神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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武装神姫 クロスロード 第8話

     
               武装神姫 クロスロード

           第8話 「福引きラプソディー」 



        あまねく大宇宙のパワーが、全身にみなぎる。

『……ねェ』

      あたしは今、この大いなる宇宙と完全に一つになった。

『……ねェってばァ』

     あとは大いなる意志に身をゆだね、この運命の扉を開くのみ!

『……おイ、聞いてんのカ? 洗濯板!』
「何ぃ! いま、なんつっ……あっ!?」
 怒りにまかせて、あたしは手にしていたハンドルを力いっぱい回してしまった。
 後悔の念が頭をよぎるが、もう手遅れだった。目の前を猛スピードで回転していた多角
形の箱がゆっくりと動きを止め、目にも鮮やかな深紅の玉が受け皿へと落下していく。
「また赤ですね。 はい、残念賞です!」
 目の前で、極彩色のハッピを着たお姉さんが、小憎たらしいほどの満面の笑みを浮かべ
ながらポケットテッシュを差し出してきた。

                           ※

「トロンのバカぁ~! なんてことすんのよ! あれが最後の一枚だったのよ?」
 ここは、抽選会場から少し離れた児童公園。
 あたしはベンチに倒れ伏しながら、目の前の悪魔に罵声を浴びせる。
『リンがかってに馬鹿力で回すからだヨ。ボクのせいじゃないネ』
 あたしは恨みがましい視線を目の前に向けるが、トロンの馬鹿はまるで意に介さん、と
いわんばかりの涼しい顔で平然と答える。
 近所の商店街でもようされた福引きに、なんであたしがこんなに固執するのかというと、
原因はその賞品にあった。な、なんと一等の賞品が、アーンヴァルタイプの神姫だからだ
ったのだ。
 トロンたちストラーフと対をなす天使型の神姫、アーンヴァル。もっとも初期の神姫として
知られる彼女たちだが、その後、無数の新型神姫が現れた今でも、強化タイプや黒姫
やキャロのようなMK・2タイプが発売されるなど、息の長い存在だった。
 さすがにスペック的には後発の神姫たちに劣るところもあるが、アーンヴァルやストラ
ーフ自体の人気はいまだに高く、彼女たちは神姫を代表する存在ともいえた。
 それと、これはトロンのヤツには口が裂けても言えないけれど、過去の体験からあたし
が欲しかった神姫は、実はアーンヴァルだったりした。
 もっとも、天使型は常に人気が高く品薄状態であり、けっきょく諸般の事情であたしが
購入したのは“本物”の悪魔型の神姫だったというわけだ。
 それが、こうして憧れの神姫をロハで手に入れるチャンスがめぐってきたというのに。

                そ、それを、このバカ悪魔が……

『な、なんだヨ、そんなにおっかない顔しちゃってサ?』
 怒りの形相も凄まじく無言で睨み続けるあたしに、さすがのトロンも顔色が青くなって
いく。
「……あたしは生まれつき、こういう顔をしてんのよ!」


             コ・ノ・ウ・ラ・ミ・ハ・ラ・サ・デ・オ・ク・モ・ノ・カ!


 心の中で何度も何度も呪詛の言葉をつぶやき続けるあたしを見上げながら、トロンが
胸をなで下ろす。
『な~んダ。ボクてっきリ、リンがボクのこと呪殺しようとしてるのかと思っちゃったヨ』

               いい勘してるじゃない、ビンゴよ!

 緊張からか、しきりに紙切れでひたいに流れる汗をぬぐうトロン。ふと、あたしの視線
が一点で止まる。
「ちょ、ちょっとトロン……その紙って」
 あたしが震える指先で指し示す、くしゃくしゃになった紙。これってひょっとして──
福引きの抽選券?
『あア、コレ? さっきリンが落としたかラ、ボクが拾っておい……GUEEE!?』
あたしはトロンごと抽選券を鷲掴みにすると、きびすを返し全力で走り始めた。

               神よ! この幸運に感謝します!!

                           ※

「ふ、ふ、福引き一回くださいっ!!」
 肺に残った空気を総動員しながら一声叫ぶと、ぐったりとしたトロンごと券を差し出す。
係りのお姉さんが、あたしの意味不明な言動と剣幕に恐れおののきながらも無言でうな
ずいている。
「いい、トロン! 今度あたしの邪魔したらただじゃおかないわよ?」
 念のためにトロンに釘を刺す。痙攣を起こしながら台の上に横たわるトロン。その口か
ら白い靄のようなモノが立ち登り、切れ切れに答える。  
『……そ、そんな余力、ないっテ……』

                 よし! これで後顧の憂い無し!!

 あたしは満足そうにうなずくと、静かに目を閉じ、精神を集中させ始める。

                           ※

『……ねェ』

「…………」

『……ねェってばァ』

「…………」

『……おイ、聞いてんのカ? 関東平野!』

 あたしはこの瞬間、無の境地に達したのかもしれない。 まるで意識することなく渾身
の力を込めた拳が、逃げる間も与えずトロンの頭上に振り下ろされたのだ。

「誰が関東平野だ、バカ悪魔ッ!」
 あたしの魂の反論は、その後に発せられた。

「あれだけ人の邪魔するなって言ったでしょう!」
 台に半ばめり込んだ拳に向かって、あたしは声を荒げた。
『だ、だっテ、もう……三十分になるの…二、リンてバ……何やってんの……サ』
「へ?」
 あたしは、キョトンとしながら拳の下に見える手足から顔を上げると、目の前の困り果
てた表情のお姉さんの頭上にある古ぼけた時計に目をやった。
 ほんとに三十分が過ぎていた。
「す、すみません。いますぐに……」
『はイ。コレ、リンにあげるヨ』
 慌てて抽選用のガラガラに駆け寄ろうとすると、薄っぺらくなったトロンが、風になび
かれながらポケットテッシュを差し出してきた。
「な、何よいきなり?」
 眉を寄せながら受け取ったそれは、忘れもしないデザインだった。

 有り体にゆうと、肩から下げたバッグから大量にはみ出ているテッシュとおんなじだ。

「ト、トロン。まさかコレって……」
『うン。リンの代わり二、ボクがクジを引いてあげといたヨ』
 一片の曇りもなく、満面の笑みで答えるトロン。あたしは、みるみる全身がわななきだ
すのを押さえることができなかった。
「オー マイ ガッ! 何てことするのよ、このバカ悪魔ッ!」
『リンがいつまでもちんたらしてるのが悪いんだロ? アレ回すの大変だったんだゾ!』
 頭にできた特大のこぶをさすりながらこっちを睨みつけるトロンに、あたしも負けずに
言い返す。
「誰も頼んでないわよッ!」

 そりゃあ、クジ運の悪いあたしの事だ。実際一等がとれたかも怪しいものだが、まさか
こんな形で夢が打ち砕かれるなんて……

「ほんとにもう、最っ低!」
 ひざから力が抜け、あたしはその場にぺたんと座り込んでしまった。
「はいっ、お客様。これをどうぞ!」
「?」
 いきなり目の前に大きな箱が差し出されるが、悔し涙のせいで霞んでよく見えなかった。
何度も目をこすり、手渡された箱をじっと見つめる。

     白地のパッケージに描かれたメカニカルな天使の姿……これってまさか?

「はい、一等賞がでました! おめでとうございま~~~~~す」
「???????????」  
 係りのお姉さんが、手にした鐘を盛大に打ち鳴らす。
 あたしはその音色を、わけがわからず惚けたよう顔で聞ていた。
「実はですね。お客様がブツブツとつぶやきながら精神統一をしている間に、お連れの神
姫が見事一等賞を引き当てたんです!」
「は?」
 いまだに事態が飲み込めず、あたしは台の上でふんぞり返っているトロンを見上げる。
「な、なんであんたが抽選券を持ってるの?」
『さっき券を拾ったって言っただロ。もう忘れちゃったノ?』
「だってあれって一枚じゃ……」
『ボクは一枚だけなんテ、一言も言ってないヨ?』
「…………」
 プルプルと震える指の先で、トロンが会心の笑みを浮かべる。
『ふふふフ、リン。ボクのこと崇め奉ってもいいんだヨ?』
 両手で箱を抱きしめたまま、かすかに身体を震わせるあたしを見て、得意満面であたし
を見下ろすトロン。
「……あ」
『ン? 何? 聞こえないヨ?』
 聞き取れないほどの小声でつぶやくあたしに、耳に手を当てトロンは続きを促す。
「あ……あんたが話をややこしくしてんでしょう? バカッ!!」
『うワッ!?』

 あたしの剣幕に驚いたのか、はたまたトロンに向けた罵声が音速を超えたのか、一反〇
綿のようにひらひらと舞いながらトロンの姿は台の後ろへと消えてしまった。

 そのせいで、トロンにはきっと届かなかっただろう。
消え入りそうな声でつぶやいた、あたしの「ありがとう」の一言は……

                           ◆
『店長さん。こちらはすべて終わりました』
 リベルターが、パソコンの陰から顔だけ出して作業の終了を告げる。
「ご苦労さん。じゃあ、そろそろ私たちも引き上げるとしよう」
 夜も更け、人気の絶えた店のなかに私の声が響きわたる。バイトの子たちも全員帰宅し
て、いつもは手狭に感じる店内がやけに広く見えた。
 半分降りていたシャッターのスイッチを入れると、私は肩をもみほぐしながらカウンター
へと歩き出すが、その歩みは数歩で止まってしまった。
 店内に響きわたる警報。リベルターが慌ててパソコンをのぞき込む。
『店長さん! 正面入り口のシャッターに異常が発生したようです』
 驚きながらも背後のシャッターを注視すると、私の動きは硬直したように止まってしま
った。
『ゆ、ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ指ぃ!?』
 カメラアイをズームにしたのか、シャッターまでかなりの距離があるというのにリベル
ターはカウンターの上に立ち上がると、私の代わりに叫んでくれた。
 そう、地面すれすれまで降りたシャッターの隙間から十本の指がのぞいていたのだ。
 どう見てもこどものものと思われる細い指はしばらくうごめいていたが、いきなりシャ
ッターの縁を掴むと、力任せに持ち上げはじめた。
 軋むような異音をたて、少しずつ地面とシャッターとの隙間が開いていく。
「ぬおりゃぁぁあああああああああああああああッ!!」
 聞く者を凍り付かせるような雄叫びが、地を這うように響きわたる。
 あまりの光景に、声もなく立ち尽くす私とリベルターの目の前で、シャッターはじりじ
りと上昇していく。
 やがて四角く切り取られたような空間ができ、小柄な影が闇に浮かぶ。
「こ、こんな時間に、す、すみません。か、買いたいものがあるんです!」
「い、一ノ瀬……くん?」
 月の光に映し出された影が一ノ瀬くんの姿を形作っても、その血走った目のせいで私は
一歩も動くことができなかった。
                           ◆

 力を入れすぎてしまったのか、少し歪んでしまったシャッターを持ち上げたまま、あた
しと店長さんはしばらく声もなく見つめあったままだった。
 あたしを見つめる店長さんと、カウンターの上で身体を限界までえび反らせ口から泡を
吹いているリベルターを目にして、あたしはまたやりすぎてしまったことに気がついた。
 足下に置いた紙袋を指さし、新しい神姫を手に入れたこと。そして起動するために必要
な備品をまだそろえていなかったことを思いだし、慌ててここに訪れたことを説明したが
気まずい雰囲気は変わらない。

「あ、あの……すみませんでした店長さん」
 しゅんとうなだれるあたしを、リベルターを介抱していた店長さんが苦笑しながらなぐ
さめてくれた。
「ま、まあ、気にしなくてもいいさ。そういう一本気なところも一ノ瀬くんらしいしね」
 店長さんの言葉に複雑な気持ちになりながらも、目的の品を探すために店の奥へと歩を
進めた。
 一歩一歩踏みしめるごとに、あたしの胸は高鳴っていく。




        すぐに起こしてあげるから待っててね。あたしの天使A(仮)!

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武装神姫 クロスロード 第7話

      
                    武装神姫 クロスロード

               第7話  「隣、危機一髪ッ!!」

「はあ~~~~~~っ!」
『……どしたノ、リン?』
 あたしの特大のため息に、陳列棚によじ登り、商品を吟味していたトロンが怪訝な顔で
こっちを振り返る。ここはDO ITの店内。今日はトロンに必要な消耗品などの買い出しに
店を訪れていた。
「ん~。まあ、ちょっと、ね」
 トロンの問いに、あたしは気乗りのない返事を返す。
 あたしの心をブルーな気分にしている原因が、こっちの気持ちも知らず首をかしげる。
『リン。そんなにボクとねんごろになるのが嫌なノ?』
 とうの昔にあたしの悩みに気づいてたんだろう。トロンのやつは、あたしを見上げなが
ら嫌らしい笑いを浮かべている。
『ダイジョーブだよ、リン。いくら精神的にボクに慮辱されてモ、実際リンの身体は綺麗
なままなんだか、ブッ!』
 得意げにべらべらとしゃべり続けるトロンに、ラス・オブ・ゴッド的なあたしの拳が振
り下ろされる。
「あんたのそういうところが死ぬほど嫌なのよ! あんたとライドシステム使うぐらいな
らいっそ……」
「わたしとライドオンしましょうっ!!」
「へ? きゃああああぁ!?」
 怒りに身体を震わせ怒濤の追い打ちをかけようとしたあたしは、背中から猛烈な衝撃を
受け、そのまま床へと倒れ込んでしまった。
「ちょ、ちょっと美佐緒! なんのつもりよ!」
 床に押し倒されると同時に、あたしの身体は万力みたいな力を込めた腕に羽交い締めに
される。 

    わざわざ振り返らなくても、こんな非常識な真似をするヤツはひとりしかいない!

「せんぱい! わたしとひとつになりましょう? いますぐにっ!!」
 さすがにあたしに撃退され続け知恵をつけたのか、片腕であたしの動きを封じたまま、
残った手のしなやかな指先があたしの身体をまさぐり出す。なんとかふりほどこうとあが
くが、美佐緒の腕はピクリとも動かない。
「美佐緒! いい加減にしないと……や、やだ、あっ?」
 さかんに太もものあたりをまさぐっていた美佐緒の指が、スカートの中に忍び込んでく
る。まるで数匹の蛇に這い回れるような感覚に(い、いや、もちろんそんな体験したこと
ないし、イメージって意味でね?)あたしは不本意ながら声を上げてしまった。
『コラ、みさキチ! リンから離れロ~』
 必死に首を回すと、美佐緒の頭の上にトロンが乗っかり美佐緒の髪の毛を力いっぱい
引っ張っているが、両の瞳に妖しい光を宿した美佐緒はまったく気づかないみたいだ。
『リンの身体を好きにしていいのハ、ボクだけなんダ~』
「それは違うっ!」
 状況が状況だが、あたしは反射的にツッコんでいた。

          っていうか、これって“前門の狼、後門の虎”ってやつですか?

『ウ~、しょうがないナ~、もウ』
 なんかどっちに転んでもろくなことにならない気分になってきたが、ため息をひとつつ
くと、トロンの姿が美佐緒の頭の上から消えてしまった。
「あっ! ちょっとトロン、どこ行くのよ?」

            絶体絶命と言わんばかり状況に、このバカ悪魔!

 トロンの薄情ぶりに頭に血が上ったあたしは、全力で美佐緒を押し返そうとするが、そ
の都度、美佐緒の執拗な指使いに身体の力が抜けてしまう。
「せんぱい……かわいい」
 美佐緒は、唇を舐めながら喘ぐようにつぶやく。
「お、おねがい……美…佐緒。もう、やめ……」
 消え入りそうな声で嘆願するあたしを、美佐緒は頬を上気させながら見つめている。
「だぁめ! さぁ、そろそろフィニッシュですよ。覚悟はいいですか、せんぱい、って…
痛った─────ッ!?  
 勝ち誇ったようにあたしを見下ろす美佐緒の背後で、ズブッ、とかいう柔らかいものに
何かかがめり込むような音がしたとたん、美佐緒は弓のように身体を反らせる。
「!?」
 何が起きたのか全く理解できない状況だったけど、あたしは霞がかかった頭を二、三度
振って意識をはっきりさせると、硬直したままの美佐緒を押し退けるように巨体の下から
這いだした。
「…………」

            なんていったらいいんだろうか? 突き刺さっていた。

 スカートに覆われた美佐緒の豊満なお尻のど真ん中に、強化腕チーグルがズップリと肘
のあたりまでめり込んでいた。
 あんまり見たくなかったけど、チーグルをたどっていくとどこから調達してきたのか、珍しく
ストラーフの基本武装を身につけたトロンの姿が目に飛び込んできた。



     トロンは笑っていた。なおもチーグルを美佐緒のお尻にねじ込みながら……



               それはまさしく、悪魔の所業だった。

                          ※

「トロンの馬鹿! 花も恥じらう乙女になんてことするのよ!!」
 痙攣しながら悶絶していた美佐緒だが、しばらく放っておくと案の定復活し、自分のこ
とを棚に上げてお尻を押さえながらトロンに詰め寄った。 
『ふン。ちょっト“ピーッ”が広がっただけだロ? “ピーッ”がふたつにならなかっただけ
でモ、ボクに感謝してほしいもんだネ』
 鼻の穴をほじりながら加虐的な笑みを浮かべるトロンに、美佐緒は巣籠り前のリスのよ
うに頬をふくらませる。
「ひっどぉ~い! わたし、前も後ろも初めてはせんぱいに捧げるって決めてたのに!」
「いらんわ、ンなもんっ!!」

     乱れた着衣を整えながら、あたしは血を吐くような叫びとともにツッコんだ。

                           ※

『すべての原因は、拙者の監督ふゆき届け……拙者、腹を切ってお詫びするでござるッ!』
「だから止めなさいって!」
裂帛の気合いとともにお腹に突き立てようとした脇差しを、あたしは慌てて奪いとる。
「ガーネットがそんなに責任感じることなんてないでしょう?」
『ですが、それでは拙者の気が……』
 ガーネットは、目の端に涙を浮かべながらあたしを見上げていたが、やがてがっくりと
うなだれてしまう。
 人一倍責任感の強い彼女のことだ、その無念さも相当のものだったのだろう。かすかに
小さな身体を震わせるガーネット。


 でも、身に纏ったプリ〇ュアとかいうアニメキャラの衣装が、ガーネットの放つ悲壮感に
水を差しまくっていたことはあたし一人の胸にしまっておいた……


「ほら、それにあんな目にあったらさ、どうにも……」
『…………』
「あっ!」
 なんとか場を取り繕うとしたあたしの一言は、逆効果みたいだった。
 顔を朱に染めうつむいてしまったガーネットを見て、あたしは両手で口元を押さえる。
美佐緒のバッグの中で、たこ糸で淫猥な姿に縛り上げられたガーネットの姿を思いだして
いた。実際ガーネットがいくらがんばろうとも、あの状況では手も足もでなかったろう。
「うふふ、あれは最近では会心の出来で……あ痛っ!」
「何、自慢げな顔してんのよ、あんたは!」
 頭を押さえてうめく美佐緒を、あたしは拳を震わせながらにらみつける。
「いい、美佐緒? あんたも今度こんな馬鹿な真似したらとどめ刺すわよ?」
「うう、せんぱいだって感じてたくせにぃ……」
「……何か言った?……」
「あ!? う、うそです! わたしの気のせいで……あら?」
 あたしの迫力に、美佐緒は慌てて両手を振って愛想笑いを浮かべるが、その動きがハタ
と止まってしまった。
「どうしたのよ急に?」
「せんぱい、あれ」
 痛みも忘れてしまったのだろうか、美佐緒は指で一点を指さしている。
 美佐緒が指し示す先に、一組の男女が人目を避けるように人気のない陳列棚の前に立っ
ていた。
 あたしたちの間にはかなりの距離があったが、目を凝らしてみると女性の方に見覚えが
あった。
「姫宮先輩?」
 男の人は記憶になかったが、相手の女性は間違いなく姫宮先輩だった。ふたりは熱心に
何か話しているようだった。
「先輩、あんなところで何を……って、あんたたち、何やってんのよ?」
 あたしは、いつの間にか辺りを伺いながら先輩たちの方に向かってはいずって行くトロ
ンと美佐緒に気づき、ふたりをとがめた。
『シッ! シャラップ、リン。あの清純そうな顔したかおリンが男と逢い引きしてんだヨ?』
 先頭を進んでいたトロンが、どこから持ってきたのか古ぼけた鉄かぶとをすっぽり被り、
り人差し指を口に当てながらこっちをにらんでいる。
「そうですよ、せんぱい。今は己の欲望の赴くまま、前進あるのみです!」
 鉄かぶとの縁を持ち上げながら、珍しく真面目な顔であたしに話しかける美佐緒。
「あんたたちねぇ、何バカなこと……ん?」
 あたしは、かすかに眉をひそめた。
「二人とも、帰るわよ!」
 力任せにトロンと美佐緒の首根っこをつかむと、あたしは有無をいわさずレジの方へと
歩きだした。
『ちょ、ちょっとリン、何ヲ?』
「い、痛たたたた。どうしたんですか、せんぱい!」
 それぞれ不満を口にしていたトロンたちはおろか、ガーネットでさえあたしの発する無
言の迫力に何かを察したのか黙り込んでしまう。

 あたしの方に振り向いていたトロンと美佐緒は気がつかなかったのだろう。
 でも、あたしには確かに見た。


                 姫宮先輩の頬を伝う涙を。

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武装神姫 クロスロード 第6話

      
                  武装神姫 クロスロード

              第6話 『戦慄! シロイナニカ』

「……やっぱり、ここに入っていかなきゃならないわけ?」
『むゥ~、それしか選択肢はないと思うけどネ……』
 唖然と立ち尽くすあたしの眼前で広がる光景は、まさに修羅場だった。
 ちょっと用があって出かけていたあたしの携帯に、今日は近所のスーパーで砂糖の特売
をやってるから帰りに買ってきてほしいというお母さんからのメールが入ってきており、何気
なく立ち寄ったスーパーの店内は阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられていた。

 <お一人様、一袋まで>と書かれたワゴンの前に、怒声を上げながら砂糖に群がる主婦
のみなさまの迫力は筆舌に尽くしがたいものがあり、その姿は、前にケーブルテレビで放送
していた大昔のホラー映画のワンシーンを見ているような錯覚を覚えてしまうほどだった。


 まあ、あの映画では、いかにも青絵の具を塗りたくったようなゾンビが人々に襲いかかって
たんだけど、現実は、血色の良い艶々した頬の奥様方が砂糖に襲いかかっているという状況
だった。

            ま、こっちのほうが妙にシュールで怖いんだけどね……

『リン! このゾンビ野郎どもを突破しないト、ボクたち生きて帰れないヨ!』
「失礼なことを言うんじゃない! といってもそれしか手はないか……」
 あたしと同じことを考えていたらしいトロンを、とりあえず自分のことは棚に上げながら軽く叱り
つけ、あたしは前方の光景に目をやりがら覚悟を決めると大きく息を吸い込み目の前のゾン……
じゃなかった! 奥様の群れに猛然と突っ込んでいった。

                          ※

 行く手に立ちふさがる肉のカベを必死に掻き分けながら、

            あたし、今この人たちと同じレベルなんだろうな~。

 とかヤな考えが頭をよぎったが、それを心の中で否定しながら、あたしはとにかく前へ
前へと進むことに意識を集中させた。
 どれぐらい進んだのだろうか。おばちゃんたちにもみくちゃにされながら、汗や香水の
匂いにいい加減ゲンナリしていたあたしの視界が突然開け、目の前のワゴンの上に鎮座
する二袋の砂糖があたしの瞳に飛び込んできた。

                 ああ、なんてきれいな白……

 おばちゃんたちの極彩色豊かな服ばかり見ていたせいか、あたしの瞳に映った砂糖はか
ぎりなく清らかに見えた。
 一瞬、我を忘れて砂糖に見入ってしまったあたしは、まわりの喧騒に気づき慌てて手を伸
ばすが、電光石火の勢いで伸びてきた手が獲物を見つけた猛禽のように砂糖を奪ってい
く。

                   の、残り一袋!

 だが悲しいかな、両側から恰幅のいいおばちゃんに挟みこまれているあたしは、もう少し
というところで砂糖に手が届かない。 

                  もう、こうなったら!

「うおりゃあアぁあああッ!!」
 恥も外聞もなく大声を上げながら全力で前に進もうとすると、あたしの迫力に気圧され
たのか、いきなり左右から押さえつけていた力がなくなり、あたしは勢い余ってワゴンに
頭から突っ込んでしまった。
 身体をしこたまワゴンに打ちつけ、苦痛に顔を歪めながらも、あたしは最後の砂糖を鷲
づかみにした。

                  上白糖、GETだぜぃ!

 なんか身も心もおばちゃんになった気分になりながらも、達成感に浸っていたあたしだ
が、ようやく手に入れた砂糖の妙な感触に眉をひそめた。
 恐る恐る視線を向けてみると、砂糖とそれを握り締めたあたしの手の間から小さな手足
がバタバタと蠢いている。
『むぅ~、こ、これはわたしが先に取ったんですぅ~~~~~!』
 くぐもった声で、ソレは必死になって何かを訴えているようだったが、呆気にとられた
あたしの耳にその声は届いてはいなかった。

                           ※

『ふぅ。 上白糖、GETだぜぃ!』
「…………」
 とりあえず会計を済ませ店の隅のほうに移動したあたしは、ものすごくデジャブー感あ
ふれるセリフを聞きながら、砂糖の袋の上にちょこんと正座をし満足そうに額の汗をぬぐ
う天使型の神姫、アーンヴァルを黙って見つめていた。
 パッと見は、ノーマルのアーンヴァルのように輝く黄金色のショートカットに蒼い瞳の持
ち主だったけど、よく見ると左目の下にホクロのようなものがある。
『あっ、すみません。色々と手伝っていただいたのに、自己紹介もしていませんでしたね。
わたし、リセルといいます』
 あたしの視線に気がついたのか、リセルは砂糖の上で正座したままで深々と頭を下げる
と自己紹介を始めた。その姿がまじめを通り越して妙に滑稽に思えたあたしは、笑いをか
み殺すのに苦労してしまう。
「あたしは一ノ瀬 隣。で、こっちのボ~ッとしているのがトロン。まあ、よろしくね」
 にこやかに笑いながら話しかけたが、リセルはなぜかあたしの顔をまじまじとみつめて
いる。どこか懐かしさに浸っているような瞳にあたしは二の句をつげず、しばらくその状態
が続いた。
 しばらくして、リセルはあたしの視線に気づいたようだった。すぐに屈託のない笑みを浮
かべると、あたしや砂糖の袋にもたれかかりながら黙って自分を見ていたトロンに笑いか
ける。
『そうですか、お二人とも素敵なお名前ですね。わたしのほうこそよろしくお願いします。
……それにしても隣さんはえらいですね~』
 紐にくくり、たすき掛けにした、ピンクの生地にブルーのストライプという大昔のマンガに
でてきそうな古臭いデザインのがま口に、おつりとレシートをしまいながらリセルは上機嫌
で話しかけてきた。
「へっ? な、なんのこと?」
 意味がわからずキョトンとしていると、リセルはあたしを見上げながらニコリと微笑む。
『だって隣さんはまだ小さいのに、お母さんのお手伝いでお買い物なんて……やっぱりこ
れってえらいですよ!』
 両手を胸元まで持ち上げ、グッと握りこぶしを作りながら力説するリセルが何を言いた
いのか瞬時に理解したあたしは、リセルに優しく微笑んだ。
「そう? でもまあ、あたしも17だしね」
『…………へっ?』
 呆けたような顔から、なんとも締まりのないセリフがリセルの口をついて出てきたのは、
きっかり三分が過ぎてからのことだった。
                   
『すみません! すみません! すみません! すみません! すみません! すみ…』
「もういいわよ。気にしてないから」
 砂糖の上でひたすら土下座を続けるリセルに引き攣った笑顔で答えながら、謝り続ける
彼女の横で腹を抱えて悶絶中のトロンをあたしは無言で睨みつける。
「……それにしても、ひとつ聞きたいことがあるんだけど。ねえ、リセル。あんた今日ひとり
で買い物にきたわけ?」
 とりあえず、この気まずい雰囲気をなんとかしようと、あたしはさっきから疑問に感じてい
たことを口にしていた。だいたい神姫が買い物っていうのもいろんな意味で無理があるだろ
う。話を聞くと、今回の場合もリセルはワゴンによじ登り、最後の砂糖に飛びついたらしい。
 そんな死のダイブみたいなことを毎度毎度やってたらリセルの身がもたないだろうし、今回
はあたしが品物をレジまで運んだけど、いつもどうしているんだろう?
『あ、そのことですか? いつもは匠さんにお願いしてるんですけど、今日ははぐれてし
まいまして……わたしって特売とか半額とかいう言葉に弱くって、つい我を忘れて熱くな
っちゃうんですよね~』
 照れたようにポリポリと頭を掻く、妙に所帯じみたリセルを呆れた顔で見下ろすあたし
の横で、ようやく笑い飽きたらしいトロンがポツリと口を開く。
『べつにさァ~、特売ぐらいでそんなにムキになることないんじゃないノ?』
『……ぐらぃ~?』
 つまらなそうにつぶやくトロンの言葉を耳にするや、リセルは急にドスの効いた声を発
すると、いきなりトロンの顔を鷲づかみにする。
リセルの大きく見開かれた目は血走り、怒りのためかその身体はワナワナと震えている。
「ちょ、ちょっと落ち着いてリセル! ストップ、ストップ!!」
 いったいその手にどれぐらいの力が込められていたのか、トロンの下膨れ顔がみるみる
変形していくのにおどろいたあたしは、慌ててふたりの間に割って入った。
『はっ! やだ、わたしったらまた……ご、ごめんなさい!!』
 あたしが必死になだめると、ようやく我に返ったリセルが目の前の瓢箪みたいな形にな
ったトロンの顔を見て愕然となる。
「ま、まあ、こっちにも問題はあったわけだし、気にしなくてもいいわよ」
 すっかりしょげかえってしまったリセルにあたしは片頬を引き攣らせながら微笑むと、
トロンの足をつかみながら体温計の要領で力一杯振ってみた。
 別に意味はなかったんだけど、これが効いたのか、元に戻っていくトロンの顔を見なが
らあたしは内心ホッとしていた。
「それにしても、いつまでもこのままってわけにはいかないわね。リセルのマスター……
確かタクミさん、だっけ? 早くその人を探さないとね?」
 しゅんとうなだれていたリセルを見ながら、あたしが辺りを見回しながら話しかけると
驚き立ち上がりながらリセルは両手を振りはじめる。
『あ、あの、そんな気を使っていただかなくても大丈夫です。いつもみたいに場内放送で
匠さんを呼んでもらいますから』

                いつも? 今、いつもって言った?

 必死にあたしを止めようとするリセルを見下ろしながら、買い物の度に、自分の神姫に
場内放送で呼び出される、まだ顔も知らないリセルのマスターに心底同情してしまった。
「……頼むからそれだけは止めてくれって言っただろう? リセル!」
「!?」
 いきなり背後で聞こえた野太い声に驚き、慌てて振り返ると、そこには両手一杯にレジ
袋をぶらさげ困り果てた表情をした男の人が立っていた。

                          ※

「ほんとうにすまなかったね。リセルのヤツが迷惑かけたみたいで」
「い、いえ、そんなことは……」
 慣れた手つきでリセルの買った砂糖をレジ袋にしまいながら、その人は苦笑いを浮かべ
る。でもその口調とは裏腹に、まだ小さく縮こまっているリセルに向けたまなざしは優しい
光を宿していた。
 すらりとした長身の体躯に人のよさそうな笑みを浮かべた男性は、須賀 匠と自己紹介
をしてきた。
 なんでも須賀さんは、神姫を開発、販売している小さな会社に勤めているそうで、今回
も仕事の関係でこの街に短期で滞在しているらしかった。
『それにしても匠さん。よくわたしの居場所がわかりましたね?』
 ふと思いついたように首をかしげながら尋ねるリセルの疑問は、実はあたしも思ってた
ことだった。
「ああ、そのことか? 実はこんなこともあろうかと、お前に発信機をつけといたのさ」
 ジーンズのポケットから黒光りする携帯のようなものをひっぱりだすと、須賀さんはそ
れを胸元で軽く振りながらニヤリと笑った。
 それを見て、慌てて自分の身体を調べ始めたリセルが、やがて素っ頓狂な声をあげる。
『あっ、ほんとだ! こんなところに!』
 思わずリセルの方を向くと、その背中に何か貼り付けてあった。

 いや、ほんとうはかなり前からその存在に気づいてはいたんだけど、あの丸いシールに
中央がぽっこり膨れたあの形って、てっきり……

「それって、ピップエ〇キバンじゃなかったんだ?」
『あのねェ、リン。ボクたち神姫は精密機械のカタマリなんだヨ? そんなモン貼り付け
るわけないでショ!』
 いぶかしげな目つきでリセルの背中を指差していたあたしに、さも小馬鹿にしたような
口調でトロンのヤツが口をはさんできた。
『あ、あの、隣さん。トロン。ふたりとも落ち着いてください!』
 トロンの生意気な口調にカッときたあたしを見て、慌ててリセルが一食触発寸前のあた
したちの間に割って入ってくる。
「まあ、なんだ……それにしても隣ちゃんはえらいな~」
 須賀さんも、さすがにマズイと思ったのだろう。慌てた様子で話しかけてきた。
「え? な、なんのことですか?」
 おそらくは場の空気を変えようとしたのだろうけど、いや~な予感に襲われながらもあ
たしは須賀さんのほうに向き直った。
 横では必死に、リセルが身振り手振りで須賀さんに何かを伝えようとしているが、残念
なことに須賀さんにはまったく伝わっていないようだった。
「ほら、隣ちゃんまだ小さいのにお母さんの手伝いなんてさ。隣ちゃんはいい子だな~っ
て思ってさ」
 もうダメ! といった雰囲気で頭を抱えてうずくまるリセルを尻目に、あたしは今まさ
に墓場から甦ったゾンビでさえ裸足で逃げていくような陰鬱な声でつぶやいた。
「……えぇ、まぁ。……あたしももう17ですから……」
「…………はっ?」

 須賀さんのリアクションは、リセルのそれよりさらに二分後に発せられた。

                          ◆

「それにしても、本当におもしろい子だったな」
 マンションへの帰り道、不機嫌さを隠そうともせず、足取り荒く去っていった少女の後
ろ姿を思い出し俺は思わず苦笑してしまった。
『もう。匠さんの所為でもあるんですよ? 人事みたいに言わないで下さい! ……まあ
わたしも人のことはあまり言えませんけど……』
 俺の態度に、胸ポケットから顔だけ覗かせていたリセルが柳眉を逆立て注意するが、
すぐに自分も当事者のひとりだと思い出し、みるみる語尾が小さくなる。
「はは、ま、お互い様か? それにしてもリセル、お前、やけに隣ちゃんと親しげだった
けど、まさかあの娘のこと知ってたのか?」
 俺は店内での二人のやり取りを思い出し、何気なくたずねてみた。
『えっ、そんな風に見えましたか?』
 リセルは俺を見上げながらうれしそうにそう言った。だが、それ以上話そうとはしない。
俺も、それ以上詮索する必要を感じなかったので、この話はここで終わってしまった。
 リセルはしばらく俺をみつめていたが、やがて背後を振り返った。
『まさか……あの時の女の子が隣さんだったなんて……』
 リセルのつぶやきはあまりにも小さく、俺にはよく聞き取れなかった。
「ん? いま何かいったか?」
『えっ? いえ、なんでもないです。さあ、帰りましょう、匠さん』
 リセルは胸元で手を振りながらそういった。
 そしてもう一度、彼女たちが去っていった方角に目をやった。
                                

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書籍化すればいいのに……

いや~、今日も熱っちぃですね。

これでも、まだ七月なんですけど。暑さにはまるで耐性がないため夏は苦手なんですよねぇ、ホント。

秋が来るまで生き残れるんだろうか? 自分……。



とまあ、暑い暑い言っても涼しくなるわけでもありませんし、話を変えるとしましょう。


今日は休みでしたので、とあるブツをさがして地元の本屋巡りをしておりました。
ところが立ち寄る先、ことごとく空振りという惨憺たる結果に。いいかげん暑さで嫌気がさしてきましたが脳内リストの最後に載っていた書店に突入!




で、ありましたよ!

CIMG1322.jpg

「武装神姫アーカイブ2」!!

しかし、発売されてからまだそんなに時間もたってないのに、なにゆえこんなに苦労せねばならぬのか?
まあ、これも武装神姫の人気の賜物と好意的に解釈しておきますか(苦笑)。

さて内容の方ですが、表紙にも書いてあるようにアニメ版武装神姫の設定やストーリーの解説などにページが割かれています。今回のアーカイブはファンブックのようなものでしょうか。
ざっと目を通した程度ですが、なかなか中身は濃そうです。



ペラペラとアーカイブのページをめくっていると、ふとある考えが頭をよぎりました。


いま、どれぐらい武装神姫関連の本を持ってるのかな? と。


興味がわいてきたので、本棚を物色することしばし……いろいろ出てきましたよ。

CIMG1321.jpg

これぐらい(笑)。

小説やコミックという風に、ジャンル別に保管してたもんで気づきませんでしたが、けっこうあるもんです。

懐かしさもありますし、ちょっと紹介していきたいと思います。

CIMG1323.jpg

まずは「武装神姫アーカイブ」と「アーカイブ2」。
今現在、もっとも手に入れやすい武装神姫の設定資料ではないでしょうか。
上で書きましたが、アーカイブ2はアニメの、そしてアーカイブの方はいままで発売されたフィギュアが紹介されています。
特に、いままで発売された神姫がすべて紹介されているのは圧巻の一言ですね。

もっとも、若干二名ほど幻の神姫になりそうですが……。

CIMG1324.jpg

お次はコレ。「武装神姫MAGAZINE」VOL1&2。
内容は、デザイナーの島田フミカネ氏や素体の原型製作者である浅井真紀氏らのインタビューや、今となってはなつかしいジオラマスタジオの使い方、オリジナル神姫の紹介と多岐にわたり、非常に内容の濃いものになっています。
惜しむらくは、書店に並んだのはこの二冊のみで、これ以降は無期限休刊となってしまったことでしょうか。
内容が充実していただけに非常に残念でした。

CIMG1326.jpg

次のヤツなんですが、これを知ってる人はあまりいないかも……。
「武装神姫マスターズブック」。
コナミが発売元であり、そういう意味では真のオフィシャルブックと言えるかもしれません。
バトルロンド関係の記事が多く、コナミがこの当時いかに力を入れていたのがよく分かります。また、フィギュアの設定などにもページの多くを割いており、そういう意味では「武装神姫アーカイブ」の原形ともいえる一冊です。
もっとも、この本が発売された時期が時期ですので(2007年8月初版)、紹介された最新神姫が6弾の丑&寅というのはご愛嬌ですが。

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「武装神姫バトルマスターMK.2 コンプリートガイド」(く、くそ長ぇ!)。
言わずと知れた攻略本ですな。
「武装神姫アーカイブ」を買う時に目についたもので、一緒に買ってしまいまして……バトマス未プレイな私としては実はコレ、中をぜんぜん見てないんですよねぇ。
というわけで、内容はぜんぜんわかりません。イヤ、ホント、スミマセン。

余談なんですが、「バトマス」の攻略本って発売されてるんですかね? みかけたことがないもんで……。

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さて、お次は小説関係を。
まずは、ひびき遊氏の「always together」。
内容については長くなるので割愛させてもらいますが、私が知る限り初めて書店に並んだ武装神姫の小説であり、非常に思い入れの強い作品でもあります。

CIMG1329.jpg

これに関しては、いまさら説明もないかと思います。
陸 凡鳥氏の「武装神姫」シリーズ。
ひさしぶりの神姫小説という物珍しさから買ったのですが、私の悪い癖で買って安心してしまい、長い間この作品を読んでいませんでした。
ところが、ひょんなことから読んでみたらおもしろいのなんの! 一挙に読み切ってしまいました。
このシリーズ、三巻もでるということはそれなりに人気のある作品なのでしょう。コミック関係も、のきなみ終了してしまった現在、この作品には今後ともがんばっていただきたいものです

CIMG1327.jpg

さて、私のコレクションも残りわずかになってきました。お次はコミック関係にいきましょう。
まずは、井原裕士氏の「武装神姫ZERO」。
ストラーフ「零」と、彼女のマスターとのバトルを交えながら心の交流を描いた物語です。
本編中で使われる火器の類がBB弾のような物を使用し、模擬戦のあとで部員総出でそれを拾ったり、ナイフに針金を巻きつけてホルスターの代用にするなど、妙なシュールさに感心しました。

余談ですが、PNや絵のタッチなどから男性だと思っていた作者様が女性だと知った時は、ほんとうにおどろきました(笑)。

CIMG1330.jpg

さぁて、とりをつとめますはこの作品。
いわずとしれたBLADE氏の「武装神姫2036」。
作者様特有の、デフォルメチックな神姫たちの可愛らしさは、フィギュアとはちがった魅力にあふれていました。
ひたすら、ホンワカ能天気にストーリーが続くと思いましたが四巻あたりから流れが変わり、五巻に至ってはバトルづくしで迫力満点!

でも、ラストはやっぱりホンワカでした(笑)。





まだ私が持っていないものもあるかもしれませんが、以上で手元にある神姫関係の書籍の紹介は終わりです。
今まで費やしてきた時間でみると数は多くはないかもしれませんが、改めて見るとけっこう集めましたね(笑)。

今後は、これらのジャンルも縮小される一方でしょうし、今の状態じゃ本家のサイトもいつ姿を消すか分かったものじゃない。
そうなる前に、ぜひ「forget-me-not」や「ヒブソウシンキ」も書籍化してほしいものですね。



ね、コナミさん?








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武装神姫 クロスロード 第5話

              
                 武装神姫 クロスロード

            第5話 「キミとボクとで、ライドオン!」  
           
「ちっくしょ──っ! おい、隣。もう一回勝負だ!」 
アクセスポッドから、すごすごと出てくる黒姫たちを見ながら陽子が拳を握りしめる。
「いや、あのさあ、陽子。今の戦いを見たらその……」
 あたしは頭に血が上った陽子を、なんとか落ち着かせようとなだめたが無駄だった。
 けっきょく、今度はシュミレーターの代金は陽子が持つという条件で三回ほど戦ったが、
完全にその動きをトロンに把握されてしまった黒姫たちの全敗という結末に終わった。

                        ※

「まったく、やりすぎなのよ、あんたは!」
 ここはいつもの休憩所。あたしは現実を突きつけられ、肩を落としながらすごすごと自
動ドアの向こうに消えていった陽子の後ろ姿を思いだし、語気荒く言い放った。
 あたしの放つ怒気などどこ吹く風、テーブルに寝そべったトロンが、器用に顔だけあた
しの方に向けた。
『じゃア、背景ズに華を持たせた方がよかっタ?』
 あたしは、のどまで出かかった次の言葉を飲み込むしかなかった。
 陽子には気の毒だが、確かにトロンの意見の方が正論だった。それに、いくら陽子と唯
があたしにとって親友だとしても、勝利をゆずられてもふたりは喜びはしないだろう。何よ
り、あたしとしても、そんな八百長みたいなバトルは我慢できなかった。
『だいたいサ、おしりにカラをくっつけたヒヨっ子ガ、ボクやレスPに挑もうなんテ、かたはら
痛タッ!?』
 得意げに話を続けていたトロンが、頭を押さえながら驚いた風に顔を上げる。
『ナ、ナニすんのサ、リン?』
「あんたがあんなまどろっこしいマネをしないで、きちんと相手に自分の気持ちを伝えて
いれば、こんなことにはならなかったのよ?」
 いつになく強いあたしの口調に気をされたトロンだが、不服そうな顔になる。
『で、でもサ……』
「結果として、あんたの中途半端さが、黒姫たちにレスティーアを軽んじさせる原因にな
ったんでしょう?」
『……』
 そこらへんは、トロンも充分理解しているのだろう。唇を尖らせながらも黙り込んでし
まった。
「トロンに戦いを無理強いさせるつもりはないわ。でもね、レスティーアとの戦いをあん
たが望んでいるなら、実戦を積むことも大切でしょう?」
 まだうつむいたままだったけど、トロンはかすかにうなずいた。
『結局は、地道に経験を積み重ねる以外、強くなる方法は無いということですね』
「そうね。それが王道……って、リベルター?」
 あたしの心中を察するかのような言葉にうなずきかけたあたしは、はっとしながら声の
主に視線を向ける。いつの間にあらわれたのだろうか、トロンのすぐそばに、銀髪をたな
びかせたリベルターが静かにたたずんでいた。
「まったく、いつも突然あらわれるわね」
 内心驚きながら、あたしは平静を装おう。
『ほんト、ギンちゃんっテ、影薄いからボクも気がつかなかったヨ』
『ぐさっ!』
 イモムシみたいに身体をくねらせながら、何気なく発したトロンの一言に、リベルターは
胸のあたりを押さえながらうつむいてしまう。

              やっぱり、本人も気にしてるのだろうか?

『えっと、それより今、“ギンちゃん”とか言ってたみたいだけど、それって……』
 根性で立ち直ったのか、リベルターは口元を引きつらせながら、トロンに問いかける。
『あア。もちろン、キミの愛のニックネームに決まってるでしョ?』
 反論は認めん! と言わんばかりの口調で指を突きつけるトロン。その指先では、当の
本人が白い山脈と化していた。
「ニックネームか……よかったじゃないか、リベルター」
「きゃっ!? て、店長さん!」
 それほど油断していたつもりはなかったけど、いきなり背後から聞こえたダンディボイ
スに、あたしは飛び上がらんばかりに驚いた。
「失礼。脅かすつもりはなかったんだが……」
 唖然と見上げる視線の先で、不自然なまでにきらめく歯を輝かせ、店長さんがはにかん
だような笑みを浮かべる。
「実は、一ノ瀬くんに……いや、一ノ瀬くんとトロンくんに、折り入って頼みたいことがあって
ね」
そう言いながら、店長さんは静かにソファーに腰を下ろした。
「頼み……ですか?」
 あたしは、まだバクバクいってる鼓動を鎮めるべく、胸に手を当てながら問い返した。

                          ※

「ライドシステムが……動き出すんですか?」
 驚くあたしを見ながら、店長さんがうなずく。
「ああ。まだ、もう少し先のことになるがね」
 店長さんの話によると、神姫とオーナーがひとつとなってバトルを行うライドシステム
が、後一月ほどで、いよいよ全国的に稼働し始めるらしい。
「でも、それとあたしたちに頼みって、何の関係があるんですか?」
「うん。実はこの店で行うイベントの初日に、一ノ瀬くんとトロンくんに、ライドシステムの
デモンストレーションをやってもらえないかと思ってね」
「へ? で、でもんすとれーしょん?」
 せいぜい頼みといっても、イベントの人集めのために、ビラ配りでもさせられるんだろ
う、ぐらいに考えていたあたしは、思いもしない店長さんの提案に愕然とした。
「だ、だだだ、だめですよ! あたしなんかじゃ!!」

       ただでさえ人の視線とか気になるのに、あたしには絶対無理!

 火がついたように真っ赤な顔になりながら、あたしは必死になって両手を振った。
「そうか……無理…か」
「……あ」
 残念そうに肩を落とす店長さんを見て、あたしは少しだけ冷静さを取り戻した。

  そうだ、店長さんのおかげで、あたしはトロンに稽古をつけることができたんだ。

 そう考えると、あたしは自分が情けなくなった。
 店長さんは、あたしの個人的な理由なのに嫌な顔もせずライドシステムを使わせてくれた。

                   何の見返りも求めずに……

 あたしはそう思いながら、トロンに視線を向けた。
 トロンはあたしを見上げていた。そして、いまにも倒れ込みそうな寝ぼけ顔で大きくうなず
くと、あたしに向かって親指を立てる。

「……わかりました」
「え?」
 ミラーグラス越しに、店長さんがあたしを見つめる。
「あたしたちでよければ、お手伝いします!」
「ほんとうかい? 一ノ瀬くん?」
 力強くうなずくあたしに、店長さんが破顔する。
「……でも、ほんとうにあたしたちなんかでいいんですか? 実際にライドオンを体験し
てみた店長さんたちの方が適任だと思うんですけど」
 了承はしたものの、やっぱり不安な気持ちになったあたしは、おそるおそる店長さんに
提案してみた。
「いや、関係者である我々より、一ノ瀬くんたちの方がふさわしいさ」
『それに、これは神姫オーナーとしても、名誉なことだと思いますよ。こういう時は喜ぶべ
きです、隣さん!』
「う~ん。まあ、そうなんだろうけど……」
 リベルターが必死にフォローしてくれるが、なんか釈然としない。
『ギンちゃんの言うとおりサ』
 リベルターに寄りかかるようにして、トロンが億劫そうに立ち上がる。
『もっと素直に喜びなヨ? いつものリンなら嬉しさのあまリ、「う~しっしぃ!」とか奇声を
上げテ、木々の間を飛び回ってるじゃないカ?』
「あたしは新種のUMAか?」
 真顔で尋ねるトロンの頭を、あたしはツッコミながら軽く叩いた。
 どういう身体の構造をしているのかわからないけど、トロンは二、三度バウンドすると
短い悲鳴とともにテーブルの向こう側に落ちていった。
 それを見ていたあたしは、なぜだか急にこみ上げてきた笑いを抑えることができなかっ
た。あたしはお腹をかかえて笑いだした。唖然としながら見ていた店長さんとリベルター
も釣られたように笑いだす。
 身体の中に、澱のようにたまっていた不安や悩みが、みるみるなくなっていく。

      いつもあたしの背中を押してくれるのは、あいつなんだよね……

 あたしは滲んだ涙をぬぐいながら、トロンの方に歩きだした。

                         ※

「ねぇ、リベルター。ひとつ聞いてもいいかな?」
 カウンターに頬づえをついていたあたしは、メンテナンスルームの入り口を見ながら口
を開いた。
 トロンは、いま部屋の中でバーチャル、リアルの双方のバトルに対応可能なライドシス
テムに使用する専用の受信機の取り付け作業をしている最中だった。
『どうしたんですか? あらたまって』
 カウンターの上に立ちながら、あたしと同じところを見ていたリベルターが、顔を上げ
る。
「うん。あのさあ、ライドオンするって……どんな感じなのかな?」
 あたしを見上げていたリベルターが、ふっと視線を外すと、眼を閉じた。
『不安…ですか?』
「少しね」
 あたしはリベルターの問いに、素直に答えた。
 トロンとひとつになることが嫌なんじゃない。ただ、自分の中に別の存在がいる。その
ことが、どうしてもあたしの頭では理解できないからだった。
『私のなかに店長さんが、そして店長さんのなかに私がいる。お互いのすべてを共有する
──悪いものではないですよ。そんな感じも……』
「ふぅ~ん、そういうものなんだ?」
 思わず相づちを打ったあたしの耳に、リベルターのかすかな声が響いた。
『……それに、私はもう……』 
「うん? なにか言った、リベルター?」
『い、いえ、何も……あ、終わったみたいですよ?』
 渡りに船と言わんばかりの表情で、部屋を指さすリベルター。開いたドアの向こうから、
トロンを抱いた店長さんが歩みよってきた。
「おまたせしたね」
 そう言いながら、店長さんはカウンターにトロンを下ろす。目を凝らして見るが、別段
前と変わったところはないみたいだった。
「後はイベント当日を待つだけだね」
 さわやかに微笑む店長さんとは対照的に、どうもトロンの様子がおかしい。チラチラと
こっちを見てると思うと、あたしと目があった途端、顔を伏せてしまう。
「さっきからどうしたのよ?」
『うン、これでボク……』
「?」
『リンと身も心もひとつになれるんだネ?』
「…………」


「やっぱり、こんなヤツとライドオンしたくね────ッ!!」


 身体中をクネらせ、頬を赤らめる寝ぼけ悪魔を見ながら発したあたしの魂の絶叫が、D
O ITの店内に虚しく響きわたった。

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