神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

武装神姫 クロスロード 第22話

                  武装神姫 クロスロード

         第22話 「トロンVSグリューネワルト その3」


『URAAAAAAAAAAAA!』
『うおおおおおおおおおおおおッ!』
 さっきより一段と鋭さを増したリューネの攻撃を、トロンは少しも臆さず迎え撃つ。
 一見すると優勢に見えるリューネだが、その表情には明らかに戸惑いと苛立ちの色が浮
かんでいる。
「“半歩”」
 敵の間合いに自ら踏み込み、相手の攻撃のタイミングを崩す技“半歩”。その存在を知
らないリューネはいかにも戦いずらそうだった。
 でも、それでも戦いはリューネに優勢にうごいていた。
 何度めだろう……リューネの拳を受け、トロンはフィールドに倒れ込む。
『……くっ』
 そして、これも何度めだろうか。トロンはまた立ち上がる……。
 さっきリューネの顔に浮かんだ戸惑いと苛立ちは、間合い云々よりもトロンのこのリア
クションのためだったかもしれない。
 両手をだらりと下げたまま立ち上がり、ニヤリと笑うトロン。驚愕に彩られるリューネ
めがけて攻撃を再会する。
『くっ!? ……このぉッ!!』
 いままで受けたダメージを感じさせないトロンの攻撃のするどさに、リューネの顔がお
どろきに彩られる。
『いい加減にしてくださいませんこと? いったい、何が貴女をここまで……』
 完全に防御一点張りになってしまったリューネが叫ぶ。でもトロンは、リューネの問い
の答えることなく攻め続ける。
 リューネは唇を噛みしめながらトロンを見ていたが、顔面めがけて突き込まれた拳を無
造作に弾くと攻勢に転じた。
 トロンの態度が、リューネのカンに障ったらしい。
『貴女に何がわかって?』
 リューネの剛拳がトロンを襲う。必死にガードを続けるトロンだが、リューネの声音に
ハッとしたように顔を上げる。
『貴女は何も知らない! 失うことのつらさも……』
 唸りをあげ、矢つばきに繰り出される攻撃を“一重”で捌き続けるトロン。
『悲しみもっ!!』
『グッ!?』
 かろうじて、リューネの攻撃を避けつづけたトロンだったけど、ついに一撃をかわしそ
こねる。巨大なハンマーを思わせる打撃を受け、トロンはまたもやフィールドの端まで吹
き飛ばされる。
 倒れ伏し身動き一つしないトロンを見つめていたリューネは、天を仰いだ。
 その頬に、ひとすじの涙が流れ落ちる。
『カノンさん…ナバトさん……ノインさん。また、あんな思いをするくらいなら……』
『……いっそ…わたくしが全てを背負った方が…マシです…わ……かな?』
『トロンさん!?』
 胸の内を呼んだかのように続けられたセリフに、リューネがおどろきながら前を向く。
 トロンはよろめきながらもフィールドの壁面に手をやりながら、なんとか立ち上がると
微笑んだ。
『……やっとボクにもわかったよ。キミの本心がさ……』
 トロンの言葉に、リューネの顔にけわしさがにじむ。
『……ようやくそれに気づいたというのなら、さっさと降参してくださりませんこと?』
『残念だけど、それだけは無理だ!』
 リューネの言葉を遮るようにトロンが叫ぶ。リューネの目が細まり、かすかに歯ぎしり
の音が聞こえた。
『わたくしの気持ちがわかったといいながらこの態度……ほんとうに、理解しがたい小悪魔
さんですわね?』
 頭を振りながら、呆れたような口調でトロンに向かって歩を進めるリューネ。
『わたくしたちの力の差は歴然──それなのに貴女はなおも立ち上がり挑もうとする……
何が貴女をそこまで駆り立てるのです?』
『キミと同じさ……もう、あんな思いはしたくないからだよ』
 リューネの歩みがピタリと止まる。
『ボクは自分のマスターを……リンを守ることができなかった。もう、あんな思いはした
くない!』
 うつむきながら、つぶやくように話していたトロンが、不意に顔を上げる。
 ボロボロになったトロンの身体。でも、トロンの金色の瞳は、爛々と闘志を宿していた。
トロンと目があったとたん、リューネはハッとしたように身構える。
『トロンさん……貴女は……』
『あんな思いをするぐらいならボクは……戦うッ!!』
 血を吐くような叫びとともに、トロンリューネめがけて突き進む。
『トロンちゃん……』
 そういいながら、無意識にあたしの服の袖をつかむルーシィ。感極まったのか、それ以
上言葉が続かない。

              でも、それはあたしも同じ気持ちだった。

『……あなたも“神姫”でしたのね、一応……』
 あたしだからこそかろうじて聞き取ることができたリューネのつぶやき声。その声音は
慈しみを感じさせ、彼女の口元に浮かんだ笑みは、あたしが一度もみたことがいほどおだ
やかだった。
 でも、それはほんの一瞬のこと。リューネの顔が戦う者のソレになる。
『貴女にそこまでの“覚悟”があるのなら、わたくしも全力でお相手させていただきます
わッ!』
 そう言いながら、リューネの身体が音もなく動く。

『URAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 足下を揺るがすような雄叫びとともに、リューネがトロンめがけて突き進む。

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!』

 トロンもまた、咆哮をあげる。その気迫は一歩もリューネに負けてはいなかった。 

『ペィィィィィンッ──ナッコォォォオオオオオッ!!』

 大気を切り裂き、うなる剛拳。ついにはその速度のなせる技か、信じられないことに、
リューネの拳が炎に包まれる。
 その凄まじい光景にも、トロンはまるで臆することなくリューネめがけて拳を繰り出す。
ところが、トロンはリューネの攻撃を避けるどころか、逆に拳めがけて己の拳を叩き込も
うとしているようだ。
「だめ、トロン! このままじゃ……!?」
 たがいの拳が正面からぶつかると思った瞬間、トロンの拳がわずかに沈み込んだ。この
動きのため、トロンの右腕にリューネの腕が乗り上げるような形になる。
 でも、軌道を逸らされてもなおリューネの拳はとまらない。そのままソウルテイカーの
右肩のアーマーを吹き飛ばす。
 だが鋭い炸裂音とともに、トロンの腕と交差したリューネの手首と肘のあたりで閃光が
走った。
『くっ!?』
 リューネには、それがソウルテイカーの拳と肘に内蔵されたPBによるものとはわから
なかったろう。
 おどろきに顔をゆがめながら自分の右腕をみるリューネ。手首と肘の関節から白煙が上
がりスパークが走っている。
 唖然としてリューネの動きがとまった。でも、トロンはその一瞬のすきをのがさなかっ
た。両手からビームソードを発生させると、リューネめがけて袈裟掛けに切りつけた。
『まだまだぁあああ!』
「なっ!?」
 トロンの起死回生の一撃に、リューネのとった行動はあたしの理解の範疇を越えていた。
リューネは、左腕でもはや動かないと悟った右腕をためらいなく引きちぎると、それを棍
棒代わりに殴りかかったんだ。
 いままさに頭上めがけて振りおろされたトロンの両腕めがけて、横殴りにリューネの右
腕が迎え撃つ。
 トロンの両腕をひしゃげさせながら、リューネの勢いは止まらない。そのまま弧を描き
ながら腕を振り抜き、トロンの身体をフィールドの床に叩きつける。
『があああああああッ!!』
 床を砕きながら、トロンの身体は大きくバウンドした。
あたしの呼びかけにもトロンは微動だにしない。モニターに映し出されたトロンのLP
は0になっていた。

『……マダ……』
 バトルの終わりを知り、うつむいていたあたしのインカムにかすかな声が響いた。
 反射的に顔を上げると、フィールドに横たわっていたトロンがひしゃげた腕をリューネ
に向かって持ち上げようとしていた。
 あたしはもう一度、コンソール上のモニターに目をやった。トロンのLPは0のままだ。

               それなのに、トロンは動いている……

『こ、これは、どういう事ですの?』
 勝利を確信し、トロンを見下ろしていたリューネは、光をなくし虚ろな瞳をしながら、
なおも自分に掴みかからんばかりに腕を伸ばすトロンに、恐怖に顔をゆがめて後ずさる。
『……ボク…ハ、マモ……ル』
「えっ!?」
 インカムから聞こえたかすかな声。あたしがその言葉を反芻しようとしたとき、電子音
が鳴り響き、フィールド上にバトルの結果が表示された。




               ─── WINER トロン ───




 あたしは、頭上の電光掲示板に輝く文字をだまって見つめていた。きっと、いまのあた
しは端から見たらバカみたいに惚けた顔をしていただろう。  
 でも、まちがいなく、敗北したのはトロンのはずだ。

 もし、これが機械的なミスでないのならば、勝敗が表示される前に対戦相手が降参した
ということ……

「天堂さん!?」
 あたしは、ハッとしながら対戦席に目をやった。天堂さんはあたしの顔を見ながら大き
くうなずいた。

『恵一郎』
 背後を振り向きながら、唖然とつぶやくリューネ。
「リューネ。お前にもわかっているだろう?」
 だまって天堂さんを見つめるリューネ。しばらくふたりはそのままだった。

『……恵一郎にしては妥当な判断──ですわね』
 リューネは、頬にかかる金髪をはらいながら微笑んだ。


    こうして、あたしの思いもしない結果でトロンとリューネのバトルは幕を下ろした。

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我が家の神姫たち その10

その神姫は『絲』と呼ばれた。

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「傀儡師」、「不死なるもの」、「運命の紡ぎ手」……いくつかの渾名をもつ絲だが、彼女の名を口にする者は、例外なく嫌悪と恐怖を含んだ複雑な表情を浮かべる。

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その悪名をもって知られる<狩るもの>……絲は<狩るもの>たちを統べる存在である。

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絲は他の<狩るもの>と違い、力押しの戦いを嫌う。
奸智に長けた絲は、つねに相手の心理の裏を読み戦いを有利に進める。

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一見するとその表情は、つねに柔和な笑みを浮かべているが、その内面は他のメンバーを凌ぐほどの狂気に満ちている。

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不思議なことだが、装飾過多ともとれる絲の装備には一切の火器が搭載されていない。

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狡猾さにおいては他の<狩るもの>から一目おかれる絲だが、その戦闘能力は並みの神姫と比べても劣るほどである。
では、なぜ「力こそ全て」と考える他のメンバーが絲にしたがっているのか?
それは、絲が持つたった一つの特殊能力のせいであり、その外観も相まって彼女が傀儡師型の神姫と呼ばれる所以でもある。


絲はその体内に『Puppet』と呼ばれるナノマシーンを隠し持ち、独特の接触法で対象神姫にナノマシーンを注入する。

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絲『あら? あなた、私好み。どうかしら、あなたも私のコレクションに加わらない?』

飛鳥『こ、こんな時に何をいって…むぐ!?』

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飛鳥『い、いや! 何これ……(あ、あた…ま…ガ、マッシロ二……)』

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絲『う~ん、とっても美味♪』

飛鳥『ウ……ウゥ…』

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こうして『Puppet』に浸食された神姫はプログラムを書き換えられ、文字どおり絲の操る傀儡と化す。

絲『さあ、立ち上がりなさい…私のかわいいお人形さん』

飛鳥『ア……ア』



この能力のため、現在絲の「コレクション」は膨大な量になっている。
そして戦いの場に赴くたびに、絲は自らの周りを傀儡と化した神姫たちに守らせる。

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絲『さあ、みなさん、力を合わせて私にいじわるをする悪い神姫たちをやっつけちゃってください!』

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『ア、アア…』
『モウ…イ…ヤ』

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『オ…ネガ…イ』
『コロ…シテ』

絲の能力の真の恐ろしさは、制御下におかれた神姫たちの意識はそのままということである。
このため、この傀儡の群れと相対した神姫も、かつての仲間に対する憐憫の情から実力を発揮することができず、けっきょく絲の「新たなコレクション」に加えられる運命をたどる。



このように非常に恐ろしい能力を持つ絲、だが彼女に纏わる話はこれだけに止まらない。
それは絲につけられた渾名の一つ「不死なるもの」に由縁する。
絲の能力は強大だが、その脆弱さゆえに過去に数回破壊されたという噂がまことしやかに囁かれていた。


そして、絲はその都度蘇ってくると……。


これは一種の都市伝説として神姫やそのマスターたちの間に広がったが、あながち噂話として片づけるには奇異な話であった。


つまり、過去の目撃談を総合しても、絲の姿に整合性がみられないのである。

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絲はアークタイプの神姫だったと主張する者……。

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自分の神姫が斃した絲は、ブライトフェザーだったと言う者。

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またある者は、無数の神姫に守られていた絲は、たしかにポモックだっと証言するなど、まるでその話に統一性がないのである。



これはいったいどういうことなのか……。

目撃談にあった複数の神姫たち──彼女たち全員が絲なのか?

あるいは、この中の一人が真の絲なのか?

その答えを知るものは、ただ一人とていない。


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最弱にして最強・・・・・の<狩るもの>……絲。

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今もどこかで哀れな犠牲者が、“傀儡師”の手繰る糸に絡め取られる……。










ハイ! 今回はいつにもまして長い設定でしたが、ここまでお付き合いいただいた方、おつかれさまです!

前回の制作日誌からずいぶん間が空いてしまいましたが、<狩るもの>のリーダー「絲」……ようやく完成いたしました。

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用意した塗料がぜんぜんイメージとちがい、塗装を一からやり直したり。撮影中にリアユニットが大破しこれまた一から作り直していたもんで、ずいぶん時間がかかってしまいました。

イヤ、ホント、申し訳なかったです(汗)。


私としては、圧倒的な力で他者を屈服させるキャラも好きなんですが、絲のように絡めて手で相手を貶める智謀に長けたキャラも同じぐらい好きなんですよねぇ。

見た目は強そうだけど、中身はトホホ……絲の根幹にあるイメージはそんなところでしょうか。

みなさんはどう思いますかね、こういう神姫? 
絲のここらへんのギャップを楽しんでいただけたら幸いです。





では!











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絲『ふんふんふ~……あら?』

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絲『まあ、愛らしい神姫さん。どうかしら、あなたも私のコレクションに……あら、震えているの? 大丈夫よ。これからは私がた~くさんかわいがってあげるから』

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絲『さあ、こっちにいらっしゃい……』





























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武装神姫 クロスロード 第21話

     
                  武装神姫 クロスロード


         第21話 「トロンVSグリューネワルト その2」


 今の今まで沈黙していた天堂さんだったけど、豹変したリューネに気づくや慌てて止め
に入ってきた。
「おちつけ、リューネ!」
『お黙りなさいッ!』
「……ハイ」
 天堂さんは、必死になだめすかそうとするが、リューネに一括されるとシュンと黙り込
んでしまう。

                   なさけねぇ……

『わたくしの美貌に泥を塗るもは何者であろうと……万死に値しますわっ!!』
 わなわなと身体をふるわせていたリューネが、ビシッと指をトロンに突きつけるが、
トロンは、そんなリューネに呆れたような顔をしながら大げさに肩をすくめてみせる。
『そんなに汚れるのが嫌だったらさ、箱にいれて押入にでもしまっておいたら?』
 無数の青筋が浮かび上がったリューネをトロンは見ていたが、やがてニヤけた笑い
を浮かべながら口を開く。
『ま、ボクが見たところ、そんなご大層な代物にはとても思えないけどね』
 トロンのこの一言に、炎を吹き出すかと思われるほどリューネの顔が朱に染まる。
 一瞬、脳溢血を起こすんじゃないかと(むろん、神姫がそんな状態になれば、だけど…)
思ったけど、おこりのように全身を震わせていたリューネの身体は、なぜかピタリとその
震えを止めた。
『うふ、うふふふふふふふふ』
 心底楽しそうな、それでいて何か押し殺しすような声音でリューネがとつぜん笑い出す。
そう、怒りが限界を超えると、なぜか人は笑い出す。

                少なくとも、あたしはそうだ。

『覚悟はできておりまして? トロンさん……』
 うつむきながら一語一語絞り出すようにつぶやくリューネ。その口調から何かを感じと
ったのだろう。トロンはひざの力を抜くと、猫足立ちの構えをとる。
「ちょっとまて、リューネ! これは……」
『……そぎ落とされたくなかったら、黙ってらっしゃい、恵一郎……』
「ハイ、すみません……」
 腰を浮かせながら仲裁に入るが、またもやリューネに恫喝され、なぜかズボンの前を押
さえながらすごすごと腰をおろす天堂さん。

                ホントに使えねぇ……


『ここまでわたくしをコケにしたおバカさんは、貴女がはじめてでしてよ?』
 リューネの全身から、ゆらりと気が立ち上る。
『“大賢者”と呼ばれたわたくしの力、存分に味併せてさしあげますわ』

                  “大賢者”? 

 ついにリューネは、魔法攻撃を使う気になったようだ。
「トロン、気を付けて! リューネのやつ、ホンキでくるわよ!?」
 あたしのアドバイスが終わる前に、トロンは全力でリューネめがけて走り出す。
 魔法攻撃は強力だけど、“詠唱”と呼ばれるスキルを発動するまでのタイムラグが弱点
だ。トロンはこのわずかなすきに、リューネに肉薄し先手を打つ気なんだろう。
 ところが、トロンの動きなど気にした素振りもみせず、リューネの顔が天をあおぐ。

              まずい、“詠唱”がはじまる!






      『URAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』



「『へっ!?』」
 リューネの口から漏れたのは、呪文……というより雄叫びそのものだった。リューネは
拳を振り上げながら、鬼神も三舎をさけて通りそうな形相を浮かべトロンめがけて殴りか
かってきた。
 てっきり、“詠唱”の時間を稼ぐために後ろにでも下がるかと思っていたあたしとトロン
のあごは、予想だにしないリューネのリアクションにカクンと落ちた。
『URA!』
『うわっ!?』
 かろうじて、リューネの右拳を“一重”で捌くトロン。
『URA!!』
『くっ!』
 間髪入れず繰り出される左拳。トロンは身をひねり、なんとかこれもかわす。
『URAURAURAURRRRRRRRR!!!』
 必死にリューネの拳をよけ続けるトロン。でも、嵐のような連撃はすさまじく、防戦一
方に追い込まれたトロンが、ついにバランスをくずしてしまった。
 リューネの口元に、会心の笑みが浮かぶ。腰を落とし、大きくためをとっていた右拳
をがら空きになっていたトロンめがけて叩き込む。
『URAAAAAA!』
『ぐはあっ!!』
 もはや防御もかなわなかったトロンは、その一撃をもろに受けてしまう。トロンの腹部
に閃光と爆発が起き、トロンはそのままフィールドの端まで吹き飛ばされてしまった。
「トロンっ!!」
 声も枯れんばかりに叫んだけど、フィールドに伏したままトロンはピクリとも動かなか
った。
『いくら呼んでも無駄ですわ、隣さん。わたくしの<ペインナックル>を受けて立ち上が
った神姫は皆無でしてよ?』
「ペインナックル?」
『そう。標準和名は<激痛拳>ですわ!』
「何よッ! 標準和名って!?」
 状況が状況だったけど、あたしは反射的にツッコんでしまった。
「だ、だいたいアンタ、いかにも魔法を使うとみせかけて、肉弾戦挑んでくるなんて卑怯
じゃない?」
 屁理屈なのは百も承知だったけど、なんか納得のいかないあたしは怒鳴り散らす。
『……妙な言いがかりはやめていただけませんこと? それにわたくしは、ちゃんと魔法
を使いましてよ?』
「へっ?」
 切れ長の瞳をさらに細め、自信たっぷりに言い切るリューネ。わけがわからず唖然とし
ていると、リューネはかがやくブロンドをかき上げながら言い切った。
『そう、これがわたくしの──魔法言語でしてよ!』
「『魔法言語じゃね───ッ! ソレは肉体言語だッ!!』」
 一遍の迷いなく言い切ったリューネに、あたしとルーシィは血を吐くようにツッコんだ。

『……あのさあ…バトルの真っ最中に…なに…ボク不在で漫才はじめてるの…さ?』
「トロン!?」
『トロンちゃん!』
 苦痛と呆れをミックスした声に、あたしはフィールドに視線を移した。トロンは、緩慢
な動きで立ち上がるところだった。
『そんな……わたくしの攻撃を受けて、立ち上がってくるなんて……』
『まともにくらったら、さすがに危なかったけどね』
 愕然とするリューネに、トロンが微笑んでみせる。リューネはその笑みを見て、さらに
まゆを寄せた。
『タネ明かしをするとね……こうさ!』
 腹部を押さえていたトロンは、残った手で指を弾くような仕草をしてみせた。
 怪訝な表情を浮かべるリューネの足下で爆発が起こる。リューネは慌てて後ろに跳躍
した。
「……そうか、アレはPBのカートリッジ!」
 思わず打ちならした手の音に、おどろいたルーシィがあたしを見上げている。
『どういうことなんですか、リンさま?』
「トロンのヤツは、カートリッジを指弾にみたてて打ち込んだのよ!」
『しだん?』
 ルーシィは、まだ理解できなかったようだった。あたしは苦笑しながら説明をはじめた。
「つまりね、本来は相手に接触しないとPBはなんのダメージを与えないの。だから、ト
ロンはカートリッジを指で弾いて弾丸のように打ち込んだのよ」
『へ~』
 ルーシィは、まだ要領を得ないのかポカンとしている。
 あたしは、そんなルーシィを見ながら苦笑を浮かべたが、それ以上にトロンの機転に感
心していた。
 確かに、射程も速射性も一般的な銃器に比べればおそまつなものかもしれない。でも、
相手の意表をつくという一点を考えれば、これ以上トロンに適したものはないだろう。
「おそらく、リューネを埃まみれにしたのも、<ペインナックル>の威力を最小限に押さ
えたのも、あの指弾のおかげね」
『……なるほど、そういうことでしたの』
 あたしの解説に相づちを打ったのはリューネだった。
 リューネは自分の右拳を持ち上げ、しげしげと見ていた。拳の中央が大きく窪んでいる。
『わたくしの拳がトロンさんに届く前に……』
『カートリッジを拳に打ち込み、衝撃と爆風でトンズラこいたってとこかな? もっとも……』
 リューネのつぶやきを、破損した腹部を押さえながら補足するトロン。でも、その顔は
苦痛にゆがんでいた。
『けっこうダメージは深刻だけどね』
『そうでなくては、わたくしの立つ瀬がありませんわ』

               吐き捨てるようにつぶやくリューネ。

         でも言葉とは裏腹に、その口元には不敵な笑みが浮かんでいた。

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武装神姫 クロスロード 第20話

                  武装神姫クロスロード

           第20話 「トロンVSグリューネワルト」


 バトルフィールドに足を踏み入れたトロンに、ことにフィールドに降り立っていたリュ
ーネが話しかける。
『隣さんとの今生の別れはすみまして、トロンさん?』
 リューネの辛辣な口調にトロンは顔色ひとつかえることなく、目の前のリューネに食い
入るような視線を投げかけている。
 口八丁手八丁を駆使して相手の心理にゆさぶりをかけ、その隙を突いて戦うのを得意と
するトロンだけど、対戦相手のちょっとした言動に本人のほうが熱くなることが度々あった。
 少し前までのトロンがまさにソレだったけど、どうやら、ほんとうに冷静さを取り戻したみた
いだった。

             いや、それだけじゃないだろうけど……

「まいったわね……」
 シュミレーターに備え付けられたモニターから顔を上げると、あたしは小さくつぶやいた。
おそらく、リューネと対峙しながら同じ行為をしていたトロンも同じ答えだったと思う。
トロンの顔に浮かぶ険しさは、きっとそのためでもあるのだろう。
 一途の望みをかけてルーシィを見るが、申し訳なさそうに首を振っている。

 あたしたちの共通の悩みは、リューネのタイプがわからないということだった。
 ふつう、神姫には固有のモチーフが存在する。たとえば、トロンは(まんま)「悪魔」。
ルーシィたちアーンヴァルは「天使」というふうに。

 ところが、リューネがどんなタイプの神姫だか、いくら調べても皆目わからなかった。 
 いや、実際この店ではじめてリューネと出会ったときにそのことにには気づいていたけ
ど、まさかこんなことになるとは夢にも思わなかったから──あの時は、たいして気にも
とめなかった。

 でも、これは神姫オーナーとしては致命的な失敗だったかもしれない。本来なら、事前
に対戦相手のデータは可能な限り集め、バトルに挑むというのはあたりまえの対策だった
のに。

 さらに、あたしの気をもませる悩みが一つあった。
 それは、リューネが纏っている武装。あたしは、たいして段数もない、記憶という名の箪笥
を必死になって一段一段ひっかき回してみてたけど、これまた該当するような物はなかった。

  ということは、あれはソウルテイカー同様、オリジナル武装ということなんだろうか?

「やっぱり、ちょっと無謀だったかな……」

 あまりにも謎だらけな神姫、リューネ。
ほとんどノリと勢いにまかせて突っ走ったことを悔やみはじめたけど、すべては“後の祭り”
というヤツだった。

『……わたくしは、“賢者型MMS グリューネワルト”ですわ!』
 思わぬところから回答があった。でもそれは、次なる疑問をあたしに投げかけただけで
もあった。
「賢者…型? それに、その名前って……」
 まるで聞いたこともないリューネのタイプも気になったけど、“グリューネワルト”と
いう名前の方があたしの興味を引いた。
 一般的には、神姫にはモチーフになったものの名と、製品名ともいうべき呼び名が与え
られる。トロンなら“ストラーフ”というように……
 とろこが、彼女は自らの個体名を“グリューネワルト”と名乗った。

                    つまり、これって……

『そう、わたくしはこの世界で唯一の存在……』
 あたしの思考を引き継ぐように話し出すリューネ。

 リューネは使徒やエーアストと戦うためだけに創られた存在。その身体も、かなり手を
加えられているだろうと思ってはいたけど、まさか、ワンオフものだったなんて……

『なるほどね』
 納得したようにつぶやくトロン。リューネの唇がわずかにほころぶ。
『それならば、このバトル自体やるだけ時間の無駄と気づいたはず……無駄に時間を費や
すのも嫌ですし、早々にサレンダーしてくださいませんこと?』
 いかにも人を小馬鹿にしたようなリューネの口調に、トロンの眉の端がわずかに上がる
が、それはすぐに口元に浮かんだ笑みに取って代わられる。
『キミの口上は謹んで拝聴したよ。でもね……』
 フィールド上に、戦いのはじまりを告げる電子音が響きわたる。身体をわずかに沈み込
ませ身構えるトロン。
『ボクは、『ザマス』言葉でしゃべるヘンな神姫に下げる頭はもってないよッ!!』
『わたくしが、いつ、そんな喋り方をしまして!?』

 自身めがけて一直線に突き進んでくるトロンに、顔を真っ赤にしながらツッコむリュー
ネだった……

「ちょっと、トロン!」
 あまりに考え無しに緒突するトロンに、あたしは思わず怒鳴ってしまった。

                 いくらなんでも、無謀すぎる!

 リューネが名乗った賢者型というタイプ名が、あたしの頭に引っかかっていた。
 神姫の中には“魔導師型”や“魔女型”と呼ばれるタイプあり、これらの神姫は【魔法】
と呼ばれる特殊なスキルを使用するものがいる。
 このタイプの神姫は、炎や雷を自由に扱い敵に攻撃を加える。これらがどういう仕掛け
なのかあたしにはさっぱりわからないけど、かなりの威力を持っていた。
 そして、むかし美佐緒と一緒にやったゲームにでてきた賢者は、攻撃と防御、双方の呪
文を使っていた。

                    つまり、リューネも……

『大丈夫だって、わかってる!』
 あたしの不安を吹き飛ばすように、トロンの声がインカムから響いてきた。  
『グリューネワルトにブッソウなものを使わせないためにも、距離を詰めておかないとね!』
 どうやら、トロンもリューネの特殊スキルに気づいているみたいだった。だったら、トロンの
対応は理にかなったものだ。あたしは胸をなでおろす。
『うおりゃああああああああああああッ!!』
 一足飛びに自身の間合いに飛び込むトロン。手の甲を覆っていたナックルガードが前方
にスライドし指を覆うと、そのまま雄叫びをあげてリューネに殴りかかる。
 だがリューネは、少しも驚いた素振りもみせず、静かにトロンをみつめているだけだった。
「えっ?」
『なっ!?』
 鈍い衝撃音とともにあがった、あたしとトロンの驚きを含んだ声。
 トロンの右拳は、大きく身体を沈み込ませ頭上で交差させたリューネの両腕に軌道を反
らされ、何もない空間をむなしく突いていた。
 リューネの唇の端が、キュッと持ち上がる。
 お返しといわんばかりに、妙にゴツいリューネの拳が唸りをあげてトロンに打ち込まれ
る。トロンは必死に身体をひねりながら、なんとかこの一撃から身をかわす。
 でも、なおもリューネの猛攻が続く。
『ぅおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
『なっ? えっ? ちょ、ちょっと!?』
 後退しながらも、リューネの連打をかろうじて“一重”で捌く。でも、トロンの表情には、
まるで余裕が見られなかった。
「トロン! なんとか距離をとって!!」
 とっくにトロンも気づいていたんだろう。小さくうなずくと、片手を腰にやる。
 でも、それは無謀といえた。両手を使っても、リューネの攻撃をしのぐのが精一杯だと
いうのに、一瞬とはいえトロンの防御が片手一本になったんだ。
 リューネはこのチャンスを見逃さなかった。
『隙ありですわっ!!』
 その攻撃を、かろうじて“一重”で捌くも、その勢いを完全に反らすことはできなかった。
リューネの拳は、そのままガードを突き抜けトロンの腹部で炸裂する。
『がはッ!?』
 片手一本の攻撃だというのに、トロンの身体は弾丸のように吹き飛んだ。
『ふっ、とどめ──ですわっ!』
 いままさに、トロンにとどめを刺さんと跳躍の姿勢をとるリューネ。宙を待っていたト
ロンは、苦痛に顔をゆがめながらも右手を突き出すと何かを弾くような仕草をした。
 次の瞬間、とつぜんリューネの足下で爆発が起き、その姿が爆煙につつまれ見えなくな
った。
『ゲホッ!……痛でで』
 なにが起きたのか皆目わからず惚けていたあたしは、地面にたたきつけられ苦鳴をあげ
ながらも身を起こすトロンの声で、ようやく我に返った。
「だ、大丈夫? トロン!!」
『ま、まあ、なんとか…ね』
 ぜんぜん大丈夫そうにはみえなかったけど、トロンは気丈にそう答えた。
 トロンの無事に、ホッとしたような表情をみせていたルーシィが、コンソールの一点を
みるや青ざめる。
『リンさま! これを見てください』
ルーシィの声に、釣られて見たモニターには、いままさにトロンが受けたダメージが表
示されていた。それは、たかがパンチ一発で受けるダメージとしては、ありえない数値だ
った。
「な、なんなの、コレ?」
 いまだに目の前に提示されたものが信じられず、モニターを食い居いるようにのぞき込
んでいると、苦笑混じりのトロンの声が聞こえてきた。
『さすがだね。 あの使徒と戦うために創られたっていうのは伊達じゃない』
「ンな悠長なこといってる場合じゃないでしょう!」
 どこまでお気楽口調のトロンに、噛みつかんばかりの勢いで詰め寄るが、トロンの態度
は少しも変わらない。
「と、とにかく、今のうちに対策を……」
『残念だけど、そんな余裕はないみたいだよ?』
 ゆっくりと立ち上がりながら、前方を指さすトロン。
 ようやく晴れてきた白煙の向こうに、静かに立ち尽くすリューネの姿が映った。
 その姿は、硝煙と頭上から降りしきったフィールドの破片のせいで見ているあたしが気
の毒になるくらい薄汚れていた。

 でも、リューネの様子はどこか変だった。
 バトルの真っ最中だというのに、なぜかリューネはブツブツとつぶやき、まるで夢遊病
者のようだ。
『……よくも……こんな……』
 うつむいていたリューネが、いきなり顔を上げた。

 
                  血走った目、耳まで裂けた口……

             これで角を付けたら、どこから見ても立派な般若だった。

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ぼくがかんがえた わるいしんき ⑤

最近は、明け方になると寒さで目が覚める男、シロでございます。

みなさまにおかれましては、いかがお過ごしでしょうか?
風邪などひかぬよう、健康にはお気を付けください。



製作日記も五回目を迎え、ようやく絲の武装も形になりました。
では、さっそく紹介いたしましょう。

CIMG1582.jpg

CIMG1583.jpg

塗装の関係とネタバレ防止の意味も含めて完成というには程遠いかもしれませんが、全体像としてはこんな感じになりそうです。

あまり形状自体は変わってませんが、前回の記事で触れた「勝利の鍵」を使った箇所を紹介したいと思います。

CIMG1582 - コピー

糸に見立てた真鍮線が太すぎるのと、人形のポーズが単調すぎるのでこのあと改修予定ですが、今のところ、絲を「傀儡師」と言い切れる唯一の箇所(笑)。

CIMG1586.jpg

勝利の鍵その2である、某東方不敗さんのMSの脚部フレームは副腕として使用。
手首から先はカスタムハンドを使う予定でしたが、思いのほか小さかったため自作してみました。

最後の勝利の鍵である白黒素体をどう使うかは、もうお気づきかと思いますので割愛させていただきます(笑)。

他にも二か所ほど改修箇所があります。

CIMG1588.jpg

上半身にボリュームがありすぎるようなので、某所でバラ売りしていたゲルググのシールドを加工しテールアーマーに見立ててみました。

そしてもう一つの改修点はこちら!

CIMG1562.jpg

そう、ショルダーアーマーの取り付け位置。
前回の改修で、重さのため腕がすっぽ抜けることはなくなったのですが、イー姉さんの肩関節の保持力の関係上、腕を上にあげることができません(笑)。
また、画像のように腕を少し上げただけでアーマーの位置も大きく上下してしまいます。

分かっちゃいたのですが、やはりこれではほとんどポーズがとれず面白くありません。

CIMG1562 - コピー

肩に直接接着していたショルダーアーマーの基部を……。

CIMG1586 - コピー

リアユニットに無理やり取り付けました。
スペースの関係上、副腕と一部干渉してしまいましたが、ここしか空きがないためあきらめるしかありません(泣)。

しかし、等価は払っただけのことはあり、結果は良好のようです。

CIMG1587.jpg

もう腕を持ち上げても、ヘタって来ることはありません。

ふふ、これでようやく人並の可動ができるようになったわけです。
取り付け位置という制約がなくなった分、アーマーの可動域も以前より広がりました。

CIMG1590.jpg

アーマークローズ状態。
いまのところ、シングルのリボ球を使っていますが、ダブルに交換すればもう少し動くかもしれません。
これでイー姉さんのお顔との防御はバッチリです!

まあ、他は隙間だらけですが……。

あっ、そういえばリボ球で思い出したのですが、タウバーンの手足の関節もすべてリボ球に交換しています。
元の関節はクリック機構がないせいか、すぐにヘタっちゃうんですよね。

CIMG1591.jpg

あちこちいじりながら撮っていた中から一枚。
なんか広げたアーマーが翼みたいでカッコイイかも(自画自賛ですが……)。

CIMG1593.jpg


うむ、「なんちゃってフライトモード」と名付けよう(笑)。




さてさて、これにて今回の記事はひとまず終了です。

あとは細かい作業と塗装が済めば完成ですが……じつは今回の一番の難所は撮影だったりします。
とはいえ、技術的な問題ではなく、単に撮影に手間がかかるというだけなんですがね。



焦らすようで恐縮ですが、絲のお披露目はもう少し先になるかもしれません。


もうしばらくお待ちいただければ幸いです。



では!













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