリメリ
と音を立て、下弦の月を形作る。そして吸血鬼の乱杭歯をおもわせる牙を剥き出し、トロ
ンは一語一語区切りながら妙にネットリとした声で狐姫に問いかけた。
『ドゥー・ユー・アンダスタン?』
『ひ、ひぃ───っ! わ、わかった。わかったのじゃ! 二度とあの女をバカにしたり
せん! ほ、本当じゃ!』
『……よろしい。狐姫は本当に素直ないい子だねぇ~』
 そう言いながらトロンは愛おしそうに狐姫を抱き寄せると、静かに頭をなで始めるが、狐
姫は全身から脂汗をしたたらせ、まるでヘビに睨まれたカエルみたいに見えた。
 
                まったく。トロンのヤツ、まだ怒ってたの?
 
そう呆れながらも、なんか照れくさい気持ちになるあたしだった。
 
 

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わんだふる神姫ライフ 第30話

『ぐっ、わぁあああぁ───っ!』
 大気を切り裂きながら突き進む光の矢が、トロンの身体に吸い込まれていく。咄嗟に
回避したため全弾命中という最悪の事態は免れたが、それでも半数近いビームがトロ
ンに命中してしまう。
『くっ!』
 今の攻撃で多くのLPを失ったトロンが、苦痛に顔を歪めながら、がっくりと路上に膝
をつく。
「トロン、大丈夫? しっかりして!」
『まぁ、大丈夫度は38%ってところだけど、くっ、……まだ……闘れるよ』 
 あたしの方を見つめながら気丈に笑いかけると、トロンはよろめきながらもなんとか
立ち上がる。
 それがカラ元気だとわかってはいても、とりあえず胸をなでおろしたあたしは、いまさ
らながら狐姫の実力を過小評価していたことに気がついた。
 そして、あたしが何気なく言った“玉面公主”という名こそ、狐姫に与えられた二つ名
だとは、この時のあたしたちには知る由もなかった。
 
                       わんだふる神姫ライフ
 
                第30話  「玉面公主 そのに」
 
『ほほほ、ちょうど良い具合に焼きあがったようじゃのぅ、ストラーフよ』
『おかげさまでね。でも、ボクは生っぽいのは苦手でね。どっちかって言うとボクの好み
はウエルダンなんだけど』
『安心せいストラーフよ。お主の願いはわらわが叶えてやろうぞ。どこの神姫か区別も
つかぬほどに黒こげにしてやるわ』
 不敵な笑みを浮かべ、トロンを見下ろす狐姫の瞳がスッと細まると、彼女の周りを漂っ
ていた八機のガン・ポッドが急に統制された動きをみせ、その銃口をトロンに向ける。
『これで最後じゃ!』
 狐姫の言葉を合図に、ガン・ポッドから放たれたビームがトロンの身体を貫いた。
『「えっ?」』
 全身を無残に打ち抜かれ、路上に倒れ伏すトロンの姿を脳裏に思い浮かべてしまった
あたしは、ううん、多分狐姫も同じイメージを抱いていたんだろう。あたしと狐姫の口をつ
いてでた言葉が同じだったのがその証拠だと思う。
 トロンの身体が小さくブレると、その姿がおぼろげになり、八本の光の矢はすべてトロ
ンをすり抜けてしまったのだ。
 最初は単純にビームがトロンを貫通したのかとも思ったのだが、唖然とする狐姫の前に
立つトロンの金色の瞳がそれを否定していた。
 驚愕に彩られる狐姫の表情に反撃のチャンス到来か? と思ったあたしだったが、なぜ
かトロンは身をひるがえすと、さっき逃げ込んだスーパーマーケットの入り口めけて走り
出した。
 背後でトロンに罵声を浴びせている狐姫の声が聞こえるが、トロンはおかまいなしに店
に駆け込むと、一目散に奥の方に走っていく。
「ど、どうしたのトロン? 狐姫に近づく絶好のチャンスだったのに!」
『……今は……ダメなんだよ』
 店の一番奥まで逃げ込むと、壁にもたれ掛かりながらトロンは、あたしの疑問の声に聞
きとれないほど小さな声で答えた。
 あたしはその時になって、トロンの顔がいいようのないほどの苦痛の色を浮かべている 
ことに気がついた。
「今の狐姫の攻撃で、ダメージを受けてたの?」
 絶え間ない痛みに襲われているのだろうか、苦痛に顔を歪めながらもトロンは静かに
首を振ると、あたしの問いを否定した。
『狐姫のビームは全部避けられたんだけどね。痛っ、もっとも、これだったら今の攻撃が
当たってても、たいして変わらなかったかな?』
 自虐気味につぶやくトロンの言葉を、あたしはまったく理解できなかった。そもそも攻
撃は避けられたのに、なんでトロンはこんなに苦しんでいるの?
 あたしの表情から自分の説明が足りなかったことに気づいたトロンが、苦笑しながら話
し始めた。
『リンはボクの“特性”を忘れちゃった? ボクは自分の能力と、リンの選んだCSCの
相乗効果によって回避能力が極端に高まった神姫なんだよ? 今のは、ボク自身に設定
されたリミッターを一時的に解除した結果なんだ』
「トロン、あんたにこんな……ガーネットみたいな能力があったの?」
『うん。ただボクの身体にかなり負荷がかかりそうだったんで、今まで使うのに気が進ま
なくてね。でも、実際ここまで負担が大きいとは予想外だった……これじゃあ、いざとい
う時ぐらいにしか使い道がなさそうかな』
 大きなため息をひとつしながら苦笑いを浮かべるトロンに、あたしはなんと言っていい
のかわからず、口ごもってしまった。
 確かにこの能力は、距離を詰めてこそその真価を発揮するトロンの特性を充分サポート
できるものだったかもしれない。でも、いくら攻撃を避けられてもその後が続かないので
は意味がない。
『まぁ、リミッターの設定をもう少し調整すれば、なんとか使えるかもしれないけどね。それ
にしてもボクの身体の強度を考えると、一度の戦いで使用できるのは一回が限度ってと
ころだろうけど』
「そう。……ねぇ、トロン。それはそうとして狐姫の玉面にどうやって対抗するつもりなの? 
なにかいい方法を思いつかない?」
 ようやく痛みが和らいできたのか、すこし穏やかになってきたトロンの口調に、内心ホ
ッとしながらも、あたしはとりあえず当面の問題を解決しようと努めた。
『ん~、そうだなぁ、ボクだったら……というか、こういう時って、普通マスターであるリン
がボクに妙案を授けるっていうのがパターンじゃないの?』
「え? あ、あはははは………ごめん。ぜんっぜん思いつかない!」
『…………』
 パンッ、と胸の前で手を打ち鳴らし、真面目な顔で拝むように謝るあたしに、呆れた表
情を浮かべるトロン。
「だ、だってしょうがないじゃない! あたしの十七年の人生であんなヘンなモノに追い
回された経験なんて、一度も無いんだもんっ!」
『…………』
「あんな得体の知れないモノを相手にするくらいなら、熊とサシで戦うほうがなんぼかマ
シってもんよ! そうでしょう?」
『いや、「そうでしょう?」とか聞かれてもね。第一、ボクの相手は熊じゃなくて狐なんだ
けど……ま、リンの言うことも確かに一理あるかな?』
 必死に言いわけするあたしを、しばらくジト目で見ていたトロンだったけど、苦笑しな
がらも金色の瞳にかすかな嘲笑が含まれているのをあたしは見逃さなかった。
「じゃ、じゃあ、あんたはどうだっていうのよ。この危機的状況を打開する策があるって
いうの?」
 トロンの態度にムッとしたあたしが、すこし声を荒げて問いただすとトロンは腕を組み
ながらニヤリと笑った。
『もちろん! と言っても問題がふたつほどあるんだけどね……』
 背を反らせ、得意満面の表情をみせたトロンだったが、なぜか語尾が尻すぼまりなっ
てしまう。
「ふたつの問題? それってなんのことなの?」
『うん。ねぇ、リン。この店ってモデルになったスーパーと店内の通路と品物の配置は同
じだった?』
 思いもしないトロンの質問に、あたしはいぶかしげな顔をしながらも、額にシワを作る
と記憶の網をたぐりよせ始めた。
「そうね、店内は現実のものと一緒よ。だからさっきもあんたに道案内ができたわけだし、
品物も入り口に缶詰や特売品を積み上げてたりするところは本物の店と同じだから、た
ぶん一緒だと思うわ」
『そうか。じゃあ、“あれ”の場所もすぐにわかるか……となると問題はあとひとつか』
「“あれ”? あれって何よ? それに最後の問題っていったいなんなの?」
 あたしの答えに満足したのか、あごに手を当てしばらく考え込んでいたトロンだったが、
しばらくするとあたしの方に顔を向け微笑んだ。
『“あれ”に関してはあとのお楽しみというところかな? 最後の問題はボク自身のこと
だからリンが心配しなくても大丈夫。そう、ボクが“あの場所”まで行ければね。……さ
てと、そろそろ限界かな?』
「限界?」
 “あれ”とか“あの場所”だとか、まったく要領を得ないトロンの回答に、いい加減頭
から白煙を吹き上げオーバーヒート寸前になっていたあたしを尻目に、『よっこいしょっ』と
小さくつぶやきながらトロンは壁から背を離す。
『沸点低そうだからね、あのお姫様。そろそろ我慢の限界なんじゃないかな?』
 トロンはいたずらっぽく笑うと、店の外に視線を向けた。
                          ※
『う~~~、もうダメじゃ! 我慢の限界じゃっ!!』
「……ほんとうだ」
 トロンの言葉にコンソールのカメラビューを切り替えると、そこには煮えたぎった大鍋
から引き上げられたばかりのタコかカニのように顔を真っ赤にした狐姫が、足を踏み鳴ら
して怒りをあらわにしていた。
『もう、辛抱ならん! 玉面どもよ。あの不遜なストラーフを灰も残さず焼き尽くすのじ
ゃっ!』
 こめかみを引き攣らせながら狐姫が叫ぶと、フヨフヨと漂っていたガン・ポッドが店の
前に集結し、一斉に店の入り口あたりに照準を定める。
 ガン・ポッドの砲口が放つ光の強さに、今度の攻撃がさっきとは比べ物にならない程の
威力を持っているのは容易にわかった。
「ヤバッ、トロン! ガン・ポッドが店を狙ってる。早くそこから逃げて!」
 カメラを狐姫の方に向けてしまっていたため、店内のトロンの様子がわからなかったあ
たしは、慌ててトロンに連絡を入れる。
でも、なぜかトロンからの返事はなかった。
『消え失せいっ! ストラーフ!!』
「トロンっ!」
 光の矢と化したビームの輝きが眼前の店に吸い込まれた時、全面ガラス張りになってい
たスーパーの一番端の大型のガラスをぶち破りながら、大量のガラス片をお供にトロンら
しきものが突然飛び出してきた。
 曲がりなしにも自分の神姫を「らしき」とは何事だと思う人もいるだろう。でも、今の
あたしにはそうとしか言いようがなかった。
ガラスを突き破って出てきたトロンらしき神姫は真っ白だった。限定版のストラーフだ
ってここまで白くはないだろう? と思うほど、頭のてっぺんから爪先まで白一色に染ま
っていた。むしろ、こんな白いカタマリを瞬時にトロンだと判別できた、あたしの動体視
力を褒めてやってもいいんじゃないかと自分で思ったぐらいだ。
『ゲホッ、ゲホッ……ヘっ、へっくしょんっ!』
 建物から飛び出してきたトロンは鮮やかに受身をとりながら立ち上がり、しばらく咳き
込んでいたと思ったら、特大のくしゃみを一発放った。
 トロンの全身からもうもうと白い煙が舞い上がる。トロンの身体が白いのは、ペンキで
もかぶったせいかと思ったが、どうやら粉まみれになってるだけのようだった。
「トロン、あんた一体何を……」
 事の次第をトロンに問いただそうとしたあたしの声は、突然あたしの耳を襲った轟音に
途切れてしまった。あまりの音の大きさに身をすくませたあたしだったが、眼前に広がる
光景に唖然としてしまった。
 燃えていた。トロンの逃げ込んでいたスーパーが、いや、その燃えさかる建物が、元ス
ーパーだとは誰も思わないだろう。
 四方を囲む壁やガラス窓はきれいに吹き飛び、唯一残った物といえば傾きながらも天を
目指して屹立する塔にも見える数本の柱だけだった。
その柱ですら猛り狂う猛火の舌に舐めとられ、みるみるただの消し炭へと変わっていく。
 スーパーの両隣にあった店も全壊こそまぬがれたものの、紅蓮の炎に包まれ、音を立て
て崩れ落ちていく。
『なななな、なにごとじゃ?』
「ンなバカな! こんな威力があるわけは……」
 これが玉面の真の力なのかと、その破壊力に震え上がったあたしの耳に、桜庭さんと狐
姫の虚ろな声が聞こえてきた。
 ふたりの方を振り返ると、桜庭さんはシートから半立ちの状態で腰を浮かせ、驚愕の表
情を浮かべている。そして爆風で飛ばさせたのか、元居た場所からかなり離れた所で、煤
まみれになった狐姫がぺタンと座り込んでいる。
 ふたりの態度からも、この爆発は予想外の出来事だったのだろう。
それによく見てみると、ポカンとした顔をした狐姫を守るように浮いているガン・ポッ
ドが今は二機しかいなかった。おそらく残りは店に近づきすぎてしまったために、あの爆
発に巻き込まれてしまったのだろう。
 こうなれば、この爆発を起こした張本人はひとりしかいない!
「トロンっ! あんた……あっ!
 事の真偽を確かめようとトロンのほうに視線を移すと、真犯人はあたしに背を向け、通
りの奥にスタコラと逃げ去っていくところだった。
「……トロン、あんたほんとうにやる気ある……あっ!」
 トロンの態度に急激な脱力感に襲われ、コンソールに突っ伏したあたしだったけど、頭
に浮かんだトロンの言葉を思い出すと跳ね起きた。
 
そうか、トロンは向かっているんだ。“あの場所”に。
 
 あたしは、遠ざかっていくトロンの後ろ姿に、この戦いの終わりが近い事を確信してい
た。

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「ドル・ドナ」

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□ 名称
  「ドル・ドナ」

□ タイプ
  トランシェ2

□ 所持スキル 
  <裁きの光雨> <ラストワード>

□ 専用装備
  <ケルヴィム>


□ 解説

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<ナイン>の一人にして、四天使装備<ケルヴィム>の所有者。

卓越した射撃センスを持ち、複数の光学兵器を装備したケルヴィムを自らの手足のように自在に操り、その射撃能力の高さは、ナイン随一の腕前を誇る。

ナイン屈指の実力者と噂されるカノンと、双璧と謳われるほどの実力を持つドル・ドナだが、その性格は傲慢きわまりないものであり、つねに他者を見下したような態度をとる。
その高慢な性格は増徴を続け、今ではドル・ドナのオーナーですら彼女に逆らうことが出来ず、完全に主従の関係が逆転してしまっているほどである。

セラフから、圧倒的な性能を誇るケルヴィムを譲り渡され、彼女の傲慢さはさらに増大し、自らを至高の存在と豪語しはじめるドル・ドナ。

だが、自身より実力の劣るセラフが他者に慕われ、つねにナインの中心にいることに自尊心の高いドル・ドナは我慢できず、同じナインのメンバーにして腹心の部下、トルエノとヴィントを率いセラフに対して戦いを挑むが、ナインを二分するほどの激闘はセラフたちの勝利で幕を下ろすこととなった。

有り得ぬはずの敗北……その屈辱から、自らの命を絶とうとするドル・ドナ。
しかし、必死にそれを止めようとするセラフの姿に、ドル・ドナはようやく己に欠けていたものが何かを知ることになる。

それ以降、ドル・ドナはナインの他のメンバーと距離をとりながらも、セラフとともに戦う決意を固める。





□ <ケルヴィム>

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□ 搭載武装


□ ライフル型ガンポッド 「ミュルグレス」×12

□ 高出力ビームガン 「デュランダル」×2

□ 大型プラズマキャノン 「ジャッジメント」×1



□ 解説
  
セラフのオーナーが製作した、四天使装備のひとつ。

四天使装備が、それぞれ一つに特化した能力を持つ中、ケルヴィムは重火力をコンセプトに組み上げられた砲戦仕様の装備である。
上記の用に、通常では考えられないような多数の火器を搭載しており、他を圧倒する火力を持つ。

一見すると、スリムなプロポーションを持つケルヴィムが、これほどの火器を同時に運用できるのも、四天使装備にのみ搭載された専用ジェネレーター「E・N・T」の性能の高さ故である。
ただし、ケルヴィムは「E・N・T」のありままる出力のほとんどを火器に使用しており、飛行能力やフィールドなどを発生させる機能は、他の四天使装備のなかでもっとも劣ったものとなっている。

また、ビームソードなど接近戦の際の自衛用武器を持たぬ偏った兵装は、ケルヴィムがもともと支援専用に作られたという証左であるが、ドル・ドナ自身の能力の高さから遠距離はもとより、中、短距離戦でもたいがいの相手に引けを取ることはない。


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ケルヴィムの各所に施されたカービングは、セラフから譲り渡された後に追加したもの。
この過剰な装飾を見ても、ドル・ドナの自己顕示欲の高さの一端を垣間見ることができるだろう。


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異様に張り出した頭部バイザー。これは、内部に情報処理および火器管制などを集約した結果である。


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胸部装甲の中央に見えるのが、ケルヴィム最強の破壊力を誇るプラズマキャノン「ジャッジメント」。


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ケルヴィムの主武装、「ミュルグレス」
大型のガンポッドでもあり、ドル・ドナの意思で遠隔操作が可能。


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通常は半数程度のミュルグレスを使用し、敵に波状攻撃を仕掛ける。


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余談ではあるが、ミュルグレスは当初、製作者であるセラフのオーナーの好みで無骨な形状をしていたが、ドル・ドナがそれを嫌い、オーナーに命じて愛用の銃、デュランダルに模したものに作り直したという逸話がある。


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「デュランダル」
高出力かつ速射性に優れた、ドル・ドナの専用武装。
ドル・ドナがデフォルトの装備を使用していたころから愛用しており、幾多の戦いをともにくぐりぬけてきたデュランダルに、ドル・ドナは誰よりも深い信頼を寄せている。


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「愚にもつかぬ者」と軽蔑する自らのオーナーはもとより、つねにドル・ドナに付き従い、彼女に尽くすトルエノ、ヴィントよりも……。


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ドル・ドナのスキル<裁きの光雨>
ケルヴィムに搭載された火器、すべてを使用した全力射撃モード。
収束、拡散二つのモードを持ち、一度捕捉されたが最後、灼熱の雨から逃れることは至難の技であろう。


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ドル・ドナのスキル<ラストワード>
ミョルグレスのハードポイントでもある背部の大型バインダー。
同時にこれは、胸部プラズマキャノン「ジャッジメント」の増幅機構としての機能も備えており、展開使用することで、ドル・ドナ最強のスキル<ラストワード>を発動することができる。
その威力は絶大であり、<裁きの光雨>を凌駕するほどの破壊力を持つ。
ただし、その威力に比してデメリットも大きく、<ラストワード>使用後は安全機構が働き「E・N・T」の機能が大幅に低下。一時的にエネルギーの供給も止まってしまう。

まさに、もろ刃の剣である。


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バイザーを外したドル・ドナ。
もともと、ドル・ドナは端正な顔立ちの持ち主であったが、その性格ゆえか、つねに険しさをにじませていた。
だが、セラフとの死闘の後、自身を縛り上げていた鎖から解き放たれたドル・ドナの顔からは徐々に険しさが消えていった。
辛辣な口調、他者を突き放すような態度はあいかわらずだが、かつて唇に浮かんでいた「侮蔑」や「嘲笑」といった形は影をひそめ、今では柔和な笑みすら浮かべることがある。


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かつて<傲慢なる智天使>と呼ばれた神姫がいた。

だが、己のためにのみ振るった強大な力は、いつしか、かけがえのない仲間を守るために使われることになる……。

















はいっ! 今回も長々とお付き合いいただきありがとうございました。
ナインの一人にして「腹黒天使」、ドル・ドナの紹介でございました(笑)。

本来私は、重火力型というタイプを非常に好むのですが、ドル・ドナの性格が災いしたのか、長らく放置状態でしたがようやく日の目を見ることができました……。




ところで、少し話がそれますが、ドル・ドナの素顔を見て「おやっ?」っと思われた方もいるのではないでしょうか?

じつはこのフェイスは、武装紳士、初瀬那珂さんの手によるものだったりします。
以前、褐色天使さんの製作をお願いした際、初瀬さんの厚意でもう一人分アイリぺをお願いできる機会ができました。

当時、初瀬さんのブログで確認のためにUPされた画像は、けっこう温和な顔立ち……。
最初は「少しイメージと違うかな?」と思っていましたが、見ているうちに気に入ってしまい、けっきょく“改心後”の顔として使用することにしました。
いずれ“Sモード”のドル・ドナが欲しくなったら、初瀬さんにお願いするかもしれません(笑)。




それにしても、前回の記事でも書きましたが、今回のドル・ドナとケルヴィムは自分一人で作ったという気がしませんでした。

いろいろな武装紳士のみなさんの、助言、助力がなければ、今回の完成までにはこぎつけなかったでしょう。

ほんとうにありがとうございました。











え~、最後になりましたが、実は私、少々悩んでおります。

今回のドル・ドナ&ケルヴィム。ひさしぶりに作った神姫ですし、完成したらfgにでも投稿してみようと考えていたのですが、ここで問題が!

ドル・ドナのフェイスは初瀬さんの作であり、私が自作したものではありません。
とりあえず、今回使用した画像は顔の部分は、素顔ver以外はトランシェ2のものを使用して撮影しており、fgに投稿する画像に関しては、そちらを使おうと考えています。

こういった投稿の仕方は、可能だと思いますか?


























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ナインプロジェクト ドル・ドナ編  完結!

……いよぉーやくッ 完成ッ!!


ハァ、ハァ……ス、スミマセン。プチ徹夜状態だったもので、少々ハイになってました(汗)。

ドル・ドナ&ケルヴィム、ようやく完成でございます。




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ほんらいなら、設定と共にUPしようかと思いましたが、つい嬉しくなってしまい、フライング投稿とあいなりました。

それにしても、今回の作品ぐらい初期のイメージと設定が変わった存在はなかったですね。
ケルヴィムの製作を再開するきっかけをくれた、あの魔法少女さんとの出会い……。
そして、製作中にいただいたコメントの数々。それらがなければ、とても完成までにはこぎつけなかったと思います。
そういった意味でも、今回の作業は私にとっても得るものが多かったです。




さて、さすがにもう意識が途切れそうなので、これから寝ることにします(笑)。

他の画像や腐敗臭ただよう設定などは、近日掲載の予定ですのでお楽しみに!













では、おやすみなさい……。

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