神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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我が家の神姫たち 『超』番外編

今回はひさしぶりに改造物の記事でございます。
じつは、前回の火炎放射器と前後してコツコツ作っておりましたが、作業がはかどり思ったより早く完成しました。




ではさっそく紹介いたしましょう。我が家の新しい家族、「パーシヴァル」です!













CIMG1474.jpg

……え~、紹介に入る前に、みなさまに謝罪しなければならいことが一つあります。
そう、神姫じゃないんです!

ほんらい「我が家の神姫たち」に入れるべきものではないですが、わざわざ他にカテゴリつくるほどでもないと思いましたのでこちらでの紹介となります。
まぎらわしくてすみません……。

さて、みぐるしい自己弁護はこのくらいにして、さっそく続きを。
パッと見、気づいた方も多いと思いますがこのパーシヴァル、figma「スカーレット・レイン」とリボルテック「ビックバイパー」をミキシングしたものです。

パーシヴァル『……ハジメマシテ』

CIMG1482.jpg

基本的に、前述の二つのパーツをところどころ互換し、色をメタリックブルーで塗りなおしただけというお手軽改造ですが、スカーレット・レインの頭部形状がイマイチ好みではなかったので、ここだけエポパテで形を変えています。

パーシヴァル『……マエガミズライデス』

CIMG1476.jpg

CIMG1478.jpg

CIMG1477.jpg

ベースに使用したスカーレット・レインは非常にシンプルなデザインをしており、もともと改造用の素体として買ったものです。
その後、ひょんなことから格安で手に入れることができたビックバイパーを使用し、あまり嫌味にならない程度にメカ度をアップしてみました。
しかしコレ、色を白に塗り替えたら某お嬢様みたいですな(笑)。

CIMG1479.jpg

CIMG1480.jpg

もとからあったギミック。クローのようなモノが開閉します……が、こんなところについていても何の役にも立ちませんが……。

パーシヴァル『……ハサミマスヨ?』

武装ですが、スッキリとしたプロポーションですしゴテゴテと飾り立てると本末転倒っぽいので、スカーレット・レインに付属していたハンドガンのみにしようと思っていましたが、ここでフと、パーシヴァルのメカツインテールに流用したビックバイパーの腕(翼?)に、鎌を連想させるエフェクトパーツを取り付けられるのを思い出しました。

CIMG1483.jpg

さっそく取り付けたモノが☝の画像です。
ほんらい成形色はクリアーイエローでしたが、ボディカラーと比べると若干地味に見えたので、上からクリアーレッドでさっと塗装し直しています。

手前味噌ですが、けっこう似合っているような……。

CIMG1485.jpg

向きを変えると、カマキリの腕のようです。

CIMG1489.jpg

さらにジャンク箱からビームサーベルを発掘して持たせてみました。

CIMG1486.jpg

完成時には明確なタイプを決めてませんでしたが、こりゃどうみても近接接近戦仕様ですね。

パーシヴァル『……イキマス!』



とまあ、基本的な紹介はここらで終わりにしたいと思います。
さて、今回の改造に使用したスカーレット・レイン。その体形からけっこう動くかと思ったのですが、いがいと各部が干渉し可動域は少ないように感じました(あくまで個人の意見です)。
どうせなら少しでも動くようにするべと、股以外のジョイントをリボ球に交換、本体もあちこち削り追加の加工をほどこしました。

その甲斐あってか……。

CIMG1472.jpg

このように、某海賊マンガにでてくるお姉さんのように、「見下し過ぎて逆に見上げちゃってる」ポーズも可能になりました(笑)。

パーシヴァル『……ク、クビガイタイデス』




これぐらい動きの幅が広がると、いろいろとポーズをつけてみたくなるというのは人の性とうものでしょう。それではちょっといじってみますか……。

CIMG1467.jpg

うんうん。

パーシヴァル『……ア、アノ』

CIMG1468.jpg

パーシヴァル『……ハズカシイデス』

う~ん、なんかムラムラしてきた……

CIMG1466.jpg

パーシヴァル『……ウウ、イツマデコンナ……ン? ナニカミョウナシセンガ……』

CIMG1465.jpg

シロ「い~よい~よ、羞恥に頬をそめたその表情!」

パーシヴァル『……ア、アノ』

シロ「ぃよ~しッ! 次は脚をガバッて開いてみよーか?」

パーシヴァル『……イヤ』

シロ「しょうがないなぁ、はずかしがり屋さん☆ じゃあオヂさんが手伝って……ゲホッ!?

CIMG1459 - コピー

マルガリータ『いいかげんにせんかッ! このエロ犬ッ!!』

シロ「いてて、……いきなり何すんだよ、おまえは?」

マルガリータ『何もへったくれもないわよ! この娘、嫌がってるじゃない。もうやめなさいよ!』

パーシヴァル『……アァ、オネェサマ♡』

シロ「ふざけるな。ここでおめおめと引き下がったらこの……」

CIMG1463.jpg

シロ「寝る間も惜しんで作った触手フィンガーの立場はどうなる?」

マル&パーシ『……ヒィ!?』

シロ「ふひひひ、さぁ、キャッキャウフフタ~イムのはじまりだよ、おじょうさん?」

マル&パーシ『……イ、イヤァアアアアアアアッ!?』





                                                  Ende






ハイ! パーシヴァルの紹介&プチ寸劇はこれにて終了です。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました
ちなみに、せっかく作った触手フィンガーをしまい込むのももったいなかったので、パーシヴァルで触手プレイを楽しもうと思ったのですが……おもいっきり剥げました、塗装が(泣)。

キャッキャウフフ道は、奥が深いです……。 


さて、パーシヴァルを作ったせいか、製作へのモチベがいまだ継続中です。この機を逃すのももったいないですし、ひさしぶりに神姫の改造にチャレンジしてみようかな? 
まあ準備期間がありますので、場繋ぎでSSが数話入ると思いますが……。


では!                                






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初体験……

ようやく灼熱地獄も終わり、少しは過ごしやすくなってきましたねぇ。
でも、明け方は少し寒いですが……。

最近の私のライフワークですが、やはりSSがメインになっております。
まあ、まったく筆が進まないよりはマシなんでしょうが、立体モノの方はまるで手つかず。この手の作業はマルガリータのプチ改修がいまのところ最後です。

ひさしぶりに神姫の改造を、と思いましたが肝心のネタが思い浮かばないありさま(汗)。
しかたないので、リハビリ代わりにここ数日プチ製作にとりかかっていました。

CIMG1384.jpg

☝の品は、AK-GARDENで購入しました「火炎放射器」です。例の安心病がでてしまい、しまい込んだままになってましたが今回めでたく製作と相成りました。

とはいえ、じつは私、ガレージキットに挑戦するのってこれが初めてだったりします。さてさて、どうなりますことやら……。

さぁて、ガレキといえば全身をくまなく覆っている離型剤を落とさねばなりません。まずはここから取り掛かりますか。
一般的には水(お湯だっけ?)に中性洗剤を入れたものの中にガレキを放り込み、離型剤を落とさにゃなりませんが、じつは我が家には☟のようなものがあります。

CIMG1310.jpg

パンパカパ~ン!

「離型剤落としぃ~~~~~!!」(ド〇え〇ん風に)

水in中性洗剤につけこんだガレキは、歯ブラシなどでよく擦って離型剤を落とさにゃならんそうですが、☝のブツは、
な、なんと! 漬け込んでおくだけで離型剤が落ちるそうなんですよ、奥さん!

最近、息をするのもおっくうになってきた横着者の私としては、こんな便利なアイテムを使わない手は……え? 「なんでガレキ作るの初めてのヤツが、こんなモノ持ってるんだ?」ですって?

フッ、私の部屋には、いつ使うとも分からないこの手の品が、数多く押入れに眠っているのDEATH!
まあ、備えあれば憂いなしと言いますしね(そして大半のブツは、一生日の目を見ることもなく押入れの中で余生を送るわけですが……)。

おっと、また話が脱線してしまいました。それでは作業の続きを……。

CIMG1311.jpg

組み立て図とにらめっこしながら本体を組み立て、まずは離型剤落としにブツを漬け込み、待つこと五分。
その間、オリンピック開催における日本経済の活性化について熟考するもよし! はなをほじりながらボォ~っと天井を見上げているのもまたよし!!
あっという間に五分が過ぎ、作業終了です(ら、楽だ!)。

パーツを引き上げ自然乾燥させます。瞬く間に乾いたので続いて塗装を、と思ったのですが、いきなりペイントするより念のためにサフ吹きしたほうがいいと思い直し、さっそくビャアーっと吹きました。


……が、ここで恐るべき事態が!

サ、サーフェイサーが弾かれるゥゥゥウウウッ!?

ホ、ホアイ!? 一部分だけなのですが、まるでIフィールドに弾かれるビーム兵器のようにサフがのりません。
う~ん、やっぱりこれってブラシで擦らなきゃだめなの? でも、漬け込むだけでいいって書いてあったんだけどなあ……。

しばらく呆然としてましたが、二つの対策が脳裏に浮かびました。

① 泣く泣くサフを落とし、漬け込み作業からやりなおす。

② メンドクセーッ! このまま強引に塗装に入る。

とうぜん思慮深い私としては②以外に選択肢はありません!

愛用のシタデルカラーなら隠ぺい力も高いしなんとからなるべ、と思い作業再開。
でも、多少は塗料はのりますがやっぱり弾かれます。しかしここであきらめても仕方がないので塗っては乾かし、塗っては乾かすを繰り返しなんとか下地塗りを終えました。

あ~、疲れた。楽したかったのにこんなに苦労するなんて……ホント、人生ってままならないですねぇ。
ま、気落ちしてても仕方がないし、続きといきますか!

とはいえ、続きといってもあとは本体の塗装だけですがね(笑)。
パケ絵どおりというのも面白みに欠けるような気がしたので色を変えてみました。
自分の中では、この手の武器って使い古しというイメージがあったので、シルバーをベースに少々汚しを加えてみたんですが……。

CIMG1383.jpg

……うん、キタネェだけだな、こりゃ!!

パケ絵どおりに塗れば良かった! 激しい後悔の念に苛まれますが、塗りなおす気も更々ないですし、このままいくことにします(笑)。

それにしても、生まれて初めて作ったガレキが火炎放射器って、どんなもんなんでしょう?

まあ、考えてもむなしくなるだけですし、塗装のせいで出来はイマイチですがせっかく作ったんですからさっそく実装してもらいましょう。

CIMG1452.jpg

シロ「では武装神姫、マルガリータさんの登場です。張り切ってどうぞ!」

CIMG1447.jpg

マルガリータ『………………』

シロ「おお、グレイトだぞマルガリータ! 今のオマエは、まさに戦いの女神!!」

マルガリータ『………………』

CIMG1449.jpg

シロ「ん? どうした、さっきから黙り込んで?」

マルガリータ『……なんか最近、あたしのあつかい悪くない?』

シロ「そんことはないぞ、その火炎放射器だってお前にピッタリだ」

マルガリータ『あたしに似合うっていうならアリシアにやらせればいいでしょう! あの娘だってあたしと同型機じゃない(射撃専門だけど)!』

シロ「あいつは無理だ」

マルガリータ『何でよ?』

シロ「あのヤロー、オレが楽しみにとっておいたガリガリ君(コーンポタージュ味)を盗み食いして、いま腹を壊して寝込んでるからな! きっとバチがあたったんだろう」

マルガリータ『……バチ以前に味に問題があるんじゃない? アレって……』

シロ「いいや、ぜったいバチだ! それよりホレ、せっかくだからもっとポーズとかとってみ?」

マルガリータ『やーよ、こんなダッサイ武器。それより、もっとおしゃれなやつはないの?』

シロ「何を言うんだスイート・ハート? これほどお前の「凶暴性」や「猛々しさ」を体現した武器は他にないぞ」

CIMG1453.jpg

マルガリータ『黙って聞いてれば好き勝手言ってんじゃないわよ! ……あれ? あれ?』

シロ「ん~、どうかしたのかい、マルガリータくん?」

CIMG1455.jpg

マルガリータ『何で炎がでないの? あっ、あんた燃料を抜き取ったのね?』

シロ「ふっ、このオレがそんな姑息な手を使うわけあるまい?」

マルガリータ『じゃあ、何で炎がでないのよ!』

シロ「それはだな……たんに炎のエフェクトがないからなんで~す。 や~い、ひっかかってやんの~」

CIMG1458.jpg

マルガリータ『ふざけんな、コンチクショ─────ッ!!』

シロ「げほっ!?」



                       <劇終>

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武装神姫 クロスロード 第16話

                 武装神姫 クロスロード

                第16話 「誓い」 

 わずかに覚醒した意識のなか、あたしはどこかに横たわっていた。暗闇の中、必死に
身体を動かそうとするが、まるで自分の思い通りにならない。
 ようやく自分の努力が報われないものと悟ると、あたしは自分の置かれた状況を把握し
ようとつとめる。

 そこで、ようやくあたしは、自分のすぐそばに小さな気配があることに気がついた。

 気配の主は一言も発せず、あたしの頭を無言で撫でつけている。どういうわけか、撫で
られる度に心が落ち着いていく感じがした。

『…ごめん、リン』

                この声、トロン?

 悲痛なうめき声のようにも聞こえた気配の主が、トロンのものと知って、あたしは驚き
を隠せなかった。
『でも、今度こそリンは必ずボクが護るから』
 まるで、愛しい我が子をあやす母親のように話し続けるトロン。
 なんとか身体の自由を取り戻そうともがくが、指一本動かすことができない。
『だから…安心して、リン』
 消え入るような小さな声とともに、あたしのひたいにやわらかく、そして暖かいものが
押しつけられる感触が……

    あたしは不思議と心がやすらぎ、ふたたび深い眠りに落ちていった……

                         ※


 どこかであたしを呼ぶ声が聞こえる。次の瞬間、身体を襲った痛みに、あたしの意識は
一挙に覚醒した。
「…………」
 視界いっぱいに広がった真っ白な天井。
 まるで見覚えのない光景に自分がどこにいるかもわからず、軽く頭を振り意識をはっき
りさせようとする。視界の外に人の気配を感じ、首だけそちらに向ける。
「……美佐緒? ルーシィ?」
 ようやく結んだ焦点が、心配そうな美佐緒やルーシィたちの姿を映し出す。
「あんたたち……クッ!?」
 反射的に起きあがろうとすると、とつぜんひきつるような痛みが身体を襲い、あたしは
うめき声をあげてしまった。
『リンさま!? いけません!』
「そうですよ、まだ安静にしてなきゃダメですよ」
 ベッドの上で痛みに顔をしかめるあたしに、安堵から一転、慌てたような表情の美佐緒
が身体を支えてくれた。
「ここ……どこなの?」
『ここは病院でござるよ、隣どの』
 枕のあたりで聞こえた声に首を回すと、ナースの衣装を身にまとったガーネットが、慈
愛にみちた笑みを浮かべている。

     とりあえず、あたしも本調子じゃないし、ツッコムのは止めておこう……

 あたしの肩に手を置いた美佐緒にうなづきながらベッドに身を横たえると、あたしは病
室をぐるりと見渡した。
「……ところで、トロンのヤツは?」
 何気ない質問に、美佐緒たちの表情が曇る。
『トロンちゃんは今、DO ITにいます』
「DO IT? ……あっ!?」

              そうだ! トロンは、あの白い神姫と……

 ふさぎこんだルーシィの声に、あたしの脳裏にあの凄惨な光景がよみがえる。シーツを
投げ捨て慌ててベッドから起きあがろうとしたあたしは、またも痛みに顔をしかめるハメ
になった。

              ……うう、あたしって、ほんとバカ……

『だ、大丈夫でござるよ、隣どの。美佐緒どのが確認したところでは、トロンどのに大事
はないということでござるからな』
 身体を丸め痛みに耐えるあたしに、ガーネットが苦笑しながら教えてくれた。
「もう、せんぱいったら」
 呆れた口調とともに微笑む美佐緒を見て、あたしは眉をひそめた。
「美佐緒、あんたどこか調子でも悪いの?」
「えっ? そ、そんなことないですよ」
 慌てたように両手を振る美佐緒だが、あきらかに様子が変だった。顔色もよくないし、
なにより、すこしやつれた感じがした。
『……この病院に保管してあった輸血用の血液が足りず、美佐緒どのがずいぶんと協力し
たでござるからな』
「えっ?」
 ぽつりとつぶやくガーネットに、あたしは驚きの声を上げる。
「あっ! ガーネット、言っちゃダメって約束したのにぃ!」
『それに、リンさまが気づくまで、美佐緒さんは一睡もせずにリンさまの看病をしてくれ
たんですよ』
「あ~、ルーシィまでぇ!」
 珍しく狼狽する美佐緒に、あたしはがくぜんとしてしまった。
「美佐緒」
「えっ?」
「その……あ、ありがとう」
 美佐緒の行為に胸がいっぱいになってしまったあたしは、消え入るようにつぶやいた。
「……い、いやですよ、せんぱい。そんな他人行儀な言い方。せんぱいのであるわたし
としては、当然のことをしたまでです」
 
 なんか今、聞き捨てならないセリフが聞こえたような気がしたけど、とりあえず聞かな
かったことにしておこう……

「と、とにかく、せんぱいの身体が全快するまでは、身の回りのお世話はわたしが責任を
もってしますから、安心してくださいね」
 あたしの口元がわずかにひきつったのを見て、ひたいに一条の汗が流れ落ちる美佐緒。
「あっ、いけない! もう、こんな時間なの?」
「どうしたの?」 
 急にベッドの下のもぐり込み、ゴソゴソと何かやりだした美佐緒を見て、あたしはまゆ
をひそめる。
「さあ、せんぱい」、と美佐緒は手にしたモノをうれしそうに差し出す。
「……何ソレ?」
「何って、シビンに決まってるじゃないですか」
「いや、そうじゃなくて、ソレをどうする気なのかって聞いてんのよ!」
「シビンの使い道は一つしかありません!」
 一片の迷いなく、言い切る美佐緒。
 あたしのひたいには、これから起きるであろう出来事を予兆するかのように、痛みに耐
えていたとき以上の脂汗がびっしりと浮かんでいる。
「そんなに心配そうな顔をする必要なんてないんですよ、せんぱい。すべてわたしに任せ
ておいてください」
 ニンマリと微笑み、美佐緒が立ち上がる。
「だ、誰が使ったかもわからないシビンにほおずりするな!」
 うれしそうにシビンに頬をすり寄せる美佐緒に、必死になってツッコムが、当の本人の
耳にはまるで届いてはいないようだった。
「さあ、せんぱい」
「…………」
「シーシーしましょうねぇ♪」




  「いや───ッ! 看護婦さぁああん、助けてぇえええッ!!」




         あたしの魂のナースコールが、せまい病室に響きわたった……


                          ※


「一ノ瀬さん、けがの具合はどう?」
「あっ、姫宮先輩?」
 病室の入り口から顔だけだし、姫宮先輩が遠慮がちに微笑んでいたが、部屋の一点に目
がいくや、動きが止ってしまう。
「……えっと、何かあったの、一ノ瀬さん?」
 足下に転がるシビンと、それに勝るとも劣らぬ大きさのたんこぶを頭にこさえ、床に倒れ伏
したまま痙攣を続ける美佐緒を指さす先輩の頬は、ピクピクとひきつっていた。
「いえ、別になんでもないですよ? それより、そんなところで立ち話もなんですから、
中に入ってください」
 満面の笑みを浮かべながら手招きするあたしに、逃げることもままならぬと悟った姫宮
先輩は覚悟を決めたような顔つきになると、器用に美佐緒を避けイスに腰掛けた。
「それにしても、あなたたちって本当に仲がいいのね?」
 床に突っ伏したままの美佐緒を見ながら、先輩はポツリとつぶやいた。
「へっ、仲が…いい?」
「だって、昔から「喧嘩するほど仲がいい」と言うでしょう?」
 そう言うと、先輩は舌を出して小さく笑った。
「ええ、よく「夫婦みたいに仲がいいわね」って言われて本当に困ってるんですよぉ。ね
っ? あなた♡」
「……だれが「あなた♡」だ?」
 いつの間にか姫宮先輩の横に腰掛け、まるで何事もなかったかのようにほがらかな笑み
を浮かべ頬に手を当て照れまくる美佐緒に、あたしは唸るようにツッコんだ。

                        ※

「店長さんから話を聞いて、慌てて駆けつけてきたんだけど……元気そうで安心したわ」
 そう言いながら、先輩は花束を手渡してくれた。
「心配かけてすみません。でも、もうこのとお……って、痛っ!?」
 力こぶを作るがごとく腕を曲げて見せたが、身体を襲った痛みに、顔をしかめる。
「一ノ瀬さん!? ふぅ、まだ無理をしてはダメよ?」
 先輩は、おどろいたように腰を浮かせたが、あたしを見て安堵のため息をつく。
『姫の仰るとおりです。無茶は禁物ですぞ、一ノ瀬どの』
「うん。そうだね、気をつける」
 杓子定規な口調のレスティーアだったけど、その言外に姫宮先輩と同じモノを感じ、あ
たしは苦笑を禁じ得なかった。
『それにしても、トロンのヤツ……』
「えっ?」
 その口調にいらだちのようなものを感じ、あたしは顔をあげた。
『主である一ノ瀬どのを守ることもできず、このような傷を負わせるとは……ヤツはいっ
たい何をしていたのだ?』
「ちょっと、レスティーア?」
 真面目一辺倒なレスティーアのことだ。今のセリフのも悪意はないのだろう。でも……
『レスティーア。今の言葉はいいすぎでござる!』
 珍しく、厳しい表情でガーネットがレスティーアを諫めるが、それはレスティーアにと
って火に油を注ぐようなものだった。
『言い過ぎなものか! トロンが一ノ瀬どのを守れなかったのは事実だッ! だいたいヤ
ツは……』
『トロンちゃんを悪く言うのは止めてくださいッ!!』
 いまにも掴みかからん勢いでガーネットに詰め寄るレスティーアだったけど、驚いたよ
うに声のした方に振り返る。
『トロンちゃんは、リンさまを守るためにボロボロになるまで戦ったんです! だから…
…だから……そんなひどい言い方しないでください……』
 身体を震わせながら、必死にトロンをかばおうとするルーシィ。その姿に、怪訝そうな
顔をするレスティーア。ふたりが顔を合わせるのは今日が初めてだったけど、噂でルーシ
ィのことを知っていたのだろうか、すぐに納得したような顔になる。
『……そうか、お前がルーシィか?』
『は、はい。あ、あの、わたしルーシィといいます……はじめまして』 
 そう言うと、瞳に涙を浮かべたまま慌てて頭を下げるルーシィ。その律儀さに、レステ
ィーアは気勢をそがれたかのように苦笑を浮かべる。
『……そうだな。トロンの一ノ瀬どのへの想いの強さは、私が誰よりも一番知っているは
ずだった……私が言い過ぎたようだ。すまなかったな、ルーシィ』
『……レスティーアさん』
 ルーシィに向かって、いさぎよく頭を下げるレスティーア。それを見て、ルーシィは涙
を拭いながら愁眉を開いて微笑んだ。
 
                        ※

 一時は気まずかった空気もどこへやら、ときおり病室の外にまで響く笑い声が途絶えた
とき、一人だけ思い詰めた顔をしていたレスティーアが口を開いた。
『……ところで、一ノ瀬どの』
「ん? どうしたの、レスティーア?」
『実は、一ノ瀬どのにお聞きしたいことがあります……』
「レスティーア、止めなさいっ!」
 姫宮先輩は、敏感にレスティーアの心情を察したのだろう。珍しく諫めるような口調で
あたしたちの会話に割って入ってきた。
 先輩のきびしい声に、レスティーアは何か言いたげに顔を上げるが、すぐにうつむいて
しまう。

「……あたしに聞きたいことって……あの白い神姫のこと?」
『い、一ノ瀬どの?』
「一ノ瀬さん、どうして……」


 何気なくあたしの口をついたつぶやきに、姫宮先輩とレスティーアの驚きの声が重なっ
た……

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武装神姫 クロスロード 第15話

                  武装神姫 クロスロード

                第15話 「罪の代価」

 あたしたちのことなど忘れたかのように、トロンは静かに夜空を見上げていた。
『まだ、あらがうか、ストラーフよ?』
『もちろん』
 抑揚のない問いかけに、トロンは言葉短く、しかし毅然とした態度で答える。
『リンは、ボクにとってかけがえのない存在だからね』
「……トロン」
 一片の淀みなく、そう言いきるトロン。あたしは胸がいっぱいになって、それ以上言葉
を続けることができなかった。
『だから……』
 そう言いながら、トロンの身体がわずかに沈み込む。それに併せて、静かな殺意を秘め
た銃身が音もなく持ち上がる。
『リンを傷つける者は、誰であろうと許さないッ!!』
 吠えるようにそう叫ぶと、トロンは一直線に走り出す。でも、片足に大きなダメージを
負っているためスピードはがた落ちだった。
 白い神姫は、値踏みするかのようにゆったりとした仕草で照準を定めると、トリガーを
引き絞る。
『何ッ?』
 白い神姫が愕然とつぶやく。狙い定めたビームは確かにトロンの身体を貫いた。だが、
トロンは意に介さず走り続けている。能面のような神姫の顔に、はじめて動揺の色が浮か
んだ。
「<アクセル・ハート>……トロンのヤツ、あんな身体で」
 驚きながらも銃撃を再会する白い神姫。さすがに<アクセル・ハート>の効力も切れ、
ビームの直撃を受けるトロン。でも、その疾走は止まることがない。
『……くそッ!』
 さきほどまでの冷静さが嘘のように、舌打ちを打つ白い神姫。ついにトロンは攻撃に耐
えきり、神姫の眼下にある砂場に頭から転がり込む。
『ぺっ、ぺっ!』
 口に入った砂を吐き出しながら、トロンはゆっくりと頭上を見上げる。自身に満ちたト
ロンの表情とは対照的に、白い神姫の顔は苦渋に彩られる。
『……チェックメイトだね』
『なんだと?』
『聞こえなかった? キミはもう、詰まれたんだよ』
 身体についた砂を払いながら、ぽつりとつぶやくトロン。白い神姫の顔に、あきらかに
動揺が走る。
『何を馬鹿なッ!』
 狼狽しながらビームガンをかまえる白い神姫を気にした様子も見せず、トロンは砂地に
手を当て、ゆっくりと立ち上がろうとする。
『う、動くなっ』
『……わかってないなぁ。ボクが動こうが動くまいが、キミの負けは決まっているんだよ
?』
『そ、そんなはずは……』
『じゃあ、試してみるといいさ』
 トロンの目がわずかに細まり、その唇がある形へと変わっていく。

                       嘲笑に。

『う、うおおおおおおおおおおおおおおッ!』
 白い神姫が初めて見せた感情の発露。でも、絶叫とともに放たれるはずのビームは、沈
黙したままだった。
 耳を覆わんばかりの轟音とともに、いきなり眼下の砂場から巨大な砂注が立ち上り、ト
ロンの姿を被い隠してしまったからだ。
PBの爆発により、大量の砂が舞い上がり、白い神姫は視界を奪われてしまう。
『くそっ! こんな小細工で……んっ!?』
 しきりに目をこする白い神姫。そのとき、視界の端に砂柱を突き破り、黒い影が飛び出
す。雷光のような素早さで身をひねり黒い影に銃口を向けたとたん、白い神姫動きが止ま
ってしまった。
『腕…だと? がはッ!?』
 白い神姫は、とつぜん背中を襲った激痛に顔をしかめる。振り向いた先、フライトユ
ニットにビームソードが深々と突き刺さっていた。
『貴様ぁあッ!』
 そこには、もはや機能しなくなった己の右腕を囮に使い、残った左腕のビームアンカー
を射出したトロンが、金色の瞳で白い神姫を見つめていた。
『ふ、ふん!こんなかすり傷では私を倒すことなど不可能だ!』
『そうだね……さて、どうしたもんかな?』
 言葉とはうらはらに、あからさまに侮蔑の表情を浮かべるトロン。白い神姫の端正な顔
が屈辱にゆがむ。
『ならば、私が夜空の散策に招いてやろう! この…地を這う虫けらがッ!!』
 白い神姫がそう叫ぶと同時に、ブースターが咆哮をあげ、猛烈な勢いで上昇をはじめる。
『せっかくのお誘いだけど、遠慮しとくよ……』
 アンカーガンに内蔵されたワイヤーが、目にも止まらぬ早さで伸びていくの横目で見な
がらもトロンの口調はまるで変わらなかった。
 そして、ワイヤーが完全に伸びきり、トロンの身体がわずかに持ち上がった瞬間、かす
かな音とともにアンカーガンがパージされてしまった。
『ボクは、高いところは苦手なんでね』
 目にも留まらぬ早さで空へと消えていくアンカーガンを見つめながらながら、トロンは
つぶやいた。
 驚いたのは白い神姫の方だろう。パージされた瞬間、猛烈な勢いでワイヤーを巻き込み
ながら迫るアンカーガンをみるや回避をはじめる。
 でも、それで自分の背中に刺さったビームソードが抜けるはずもなく、必死にアンカー
ガンを振り払おうと旋回を続ける姿は、自分の尻尾にジャレつく子犬のようで滑稽に見え
た。
 そして、その数秒後、アンカーガンの本体とビームソードの柄が触れたとたん、白い神
姫の背部で閃光が起き、片方の主翼がちぎれ飛ぶと真っ逆さまに落下し始める。
『ぐはっ!?』
 幸い落ちたところは砂場だったため、落下のダメージは少なかったにたいだ。でも、白
い神姫の左胸からビームソードの刀身が夜空に向かって吃立していた。
『な、なぜ……』
 見下ろす立場から見上げる方へ、苦痛に顔をゆがめながら白い神姫が力なくつぶやく。
『別に、たいしたトリックは使ってないさ』
 トロンはそう言うと、手のひらを広げてみせる。掌の真ん中から、PBのカートリッジ
が音もなく迫り出す。
『これを、アンカーガンの射出孔に一発差し込んでおいただけさ』
「……それで、あんな威力が……」
 ようやくあたしにも、さっきの爆発の理由が理解できた。

 アンカーガンの射出孔に戻ったビームソードは、PBの爆発により再び打ち出されたん
だ。指向性爆薬の威力によりさらに加速させられて……

『さて……地を這う虫けらの王国へ、ようこそ!』
 いまさらながら、トロンの機転の早さに素直に感心していたあたしは、トロンの声音に
ゾッとして思考を中断された。
 トロンは砂場に降り立った場所と寸分違わぬ位置に立ち、静かに白い神姫を見下ろして
いる。
「もういい、もういいの……勝負はついたのよ? トロンッ!」
 トロンの瞳に宿った異様な光に、ただならぬものを感じてあたしは痛みも忘れて立ち上
がった。
『そうだね。彼女の無様な姿を見て、ようやくボクの溜飲も下がった感じだよ……』
 トロンは静かにそう言うと、太腿のラックに手をやりながら、いきなり砂の上に横たわ
る白い神姫の腹部を力任せに蹴りとばした。
『がはっ!?』
 身体を襲った激痛に思わずあえぐように口を開ける白い神姫。トロンは、大きく開いた
口めがけて手にしたもの無造作に放り込んだ。
 あたしの見間違いじゃなければ、それはPBの予備カートリッジだった。

「トロン……あんた」
 トロンの考えがわかったあたしは、よろめきながら歩き始める。
 白い神姫も、口中の異物を吐き出そうとするが、しゃがみ込んだトロンに顔を鷲掴みに
され阻まれてしまう。

『でもね、こいつはリンを傷つけたことの罪を償ってないんだよ……』
 トロンはまるで、物語でも語って聞かせるような口調で誰にともなく話しはじめる。

「だめ…」
 必死になって前に進もうとするが、足がもつれて思うように動かない。

「やめて…」
 白い神姫も、力を振り絞って逃れようとするが、どこにそんな力が残っていたのか、ト
ロンの身体はピクリとも動かなかった。

「お願い! もうやめてッ、トロ───」
 あたしの悲痛な叫びは、PBの炸裂音に阻まれトロンに届くことはなかった。
 掌に内蔵されたPBが爆発した瞬間、口中の予備カートリッジも誘爆し、白い神姫の頭
部は瞬時に四散した。

「なんで? どうして…こんなこと…」
 力なく地面に座り込むあたしの目の前で、至近距離からの爆発のため原形を留めぬほど
破損した左手から白煙を纏わりつかせたまま、トロンが立ち上がる。

『……だいじょうぶだよ』
 愉悦にも似た満足そうな笑みを浮かべたまま、トロンは夜空に向かって話しかける。
『キミを傷つける者は、誰であろうとボクが許さない』
「…………」
『今度こそ、絶対に…守ってみせる…から………シャー…リー…』
「えっ?」
 いきなり耳朶をうった聞きなれない単語に、あたしが顔を上げると同時に、まるで糸が
切れた人形のようにトロンが倒れ込む。
「トロン?」
『トロンちゃん!!』
 鬼気迫るようなトロンの戦いにおびえきっていたルーシィだが、呪縛が解けたかのよう
にトロンにしがみつくと泣きじゃくりはじめた。
『トロンちゃん、しっかりして! トロンちゃん!!』
 何度も何度もトロンを揺さぶり続けるルーシィ。あたしは取り乱すルーシィの間に割っ
て入ると、トロンをそっと抱き上げた。

                         ※

『美佐緒どの、あそこでござる!』
「せんぱいっ!」
 公園の入り口の方から美佐緒とガーネットの声が響き、複数の足音が入り乱れて聞こえ
てきた。
「み…さお…」
 安堵のためだろうか、腕に中に倒れ込むあたしの怪我に気づいた美佐緒が、悲鳴にも似
た金切り声をあげる。
「せんぱいっ? ……ひ、ひどい、す、すぐに救急車を!」
「しっかりするんだ、一ノ瀬くん!」
『隣さんッ』
「と、隣ちゃん……」
 店長さんやリベルター、それに天堂さんの声を聞いて、張りつめていた心がゆるんだの
だろうか。あたしは身体中から力が抜けていくのにあらがうことができなかった。

 美佐緒に抱きしめられたまま、薄れていく意識の中、あたしはふと夜空を見上げた。


 この凄惨な戦いを、無慈悲なまでに照らし続けていた月を背に、遙か高みからあたした
ちを見下ろす影を見たような……気がした。

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武装神姫 クロスロード 第14話


                    武装神姫 クロスロード

                     第14話 「強襲」 

「あれって、神姫?」
 あたしは空を見上げながら、誰にともなくつぶやく。
 距離が離れているのと、青白い月の光のせいで細部までよくはわからなかったが、まち
がいなく小さな影は神姫のようだった。
 それにしても、頭上の白い神姫はみたこともないタイプだった。強いていえば、アーン
ヴァルMK・2に似ていないこともないが、一対の巨大な翼や全体のフォルムは鋭角的で、
より攻撃的なイメージを見る者に与えた。
「……あたしたちに、何か用?」
 まるで変わらぬ状況に、耐えかねたあたしが問いかけるが、やはり白い神姫は押黙った
ままだ。
『キミって、ずいぶんとシャイなんだね?』
 まだ気が高ぶっているせいだろうか、いつもならとうに寝ぼけモードに戻っているはず
のトロンが、バッグの端に腕をかけながら話かける。
 だが当の本人は、それが自らに課せられた使命といわんばかりに無言を貫いている。
「……行くわよ!」
『えっ?』
『あの、リンさま?』
 いきなりきびすを返し歩き始めたあたしに、トロンとルーシィは驚いたように問いかけ
てくるがあたしは一切取り合わなかった。

            これ以上、あの神姫に関わらない方がいい。

 理由はわからなかった。でも、あたしの勘はそう訴えかけ、一分一秒でも早くこの場か
ら立ち去るようにとあたしを急かす。
 早足から、ついに駆けだしたあたしの背中に、氷柱を押し当てられたような悪寒が走る。

                       これって……

 過去に幾度となく感じた感覚。あたしはとっさに身をひねった。
「ぐっ!?」
 直後に、右肩にやけ火箸を突きつけられたような痛みが走る。あまりの激痛に足がもつ
れ、あたしは路上に倒れ込んでしまった。
『リ、リンさま?』
『どうしたの、リンッ!』
 投げ出されたバッグから、はいでてきたトロンたちが心配そうに駆け寄ってくるが、あたし
はろくに返事もできない有様だった。
『ひどい……』
 ケガに気づいたルーシィが、口を押さえて絶句する。
「だ、大丈夫。これぐらい、なんともないわ」
 あたしは痛みに顔をしかめながらも、ルーシィに無理に笑って見せた。
『……お前ッ!』
 耳元で、怒号にも似た声が響く。
「ト、トロン、あんた……」
『ルゥ! リンを頼む!!』
 トロンの口調から容易ならぬ雰囲気を感じると、あたしは痛みも忘れて制止しようとし
たが手遅れだった。
トロンはあたしの声に耳を貸そうともせず、白い神姫めがけて走り出す。
「ト、トロン! 待って!!」
          
 あたしはうめき声を上げながら無理矢理身体を起こすと、ふらつきながらトロンの後を
追う。

  トロンのバカ! これじゃあ、リアルバトル……ううん、事態はもっと最悪じゃない!

                          ※

 猛スピードで眼下に走り寄ってくるトロンを白い神姫は黙って見下ろしていたが、手に
したビームガンをいきなりトロンへと向けた。
『!?』
 白い神姫がトリガーを引き絞るよりも早く、トロンは転がるような勢いで身を捻る。
 間一髪。一瞬前までトロンが立っていたアスファルトが蒸発し、巨大な穴を穿つ。その
大きさに比べてはるかに高出力なビームに、横目で見ていたトロンの表情が強ばる。
「トロン……」
 痛みに眉をしかめ、よろめくような足取りであたしはトロンたちの後を追う。間髪入れ
ずに襲いかかるビームの猛射を、トロンは必死にかわし続けている。

               でも、どう考えてもトロンが不利だ。

 そう、どれほど見事に攻撃をかわそうと、飛行能力を持たないトロンには反撃のしよう
がない。このままでは、遅かれ早かれあのビームに貫かれてしまう。
 もちろん、ソウルテイカーを作ったのはトロン自身だ。その長所も短所も、誰よりも知
り尽くしているはずだ。
だが、頭に血が上ってしまったのか、トロンはただガムシャラに白い神姫へと向かうだ
けだった。白い神姫の猛攻から逃れるためか、一つ先の路地へと姿を消したトロン。白い
神姫もまた音もなくその後を追う。
「あいつったら、もうっ!」
 短い舌打ちを打つと、あたしはよろめきながら路地を曲がった。

                          ※

 路地に入り込むと、塗り込められた闇の中にまばらに街路灯の灯りが浮かんでいる。そ
の闇を切り裂くかのように、光の柱が降り注ぐ。
『なぜ、キミはこんな事をするんだ!』
 断続的に降り注ぐビームをかいくぐりながら、詰問するかのような口調で問いかけるト
ロンの声が聞こえた。薄明かりに照らし出されたその身体は、幾筋もの白煙をまとわりつ
かせていた。

 いくら回避能力に優れているトロンでも、あの攻撃を凌ぎきることは無理だったんだ。

『……汝らは、あの罪人に組みする者』
 白い神姫がいきなり口を開いた。
『罪人?』
 まるで要領を得ない回答に、トロンの表情が曇る。
『……よって、この場にて処断する』
『何を…言ってるんだ、キミは?』
 まるで感情を表に出すこともなく、ただ記憶させられた単語の羅列を口にしているかの
ような無味乾燥とした声音がおごそかに響く。
 トロンの問いにもはや興味を示すこともなく、白い神姫の猛攻が再びトロンに向けられ
る。襲いくる灼熱の矢を必死にかわしながら、トロンは近くの児童公園へと逃げ込んでい
く。
『あ、あの、リンさま。 どど、どうしたらいいんですか?』
「どうしたらっていわれても……」
 公園内へと姿を消したトロンの後ろ姿を追いながら、慌てふためくルーシィの問いかけ
にあたしは口ごもってしまう。 

               せめて、こんなときに……そうだっ!

 必死にフル回転させていたあたしの脳裏に、一筋の光がさす。

「ルーシィ! 美佐緒に……」
『とぅるるるるるるっ! とぅるるるるるっ!』
「ひっ!?」         

 びっ、びっくりした! 虚ろな瞳であたしを見上げ、いきなり唇を突きだし呼び出し音
はじめたルーシィ。あまりに異様な姿に、あたしは身体を襲う痛みも忘れたほどだった。
「で、電話? 誰よ、こんな時に!」
『とぅるるるるるるっ! かみしろ みさおからです。とぅるるるるるるっ! かみしろ
みさおからです……』
 呼び出し音を続けながら、器用に送信主の名を告げるルーシィ。あたしは、間髪入れ
ずにルーシィの鼻の頭を押していた。
「あっ、せんぱいですかぁ?」
 ルーシィの口から紡がれた美佐緒の声が、はじめて頼もしく聞こえた。
「あ、あのね、美佐緒……」
「ひどいですよぉ、せんぱい! あれほど待っててくださいって言ったじゃないですか!」
「あ、いや、だから……」
 必死に状況を説明しようとするが、美佐緒のヤツはそんなあたしの気持ちも知らずにブ
ーブー文句を垂れている。
 あたしは大きく息を吸うと肺いっぱいに空気をため込み、美佐緒の会話を遮るように声
も限りに叫んだ。
「お願い! 助けて美佐緒ッ!!」
「……へっ!?」
 絶叫にも似たあたしの叫びに耳をやられたのか、はたまた、「助けて」などという言葉
があたしの口から出たことに戸惑っているのか、美佐緒の口をついて出た言葉はなんと間
の抜けたものだった。
「ど、どうしたんですか、せんぱい?」
 それでも、あたしの声音から容易ならない事態が起こったのを肌で感じたのだろうか、
美佐緒の声は真剣そのものだった。
「トロンが、トロンのヤツが変な神姫に襲われてるの。すぐそばの児童公園に……!?」
 みるみる顔色がドス黒くなっていくルーシィを鷲掴みにしながら、必死に状況説明を続
けるあたしの声は、足下を揺るがす振動と耳を覆わんばかりの大きな音のせいで中断して
しまった。
「お願い、早く来て!」
 まだ美佐緒は何か話しかけてきたが、あたしは電話を切ると、音のした方──公園へと
駆けだした。

                           ※

 あたしは、目の前の光景に絶句してしまった。ポツリポツリと点在する遊具が月の光に
照らし出され、どこかいびつな影を地面へと映し出す公園内。
 その敷地内にあった一本の木が、断面から煙を上げながら地面に転がっていた。そして、
あろうことか片足を倒木にはさまれトロンがもがいていた。
 下敷きになったのは足首だけど、神姫からすれば大木といっても差し障りのないサイズ。
木はピクリとも動きそうにもなかった。
『リ、リンさま。トロンちゃんの腕が……』
 ようやくルーシィも気づいたみたいだった。木を押し返そうとするトロンは片手しか使
っていなかった。
 残った右腕は、中程からちぎれかかっていた。
 トロンの懸命な努力を高みから無言で見下ろしていた白い神姫が、いきなり手にしたビ
ームガンをこちらに向ける。
『あのストラーフはもう動けない……まずは、汝たちから処断する』
『リ、リンさまを撃つというなら、わ、わたしから撃ってください!』
 あたしのひたいに不動の直線を結んだ銃口が、かすかにゆらいだ。
「ルーシィ!?」
 バッグから飛び降りいきなり駆けだしたルーシィが、白い神姫を見上げながら両手を広
げてそう叫んでいた。
『……よかろう』
 白い神姫は、ゆっくりと照準をルーシィに定める。
「ばかッ!」
 あたしは、慌ててルーシィに被い被さる。
『リンさま? なぜ……』
「あたりまえでしょう! ルーシィを身代わりにできるわけないじゃない!」
『リンさま……』
 声を荒げて答えるあたしに、ルーシィは放心したような表情を浮かべていたが、やがて
身体が震えだし大粒の涙を浮かべはじめる。

 ほんとうは怖かくてしかたがなかったのだろう。精一杯の勇気をふり絞り、ルーシィは
あたしをかばってくれたんだ。

「……ありがとう、ルーシィ。 もう、充分だよ」
 あたしにしがみつき、嗚咽をあげて泣いているルーシィの頭を、あたしはやさしく撫で
さすった。ビームでの負傷のせいか出血こそひどくはないが、刻一刻とあたしの体力は消
耗していた。
 悔しいけど、もうあたしも身動きできそうにない。
 明確な殺意とともに、再びあたしに銃口を向ける白い影を、あたしは歯がみしながら睨
みつける。

 だが次の瞬間、猛烈な破裂音が人気のない公園に響きわたる。
 思わず堅く目を閉じるあたしだが、それがビームを発射した音とは違うことに気づく。

                   これって、PBの……

 そう、それはあたしの聞きなれた……PBの炸裂音だった。捻るように向けた視線の先
にトロンが音もなく立っていた。
 でも、トロンの無事に出そうになった安堵のため息を、あたしは飲み込まざるをえなか
った。
 トロンの右足は、足首から先がなかった。


 とっさにPBを使い、自身の足を壊して窮地を脱したトロン。その悲壮なまでの覚悟に、
あたしは声もでなかった。

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パソコン!? いいえ、“メモ帳”です

需要とは反比例に、なんかSSの筆の運びが異常に進んでいる男、シロでございます

SSを書きながらフと思ったのですが、web上でこういった小説を発表している人たちって、やはりパソコンに直接書き込んでいるんでしょうか?

じつは私は、パソコンを前にするとほとんど筆が進まないタイプだったりします。
「わんだふる神姫ライフ」を書きはじめたころは、ノートを持参してわざわざファーストフードや喫茶店でコツコツと執筆を続けていました。
ところがこのやり方だと、けっきょくパソコンに打ち直さなければならず二度手間以外のなにものでもありません。しかも、わたしは極度の悪筆のため後日読み直してみても書いた本人が判読不能という有様です(汗)。

このままではアカン! と一念発起し、いろいろ調べてみた結果ようやく出会ったのが☟のブツでした。

CIMG1492.jpg


         KING JIM製 デジタルメモ「ポメラ」です。

ポメラとは、今回の記事のタイトルにもしましたが、「パソコン!? いいえ、“メモ帳”です」のキャッチコピーが示す通り、「手軽に書く」という一機能にのみ特化したデジタルメモ帳ともいえる代物です。

画像では、ただの箱にみえますが……。

CIMG1493.jpg

まず蓋を持ち上げ……。

CIMG1495.jpg

たたまれた状態になっているキーボードをスライドさせると……。

CIMG1494.jpg

あっという間に完成です。
マルガリータと比較してもらえば分かりますが、かなりコンパクトな作りです。

さいしょは操作法がよくわからずとまどいましたが、いまでは「コレがないと、もうSS書けない!」というぐらい大事な存在です。

ところがひんぱんに使っていたためでしょうか、壊れましたよ、愛用のポメラが……。

CIMG1496 - コピー (2)

ちょっと見ずらいかもしれませんが、赤線で囲ったところ……。

CIMG1496 - コピー

キーボードのヒンジの部分がへし折れました(なんかホコリだらけの画像でスミマセン。よく拭いたつもりだったんですが……)。
構造上、いつかはやるだろうと思ってましたが、じっさいこうなると凹みます。

まあ、このままでも使えないことはないんですが、キーを押すとしっかり固定されてないもんで変な反動があるんですよね。しばらく我慢してたんですが、どうにも慣れない。
けっきょく、後々のためを考えて、先日ヨ〇バ〇カ〇ラで買ってまいりました。

CIMG1498.jpg

            同じ型の「ポメラ DM20」を!!

いや、まあ、新しいタイプも出てたんですが、こっちの方が使い慣れてますしねぇ。

CIMG1499.jpg

とりあえず、これで古い方がいつお亡くなりになっても問題なし(笑)。



それにしても、自分としてはポメラってかなりマイナーな存在だと思っていたんですが、先日武装神姫の大家、黒猫さんのブログでもポメラの記事が載っており驚きました。
黒猫さんがポメラを使ってSSを書いているというのも驚きでしたが、「自分も持っている」、「写真を見て、これは知っている」等のコメントがあり、意外と認知度高かったのか、とポメラをちょっぴり見直しました(笑)。

CIMG1500.jpg

今後、小説を書いてみたいと思う方がいたら、この「DM20」はお勧めですね。
変換機能に若干難ありですが、基本的にはコレ一台で充分だと思います。
新機種が出たためか、かなりお値段も値引きされてますしね(わ、私が初めて買ったときは……ギギギ!)。


さ~て、それではそろそろSSの方の作業に戻りたいと思います。


では!



あっ、ちなみにSSの方は現在こんなカンジです☟。

CIMG1497 - コピー


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お色直し?

最近、SSの筆の進みが調子いいもので、すっかり製作関係がおざなりになってるんですよね。
考えようによっては、ネタが枯渇して開店休業状態になるよりはマシなんでしょうが、やはりこのままというのもはよろしくないようで……。

というわけで、ここ数日はひさしぶりに神姫を取り出しいじっておりました。

CIMG1435.jpg

……………

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マルガリータ『今、「なんだ、またマルガリータかよ」とか思ったオマエ! 表出ろッ!!』

シロ「いやマテ! お前、何いきなり喧嘩売ってんだ?」

マルガリータ『いや、何か今、悪意の電波を感じた気がして……』

シロ「落ち着け」



おほん! 失礼いたしました。
このマルガリータですが、我が家でも一、二を争う古参神姫なもんで、かなりあちこちにガタがきていましたので、今回はそこらへんのプチ改修を行いました。

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まずは頭部、最初に塗装した際、距離が近すぎたせいか厚ぼったくなったうえに髪のすきまに入り込み、気泡ができてしまいかなり見苦しくなったため、塗装し直しました。
これでようやく、マルガリータの本来の髪の色が復活です。

マルガリータ『まったく、しかもあんたが小汚い手でペタペタさわるもんだから、なんか髪が黒ずんできて最悪だったわよ!』

シロ「すまん、すまん。でも、お前らに触る前にはちゃんと手は洗ってたんだぞ。ただ、塗装の合間に写真撮ってたりしたから手に付いた塗料がくっついただけだろ?」

マルガリータ『だからその都度手を洗え────ッ!』

シロ「さ~て、次は、と……」

マルガリータ『ごまかすな!』


次に着手したのは、関節関係。
じつは頭部が重すぎたのか、首の関節がグラグラしてたもんで瞬着を流し込んだのですが、ここでとんでもないハプニングが!
量が多すぎたのか、素体の中にまで瞬着が流れ込んでしまい、首関節は斜めに固定され、左腕もほとんど動かなくなってしまうという有様。
そのため今までの寸劇でもポーズ付けが限定され大変だったため、今回おもいきって素体自体を交換しました。
おかげでようやく、本来の可動域を確保できました(ホッ)。

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マルガリータ『う~ん、肩こりが治ったみたいで気分爽快!』

シロ「……肩こりじゃねぇって」


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さてさて、お次はスカートアーマーです。
ここは、シュメッターリングのスカートにフェイ・イェンのパーツを取り付けたものなのですが、もともとパーツがすべて連結されているため足を上げるとスカートに干渉してしまい、思ったほどポーズをつけられませんでしたの、ここのところを少々いじってみました。

CIMG1438.jpg

とりあえず、こんな感じで上下に動きます。まあ、試験的な意味合いもあるので今回いじったのは、ここ一か所だけなんですけどね。
それにしても、何度も塗りなおしているせいかアップで見るとスカート部分の塗装が汚いなぁ。


あとは、全体に塗装が剥げてしまっていた場所を塗りなおして、今回のプチ改修は終了となりました。
傍から見ると、ほとんど変化がないようにみますが個人的には満足しています。

若干ですが動きも良くなりましたし、これで寸劇で使う時にも……ゲフ!?

CIMG1439.jpg

マルガリータ『さあ! これからは、ジャンジャン踏みまくるわよ!!』

シロ「……ヲイ!」

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武装神姫 クロスロード 第13話

     
                武装神姫 クロスロード

             第13話 「月下の邂逅」

 グリューネワルトは、やれやれといった風情で声の主へと顔を向ける。
『……おひさしぶりですわね、リベルターさん。 ご機嫌はいかが?』
 揶揄をふくんだ質問に、リベルターの表情がかすかに強ばる。
『あまり良くはないわね。“いかなる理由があろうとも、店内での私闘を禁ずる”。以前に
もそう言ったはずよ、忘れたのリューネ?』
 険しい表情で自分をにらみつけるリベルターに、グリューネワルトは気にした素振りも
見せない。
『忘れてはおりませんわ。ただ……』
 そこでいったん話を区切ると、グリューネワルトはいたずらっ子のような笑みを浮かべ
る。
『ただわたくしは、躾の行き届いていないこの小悪魔さんに、礼儀というモノを教えて差
し上げようと思っただけでしてよ?』
 リューネの挑発に、気色ばんだトロンが詰め寄ろうとするが、ガーネットにいく手を阻
まれる。
「いい加減にしろ、リューネ!!」
 さきほどまでの気弱そうな雰囲気はどこへやら、男は声を荒げてグリューネワルトを怒
鳴りとばす。その剣幕にリューネ(さすがに長いからこう呼ぶね)も気をそがれたのか、
不満そうに頬をふくらますとそっぽを向いてしまう。
 思ったより子供っぽい性格なのだろうか、そんな彼女を苦笑いを浮かべて見ていた男が
床の上に視線を向ける。
 「本当にごめん、リベルター。久しぶりに来たっていうのに、さっそくトラブル起こしちゃ
って……」
 そう言うと、男はリベルターに向かって深々と頭を下げる。
『い、いえ、私の方こそつい感情的になってしまって……半年ぶりですね。お久しぶりで
す、天堂さん』
 リベルターは慌てた素振りで両手を降ると、男に負けないぐらいの勢いでおじぎする。
「それと……」
 男、天堂さんは小さくつぶやくと、生真面目な顔であたしたちの方に向き直った。
「ぼくの不注意で、みんなに不快思いをさせて悪かったよ、ゴメンッ!!」
 謝罪の対象に自分も含まれていると気づくと、トロンが呆気にとられたよう顔になる。
天道さんの真摯さに態度を軟化させはじめたトロンだが、まだ納得できないのだろうか、
不満そうな顔を隠そうともしない。
 トロンの頑固さに呆れながら、あたしは内心苦笑を浮かべる。
「ほら! いつまでブンむくれてるのよ、あんたは? ルーシィが見てんのよ!」
『えっ?』
 メンテナンスが終わったのだろう。あたしの指さす先には、トロンの剣幕に恐れをなし
たのか、リベルターの背後に隠れるようにしてルーシィがこっちの様子をうかがっていた。
『ふぅ、わかったよ!』
 乱暴に頭をかきながら、トロンは投げやりな口調でそう言った。
『ほら、もうボクは怒ってなんかないから──こっちにおいでよ、ルゥ』
 そう呼びかけるが、なぜかルーシィは不思議そうにトロンを見つめているだけだ。
「どうしたの、ルーシィ?」
 手招きするあたしに、ようやくルーシィはホッとしたような顔になり、リベルターの背
後からでてくるとおずおずとこっちに歩いてくる。
 でもルーシィの様子はどこかへんだった。あたしたちの前まできても、どこかそわそわ
として落ち着きがない。
『いったい、どうしたっていうのさ?』
 いぶかしげな顔でそう問いかけるトロンを、ルーシィはだまって見ている。
『え、えーと……ど、どちら様でしたっけ?』
 しばしの間の後、モジモジしながらそう尋ねるルーシィ。
『はっ?』
 トロンのあごがカクンと落ちた。
             
『え~~~っ!? ト、トロンちゃん……なの?』
『それ以外に、いったい誰に見えるっていうのさ?』
 こぼれんばかり両目を開き、おどろくルーシィ。トロンはそれを見ながら、憮然とした
表情で答える。
 笑いをかみ殺しながら、とりあえず目の前の物体は一応トロンだと説明してみるが、
ルーシィは頑として信じようとしない。
『だ、だって! トロンちゃんはもっとこう、小っちゃくって、ぷよぷよしてて、ハナが
顔にめり込んでて……』
『……ルゥって、ボクのこと、そういう目で見てたんだ?』
「あたしもずっと、そう思ってたけど?」
 言外に、ほんの少し嫌みをのせてつぶやくとトロンはますます不機嫌そうな表情になり、
場は一瞬にして笑いの渦に包まれた。

                          ※

 店のど真ん中でいつまでもおしゃべりしているわけにもいかず、あたしたちは、ぞろぞ
ろといつもの休憩用スペースへと移動していた。 
「でも、トロンってほんとに変な神姫ですよねぇ、せんぱい?」
『……いやいや、ボクなんて、みさキチの足下にも及ばないさ』
 打てば響くかの如くツッコむトロンに、今度は美佐緒の表情が曇る。
「ま、まあ、おたがい遠慮なく話せるのは、仲がいい証拠っていうしね」
 トロンにシッ、シッと手を振られ、歯を剥きだして威嚇を続ける美佐緒に恐れをなした
のか、ソファーの隅の方で縮こまっていた天堂さんが本人は遠慮しまくりながら話しかけ
てくる。
『それにしても……』
 天堂さんに対するトロンと美佐緒の過剰なまでの反応に、リューネが不思議そうな表情
を浮かべながら口を開く。
『お二人は、ずいぶんと隣さんにご執心のようですが、あなたがたは彼女とどういう関係
ですの?』
「妻よっ!」
「ちがうっ!」
『そうだ! リンはボクの嫁だッ!!』
「それも、ちがうッ!!」
 一片の迷いなく即答するダブルバカに、あたしは稲妻のごときツッコミを入れるが、妙
な視線を背後に感じゆっくりと首をめぐらす。
『…………』
 そこには、指をくわえながら何か訴えかけるような顔のルーシィが、黙ってあたしを見
上げていた。


       ……ひょっとして、ルーシィもあたしのこと、イヂりたいの?


 言葉に出さずとも伝わったのだろうか? ルーシィは、しっかりとうなずいた。

                        ※

「あっ、そうそう、肝心なこと聞くの忘れてた! リベルター、ルーシィのメンテの結果
どうだったの?」
『はっ?』
 話についていけず、ひたいに手を当てうつむいていたリベルターが、おどろいたように
顔を上げる。
 場の空気を少しでも変えようと、あたしはさかんに目配せを続けるが、恫喝されている
のかと勘違いしたのかリベルターの顔色がみるみる青ざめていく。
『あっ、はいっ。ルーシィにはとりたてて異常は見あたりませんでした』
 ようやくあたしの意図に気づいてくれたのか、リベルターは両手をポンと打ちならすと
一気にまくしたてはじめる。
「そうなんだ? そりゃあ、よかった」
 とりあえず話が逸れそうな雰囲気に胸をなで下ろしながらも、あたしはルーシィの身体
になんら異変がなかったことを素直に喜んでいた。
『ただ……』
「えっ? ただ?」
 急に思わせぶりな口調になったリベルター。慌てるあたしを見上げると、いたずらっ子
のような笑みを浮かべる。
『実は、検査の結果がでるまで時間があったので、ルーシィに射撃のテストをしてもらっ
たんです』
「???」
 話がつながらず怪訝な顔になるあたしだが、リベルターは気にせず話を続ける。
『そうしたらですね。なんとルーシィは、ターゲット撃破率82%をマークしたんですよ?』
 我が子の事のようにはしゃぐリベルターには申し訳なかったが、あたしにはいまひとつ
ピンとこない。
「え~と、……それってすごいの?」
『かなりのものでござるよ、隣どの』
 あたしの問いに、感心したような口調でガーネットが相づちを打つ。
 しかし、まだ釈然としないあたしに気づくと、トロンは大きなため息をついた。
『リン。ルゥは起動してから、まだ数日しかたっていないんだよ? しかも実戦の経験は
皆無ときてる!』
「あっ、そうか!」
 ようやくあたしが理解すると、トロンとルーシィが顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。
 無理矢理話題を変えたのが幸をそうしたのか、一時は荒れた場もなんとか収まり、あた
しはこれ幸いと店の出口へと向かった。
「や~ん。待っててくださいよぉ、せんぱ~い」
「もう、なにやってんのよ? 先に行ってるわよ!」
 トイレに駆け込む美佐緒を、あたしはため息とともに見送った。

        それにしても、ずいぶんと親しい間柄みたいね、あの二人……

 あたしは振り返り、店の奥の方で熱心に何かを話し合っている店長さんと天堂さんの姿
に見入っていた。

『……どうも、グリューネワルトが原因みたいだよ』
「えっ?」
 胸の内に生じた疑問に答えるかのようにつぶやくトロン。驚くあたしを気にした様子も
みせず、にらむように二人を見ている。
『ここ数日、グリューネワルトが胸騒ぎがするといい続けるんで、恵一郎は半年ぶりにこ
こに来たみたいだね』
『だ、だめだよトロンちゃん、そんなことしちゃあ』
 何かに気づいたような顔で、トロンを諫めるルーシィ。どうやらトロンは、二人の会話
を盗み聞きしているみたいだった。
 神姫の目や耳は、高性能のカメラや集音マイクの役割も果たす。それゆえに、他の人の
プライバシーを侵害しかねないこの能力を使わさないようにするのは、神姫オーナーの義
務ともいえた。
「ちょっとトロン! やめなさいってッ!!」
『くっ!? ……ふぅ。そんなこと言ったって、リンだってあの二人に興味があるんだろ
う?』
 あたしの大声を間近で拾ってしまったトロンが、耳を押さえながら反論する。
「べ、別に半年も店に来ないような神姫とオーナーに興味なんて……半年?」
『どうかしたの、リン?』
 彫像のように固まったあたしに、いぶかしげな顔でトロンが話しかけてくるが、トロン
の言葉は一言たりともあたしの耳には届いてはいなかった。

                そう、半年前…この店は……

 あたしの脳裏には、以前桜庭さんから聞いた話が……“ナイトメア”と呼ばれた事件の
ことが思い浮かんでいた。

            じゃあ、天堂さんとリューネは、あの事件に?


                        ※

『あ、あの、リンさま。美佐緒さんをおいて来ちゃってもよかったんですか?』
「……こどもじゃないんだから大丈夫よ」
 ルーシィの控えめな問いかけに、あたしは言葉少な目に答えながらなおも歩き続ける。

 あたしは、さっきから胸を埋めつくす不安感を振り払うかのように頭を振った。

               どうにも嫌な胸騒ぎがした。
 
『リンが望むんだったら、ボクがいつでもあの男にとどめをさしてあげるよ?』
「ば~か、そんなんじゃ……!?」
 トロンの的外れな問いかけに、心の中で苦笑を浮かべるあたしだが、次に紡ぐべき言葉
がでるより早く背後を…いや、夜空を仰ぎ見る。


           頭上には、青白い輝きを放つ満月が輝いていた。

      そして、その光を受け、白い影があたしたちを静かに見下ろしていた。

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