神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 第37話

 唖然と立ちつくすあたしの耳に響いたタイガのマスターの抑揚のない声は、まるで死刑
を宣告する裁判官の声のように聞こえた。
 そんな自分のオーナーの声を黙って聞きながらトロンの吹き飛んでいったマンションの
屋上を見上げていたタイガが、訝しげに目を細めた。
 トロンの激突した大型の貯水タンクが、耳障りな音をたてながら自分の方めがけて急激
に倒れこみ始めたのだ。
 いくらトロンの衝突したショックで傾いていたとはいえ、あまりに早いそのスピードにあた
しが呆然としていると、コンソールの上に投げ出してあったインカムから切れ切れに微かな
声が聞こえてきた。
『まずは……水難の…相』
 あたしはその声にハッとなりながら、慌ててコンソール上のディスプレイに表示された
一点を食い入るように見つめた。
 
          トロンの体力ゲージは、まだゼロになっていなかった……
 
                   わんだふる神姫ライフ
 
           第37話 「ソウルテイカー そのよん」
 
 川の水が川上から流れるのが当たり前のように、貯水タンクもまた、一度加速のついた
自らの重さを支えられず支柱をへし折りながら軋む様な音を立て、タイガめがけて落下を
始める。
『くそっ!』
 かなりの速度で落ちてきたのにも関わらず短い舌打ちをひとつすると、風のようにタイ
ガは身をひるがえす。
 紙一重のところでタイガの身体を掠めるようにして、巨大なタンクがアスファルトを震
わせながら、轟音をたてて落下する。
 貯水タンクの外装など、その厚みはたいした事はないのだろう。自らの中に蓄えられた
水の重さと落下のショックに耐えられず、一瞬にして原型を留めぬほどにひしゃげると、
大量の水をあたり一面に撒き散らし、タイガの足元にまるで小さな池を思わせるほどの水
溜りを作り出した。
 全身ずぶ濡れになったタイガが、無言のまま顔に跳ねかかった水を手で拭うと、怒りも
あらわに足元の貯水タンクを蹴り飛ばした。 
 自分の身長を軽く超える大きさのタンクが、近くの建物に叩きつけられる。
 それでもまだ気分が晴れなかったのか、苦虫を噛み潰したような顔のまま屋上に射るよ
うな視線を向けたタイガの表情が、瞬時に凍りつく。
『うおっ!?』
「トロン!」
 言葉は違えどあたしとタイガは同時に叫んでいた。あたしたちの視線の先、マンション
の屋上から身を投げ出し一直線にタイガめがけて落下するその黒い影は、全身ボロボロ
になったトロンだった。
 まるで刀でも持っているかのように大きく右手を振り上げながら落ちてくるトロンを、理解
できないといった様子で見守っていたタイガの目前で、手刀のように揃えられたソウルテ
イカーの指先から突然、真紅に輝くビームソードが発生する。
 予想もしない事態にタイガの目がこれ以上はないというほど見開かれるが、咄嗟に真鬼
王の腕をかざすとトロンの奇襲を紙一重で受け止める。
 ソウルテイカーのビームソードと真鬼王の腕が接触したとたんに、目も眩むほどのスパ
ークがふたりの間に起きる。
 だがそれも一瞬の間のことで、トロンのビームソードがみるみる真鬼王の巨腕を溶かし
食い込み始める。
 トロンの体重プラス落下の勢いで押さえつけられるような状態になっていたタイガだが
小さく舌打ちをすると、すぐに体勢を立て直しながら残った腕をアッパー気味にトロンめ
がけて叩き込んだ。
 だがその攻撃もトロンにとっては想定内の出来事だったのか、焦る様子もみせず唸りを
たてて迫り来る真鬼王の拳に足をかけると、その反動を利用して大きくトンボを切りなが
ら二回、三回と後方宙返りを繰り返し、思わずあたしが見惚れるほど見事な着地を決めて
みせる。
 ビームソードの威力で無残な傷痕のついた真鬼王の腕をしばらく見ていたタイガが、何
を考えているのか、着地した後もずっとポーズをとっているトロンを睨みつける。
『災いは天より舞い降りるか……けっ! インチキ占い師の言う災いってのは、こんなチ
ンケなことなのか?』
 怒りを侮蔑もあらわな言葉で覆い隠しながらタイガが尋ねると、トロンは気にした素振
りもみせず、軽く肩をすくめてみせる。
『まあね。でも、水難の相はばっちり当たったよね?』
 全身ずぶ練れになったタイガの姿を見ながら、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる
トロン。
 それ占いじゃなくて計画的な犯行だろ? とあたしは思わず心の中でツッコんでいた。
 呆れるあたしとは対照的に、怒りで身体を震わせていたタイガが我慢の限界に達したの
か、いきなりトロンめがけて突進した。
 タイガのマスターが、静止させようと必死にタイガに話しかけているようだったけど、頭に
血が上った状態のタイガの耳には届いていないようだった。
 もうスキルの効果は切れてしまったのか、さっきまでのスピードは影を潜めていたけど
それでも風を切りながら怒りにまかせて繰り出される攻撃の凄まじさは、それを補って余
りあるものだった。
 けれど、嵐のようなタイガの攻撃をトロンは顔色ひとつ変えずにかわしてしまう。
 真鬼王のスピードとパワーは確かに脅威には違いないだろうけど、その攻撃はどちらか
といえば直線的かつ単調なものであり、ある程度タイガの攻撃パターンを把握したトロン
にとって、攻撃を回避することはそう難しい物ではないことは容易にわかった。
 ソウルテイカーを装備しているせいなのか、普段以上になめらかな動きで真鬼王の猛攻
を避け続けるトロンに、タイガの表情が険しくなる。
『ち、ちくしょ───ッ!』
 まるで当たらない攻撃に業を煮やしたタイガが、足元に溜まっている水をいきなりトロ
ンめがけて蹴り上げた。
 癇癪を起こした子供のような行動だったけど、いきなり遮られた視界に短い舌打ちを打
ったのは、トロンにとっても予想外の出来事だったのだろう。
「トロン! 上よっ!!」
 あたしのあげた金切り声に、しきりに目をこすっていたトロンが頭上を振り仰ぐ。
 ようやく戻ったらしいトロンの視界に、背部に巨大なブースターの光球を背負った真鬼
王がトロンめがけて一直線に降下してくる。
 このままでは真鬼王の攻撃を避けられないと判断したのか、トロンは背後に手を回すと
ケースから抜き取ったコンバットナイフを、急降下してくるタイガめがけて投げつけた。
 ほんの一瞬の差だったかもしれないけれど、自分めがけて飛来するナイフはタイガを掠
めるように飛び去りタイガはそれに気をとられてしまい、結果として真鬼王の巨大な脚が
アスファルトに深々と食い込み大量の破片を撒き散らした時には、トロンはすでに身を捻
りながら地面を転げ回りタイガから距離を離した後だった。
 悔しそうにトロンを睨みつけるタイガをトロンは無言で見ていたが、急に真面目な顔で
空の一点を指差した。
『アッ、アブナイ! アレハナンダッ?』
「「『…………』」」
 あまりにも感情のこもらないトロンの棒読み丸出しのセリフに、あたしやタイガはおろ
か、タイガのマスターまでポカンとした表情になっている。
 でも、あまりにわざとらしいトロンの態度に上を見るものなど誰もなく、タイガも軽蔑
を隠そうともせずトロンを睨んでいる。
『ちっ、そんなわざとらしい手に引っ掛かるかよ! だいたい手前ェは……』
 侮蔑を含んだ声で話しかけるタイガの声は、いつの間にか水溜りから身を離し、耳まで
裂けた唇に邪悪な笑みを浮かべ、自分を観察するかのように見守るトロンの姿が目に入っ
た途端に止まってしまった。
 わけがわからず、あたしが口を開こうとした時、上から落ちてくる黒い紐のような物が
視界の端に映った。
 そしてその黒い紐がタイガの足元にある水溜りに触れた途端、目も眩むほどの閃光があ
たしの視界を覆った。
『がぁああぁ嗚呼ああああァアあッ!!』
 目を覆わんばかりの光のなか全身を震わせ、血を吐くような絶叫をあげるタイガを前に、
トロンは絶え間なく走るスパークに片手をかざしながら目を細めると、小さくつぶやいた。
『災いは天より舞い降りる。……だから言ったのに……危ないって』
 もうとても見ていられない。と言わんばかりに眼前の光景から目をそむけ、悲しそうに
頭を振るトロン。
いや、だからあんたの所為でしょう? と心のなかでツッコみながら頭上に目をやると、
すぐ近くにある電信柱から、一本の高圧電線がその切り口から断続的に起こるスパークを
纏わりつかせ、力なく垂れ下がっているのが見えた。
 あたしは、トロンがナイフを投げつけたのはタイガにではなく、背後の電線を狙ってい
たのだという事に気がついた。そして、自ら貯水タンクを落下させたのも、タイガを確実
に感電させるためだという事にも……
 
 あたしが今更ながらトロンの悪賢さに呆れながらも感心していると、断末魔の叫びにも
聞こえるタイガの声とともに、ひときわ激しい光がフィールドを覆った。
 閃光は一瞬でおさまったが、その後には水蒸気のようなものがフィールド全体を覆い、
何も見えない有様だった。
 おそらくタイガの足元に溜まっていた水溜りが蒸発しために出来た物なんだろうけど。
「!?」
 あたしは薄くなってきた水蒸気のなかに、巨大な人影を見たような気がして目を凝らし
て注視していると、それは無数の白煙を纏わりつかせながら立ち尽くすタイガの姿となっ
た。
 唖然とするあたしを尻目に、タイガは壮絶な笑みを浮かべると今まで受けたダメージ
など感じさせない勢いで、トロンめがけて突っ込んでいく。
『まったく……でも、その闘志に敬意を表してボクも全力でやらせてもうよ。タイガ!』
 苦笑いを浮かべたトロンだが、いままでの態度がウソのように真摯な表情になると、ゆ
っくりと黒光りする拳を胸元の高さにかまえる。
 渾身の力を込めて放たれるタイガの攻撃を難なくかわすと、がら空きになったタイガの
身体にトロンの拳が吸い込まれ、タイガの腹部で目も眩むような閃光が放たれる。
そして、タイガはゆっくりとアスファルトの上に倒れ伏し、そのまま動かなくなった。
『ふぅ~、やれやれ。やっと終わったか……』
 声そのものに疲れを滲ませたトロンのつぶやきを聞きながら、いったい何が起きたのか
理解できないあたしだったが、とりあえず制服のネクタイゆるめると大きなため息をひと
つついた。
 
                         ※
 
『さてと……約束通り、説明をお願いできるかな?』
 タイガとのバトルが終わった後、例の如く休憩所へと場所を移したあたしたちだったけ
ど、ソファーに腰掛けたまま誰も口を開かない状態に業を煮やしたトロンが、テーブルの
上に仁王立ちになるとジロリとタイガを睨みつける。
「それは、おれから話そう」
 トロンと目が合うとバツが悪そうにソッポを向いてしまったタイガに変わって、足を組
んだまま黙ってコーヒーを口に運んでいたタイガのマスターが、ようやく重い口を開く。
「トロンのオーナー。つまり一ノ瀬さんにあまり良い噂を聞かなかったものでね……」
「あ、あたしがですか?」
 予想もしない一言に、自分を指差しながら驚いているあたしを、タイガのマスターは感
情を表にださず小さくうなずいた。
「つまり君が自分の神姫を……トロンを日常的に虐待しているという噂を聞いてね」
「そ、そんな? それは……」
 「誤解です!」口から出掛かったその一言を、あたしは続けることができなかった。確
かにいつもあたしにちょっかいをかけてくるのはトロンかもしれない。
 でも、すぐにかっとなって手を出してしまうあたしにこそ、一番の問題があるのは事実
だった。
 多分この店に来る神姫やオーナーたちは、トロンとバトルをすることであたしが逆恨み
をするとでも思っているのだろう。
『それは誤解だよ』
 あたし自身の性格のせいで、対戦相手もみつけられずトロンにも辛い思いをさせていた。
 そう考えながら落ち込んでいたあたしは、突然投げかけられた救いの言葉にハッとして
顔をあげる。
『リンは不器用な子だから、自分の気持ちを素直に言えないだけなのさ』
「……確かにそうなのかもしれないな」
 トロンがあたしを庇ってくれたのにも驚いたけど、それをあっさりと肯定したタイガの
マスターの一言は、あたしをもっと驚かせた。
「実はずっと疑問に感じていた。自分の神姫を虐待するオーナーが、何故リアルバトルを
嫌うのか、とね。だが、今のトロンの言葉でそれがわかったような気がする。……それに
自分の神姫に『嫁』呼ばわりされるオーナーには、初めて会ったしね」
 そこまで話して、初めて屈託のない笑みをあたしに向けたタイガのマスターを見ながら、
あたしはようやく、この人は神姫という存在を大切に思っているのだと気がついた。
 最初に会った時にみせたあの表情は、噂で聞いたあたしに対する嫌悪の情だったのだろ
う。
「だから言ったろ? 一ノ瀬ちゃんはそんな娘じゃねぇってよ!」
 それまで腕を組んだまま黙って腰を下ろしていた桜庭さんが、やれやれといった様子で
ようやく口を開いた。タイガのマスターさんも苦笑いを浮かべながら桜庭さんに向かって
微かに頷く。
「まっ、後のことは任せといてくれよ。この店に来る他の連中には、一ノ瀬ちゃんの誤解は
おれ達がきっちりと説明しとくからよ!」
「あ、ありがとうございます!」
 歯を剥き出すようにして笑う桜庭さんに、あたしは心の底からお礼を言った。
『お、おい! それよりコレはいったい何なんだよ?』
 
 同じ物を見たはずなのに、眉をかすかに動かしただけのタイガのマスターさんとは違い、
ガタガタと震えながらタイガが指差す先には、遂に力尽きたのか、テーブルの上に横たわ
り空気の抜けた風船のようにしぼんでいくトロンの姿があった。
 
 

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愛の武装神姫劇場

先日fgのほうに投稿したトルエノとヴィントの武装ですが、私の予想を裏切り、(自分基準で)思いのほか高評価をいただきました。

で、後日、過去に投稿した我が家の神姫たちの評価などを、あらためて眺めていて思いついたネタが下記のものです。

もともとfgの投稿用に作ったものですが、私がしょっちゅうのぞきに行っている武装紳士さんたちのブログを見ていると、現在かなり深刻なfg離れが起こっている様子。
ならば、こちらにUPしてもダブり感も少なかろうと思い掲載と相成りました。



それでは、我が家の看板娘たちの惨敗記念四コマをごらんください。



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ページファイル14 - コピー



……しかし、トルエノとヴィントは二人同時の投稿ともいえるわけですが、こうもマルガリータとアリシアのコンビと差がつくとは意外でした。
まあ、これも(ナノレベルで)腕が上がったのだと好意的に解釈するべきでしょうね(笑)。


今回、初挑戦した四コマ。セリフを漫画の吹き出しに風にしてみるなど作業は色々たいへんでしたが、なかなかおもしろい体験でもありました。
今後は、看板娘といわれながらも限りなく影の薄いマルガリータとアリシアをネタに、不定期ですが四コマシリーズなんぞをやってみようとも思っています。

では!

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わんだふる神姫ライフ 第36話

『それって……どういう意味?』
 唖然としているあたしの心を代弁するかのように、訝しげにトロンが口を開く。
『どうもこうもねえ! お前が戦う理由を聞いてんのさ。あの女への義理か? それとも
強制されてるのかってことだよ!』
 義理? 強制? タイガの言っている言葉の意味が、あたしにはまるで理解できなか
ったけど、少なくとも彼女が本気で激昂しているのはあたしにもわかった。
 トロンもあたしと同じ思いだったのだろうか。チラリとあたしの方に振り向いたが、す
ぐに視線をタイガに向けてしまう。
『……キミが何を言いたいのかボクには理解できないけど、ひとつだけはっきりと言える
ことがある。……それは、ボクが戦う理由は義理でも強制でもないってことさ』
 凛とした態度で答えるトロンを無言で見ていたタイガのマスターだったが、しばらくし
て、ようやく気だるそうに口を開く
「……そうすると君が戦う理由は他にあると……例えば彼女とか……失礼だが彼女にそこ
まで尽くす価値があるのかな?」
 そこまで話と、タイガのマスターはある一点に視線を投げかけた。あたしの方に。
 トロンはポカンとしていたが、小さく頭を振った。
『ボクが戦うのはボク自身のため! それだけさ。 それともうひとつの質問の答えだけ
ど……リンはボクにとってなにものにも変えられない存在だよ』
「トロン……」
 いつもの砕けた雰囲気は微塵もなく、金色の瞳に真摯な光を宿し、タイガのマスターを
真正面から見据えるトロンにあたしは胸がつまり、それ以上言葉を紡ぐことができなかっ
た。
『……そう、ボクにとってリンは、たったひとりの大切な……』
「…………」
『……嫁だから……』
「嫁じゃねぇ───────ッ!!」
 
                わんだふる神姫ライフ
 
              第36話  「ソウルテイカー そのさん」
 
『え──ッ!? ひ、酷いよ、リン! あの夜の浜辺で誓いあったボクとの約束を忘れち
ゃったの?』
 ヨロヨロとよろめきながら近くにあった建物の壁に手をつくと、絶望に顔を歪ませ、ト
ロンのバカは悲痛な面持ちであたしに問いかけてきた。
「あ、あたしはあんたと夜の浜辺になんか行ったことないし、そもそもあんたと結婚する
なんて言った記憶も絶無よッ!」
『じゃ、じゃあ、ボクの子供を産んでくれるっていう、あの約束は?』
「誰が、産むか───────────ッ!!!」
 顔を真っ赤にしながら店中に轟く声で絶叫するあたしに、まるで雷にでも打たれたよう
な表情になったトロンが、ガックリと膝を着く。
 うつむき表情は見えなかったけど、その身体は微かに震え、みるみるアスファルトの上
に大粒の涙が零れ落ちる。
『そんな……ボクのことは遊びだったの? 酷いよ……リンの悪魔ッ!』
「……“本物”に悪魔呼ばわりされる謂れはないわよ!」
 目の淵に大粒の涙を浮かべたまま、恨みがましい目であたしを見つめるトロンに、どう
でもいい気持ちになりながらも、とりあえずあたしは反射的にツッコミを入れていた。
 頭の血管が何本か切れたんじゃないかと思えるほど激昂していたあたしだったが、何度
もトロンの猿芝居に引っかかってしまう自分の単純さに、我ながら呆れ果ててしまった。
 思わず特大のため息が出そうになったが、突然聞こえたくぐもった声に驚き、途中で止
まってしまう。
 声の主はタイガのマスターのものであり、徐々に高くなっていくその声は、笑い声だっ
た。
 その異様さにあたしや、まだ猿芝居を続けていたトロンはおろか、さっきから話につい
ていけずボ~っと立ち尽くしていたタイガまでがギョッとした様子で彼を見ていた。
 しばらく心底楽しそうに笑っていたタイガのマスターだったけど、ようやくあたしたちの
視線に気づくと笑うのを止め、二、三度頭を振ると照れくさそうに微笑んだ。
「……いや、すまない。……そうか……“嫁”か……」
 そう言いながら、タイガのマスターはあたしを見る。その顔は以前と代わらぬ無機質な
ままだったが、瞳に浮かぶ険の強さが和らいでいるように見えたのは、あたしの気のせい
だったろうか?
「……タイガ、<雷舞>の使用を許可する……」
 そうつぶやきながら、あたしたちを一瞥したタイガのマスターの顔は、いつの間にか元
に戻っていた。
『お、おい!』
「……お前もわかっているはずだ。あのストラーフの……トロンの実力はな……」
『くっ!』
 思わず口をついてでた反論も自らのオーナーに一喝されたタイガが、悔しそうに唇を噛
み締めると、その瞳から炎を噴き出さん勢いでトロンを睨みつけ、押し殺すようにつぶや
いた。
『ふん、まあいい。おい、トロン! こっからが本当のクライマックスだぜ!』
 ビッと指差すタイガの視線の先で、トロンはゆっくりと立ち上がりながら唇の端を持ち
上げ、タイガを見つめている。
『ふ~ん。 まぁ、あんまり無理しない程度にがんばってよ。トラ子ちゃん♪』
『おれの名前は……タイガだ─────ッ!!』
 あからさまに小馬鹿にするようなトロンに、こめかみを引き攣らせながらタイガの絶叫
がこだまする。
 そして真鬼王の巨体が激しく振動すると、その双眼が光を放った。
『えっ、うわっ!?』
 その一撃をかわせたのは偶然だったのだろうか。紙一重で身を捻ったトロンの頬をかす
めながら真鬼王の腕が通り過ぎ、背後にあったビルの壁面に擂り鉢状の窪みを穿つ。
 一見するとタイガの初撃をかわした時と同じに見えたけど、その繰り出された速度と驚
愕に彩られたトロンの表情からも、さっきの一撃とはまるで別物だった。
『けっ、よく避けたな? だがこれからが本番だぜ───ッ!!』
 トロンの顔に浮かんだ焦りを敏感に感じ取ったのか、余裕を取り戻したタイガが吼える
と同時に、真鬼王は赤い突風と化してトロンに襲いかかる。
『くっ!』
 ガーネット程ではないにしても、その巨体から繰り出される攻撃はさっきとは比べもの
にならないほど速く、さすがにトロンも唸りをあげて叩き込まれる真鬼王の連打をかわす
だけで精一杯だった。
 おそらくタイガの使う<雷舞>は、トロンが狐姫との戦いでみせた自身のリミッターを
一時的に解除するタイプのスキルなんだろう。その攻撃はまさに目にも留まらぬ速さで
舞っているように見えた。
 あたしはタイガの猛攻をかろうじて防ぐトロンを見ながら、これだけ接戦になってしま
うと下手にアドバイスをしようものなら、かえってトロンの集中力をみだしてしまうことが
わかっているだけに、何もできない自分に臍を噛む思いだった。
 嵐のような真鬼王の乱打を捌く度にソウルテイカーから火花が上がり、その都度、漆黒
の装甲が無残に削り取られていく。
 このままでは一方的にトロンが消耗するだけであり、なんとかこの場を切り抜ける方法
はないものかと普段使わない頭をフル回転させていたあたしは、トロンが真鬼王の猛功を
受けながら、チラチラとある一点に視線を向けているのに気がついた。
「ん? あれってマンション……」
 そう、トロンはタイガの背後にあるマンションらしい建物に、ううん、どうやらその屋上に
視線を向けているようだった。
 だが、その行為はタイガレベルの実力者を前に無謀な行為としか言えず、あたしがその
事を注意しようとしたがタイガはその一瞬の隙を見逃さず、真鬼王の放った拳がトロンに
直撃する。咄嗟に両腕を交差させダメージを軽減させるが、衝撃そのものまでは消すこと
ができず、ものすごい勢いで背後のビルに叩きつけられてしまう。
『がはっ!』
「トロンッ!」
 ビルの壁面に身体の中ほどまでめり込ませ、トロンはようやくその動きを止めた。
『へっ! これで勝負ありだな。どうする? 降参するか?』
 苦痛にうめきながらトロンは顔をあげる。その動きに合わせて、無残にヒビの入った壁
からパラパラとコンクリートの破片がトロンの頭上に降り注ぐ。
 だがトロンは気にした素振りもみせず、タイガを真正面から睨みつけると、全身を襲う
痛みに耐えながらも不敵な笑みを浮かべた。
『くっ、そうだね……キミが三遍回って『にゃ~あ』と鳴いてくれたら考えてもいいかな?』
『……それが答えか?』
 どこまでも不遜な態度をみせるトロンに、さっきまでとは打って変わって静かな口調で
で尋ねるタイガ。
 そのタイガの燃えるような瞳から目を逸らすことなく、トロンは力強くうなずく。
 タイガはわずかに目を細めると、いきなりトロンの顔面めがけて真鬼王の拳を叩き込ん
だ。
 だが真鬼王の一撃は、陽炎のようにゆらめいたトロンの身体をすり抜けると、背後の壁
に巨大な穴を開け、ようやくその動きを止める。
 呆然としたまま、眼前から薄笑いを浮かべたままスッと消えていくトロンの姿が残像だ
と気づくと、タイガの表情が驚愕に彩られる。
『どうかな、ボクの<アクセル・ハート>。 気に入って……もらえたかな?』
『なっ!?』
 いきなり背後で聞こえたトロンの声に、肘までめり込んだ真鬼王の腕を引き抜きながら
タイガが慌てて振り返ると、背後に金色の瞳で自分を見つめるトロンがたたずんでいた。
 その表情が苦痛に歪んでいるのは、いままでのダメージプラス、たったいま使ったスキ
ルの反動のせいだろう。タイガの隙を突き、背後から襲いかかる絶好のチャンスにもかか
わらず、トロンが動かないのは狐姫との戦いの時と同様に、全身を襲う激痛に身動きでな
い状態なのだろう。
『こ、この野郎───ッ!!』
 おそらくタイガはトロンの現状に気づいていなかっただろう。けど、己の内に生じた恐
怖を怒りに変えて放った真鬼王の蹴りは、ノーガード状態のトロンの腹部に吸い込まれる
ように命中すると、そのままトロンを空高く蹴り上げた。
 真鬼王の出力がどれぐらいあるのかわからなかったけど、トロンは三階建てのマンショ
ンの屋上にある貯水タンクに激突してようやくその上昇を止めた。
「トロンッ!」
 インカムを投げ捨て立ち上がったあたしは、声の限りに叫んでいたが、トロンはあたし
の声になんの反応もみせずピクリとも動かない。
 やがてタンクにめり込んだままだったトロンが、静かに倒れこむようにマンションの屋
上に落下してその姿が見えなくなる。
「そ、そんな……」
 愕然としたまま立ち尽くすあたしの耳に、タイガのマスターの声がかすかに聞こえた。
 
                   勝負はついたな……と。
 
 

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「トルエノ&ヴィント」

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□ 名称
  トルエノ(画像左)。ヴィント(同じく右)。

□ タイプ
  ウェルクストラ

□ スキル
  なし

□ 専用武装
  名称なし


□ 解説
つねにペアで行動し、ドル・ドナに影のように付き従うウェルクストラ。

<ナイン>のメンバーとして認められてはいるが、それはドル・ドナから片時も離れることなく行動するために与えられたものであり、当の本人たちは<ナイン>という名にとりたてなんの感慨もいだいてはいないようである。

トルエノたちは、ドル・ドナの警護こそが唯一かつ至上の使命と考えており、そのためには自身がどのような目に合おうともいっこうに気にすることが無い。

高性能のケルヴィムを擁する、ドル・ドナの護衛を主任務とするためにトルエノとヴィントに求められたものは、ウェルクストラという神姫の性能を超えたものであった。
そのためにドル・ドナが彼女たちに求めたものは、ただ一つのことしかなかった。
すなわち、トルエノには“攻撃”を、ヴィントには“防御”を。
そのために、二人に与えられた武装も、単一の機能に特化したものだった。

また、与えられた任務を完ぺきに遂行するために、神姫にとって最大の特徴である感情をつかさどるプログラムを最小限残しデリートし、代わりに戦闘系のプログラムと入れ替えるなど大幅な改造を施されている。

これら改造のため、トルエノとヴィントには感情の起伏というものがほとんど表面に出ることが無くなってしまう。

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その瞳からは一切の光が消え、ただの人形のように己に課された任務を遂行するトルエノとヴィント。
彼女たちが、己の身も顧みずドル・ドナに尽くす理由……それは、単に二人に与えられた“プログラム”に従っているからなのか? 
あるいは、その胸の奥わずかに残された己の“心”ゆえにか?

その真実を知る者は、だれ一人いない……。






「トルエノ&ヴィント専用武装」

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□解説
ドル・ドナに命じられ、彼女のオーナーが特注であつらえた武装。

完成当初は「オクトバ」と呼ばれていたが、この名をドル・ドナが嫌いその呼び方を禁じる。だが、その後新しい呼び名をつけるわけでもなく、トルエノとヴィントもそのことには一切触れないため、彼女たちの武装は名無しのまま現在に至っている。

オクトバは通常の武装パーツと違い、神姫の上半身をすっぽりと覆う特殊な装着法を採用している。

パワードスーツを彷彿とさせる外観は愛嬌すら感じさせるが、金に糸目をつけず作り上げたため、見た目とは裏腹に高い性能を有している。
オクトバは二体作られ、後にトルエノとヴィント用武装としてカスタム化された。




「トルエノ専用武装」

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□搭載武器

〇六連装ビームガンx1

〇大口径粒子砲x1


□機体解説
オクトバをベースに改造を施された、トルエノ専用の武装。
トルエノに求められたものは、ドル・ドナに仇なす者を貫く“矛”としての能力。
そのために、トルエノは火器管制用のプログラムを大幅に強化されており、彼女の武装もそれにあわせて強力なものを装備している。


「六連装ビームガン」
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トルエノ用武装の主力武器。
高出力のビーム砲を六門束ねたもの。ほんらいなら、神姫本体やその武装に搭載されたジェネレーターでは同時使用など出力的に不可能だが、ビームガンが接続された左腕内部に大型のジェネレーターを内蔵しており、武装本体に一切の負荷をかけずにガトリング砲のようにビームを連射することが可能である。


「大口径粒子砲」
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取り回しと威力を増すために、粒子加速帯を内蔵した砲身が後方に向かって張り出すという変わった形状をした火器。バズーカ砲のように肩がけして使用する。
六連装ビームガンとは対照的に、速射性を犠牲にし一撃の破壊力を追及した大型砲。

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通常モードの他に、砲身を前方にスライドさせることによって、さらに威力を増したギガバーストモードとして使用できる。

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その威力は、ケルヴィムの「ジャッジメント」を凌ぐほどだが、銃本体に過大な負荷がかかるため、実質的に一度しか使用できない。

その特異な形状のため、空中での高速戦闘などは苦手とするトルエノの専用武装だが、もとからの装甲の厚さと、機体表面に施された対ビームコーティングにより強固な防御力を有し、相手の攻撃をものともせずに戦闘を継続することができる。



「ヴィント専用武装」

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□搭載武器
※なし 
(ヴィントの武装はその性格上、火器の類を搭載しておらず、下記の特殊兵装を装備している。)

〇高出力フィールド発生器x1

〇シールドポッドx6


□機体解説
ヴィントの専用武装もオクトバを改装したものであり、基本的にはトルエノのものと同じ形状をしている。
ただ、ヴィントに求められたものは、不浄なる攻撃からドル・ドナを守る“盾”としての能力であり、彼女の武装は防御系の特殊兵装に置き換えられている。
また、ヴィントは演算処理能力が飛躍的に向上しており、つねに相手の攻撃パターンを的確に判断し、これに対処することができる。


「高出力フィールド発生器」
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右腕に搭載された、大型のフィールド発生器。
トルエノの武装同様、腕部に内蔵されたジェネレーターからエネルギーを得ており、強大なフィールドを発生させることができる。

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フィールドは、全身をくまなく覆うほど展開させることができるが、収束させることによって、より強固な盾として使うこともできる。


「シールドポッド」
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シールドポッド。六基搭載され、普段は専用ラック内に収納されており、ヴィントによって遠隔操作される。

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腕部のものとは比べ物にならないが、シールドポッドは機体前部にフィールドを発生させることができ、小型ゆえの利点を生かし、高速で移動し敵の攻撃を受けることができる。

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ヴィントの武装は、トルエノ用の武装同様、高い防御力をほこるが、加えて上記の特殊兵装を装備しているため、生半な攻撃では傷一つつけることができない。






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その自尊心の高ゆえに、ついにトルエノとヴィントを率いセラフに牙をむくドル・ドナ。
今、<ナイン>を二分する死闘の幕が切って落とされる……。









はい、今回は一度に二人分の紹介となってしまったため、いつになく長文となってしまいました。
ここまでお付き合いいただいた方、お疲れ様でした(ぺこり)。

ドル・ドナに付き従う従者、トルエノとヴィントがようやく完成です。

製作開始時は、せめて瞳の色を変え、専用武装も二人の瞳の色に塗り分けて個性を出そうと思っていましたが、どうせなら徹底的に没個性にした方が雰囲気が出るかと思い武装の配色も同じにし、トルエノたちの瞳も感情のない人形っぽく塗ってみました。

ちなみに、記事ではトルエノは画像左とか書いていますが、じっさいのところ私にも二人の区別はつきません(笑)。

ハッチの裏側を塗り忘れたり、ASUR・Aさんのアイディアであるドル・ドナたち三人専用のマークも、どうもピンとくるデカールがなかっため今回は間に合わず、少し見切り発車のような掲載と相成りました(汗)。


さて、ようやくナインのメンバーも、残すところあと一人となりました。
いよいよ、次は褐色天使さんの製作に取り掛かりたいと思います。

なんとか、年内中に完成させられるといいなぁ。



それでは、今回はここらへんでお開きにしたいと思います。

ではっ!
















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わんだふる神姫ライフ 第35話

『まあ…ン、わらわ程ではないにせよ…ムグ、あのタイガもなかなかの…ムフ…強者。せ
いぜい気をつけることじゃな…ン、甘い♪ ……トロンよ!』
『……あのさあ、アドバイスしてくれるのは嬉しいんだけど、食べるか喋るかどっちかに
したら? お行儀わるいよ、狐姫』
 コンソールの上にペタンと座り込み、自分の頭ほどもある棒つきのキャンディーを幸せ
そうに舐め続ける狐姫を、呆れたような顔でトロンがたしなめる。
 狐姫が夢中で舐めているこのキャンディーは、トロンがどうしても欲しいからと言って
DO ITに来る途中、コンビニで買ったものだった。
 もう桜庭さんとの約束の時間も迫っていてそのまま通り過ぎようとしたのだけど、『約束
だから!』とトロンは頑として譲らない。
 理由がわからず戸惑っていたが、狐姫の嬉しそうな顔を見て、以前狐姫とのバトルでト
ロンが狐姫にアメを買ってやると約束していたのをようやく思いだした。
「へ~、トロンおねえちゃんって、意外と面倒見がよかったんだ?」
『な、なに言ってんのさ! ボ、ボクはただ、約束を守っただけだよ!!』
 口に手を当て、うぷぷと笑いながらトロンをからかうと、珍しく狼狽したトロンはプイ
ッと横を向いてしまう。
 でも、あたしはちゃんと見てたんだけどね。顔をキャンディーでベタベタにしながら舐
め続ける狐姫を、苦笑しながら見つめていたトロンの瞳が柔和な光を宿してたのを……
『おい! そろそろ茶番はやめたらどうだ?』
 嘲笑と侮蔑をふくんだタイガの声に、あたしはハッとしながら対戦者の座るコンソール
に視線を移した。そこにはいつの間にかタイガのマスターが腰掛け、無言であたしたちを
見ていた。
 そしてタイガは、真紅の巨大な装備を纏い、転送されたバトルフィールドから射るよう
な視線であたしたちを睨みつけている。
 その時、無言でタイガの装備を見ていたトロンが、わずかに目を細めながらつぶやいた。
『あれは……真鬼王……』
 
                   わんだふる神姫ライフ
 
             第35話 「ソウルテイカー そのに」
 
「ちょっ、ちょっと待って! それって真鬼王でしょう?」
『へっ、少しはモノを知ってるみたいだな?』
 さも以外だという顔であたしを一瞥したタイガにカチンときたが、あたしが言いたい事
は他にあった。
「そんなことを聞いてるんじゃないわ! それってポイント違反じゃないの?」
 他の神姫センターなどではあまりみられないが、DO ITではローカルルールとして
規定のポイントを定めて戦う、ポイントバトルが一般的に行われていた。
 
 ポイントバトルとは、今回のように互いの基本装備にあまりにも差が生じるのを防ぐた
め事前にポイントを定め、規定のポイント内で装備を整えバトルをするというルールだっ
た。
 少しぐらいのポイントの差だったら、事前に相談してもらえばあたしだってこんな目くじ
らを立てるつもりはなかったけど、目の前のタイガの装備する真鬼王はそんな悠長な事
を言っていられる存在ではなかった。
 真鬼王は、寅型の神姫ティグリースと、彼女と同時期に発売された丑型の神姫ウィトゥ
ルースの武装パーツを合体させたものだった。
 当然のことながら、そのパワーも装甲も他の追随を許さず、彼女たちが発売されてから
随分とたつというのに、その総合的な性能はいまだにトップクラスだった。
 トロンの倍はあろうかと思える巨体は圧倒的であり、その真紅の巨神の放つ威圧感は、
無言で辺りを包み込んでいた。
「では、事後承諾という形で認めてもらえるかな?」
 倦怠感を纏わせながら、億劫そうに話しかけてくるタイガのマスターを、あたしは睨み
つける。
「そ、そんな単純な話じゃありません! だいたいトロンとタイガのポイントの差は、ど
うみたって倍はあるじゃないですか? これじゃあ……」
『まあ、いいんじゃない?』
「トロン!?」
 あたしたちの会話にいきなり割り込んできたトロンにも驚いたけど、その話の内容は、
あたしを唖然とさせるものだった。
『せめて、ポイントでこれぐらいのハンデをあげなきゃ勝負にならないよ』
 モニター越しに、ニヤニヤしながらトロンがそうつぶやくと、キョトンとしていたタイガの
顔がみるみる真っ赤になっていく。
「そちらの神姫は承諾してくれたようだが、君はどうする?」
 あたしが黙っていると、タイガのマスターはさらに話を続ける。
「……それに知りたくはないかい? 何故この店の神姫やオーナーたちが君たちとの対戦
を拒むのか、その理由をね」
 抑揚のない声で淡々と話を続けるタイガのマスターの話が、思いもしない方向に向いた
ことにあたしは眉をひそめる。
「それってどうゆうことなんですか?」
「君の神姫が勝ったら全てを話そう……」
 あたしの問いに短く答えただけで、それ以上話すのを止めてしまったタイガのマスター
に困惑してしまったけど、確かにこの店に集まる神姫たちがトロンとの対戦に躊躇するの
は何故か? それは、あたしもずっと疑問に思っていたことだった。
 どうしたものかとトロンに視線を向けると、トロンは真正面からあたしの目を見据え、
小さくうなずいた。あたしはトロンも同じ思いだということに気づき、うなずき返すと、
タイガのマスターに視線を戻した。
「わかりました。この条件でかまいません!」
 あたしの返答に、タイガのマスターは満足そうにうなずいた。
 
                         ※
 
『ふん。小細工好きなお前のために選んだやったバトルステージだ。感謝しろよ?』
『……それはどうも、お心遣い痛み入ります』
 いかにも人を小馬鹿にしたようなタイガの口調を気にした素振りもみせず、慇懃無礼に
答えながらトロンは辺りを見回している。
 タイガが選んだフィールドは市街地。
 おそらくその装備から見ても、タイガは距離を詰めての戦いを得意としているのだろう。
けど、このフィールドはトロンにとっても大きなアドバンテージになるはずだった。
『さあてと……そろそろ始めるかい?』
『そうだね。っと、そうだ!』
 唇をなめながらタイガが腰をおとし、トロンに襲いかかろうとすると、いきなりトロンは
ポンと手を叩き、素っ頓狂な声をあげる。
『ここまで至れり尽くせりじゃあキミに悪いから、ボクからもキミのためになる話をひと
つしてあげるよ』
『ああ?』
 いきなり出鼻をくじかれたタイガが、不満そうに声をあげ、眉をしかめる。
『今日の“ボクの愛の星占い”によると、仕事、恋愛、金運、どれひとつとってもキミの運
勢は最悪だね。なんか水難の相もでてるし。ほんとうならさっさと家に帰って布団でもか
ぶって寝てろ、って言いたいところなんだけどそうもいかないしねぇ……そこでひとつアド
バイスをしてあげるよ』
『手前ぇ、いいかげんに……』
『災いはっ!』
 いつまでもダラダラと続くトロンの話に我慢の限界がきたのか、唸るように呟きトロン
に襲いかかろうとしたタイガだったが、いきなり変わったトロンの口調に身体を震わせ、
その動きを止めてしまう。
『……汝の災いは……天より舞い降りるであろう!』
 いきなり天空めがけて指を突き立て、両目を閉じながら呟くその姿は、これから起こる
災厄を罪なき民衆に伝える偉大な(偽)預言者にも見えた。
 荘厳な響きを含んだトロンの声音を耳にし、身動きひとつできなくなっていたタイガに、
トロンはゆっくりとした動作で、天を指し示していた指をタイガへと向ける。
『汝……ゆめゆめ油断を怠らぬべし! あっ、ちなみに今日のラッキーカラーはピンク。
ラッキーアイテムは洗濯ばさみなんだけど……ちゃんと持ってる?』
 急にいつもの口調に戻ったトロンは、軽くウィンクすると何事もなかったようにタイガ
に話しかける。呆気にとられていたタイガが我に返ると、怒りのためか全身を震わせ始め
る。
 真鬼王のブースターとタイガが、同時に咆哮をあげた。
『ざけんじゃね─────ッ!』
「は、疾い!?」
 真鬼王のデーターは頭に入ってるつもりだったけど、あたしの予想をはるかに超えるス
ピードでタイガは一挙にトロンとの距離を詰める。
 だが、タイガとの距離が目と鼻の先まで縮まり、真鬼王がトロンの胴体ほどもある巨腕
を振り上げても、トロンは両腕を組み突っ立ったままだった。
 トロンの態度に怪訝な表情を浮かべるタイガだったけど、いまさら繰り出された攻撃は
止まらず、そのまま真鬼王の剛腕は薄笑いを浮かべるトロンの身体を無常に貫いたように
……見えた。
『なっ?』
 真鬼王の腕に伝わる予想外の衝撃に、勝利を確信したタイガの表情が凍りつく。
 トロンの胸元めがけて繰り出された一撃は、トロンではなく背後のビルの壁面に深々と
食い込んでいたからだった。
 「あれって“一重”?」
 視線の先で、真鬼王の巨腕に自らの手をそっと当て、真正面からタイガを見つめ微笑を
浮かべるトロンの姿が目に入った。
 今の真鬼王の攻撃を捌いた動きは間違いなくあたしがトロンに教えた“一重”だった。
 
でも……
 
『手前ぇ、いま何をやりやがった?』
 自身の身の内に生じた疑問を怒りで覆い尽くすように、壁にめり込んだ真鬼王の腕を引
き抜き抜くと、タイガは唸るような口調でトロンを睨みつける。
『はて? なんのことやら……』
 視線を逸らしながら惚けた口調で白を切るトロンの横を、コンクリートの破片を纏わり
つかせながら真鬼王の腕がゆっくりと通り過ぎる。
 微細なコンクリートの粉塵や埃に紛れて、真鬼王の腕から手を離したトロンの掌から一
条の微かな煙が立ち昇ったのに、あたしは気づかなかった。
『この野郎!』
 タイガはその巨体を数歩後退させ、トロンとの間合いを取りながら悪態をつくと、猛然
とトロンめがけて突っ込み、巨大な腕をトロンめがけて振り下ろした。
 だが、必殺の闘志を込めた真紅の戦斧のような一撃は、虚しくトロンの足元を抉っただ
けだった。
『何っ?』
 今度こそ覆いようのない動揺をその顔に色濃く浮かべ、タイガが顔を上げると、目の前
にトロンが涼やかな笑みを浮かべている。
金色の瞳でタイガを見つめていたトロンは、大きく屈んだために自分の背の高さになっ
たタイガの額の前にスッと右手を持ち上げた。
 驚きのために硬直してしまったタイガは、ただその動きを目で追っていたが、トロンは
気にした様子もみせず右手の中指でタイガの額を軽く弾いた。
『……!?……』
 思いもしない行動にタイガが気の抜けた表情を浮かべるが、トロンは二コリと微笑むと、
タイガの耳元に顔を近づけ囁くように話しかけた。
『痛かった?』
 心の底から労わる様な口調で尋ねてくるトロンに、我に返ったタイガの顔がみるみる赤
くなっていく。自信を持って繰り出した攻撃がかわされたのみならず、デコピンという予想
外の反撃を受けたタイガの屈辱は計り知れないものだったのだろう。
 憤怒の形相を浮かべ、折れ砕けんばかりの勢いで歯を噛み締めるタイガの口元から漏れ
る歯軋りの音が、あたしにも聞こえてくるようだった。
「……落ち着くんだ、タイガ……」
 我を忘れてトロンに襲いかかりそうになったタイガだったが、ゾッとするほど冷静な声
で話しかけてくる自分のマスターの声に、ハッとしながら振り返る。
『で、でもよう……』
 不満そうに口答えするタイガだったが、ただでさえ細い目を針のように細めて自分を見
る自身のマスターの姿に、すぐに口籠ってしまう。
「……素直に認めよう。あのストラーフの実力を……桜庭から聞いた話しとは大違いだ。
あの武装パーツの効果なのか?」
 その切れ長の瞳に妖しい光を宿しながら、微かなつぶやきを漏らすタイガのマスターの
口調にわずかな感嘆の響きがこもっている。そしてあたしは、さっき感じた疑問を思い出
していた。
 それは、トロンがタイガの初撃をかわした時に感じていたことだった。確かにトロン自
身もライドシステムを使った特訓や、数々の実戦を潜り抜けてきたために、初めてレステ
ィーアと戦ったころとは比べ物にならないほどに成長していた。
 でも、いかに経験を積もうとも、以前の装備のままだったらあのタイガの一撃を捌くの
は難しかったろう。どれほど己の技量をあげようと、おのずとその限界は決まってしまう
のだから。極論を言ってしまえば、あたしだって爆走してくるバイクを“一重”で捌くの
は無理って事。それぐらいさっきの真鬼王の攻撃は凄まじかった。
『お褒めに預かり恐悦至極だね。でも、そっちだってタダの真鬼王ってわけじゃないよね?
さっきの攻撃、正直肝が冷えたよ』
 あいかわらずの軽い口調のなかにも、どこか真摯さを感じるトロンの声にタイガのマス
ターは能面のような顔を微かに綻ばせる。
「ほう、よく気づいたな。……確かにこの真鬼王はファストオーガへの変形機構をオミッ
トした分、出力や機動性を向上させたカスタムタイプでね……」
 トロンとタイガのマスターの会話を黙って聞いていたあたしは、強化された真鬼王の力
に唖然としつつも、その攻撃をも軽くいなしたトロンにそれ以上の驚きを感じていた。
 以前のトロンの実力だけでは、やはりあのカスタム化された真鬼王の攻撃を凌ぐのは難
しかったろう。ならばあたしが思いつく結論はひとつだけだった。
『お前はそれだけの力を持ちながら、何故あいつのために戦う?』
 それまで会話にも加わらず、ただ黙って何かに耐えるような様子だったタイガが、怒り
もあらわに真鬼王の巨大な指で、ある一点を指し示した。
 
トロンではなく、あたしを……
 

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「武装神姫」第5話を見たのですが……

……え~、前回の記事で、「武装神姫」第5話の予想をエラそうにしてみたのですが……。


すみません。予想、見事なくらいに 全部外れてました 。

いやホント、私があさはかでした! 穴があったら入りたいです(汗)。

まさか、アンたちが置き去りにされる展開になるとは……。

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置き去りにされ、唖然とするアンたち。
余談ですがこのハムスター、いい味出してると思います。

そして、一人異郷の地で愕然とするマスター理人くん。

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こんなガラクタと、アンたちを間違えるとは……彼には、是非とも猛省していただきたいものです!


けっきょくこの先の展開は、アンたち四人が理人のいる沖縄目指して旅をするという神姫版「母(理人)をたずねて三千里」状態。

今回は、ほとんどバトルシーンもなく、ゲストのゼルノグラード、ゼルルっちの活躍もあまりないというありさま。
なによりクララがまったく出てこないなど、少々物足りなさを感じました。

しかし、予告を見ると次回はけっこう派手そうな予感が……。

次週、「武装神姫」第6話には期待しております!













とまあ、私の益体もない感想はこのぐらいにしておきまして、立体物の方のその後を。

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トルエノ&ヴィントの専用武装、ようやく(ほぼ)完成しました。

「なんで、後ろ向きなん?」と思われる方もいるかもしれませんが、別に焦らしているわけではありません。
見せたくとも見せられない事情があるのです。

実は、製作日記でいただいたコメントに触発されて、スジ彫りにチャレンジしてみたのですが……例によって例の如く失敗しました(アハハハハハッ!)。

さいわい、傷自体は浅いので、修正自体は容易な感じです。
あまりスジ彫りなどやったことのない私が、曲面だらけのこの武装にスジ彫りをしようしたのは少し無謀だったかもしれません。
とりあえず、また同じ失敗を繰り返しそうなので、スジ彫り自体はここまでにしておいて、もとからあるモールドへのスミ入れでメリハリをつけようと作業中です。



そういえば、余談なのですが先日ボーク〇で、こんな物を見かけ思わず購入してしまいました。

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スミ入れ専用に調合された、エナメル塗料。
「それぐらい、おのれで調合せいッ!」とかいう天の声が聞こえそうですが、ズボラな私としては、この利便性は捨てがたい。今回の作業でも重宝しています。

ただ、一点気になることがあります。
店頭で手に取った時に薄々気づいていたのですが、このスミ入れ塗料の入った容器がけっこうデカい!

どれぐらい大きいかと申しますと……。

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画像中央に見えるのは、スタンダードなエナメル溶剤(内容量10ml也)。
ちなみに、スミ入れ塗料の内容量は40mlもあります。

冷静に考えてみると、一生かかっても使い切れそうにありません……

こうなったら、墓場まで持っていくしかないようです(笑)。

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「武装神姫」 第4話のクララが輝いて見えた件について

いや~、「武装神姫」第4話は、いつになくおもしろかったです。

レーネとアイネス、そしてヒナが絡んだはちゃめちゃなレースシーン。
そして、レースとは関係のないところで、ひたすら「わらしべ長者」的な行動で、最後は一人で点を稼いだアン(笑)。
レースに絡めながら行われたバトルも迫力があり、満足のいく話でした!

でも、今回の隠れた主役は、やはりクララではないでしょうか。
毎度毎度、「世界大会準優勝」の肩書が、まゆつば物に思えるほどのヘタレっぷり……。
マリー・滝川・セレスにも「噛ませ犬」呼ばわりされていた彼女ですが、ようやく日の目をみました。

ええ、今回の彼女は見事に輝いていました。

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こんな風に。
ここに至るまでの経緯は滑稽でしたが……。

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ですが、この笑顔で、私に中のクララ株が一挙に高騰しました。

今頃は、きっと彼女のマスターと共に沖縄で羽を伸ばしていることでしょう。
そして、アンたちと合流したのち、第5話のゲスト神姫ゼノグラードにボコられる役回りになるのでしょうね(笑)。



さて、なにゆえ私が今頃になって、先週の話で一人盛り上がっているのかと申しますと……。

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コレが来るのを待っていたからだったりします。
すっかりクララの笑顔にやられてしまい、いきおいあまってコナスタで購入してしまいました。

でも後悔はしない!

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だって、エウ子には仲間がいるんだもんっ!

ついでと言ってはなんですが、どうせ頼むのならと、前から欲しかった砲子の色違いも二人頼んでしまいました(笑)。


それにしても、ひさしぶりにコナスタをのぞいてみましたが、あいかわらずの見事な過疎っぷり……。
ざっと目を通しただけですが、げんざい在庫がある神姫は、わずかな数種類のみ!

エウ子を買えたのはラッキーでしたが、現状を考えると複雑な気持ちにもなりました。


この先どういう展開になるかは分かりませんが、コナミさんに期待するしかないようです……。

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