神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

わんだふる神姫ライフ 第5話

「ト、トロン。何であんたがここにいるわけ?」
『そりゃァ、リンの顔に死相がくっきりと浮かんでたもんでネ。ボク、心配デ心配デ』
 唖然と立ち尽くすあたしを尻目に、トロンのヤツはあたしのカバンから顔だけ出し、あ
いかわらず焦点の定まらない目をこっちに向け、ニヤニヤとそう言いやがった。
「余計なお世話よ! 大体あたしの寿命を縮めている張本人が,偉そうに言うな!!」
『ふ~ン。ここがガッコウっていうヤツかァ~』
 とぼけているのか、単に右から左に通りぬけているだけなのか、あたしの荒げる声もど
こ吹く風、トロンは興味深そうにあたりをキョロキョロと見回している。
「いや~ん、せんぱいったらぁ~」
困った風のなかにも、どこか愉悦のようなもの感じる声に悪寒を感じながらもあたしが
振り向くと、そこには先ほどあたしが盛大に噴き出した牛乳の直撃を受けた美佐緒の姿が
あった。
「あ、ごっ、ごめん! 大丈夫だった、美佐緒?」
 さすがにこれはあたしの方に非があったと思い、慌ててハンカチを取り出し美佐緒の顔
を拭おうとしたが、何故か美佐緒はあたしの手をソッと握ると、くすり指であたしの手の甲
をゆっくりとなでながら喘ぐ様につぶやいた。
「ん……せんぱいの……濃くって美味しい」
 
み、美佐緒! お願いだから人の噴き出した牛乳をおいしそうにペロペロ舐めるな!
トッ、トリハダが立ってきた……
 
     それは、あたしが美佐緒という女に心底恐怖した瞬間だった……
 
              わんだふる神姫ライフ
 
        第5話     「コス侍」
 
『いやァ~、朝から顔〇プレイとは、リンもあんがいカゲキだねェ。ところでダイジョーブ、
みさキチ?』
「うん! わたしせんぱいが望むんだったら、どんなプレイでもOKだから」
 美佐緒は、自分の顔についた牛乳を一滴残さずキレイに舐めとると、あたしの渡した
ハンカチをそっと自分のポケットにしまいながら(?) まるで、旧知の仲と錯覚しそうな
雰囲気でトロンと会話を始めた。
 
         っていうか、みさキチって美佐緒のこと?
 
「ねぇ、ちょっと! あんたたちって、ひょっとして何処かで会ったことがあるの?」
『「 ううん(ン)、 全然! 」』
 あり得るはずの無い問いは、当たり前の答えをあたしにもたらした。
 それにしてもなんだろう、この二人の妙な気の合いっぷりは、さっきも絶妙にハモって
たしね。いまだに飽きることなく、あたしをオカズに内容的にも聞き捨てならない会話に
夢中になってるオフタリサンを眺めていて、ある結論に到達した。
 
そうか……姿かたちは違っても、遺伝子レベルであたしをイラッとさせるという意味で
は、こいつら一緒なんだ……
 
『ま、まぁ 美佐緒どのも大事無かった事でござるし、よかったでござるな、隣どの?』
「へ? あ、ああ、うん。そうだね、ガーネット」
 なんか人生の心理に気づいちゃったあたしは、きっと、ものごっつうグレートな殺気を
全身から噴き出していたんだろう。
 ガーネットが止めに入ってくれなかったら、問答無用であの二人にとどめをさしちゃっ
てたかもしれない。あ、危なかったぁ~。
 それにしても本当にガーネットっていい娘だよね~。素直で思いやりもあるし、格好が
ちょっとアレだけど……その一点をのぞけば、あたしにとってガーネットは理想の神姫と
もいえる存在だった。最も、いくらあたしでも面と向かってトロンにこんなことを言える
はずもないんだけどね。
『ン~。キミ、誰?』
 あたしとガーネットの会話が耳に入ったのか、上から聞こえたガーネットの声に、カバ
ンから顔だけ出していたトロンが器用に顔だけ回して振り向く。
 それにしても、いくら神姫なら当たり前にできる事と聞いていても、いざ目に前で首だ
け百八十度くるりと回るのは、何度みても心臓に良くない。
 何故かガーネットも、一瞬怯んでたみたいだしね。
『お初にお目にかかるトロンどの。拙者、侍型MMS 紅緒の、くが……』
「ガーネット!」
 珍しく声を荒げた美佐緒が、丁寧な口調で自己紹介を始めたガーネットの声を遮る。
『あっ? ……コホン! これは失礼いたした。拙者の名はガーネットと申す。今後とも
懇意にお願いするでござるよ、トロンどの』
 微笑みながらトロンに話しかけるガーネットを、美佐緒は軽く頬を膨らませながら見て
いた。あたしはそんな光景に少し苦笑しながら、美佐緒のスカートの端を軽くひっぱると
小声で美佐緒に話しかけた。
「ほら美佐緒、いつまでふくれっ面してんのよ」
「え? あ、あはははは。な、何でもないんですよ。気にしないでください、せんぱい」
 あたしの目の前で、美佐緒は慌てて手を振ってごまかす。
『……紅緒ォ~?』
あたしと美佐緒の会話にもまったく興味がなさそうなトロンだったが、胡散臭そうな目
でガーネットを見ていたが、やがてポツリと言った。
『そ、そうでござるが……な、何か拙者に不審な点でも?』
『ウソつケ! そんなヘンなかっこうした紅緒がいるわけ無いだロ!!』
『あ、いやっ、コレはその、み、美佐緒どのの……』
 
 あーっ、言っちゃった! あたしが止めに入る間も無く言い放ったトロンの一言で、一
気に固まるガーネット。
 
『あ、あははは。 せ、拙者、紅緒でござるYO?』
 なんか最後の方が変な疑問文になりながらブツブツと呟き始めるガーネット。トロンを
ガーネット達に紹介する前にクギを刺しておこうと思っていたんだけど、こうなってしまっ
ては後の祭りと言うやつだ。
 
まあ、トロンの言いたい事もわからないではないんだけどね……
 
 というのも、まず一見しただけでガーネットを紅緒だとわかる人はいないだろうから。
紅緒は大体その長く艶やかな黒髪をそのままストレートにしているか、あたしのように
ポニーテールにしているのが普通だろうが、ガーネットはその黒髪を二つに分け頭の横で
縛る、俗に言うツインテールというやつだったりする。しかも、これでもか! と言わんばか
りの派手なデザイン&色彩のリボンが縛った髪の根元で揺れている。
 服装にしても、紅緒の基本セットに入っている陣羽織や神姫サイズの着物を着せる
オーナーが多いなか、美佐緒が選んだ物といえば、ガーネットの頭のリボンにさらに
輪をかけたような、ひらひらフリフリした……いわゆるゴシックロリータ風のドレスだった
りする。
 しかも今回は、たまたまゴスロリルックというだけであって、メイド服にチャイナドレス、
セーラー服と、会うたびに着ている服が違う……というか、あたしの記憶に間違いがな
ければ同じ服を着ていたのを見たことがないような……
 おかげで一部の神姫やオーナー達からは<コスプレ侍>などという不名誉なあだ名
で呼ばれているらしい。
 正直、凛とした顔立ちの持ち主であるガーネットには、違和感爆発だったりする。
 一度あたしから美佐緒に一言いってあげようかと、尋ねたことがあったのだが、ガーネ
ットは苦笑いを浮かべながら『美佐緒どのが選んでくれた物だから』と首を横に振るだけ
だった。
もっとも、ウェディングドレスを着てきた時は、さすがに顔をまっ赤にしたまま俯き、
最後まであたしと目を合わせようとはしなかったけどね……
『拙者、紅緒でござるよ! 拙者、紅緒でござるよ! 拙者、紅緒でござるよ! 拙者、
紅緒でござるよ! 拙者、紅緒でござるよ! 拙者、紅諸で………………』
「ちょっとトロン。あんたガーネットに謝りなさいよね!」
 リピート機能全開で自己主張を始めたガーネットが不憫に思え、あたしはトロンに一言
ガーネットに謝るようにうながしたが、トロンは鼻の頭にしわを寄せ、不満そうな顔をす
るだけだ。
『エ~ッ、だってボク、間違ったこと言ってないしさァ~』
トロンは、あいかわらず首だけ百八十度回してあたしの方を向くと、そうつぶやく。
「大丈夫ですよ、せんぱい! ガーネットはちょっと恥ずかしがってるだけですから」
「そんなわけないでしょ! 大体あんたが……」
 美佐緒のあまりの能天気っぷりに、むかっ腹の立ったあたしが美佐緒に詰め寄ろうとす
ると、ガーネットが慌ててあたしたちの間に割って入ってきた。
『もう大丈夫でござるよ、隣どの。それにこの服は、美佐緒どのが拙者のために選んでく
れた……拙者にとっては宝物でござる』
「ガーネット」
健気に笑顔を見せるガーネット。
 今に始まった事ではないけど、何故ここまでガーネットは美佐緒に尽くすのか? その
理由がなんなのか知りたかったあたしは、何度かガーネットがひとりの時にそのわけを聞
いてみた。最初は笑って教えてくれなかったが、それでもしつこく聞くあたしに根負けし
たのか、誰にも言わないという条件で話をしてくれた。
 
 まず、ガーネットの本当の名前は、九骸という名だという事。正直、趣味がいいとは言え
ないこの名前は、美佐緒がつけた物かと思っていたのだが、名付け親は美佐のお祖父さ
んだそうだ。そして、当時から美佐緒はこの九骸という名を嫌っており、ガーネットと呼ん
でいたんだって。
 そしてなにより驚いたのは、美佐緒がガーネットのオーナーでは無いという事実だった。
本当のオーナーは、美佐緒のお祖父さんなのだそうだが、数年前に他界してしまい、その
時に形見としてガーネットを美佐緒に譲ったそうだ。
 本来、美佐緒がガーネットの正式なオーナーになるためには、リセットという処置をし
なければならないが、リセットとは神姫にとって死にも等しい行為。
 だったら今のままの関係の方がいい。それが美佐緒の選んだ答えだった。
 あたしは今でも静かに話を終え、最後に照れくさそうな顔で言ったガーネットの言葉が
忘れられない。
『確かに拙者にとって美佐緒どのはオーナーでは無いのかもしれない。されど美佐緒どの
は、“拙者”を選んでくれた。美佐緒どのこそ拙者にとって真の“主”なのでござるよ』
 
 顔を合わすたびに、セクハラまがいの事をしてくる美佐緒に迷惑してるのも事実なのだ
が、あたしが知らなかった美佐緒の一面を垣間見た時、あいつに対する評価も少しだけ変
って…………ん?
 
 なんか妙な気配に我に返ると、あたしの顔から数ミリほど先に美佐緒の顔のドアップが。
「わ、わわっ。な、何やってんのよ、あんたは!?」
「あ~ん、もう少しだったのにぃ~」
 思わず後ずさるあたしに、美佐緒が地団太踏んでくやしがる。
 
ホント、なに考えてんのコイツ?
 
『ばっかだなァ~、みさキチ。もっと思い切ってブチューってやんなきゃダメじゃないカ』
 
        こ、こいつか? このバカ悪魔の差し金なんだな? 
 
あたしは正義の鉄槌を加えるべく、ユラリと立ち上がると無言でこぶしを振り上げる。
「……お前ら、こんな所で何をやっとる?」
「へ? げっ、い、今田先生……」
こめかみに青スジを浮かべ、腕を組みながら引きつった笑みで、あたしたちの後ろに立
っているのは風紀指導の今田先生だった。
「とっくに授業は始まっとるんだぞ、さっさと教室に戻らんか!」
「……う、うそ?」
 
    それは、あたしの旋毛を見下ろしながら発した、魂のつぶやきだった。
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コメント


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あはははははw
ガーネットが、本当に紅緒だったのも予想外でしたが、格好が本当に想定外ですわw
そして、コスプレ侍のあだ名が可哀想に。

しかし、ガーネットは良い子ですねぇ。
それなのに、マスターは・・・残念な子やw

とりあえず学校編のスタートをやっと切った様な感じですし、今後も楽しみに読ませて貰いま~す。

ASUR・A | URL | 2012-02-05(Sun)10:00 [編集]


お、お巡りさーん!変態がいますっ!?

ふふふ、相変わらず凶悪な作品です。よかった・・・何も飲んでいなく良かった・・・何か飲んでいる最中だったら口から放射火炎(液状)になるところでしたわ(笑)

それにしても、ガーネットさんエエ子ですわぁホロリ

やっぱりガーネットさん作って欲しいっす!!!求む!コスプレ侍!

いやー読むのが楽しみですなぁ・・・ ちなみに誤字があるようですが、あれってプリントアウトして紙媒体で読まないと結構気がつかないんですよねー、論文で苦労しましたわ(笑)

それでは!

初瀬那珂 | URL | 2012-02-05(Sun)19:55 [編集]


>ASUR・Aさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

とにかくインパクトを持たせたい!
その一心で考えたキャラ、ガーネットを気に入ってもらえてうれしいです。

反して、美佐緒の評価が低いようですが……いい娘なんですよ、美佐緒も、
ちょっと、〇〇〇〇ですけど(笑)。

次回では、さらに主要キャラがでてきます。
お楽しみに。


>初瀬那珂さん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

えっ、変態? ど、どこにデスカ?

いつか見てみたい。初瀬那珂さんがディスプレイに顔しゃ……もとい、
放射火炎(液状)しているところを!

ガーネットは、自分の中でイメージが二転、三転しており、なかなか
イメージが固定しないのですが、製作の方、がんばってみます。

ああ、ありましたか誤字。実はアナログ的バックアップの意味もあり、
プリントアウトをしてたりするんですよね(汗)。
しかも、それで推敲(っぽい)もしてたんですが……お恥ずかしい。

もし今後、誤字脱字の類をみつけたら、ビシバシ指摘してもらえればうれしいです。

シロ | URL | 2012-02-05(Sun)23:43 [編集]


おお、ガーネットさんは製作されていたのですか!

いやはや、危うく当家の紅緒の頭部にアレコレするところでした(笑) ちょうど、今度の改造で頭部が余るんですよねー(笑)

うちも眠い時とかに書くと恐ろしい誤字脱字がありますからねー^^ 大概はMrロードゲイル氏が指摘してくれるんですが(笑)

文章のノリが敬愛する竹井10日先生風なので凄く楽しくよんでいますよん^^ 飲み物を飲みながら読まないのが、ここの正しい読み方ですからねー、そう簡単には吹きませんぜ♪

それでは~

初瀬那珂 | URL | 2012-02-06(Mon)00:03 [編集]