神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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武装神姫 クロスロード 第8話

     
               武装神姫 クロスロード

           第8話 「福引きラプソディー」 



        あまねく大宇宙のパワーが、全身にみなぎる。

『……ねェ』

      あたしは今、この大いなる宇宙と完全に一つになった。

『……ねェってばァ』

     あとは大いなる意志に身をゆだね、この運命の扉を開くのみ!

『……おイ、聞いてんのカ? 洗濯板!』
「何ぃ! いま、なんつっ……あっ!?」
 怒りにまかせて、あたしは手にしていたハンドルを力いっぱい回してしまった。
 後悔の念が頭をよぎるが、もう手遅れだった。目の前を猛スピードで回転していた多角
形の箱がゆっくりと動きを止め、目にも鮮やかな深紅の玉が受け皿へと落下していく。
「また赤ですね。 はい、残念賞です!」
 目の前で、極彩色のハッピを着たお姉さんが、小憎たらしいほどの満面の笑みを浮かべ
ながらポケットテッシュを差し出してきた。

                           ※

「トロンのバカぁ~! なんてことすんのよ! あれが最後の一枚だったのよ?」
 ここは、抽選会場から少し離れた児童公園。
 あたしはベンチに倒れ伏しながら、目の前の悪魔に罵声を浴びせる。
『リンがかってに馬鹿力で回すからだヨ。ボクのせいじゃないネ』
 あたしは恨みがましい視線を目の前に向けるが、トロンの馬鹿はまるで意に介さん、と
いわんばかりの涼しい顔で平然と答える。
 近所の商店街でもようされた福引きに、なんであたしがこんなに固執するのかというと、
原因はその賞品にあった。な、なんと一等の賞品が、アーンヴァルタイプの神姫だからだ
ったのだ。
 トロンたちストラーフと対をなす天使型の神姫、アーンヴァル。もっとも初期の神姫として
知られる彼女たちだが、その後、無数の新型神姫が現れた今でも、強化タイプや黒姫
やキャロのようなMK・2タイプが発売されるなど、息の長い存在だった。
 さすがにスペック的には後発の神姫たちに劣るところもあるが、アーンヴァルやストラ
ーフ自体の人気はいまだに高く、彼女たちは神姫を代表する存在ともいえた。
 それと、これはトロンのヤツには口が裂けても言えないけれど、過去の体験からあたし
が欲しかった神姫は、実はアーンヴァルだったりした。
 もっとも、天使型は常に人気が高く品薄状態であり、けっきょく諸般の事情であたしが
購入したのは“本物”の悪魔型の神姫だったというわけだ。
 それが、こうして憧れの神姫をロハで手に入れるチャンスがめぐってきたというのに。

                そ、それを、このバカ悪魔が……

『な、なんだヨ、そんなにおっかない顔しちゃってサ?』
 怒りの形相も凄まじく無言で睨み続けるあたしに、さすがのトロンも顔色が青くなって
いく。
「……あたしは生まれつき、こういう顔をしてんのよ!」


             コ・ノ・ウ・ラ・ミ・ハ・ラ・サ・デ・オ・ク・モ・ノ・カ!


 心の中で何度も何度も呪詛の言葉をつぶやき続けるあたしを見上げながら、トロンが
胸をなで下ろす。
『な~んダ。ボクてっきリ、リンがボクのこと呪殺しようとしてるのかと思っちゃったヨ』

               いい勘してるじゃない、ビンゴよ!

 緊張からか、しきりに紙切れでひたいに流れる汗をぬぐうトロン。ふと、あたしの視線
が一点で止まる。
「ちょ、ちょっとトロン……その紙って」
 あたしが震える指先で指し示す、くしゃくしゃになった紙。これってひょっとして──
福引きの抽選券?
『あア、コレ? さっきリンが落としたかラ、ボクが拾っておい……GUEEE!?』
あたしはトロンごと抽選券を鷲掴みにすると、きびすを返し全力で走り始めた。

               神よ! この幸運に感謝します!!

                           ※

「ふ、ふ、福引き一回くださいっ!!」
 肺に残った空気を総動員しながら一声叫ぶと、ぐったりとしたトロンごと券を差し出す。
係りのお姉さんが、あたしの意味不明な言動と剣幕に恐れおののきながらも無言でうな
ずいている。
「いい、トロン! 今度あたしの邪魔したらただじゃおかないわよ?」
 念のためにトロンに釘を刺す。痙攣を起こしながら台の上に横たわるトロン。その口か
ら白い靄のようなモノが立ち登り、切れ切れに答える。  
『……そ、そんな余力、ないっテ……』

                 よし! これで後顧の憂い無し!!

 あたしは満足そうにうなずくと、静かに目を閉じ、精神を集中させ始める。

                           ※

『……ねェ』

「…………」

『……ねェってばァ』

「…………」

『……おイ、聞いてんのカ? 関東平野!』

 あたしはこの瞬間、無の境地に達したのかもしれない。 まるで意識することなく渾身
の力を込めた拳が、逃げる間も与えずトロンの頭上に振り下ろされたのだ。

「誰が関東平野だ、バカ悪魔ッ!」
 あたしの魂の反論は、その後に発せられた。

「あれだけ人の邪魔するなって言ったでしょう!」
 台に半ばめり込んだ拳に向かって、あたしは声を荒げた。
『だ、だっテ、もう……三十分になるの…二、リンてバ……何やってんの……サ』
「へ?」
 あたしは、キョトンとしながら拳の下に見える手足から顔を上げると、目の前の困り果
てた表情のお姉さんの頭上にある古ぼけた時計に目をやった。
 ほんとに三十分が過ぎていた。
「す、すみません。いますぐに……」
『はイ。コレ、リンにあげるヨ』
 慌てて抽選用のガラガラに駆け寄ろうとすると、薄っぺらくなったトロンが、風になび
かれながらポケットテッシュを差し出してきた。
「な、何よいきなり?」
 眉を寄せながら受け取ったそれは、忘れもしないデザインだった。

 有り体にゆうと、肩から下げたバッグから大量にはみ出ているテッシュとおんなじだ。

「ト、トロン。まさかコレって……」
『うン。リンの代わり二、ボクがクジを引いてあげといたヨ』
 一片の曇りもなく、満面の笑みで答えるトロン。あたしは、みるみる全身がわななきだ
すのを押さえることができなかった。
「オー マイ ガッ! 何てことするのよ、このバカ悪魔ッ!」
『リンがいつまでもちんたらしてるのが悪いんだロ? アレ回すの大変だったんだゾ!』
 頭にできた特大のこぶをさすりながらこっちを睨みつけるトロンに、あたしも負けずに
言い返す。
「誰も頼んでないわよッ!」

 そりゃあ、クジ運の悪いあたしの事だ。実際一等がとれたかも怪しいものだが、まさか
こんな形で夢が打ち砕かれるなんて……

「ほんとにもう、最っ低!」
 ひざから力が抜け、あたしはその場にぺたんと座り込んでしまった。
「はいっ、お客様。これをどうぞ!」
「?」
 いきなり目の前に大きな箱が差し出されるが、悔し涙のせいで霞んでよく見えなかった。
何度も目をこすり、手渡された箱をじっと見つめる。

     白地のパッケージに描かれたメカニカルな天使の姿……これってまさか?

「はい、一等賞がでました! おめでとうございま~~~~~す」
「???????????」  
 係りのお姉さんが、手にした鐘を盛大に打ち鳴らす。
 あたしはその音色を、わけがわからず惚けたよう顔で聞ていた。
「実はですね。お客様がブツブツとつぶやきながら精神統一をしている間に、お連れの神
姫が見事一等賞を引き当てたんです!」
「は?」
 いまだに事態が飲み込めず、あたしは台の上でふんぞり返っているトロンを見上げる。
「な、なんであんたが抽選券を持ってるの?」
『さっき券を拾ったって言っただロ。もう忘れちゃったノ?』
「だってあれって一枚じゃ……」
『ボクは一枚だけなんテ、一言も言ってないヨ?』
「…………」
 プルプルと震える指の先で、トロンが会心の笑みを浮かべる。
『ふふふフ、リン。ボクのこと崇め奉ってもいいんだヨ?』
 両手で箱を抱きしめたまま、かすかに身体を震わせるあたしを見て、得意満面であたし
を見下ろすトロン。
「……あ」
『ン? 何? 聞こえないヨ?』
 聞き取れないほどの小声でつぶやくあたしに、耳に手を当てトロンは続きを促す。
「あ……あんたが話をややこしくしてんでしょう? バカッ!!」
『うワッ!?』

 あたしの剣幕に驚いたのか、はたまたトロンに向けた罵声が音速を超えたのか、一反〇
綿のようにひらひらと舞いながらトロンの姿は台の後ろへと消えてしまった。

 そのせいで、トロンにはきっと届かなかっただろう。
消え入りそうな声でつぶやいた、あたしの「ありがとう」の一言は……

                           ◆
『店長さん。こちらはすべて終わりました』
 リベルターが、パソコンの陰から顔だけ出して作業の終了を告げる。
「ご苦労さん。じゃあ、そろそろ私たちも引き上げるとしよう」
 夜も更け、人気の絶えた店のなかに私の声が響きわたる。バイトの子たちも全員帰宅し
て、いつもは手狭に感じる店内がやけに広く見えた。
 半分降りていたシャッターのスイッチを入れると、私は肩をもみほぐしながらカウンター
へと歩き出すが、その歩みは数歩で止まってしまった。
 店内に響きわたる警報。リベルターが慌ててパソコンをのぞき込む。
『店長さん! 正面入り口のシャッターに異常が発生したようです』
 驚きながらも背後のシャッターを注視すると、私の動きは硬直したように止まってしま
った。
『ゆ、ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ指ぃ!?』
 カメラアイをズームにしたのか、シャッターまでかなりの距離があるというのにリベル
ターはカウンターの上に立ち上がると、私の代わりに叫んでくれた。
 そう、地面すれすれまで降りたシャッターの隙間から十本の指がのぞいていたのだ。
 どう見てもこどものものと思われる細い指はしばらくうごめいていたが、いきなりシャ
ッターの縁を掴むと、力任せに持ち上げはじめた。
 軋むような異音をたて、少しずつ地面とシャッターとの隙間が開いていく。
「ぬおりゃぁぁあああああああああああああああッ!!」
 聞く者を凍り付かせるような雄叫びが、地を這うように響きわたる。
 あまりの光景に、声もなく立ち尽くす私とリベルターの目の前で、シャッターはじりじ
りと上昇していく。
 やがて四角く切り取られたような空間ができ、小柄な影が闇に浮かぶ。
「こ、こんな時間に、す、すみません。か、買いたいものがあるんです!」
「い、一ノ瀬……くん?」
 月の光に映し出された影が一ノ瀬くんの姿を形作っても、その血走った目のせいで私は
一歩も動くことができなかった。
                           ◆

 力を入れすぎてしまったのか、少し歪んでしまったシャッターを持ち上げたまま、あた
しと店長さんはしばらく声もなく見つめあったままだった。
 あたしを見つめる店長さんと、カウンターの上で身体を限界までえび反らせ口から泡を
吹いているリベルターを目にして、あたしはまたやりすぎてしまったことに気がついた。
 足下に置いた紙袋を指さし、新しい神姫を手に入れたこと。そして起動するために必要
な備品をまだそろえていなかったことを思いだし、慌ててここに訪れたことを説明したが
気まずい雰囲気は変わらない。

「あ、あの……すみませんでした店長さん」
 しゅんとうなだれるあたしを、リベルターを介抱していた店長さんが苦笑しながらなぐ
さめてくれた。
「ま、まあ、気にしなくてもいいさ。そういう一本気なところも一ノ瀬くんらしいしね」
 店長さんの言葉に複雑な気持ちになりながらも、目的の品を探すために店の奥へと歩を
進めた。
 一歩一歩踏みしめるごとに、あたしの胸は高鳴っていく。




        すぐに起こしてあげるから待っててね。あたしの天使A(仮)!
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コメント


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おお!?これは!トロンと対をなす天使が出てくるのか?それとも天使の皮を被った・・w新たな仲間にwktkしてます♪

maki | URL | 2013-07-27(Sat)23:55 [編集]


あー、なんかこのシーンどっかで見たことがあるような・・・はっ!まさか先輩!AGE-1タイタス先輩じゃないですか!? ついに降臨!隣タイタイス!

そして、ついに隣さんの元に新しい神姫が!ボケとツッコミ1対1だった隣さんとトロンちゃんのパワーバランスが一体どうなるのか、非常に楽しみですね!

初瀬那珂 | URL | 2013-07-28(Sun)00:36 [編集]


>makiさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

ご安心ください。一応、箱の中身は知ってる人は知っているというトロンの相方天使だったりします。

……でも、天使の皮をかぶったナニカというのも、ネタとしておもしろいかもしれませんね(笑)。

シロ | URL | 2013-07-29(Mon)07:36 [編集]


>初瀬那珂さん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

じつは私、AGEって見たことがないもんで、いまいちネタがわからなかったりします(スミマセン)。
でも「隣タイタス」。隣の手足が某アレになってる姿は、想像して吹きました。

果たして新キャラはどんな性格か? どちらにせよ隣たちの個性が強すぎるので、パワーバランスを崩せか否かは微妙ですが……。

乞うご期待デス(笑)。

シロ | URL | 2013-07-29(Mon)07:48 [編集]


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