神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 最終話

 
 
     
 
                    わんだふる神姫ライフ
 
             最終話    「ともに歩む者」
 
 
 
                  ── WINNER トロン ──
 
 
 あたしは頭上の電光掲示板を、ただ、ボ~ッと眺めていた。あたしたちを取り囲むよ
うに見守っていた観衆も、まさに「水を打ったような」静けさ状態だった。
 アクセスポッドから聞こえるモーターの音が、あたしを現実へと引き戻す。
 静かにポッドが開くと、トロンがムクリと起き上がり、両手を天に突き出しながら大き
な伸びをする。
「お、お疲れ。トロン」
 しばらくして、ようやくあたしの口から出た言葉に、トロンがキョトンとした顔をして
いる。
 
 それはそうだろう。この戦いがトロンにとってどれほどの意味を持っていたのか、あた
しにだってわかり過ぎるほどわかっていた。
 レスティーアに勝ちたい。トロンはその一心で、この数ヶ月間、歯を食いしばってがん
ばってきたんだ。そして死闘の末に、ようやくその想いを実現した。
 
                   それなのに、あたしは……
 
 トロンを褒めてあげたかった。伝えたい言葉も山のようにあった。でも、肝心な時に自
分の気持ちを素直に伝えられない。
 少しでもこんな自分を変えたい。あたしはそんな想いから神姫を欲しいと思った。
 でも、結局あたしは何ひとつ変わってはいなかった。
  
                 トロンはあんなにがんばったのに……
 
 自分の不器用さに怒りすら覚え、歯噛みしながらうつむいていると、ふいに名を呼ばれ
た。あたしはハッとしながら声の主を──トロンの方に視線を向けた。
 トロンは金色の瞳で黙ったままあたしを見つめていたけど、やがて小さくうなずくと、いつ
ものようにあたしに向かって軽くウインクをしてきた。
 
                 不器用なのはお互い様……か。
 
 あたしは今になって、ようやく自分の気持ちに素直になれない不器用なヤツがすぐ傍に
いたことに気がついた。
 
 このオーナーにして、この神姫あり。でも、こんなあたし達だからこそ、うまくやって
これたのかな?
 
 トロンも同じことを考えていたのだろうか、口元に苦笑いを浮かべている。
「せんぱい、やりましたね!」
 感慨に浸る間もなく、いきなり美佐緒が抱きついてくる。
「すげーじゃねぇか、一ノ瀬! トロンのヤツ、レスティーアに勝っちまったぞ!」
 人ごみを掻き分けながら、佐山さんが興奮冷めやらぬといった様子であたしに話しかけ
てくる。佐山さんの後ろで秋野さんが感動してしまったのか、両手を胸の前で組んだまま、
黙って何度も首を縦に振っている。
 どさくさに紛れて、あたしの身体を触り始めた美佐緒の手を思いっきりつねりながら、
ふたりにどう答えていいのか咄嗟に思いつかず、考え込んでいると突然周りから拍手と歓
声が上がった
 それがトロンの勝利を称える物であると気がついたのは、姫宮先輩があたしの方に歩み
寄ってくるのが目に入ってからだった。
「先輩……」
 しつこく身体にペタペタと触ってくる美佐緒の手を何とか引き剥がすと、あたしは姫宮
先輩に向き直りながらそこまで話しかけ、先輩の心情を察して言葉に詰まってしまった。
 でも姫宮先輩は、そんなことなど気にした素振りもみせず、穏やかな笑みを浮べたまま
あたしを見つめていた。
「ありがとう、一ノ瀬さん」
「へ?」
 姫宮先輩の口から紡がれた言葉は、あたしがまったく予想もしないものだった。
 
       そう、先輩の言葉の意味がわかったのは、もう少し先のこと……。
 
 真意がわからず、あたしは唖然と立ち尽くしていると、先輩の視線が一点に向けられる。
 いぶかしげに先輩の視線を追うと、アクセスポッドの前で互いを見交わしているトロン
とレスティーアの姿が目に飛び込んできた。
 何か只ならぬ雰囲気感じたあたしが、ふたりの方に歩いていこうとすると、姫宮先輩が
手をかざし行く手を遮った。
「このまま……ねっ。 一ノ瀬さん」
 あたしの方を顧みながら、そう話す先輩。あたしは不安な気持ちになりながらも、先輩
の背中越しにトロンの姿を垣間見た。
 
『いきなりお礼回りってわけじゃないみたいだけど……あ、ひょっとして『この卑怯者め!』
とか、文句を言いにきたわけ? でも、それって御門違いってヤツじゃ……ん?』
 さっきから目の前に立ち、無言で自分を見下ろすレスティーアにトロンがヤレヤレとい
った感じで肩をすくめるが、いきなり差し出された手に眉をひそめる。
『見事だった。……だが、次は負けない!』
 手甲に覆われた手と、レスティーアの顔を交互に見ていたトロンは、レスティーアの一
言に唖然とした表情になる。
 しばらく口を開けたまま、レスティーアを見つめていたトロンだったけど、やがて照れ
くさそうに笑うとレスティーアの手をグッと握り締めた。
 レスティーアの口元も微かに綻ぶ。
 そのまま黙して見つめあうふたり。だが次の瞬間、重ね合ったふたりの手のひらから閃
光が瞬き、ひと際大きな破裂音があたりに響き渡った。
『あっ、ごめ~ん。P・Bが暴発しちゃったよ。 ケガしなかった、レスP?』
 頭を掻きながら、嬉しそうに話しかけるトロン。痛みのためか、思わずしゃがみ込んで
しまったレスティーアは、一筋の白煙が尾を引く手を押さえながら呆然とトロンを見上げ
ていたけど、まるで心の篭っていないトロンの口調にみるみるその碧眼に剣呑な輝きが宿
り始める。
『き、きさま。 わ、私が……』
 怒りのためか言葉が続かず、ワナワナと身体を震わせながらユラリと立ち上がるレステ
ィーア。
 
一瞬、その背後に鬼だか悪魔みたいな影が立ち上ったように見えたのは、あたしの目の
錯覚だったろうか?
 
『だからさ~、事故だって、Z・I・K・O! アンダスタン?』
『ふ、ふざけるな────ッ!!』
 この期に及んで、まだ反省の色もみせないトロンに、ついにレスティーアの怒りが爆発
する。
 音もなく腰の長剣を抜き放つと、慌てて止めに入った姫宮先輩の制止も振り切り、一瞬
の躊躇なくいきなりトロンに切りかかっていく。
『あはは。いやだな~、レスPったら、そんなに顔を真っ赤にしちゃってさあ~』
『う、うるさいッ!』
「…………何やってんのよ、アイツ…………」
 唸りを上げて迫り来る銀線を、バトルの時以上に軽やかな身のこなしで避け続けるトロ
ン。あたしは目の前の光景に、全身を脱力感に襲われながらも目を離す事ができなかった。
 
 照れくさい気持ちはよくわかる。でもトロンのヤツ、もう少しマシなリアクションはと
れなかったんだろうか?
 
 呆れ果てたあたしが、周りに集まってる人たちも同じ考えだろうと思い、ふっと周りを
仰ぎ見た。
 
                     みんな笑っていた。
 
 美佐緒とガーネットが、佐山さんも秋野さんも楽しそうに笑っていた。
 いつの間にか、あたしの後ろに立っていた桜庭さんや狐姫も、そして、姫宮先輩まで笑
っている。
 ギャラリーの人たちも、その人垣の後ろの方では店長さんやリベルターまでが愉快そう
に笑っていた。
 
                      そう、みんなが……
 
 人に自分をさらけ出すのが苦手で、いつもひとりでいることが多かった。
 でも気づいてみれば、いつの間にかあたしはこんなに大勢の人たちに囲まれていた。
 
               いつからだろう、こんな風になったのは?
 
「どうかしたんですか? せんぱい?」
 みんなが笑ってるなか、ひとりだけ考え込んでいたあたしに気づき、美佐緒があたしの
顔を覗き込む。
「ううん。なんでもないわ!」
 心配そうに見つめる美佐緒に、無理矢理笑顔をみせると、元気一杯に答えた。
 
    そう、答えなんかとっくの昔にわかってる。全てはアイツと出会った時から……
 
 あたしはそう考えながら、まだリアル鬼ごっこを続けているトロンたちを目で追ってい
た。
トロンと一緒に暮らしたこの数か月。ひたすらあの悪魔に振り回され続けた日々が、
走馬灯のように脳裏によみがえる。
 ろくな思い出なんか一つもありはしない。でも、いつのころからか、あたしはそれを当
たり前のように感じるようになっていた。
 
       あたしが勝手に思い描いていた、神姫との生活は夢と消えたけど……
 
              まあ、これはこれで、悪くはないかな?
 
今は、そんな風に思うようになっていた。
多分これからも、トロンとは泣いたり笑ったり、そしてケンカしながら一緒に歩いて行
くんだろう。
 
 
 
                  そう……どこまでもずっと……
 
 
 
                「これからもよろしくね……トロン……」
 
           あたしは誰にも聞こえないように、そっとつぶやいた。
 
 
 
 
 
 
 
 
                     「わんだふる神姫ライフ」
 

                         とりあえず
                          <完>
 
  
  
 
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