神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 第42話

 それほど長くはもたない。そう思っていたけど、こんなわずかな時間で“半歩”の本質
を見抜いたレスティーアの実力に、あたしは驚きの色をかくせなかった。
 そしてなにより、レスティーアを過小評価していた自分の甘さに内心歯軋りをして悔し
がっていたが、まだ戦いは始まったばかりだ。
 この先トロンにどういった指示を出すべきかと頭を悩ませていると、鉄を打ち鳴らすよ
うな金属音が響き渡り、あたしをギョッとさせた。
 驚いてフィールドに視線を向けると、トロンがこぼれるような満面の笑みを浮べ、レス
ティーアに向かって盛大な拍手を送っていた。
『いや~、さすがはレスP。ボクの超☆必殺奥義、“しましまパンツの大冒険♪”を瞬時に
見抜くとはね』
 レスティーアに向かって、親指を立てながらウインクするトロン。
 
というか、そんな妙な名前の技をあんたに教えたつもりはないんだけど……
 
 ひたすらレスティーアを褒めちぎるトロンにまるで落ち込んだ様子はなく、あたしはト
ロンの図太さに呆れたのを通り越して素直に感心してしまったが、トロンはいきなりしゃ
がみ込むと、澱んだ瞳で地面にのノ字を描き始める。
『まったくさぁ、D・Vまがいの特訓を一週間も続けたボクの立場はどうなるのさ……』
 やっぱり精神的なダメージは大きかったみたいだけど、それより必死になってつき合っ
てあげたこの一週間の特訓を、D・V呼ばわりされた事にあたしが腹を立てていると、ま
だ落ち込んでいるトロンに向かってレスティーアがつぶやいた。
『D・V? ……そうか、この技は一ノ瀬どのから学んだのか……』
 
     どうでもいいけど、なんでD・Vという単語だけであたしに辿り着くわけ?
 
                   わんだふる神姫ライフ
 
             第42話     「苦戦」
 
 トロンやレスティーアの一言に憤懣やるかたない気分にどっぷりと浸かっていたあたし
だったけど、いつまでもトロンをしょげかえらしておくわけにもいかず、発破をかけようと
すると、いきなりトロンが立ち上がった。
『さってと。じゃあ、第二ラウンドの開始といこうか、レスP?』
 身体についた埃を払うような仕草をしながら、トロンがレスティーアに笑いかける。
「トロン、あんた……」
 マイクを指でつまんだままのポーズであたしが唖然としていると、さも可笑しそうにトロ
ンが話しかけてくる。
『今のボクの迫真の演技、どうだった、リン? それともやっぱり『あぁんまりだあぁ
ぁぁあ!』、とか言って、涙ジョバジョバ流したほうが雰囲気出たかな?』
 そう言いながら、あごに指を当て首をかしげるトロンに呆れていたあたしだったけど、す
ぐにそれは苦笑へと形を変える。
「へぇ~。さすがのあんたもヘコんでると思ったけど、けっこう平気そうね?」
 さも意外そうだと言わんばかりのあたしの問いに、トロンは軽く肩をすくめる。
『まあね。リンには悪いんだけど、ボクにとって“半歩”がすべてというわけじゃないからね。
至善の策がきかないのなら、次善の策をとるだけさ』
 そう言いながら、眼前のレスティーアを見つめるトロン。
 
       そう、ヘコんでなんかいられない。戦いはこれからなんだから。
 
『まったく、きさまというやつは……』
 意外と精神的ダメージの少なそうなトロンのお気楽っぷりに、レスティーアが呆れた
ようにな顔になるが、すぐにその表情も影をひそめる。
『きさまは良き師に、そして良き主にめぐり合えたようだな』
 そうつぶやきながら、なぜかレスティーアはトロンではなくあたしの方に振り向いた。
 前にもガーネットから、似たようなことを言われたことのあるあたしは、気恥ずかしさ
からうつむいてしまう。
 そんなあたしを黙って見つめるレスティーアのくちびるがほころんでいるのに、あたし
が気づくはずもなかった。
 『……レスP』
 ひとり蚊帳の外状態だったトロンが、妙にまじめな口調でレスティーアに話しかける。
そのトロンらしからぬ雰囲気に、いぶかしげなまなざしを向けるレスティーア。
『なんだ。あらたまって?』
 トロンの表情から何かを感じたのか、レスティーアは硬い声で話す。
『……ボクの嫁に、手ェ出すな!』
 殺気まるだしでつぶやくトロン。一瞬にして、嫌な沈黙に包まれるバトルフィールド。
「だから、嫁じゃね──────────────ッ!!」
 
    あたしの絶叫にも似た魂のツッコミが、フィールドを駆け抜ける。
 
 次の瞬間、黙って静観していたギャラリーのみなさんのあいだから、大爆笑が巻き起こ
る。対戦席に目をやると、姫宮先輩もうつむき、微かに身体を震わせている。
 
                   絶対笑ってるよ、あれ。
 
「こ、こここここの、バカ悪魔ッ! にゃにあることにゃいことねつ造してんにょよ!」
 怒りの臨界点を突破したため、ろれつの回らなくなったあたしの怒声に、トロンの馬鹿
は前髪をかき上げながら微笑む。
『リンったら……素直になりなよ。ボクは覚えているよ。あの夜、ボクの腕の中で頬を赤
らめていたリンの横顔を……』
「それ、スケール的にいっても無理だろッ!?」
『……いいかげんにしろ……』
 怒りのあまり、コンソールの横にあるアクセスポッドごとトロンを叩き潰しそうになった
が、レスティーアの押し殺したような声で我に返る。
『あれ? まだいたんだ、レスP?』
 きょとんとした顔でレスティーアの方に向き直るトロン。レスティーアもうつむき微か
に身体を震わせているが、こっちは姫宮先輩とは反対に怒りによるものだろう。
『うおおおおおおおおおッ!』
 剣を振りかざし、トロンめがけて一直線に突き進むレスティーア。鬼神も避けて通りそ
うなその形相に、一瞬「がんばれ、レスティーア!」とか思ってしまったけど、インカム
のマイク越しにかすかな聞こえたトロンの、『やっぱ、レスPは扱いやすいね』という声に
眉をひそめる。
 
                   ……この、策士!
 
 とりあえず、心の中でレスティーアの心情を代弁してみるあたしだった。
 
 怒りの起爆剤により、倍加したのでは、と思えるほどに鋭さを増したレスティーアの剣
戟の凄まじさ。
 最小限の体捌きで、目にもとまらぬ速さで襲い来るレスティーアの攻撃を避け続けるト
ロンだが、その表情にいつもの余裕はまるで感じなかった。
「だめ! 間に合わない!」
 横殴りにトロンの首筋に走る銀線。回避不可能と本能的に察したあたしは、思わずシュ
ミレーターのシートを跳ね飛ばしながら立ち上がってしまった。
 咄嗟に<アクセル・ハート>を使うように指示しようとしたが、インカムに伸ばした指
の動きが途中で止まってしまう。
 
 だめだ。<アクセル・ハート>を発動させるタイムラグを考えたら、もう間に合わない。
 
 心臓をいきなり握りしめられたような不快感が、あたしを襲う。
 
 トロンにもわかっているのだろう。その口元は絶望に歪んで……あれ、笑ってる?
 
 あたしは見間違いかと、目を凝らしながらもう一度トロンを見た。確かに笑っている。
レスティーアの眉もわずかによるが、いまさら攻撃の手をゆるめる気など毛頭ないだろう。
 必殺の闘志を込めた一撃がトロンの首先に達しようとした瞬間、トロンが自分の腹部に
押し当てていた右手から閃光が起こる。
 そして、トロンの身体が後ろに引っ張られたかのように猛烈な勢いで加速する。うなり
を上げ、迫りくる銀線がトロンの鼻先をかすめて去っていく。
 窮地を脱したトロンだが謎の加速は止まらず、そのままバランスを崩すと、ごろごろと
転がりだした。
 そのまま奇怪な縦回転を行う、人間(神姫)地獄独楽と化したトロンだったが、いつま
でも続くと思われた回転は、幸いなことに近くにあったビルの壁面に叩きつけられて終わ
を迎えることになった。その光景に、さすがのレスティーアも現状が把握できないらしく、
呆気にとられた顔をしている。
『痛った~ッ!』
 なかば壁にめり込んでいたトロンが、コンクリートの破片をまき散らしながら身を起こ
すと、両手で頭を抱えて呻きだす。
「トロン。あんたいったい……!?」
 何が起こったのかさっぱりわからないあたしは、トロンに問いただそうと話し始めたが、
すぐに次の言葉が止まってしまう。
 トロンの腹部から白煙が上がっていたのだ。目を凝らすとその煙の奥で、かすかなスパ
ークが起こっていた。
 
 あたしは瞬時に理解した。トロンは自分の腹部でP・Bを爆発させ、その反動でレステ
ィーアの攻撃をかわしたんだ。
 動きやすさを重視したためか、ソウルテイカーには腹部を防御する装甲がない。でも、
同じダメージを受けるならどちらがマシか、瞬時にそれを天秤にかけられるトロンの機転
の速さは“半歩”の威力が半減したとはいえ、それを補って余りあるものなのかもしれな
い。
『やはり、きさまにとって最大の武器とは……』
 あたしの考えを代弁するように低い声でつぶやくと、レスティーアはゆっくりとした動作
でトロンに歩み寄る。
 気配で気づいたのか、慌てて身を起こそうとしたトロンだが、まだ煙を上げる腹部を押
さえると苦痛に顔をしかめる。
『がはッ!?』
 あまりの衝撃に、トロンの双眸がこれ以上はないというほど見開く。緩慢な動作で移し
た視線の先には、自身の右肩に深々と突き刺さった白銀の刀身が。
『……すまんな。こうでもしないと、安心してきさまと話すこともできないのでな』
 レスティーアらしからぬ行動に眉をしかめたあたしだが、トロンの奸智にさんざん煮え
湯を飲まされた彼女からしてみれば、仕方のない対応なのだろう。自分でも充分理解して
いるのか、その口元に苦笑が浮かぶ。
『ま、賢明な対応だと思うけど。でも、こんな状態でどうやってボクのとどめをさすの?』
 自分の右肩から生えた長剣を目で追いながら尋ねるトロン。おそらく、全身を激痛が駆
け巡っているだろうに、気丈に振る舞う態度は痛々しさすら感じる。
『忘れたか? 私には、まだこれがある』
 そう言いながら、腰に吊るした鞘を軽くたたくレスティーア。あの戦いを思い出したのか、
トロンの表情がわずかに強張る。でもそれは、わずかな時間だった。トロンの顔が上を向
く。
『なるほどね。でも、レスPこそ大切なことを忘れてないかな?』
 そう話しかけるトロンの目が笑っている。そう、とんでもない悪巧みを思いついた時の
あの顔だ。
 その時、あたしのインカムのマイクに、かすかな機械音が聞こえた。それはトロンの目
の前にいるレスティーアの耳にも当然届いただろう。
『うおりゃッ!!』
 気合いの入った掛け声とともに、トロンの身体が前に動いた。壁に縫い付けられた右腕
をそのままにして……
「なっ!?」
 それは、トロンがレスティーアと初めて戦った時の再現だった。あの時もトロンは、チーグ
ルを強制排除して危機を脱したんだ。
 そのまま猛然と突き進むトロン。レスティーアの顔に、強烈な頭突きを見舞う。トロンの
予想もしない反撃に、レスティーアは鼻を押さえながら後方に飛び退る。
 チャンス到来! けど、トロンは突然腹部を押さえると、そのままがっくりと地面に膝を
ついてしまう。
『やれやれ、しっかりしてんね、レスP……』
 トロンは後ろを振り向くと、悔しそうな顔をする。そこには、ソウルテイカーの右腕がさび
しく地面に転がっていた。
 こんな状況でも、己の武器は手放さない。そんなレスティーアに対して、トロンが呆れ
とも感心しているともとれる口調で話す。そしてうつむくと、何かをつぶやいた。声はあた
しに届かなかったけど、トロンが何を言ったかはわかった。
 
                     ── 楽しい ──
 
 トロンの唇は、そう形作っていた。
 そういえば、さっきのレスティーアの攻撃を避ける時、トロンは笑っていた。
 最初はあの笑みは、レスティーアをからかってのことかと思っていた。でもあれは、ま
さに歓喜の喜びだったんだ。
 
 自分より強いものと相対する者だけが感じる恐怖と対になる感情。言葉で説明するのは
むずかしい。でも、あたしにはトロンの心情はよく理解できた。あたしも同じものを持ってい
たから……
 
 右腕を拾い上げ、自らにあてがえながら視線を上げるトロン。その表情は清々しすら感
じた。
『レスPはやっぱり強いね。 ホント……オラ、わくわくしてきたぞっ!』
 不敵につぶやきながら微笑むトロン。
 
 
     あんまりこんな時にツッコミたくないんだけど……キャラが変わってるぞ!
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コメント


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息の詰まりそうなほどのバトルにうっかりコメントを忘れていましたハツセさんですw

達人対奇術師・・・勝敗が気になりますね!

初瀬那珂 | URL | 2013-03-03(Sun)23:20 [編集]


>初瀬那珂さん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

ようやくこのSSのメインとなる、トロンとレスティーアの対戦がはじまりました。
あと数話ぐらい続くと思われますが(長いですね……)、もうしばらくお付き合いいただければと思います。

トロンは奇術師ですか? レスティーアに言わせれば『ペテン師で充分だ!』とか言いそうですね(笑)。

シロ | URL | 2013-03-04(Mon)19:54 [編集]


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