神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

武装神姫 クロスロード 第13話

     
                武装神姫 クロスロード

             第13話 「月下の邂逅」

 グリューネワルトは、やれやれといった風情で声の主へと顔を向ける。
『……おひさしぶりですわね、リベルターさん。 ご機嫌はいかが?』
 揶揄をふくんだ質問に、リベルターの表情がかすかに強ばる。
『あまり良くはないわね。“いかなる理由があろうとも、店内での私闘を禁ずる”。以前に
もそう言ったはずよ、忘れたのリューネ?』
 険しい表情で自分をにらみつけるリベルターに、グリューネワルトは気にした素振りも
見せない。
『忘れてはおりませんわ。ただ……』
 そこでいったん話を区切ると、グリューネワルトはいたずらっ子のような笑みを浮かべ
る。
『ただわたくしは、躾の行き届いていないこの小悪魔さんに、礼儀というモノを教えて差
し上げようと思っただけでしてよ?』
 リューネの挑発に、気色ばんだトロンが詰め寄ろうとするが、ガーネットにいく手を阻
まれる。
「いい加減にしろ、リューネ!!」
 さきほどまでの気弱そうな雰囲気はどこへやら、男は声を荒げてグリューネワルトを怒
鳴りとばす。その剣幕にリューネ(さすがに長いからこう呼ぶね)も気をそがれたのか、
不満そうに頬をふくらますとそっぽを向いてしまう。
 思ったより子供っぽい性格なのだろうか、そんな彼女を苦笑いを浮かべて見ていた男が
床の上に視線を向ける。
 「本当にごめん、リベルター。久しぶりに来たっていうのに、さっそくトラブル起こしちゃ
って……」
 そう言うと、男はリベルターに向かって深々と頭を下げる。
『い、いえ、私の方こそつい感情的になってしまって……半年ぶりですね。お久しぶりで
す、天堂さん』
 リベルターは慌てた素振りで両手を降ると、男に負けないぐらいの勢いでおじぎする。
「それと……」
 男、天堂さんは小さくつぶやくと、生真面目な顔であたしたちの方に向き直った。
「ぼくの不注意で、みんなに不快思いをさせて悪かったよ、ゴメンッ!!」
 謝罪の対象に自分も含まれていると気づくと、トロンが呆気にとられたよう顔になる。
天道さんの真摯さに態度を軟化させはじめたトロンだが、まだ納得できないのだろうか、
不満そうな顔を隠そうともしない。
 トロンの頑固さに呆れながら、あたしは内心苦笑を浮かべる。
「ほら! いつまでブンむくれてるのよ、あんたは? ルーシィが見てんのよ!」
『えっ?』
 メンテナンスが終わったのだろう。あたしの指さす先には、トロンの剣幕に恐れをなし
たのか、リベルターの背後に隠れるようにしてルーシィがこっちの様子をうかがっていた。
『ふぅ、わかったよ!』
 乱暴に頭をかきながら、トロンは投げやりな口調でそう言った。
『ほら、もうボクは怒ってなんかないから──こっちにおいでよ、ルゥ』
 そう呼びかけるが、なぜかルーシィは不思議そうにトロンを見つめているだけだ。
「どうしたの、ルーシィ?」
 手招きするあたしに、ようやくルーシィはホッとしたような顔になり、リベルターの背
後からでてくるとおずおずとこっちに歩いてくる。
 でもルーシィの様子はどこかへんだった。あたしたちの前まできても、どこかそわそわ
として落ち着きがない。
『いったい、どうしたっていうのさ?』
 いぶかしげな顔でそう問いかけるトロンを、ルーシィはだまって見ている。
『え、えーと……ど、どちら様でしたっけ?』
 しばしの間の後、モジモジしながらそう尋ねるルーシィ。
『はっ?』
 トロンのあごがカクンと落ちた。
             
『え~~~っ!? ト、トロンちゃん……なの?』
『それ以外に、いったい誰に見えるっていうのさ?』
 こぼれんばかり両目を開き、おどろくルーシィ。トロンはそれを見ながら、憮然とした
表情で答える。
 笑いをかみ殺しながら、とりあえず目の前の物体は一応トロンだと説明してみるが、
ルーシィは頑として信じようとしない。
『だ、だって! トロンちゃんはもっとこう、小っちゃくって、ぷよぷよしてて、ハナが
顔にめり込んでて……』
『……ルゥって、ボクのこと、そういう目で見てたんだ?』
「あたしもずっと、そう思ってたけど?」
 言外に、ほんの少し嫌みをのせてつぶやくとトロンはますます不機嫌そうな表情になり、
場は一瞬にして笑いの渦に包まれた。

                          ※

 店のど真ん中でいつまでもおしゃべりしているわけにもいかず、あたしたちは、ぞろぞ
ろといつもの休憩用スペースへと移動していた。 
「でも、トロンってほんとに変な神姫ですよねぇ、せんぱい?」
『……いやいや、ボクなんて、みさキチの足下にも及ばないさ』
 打てば響くかの如くツッコむトロンに、今度は美佐緒の表情が曇る。
「ま、まあ、おたがい遠慮なく話せるのは、仲がいい証拠っていうしね」
 トロンにシッ、シッと手を振られ、歯を剥きだして威嚇を続ける美佐緒に恐れをなした
のか、ソファーの隅の方で縮こまっていた天堂さんが本人は遠慮しまくりながら話しかけ
てくる。
『それにしても……』
 天堂さんに対するトロンと美佐緒の過剰なまでの反応に、リューネが不思議そうな表情
を浮かべながら口を開く。
『お二人は、ずいぶんと隣さんにご執心のようですが、あなたがたは彼女とどういう関係
ですの?』
「妻よっ!」
「ちがうっ!」
『そうだ! リンはボクの嫁だッ!!』
「それも、ちがうッ!!」
 一片の迷いなく即答するダブルバカに、あたしは稲妻のごときツッコミを入れるが、妙
な視線を背後に感じゆっくりと首をめぐらす。
『…………』
 そこには、指をくわえながら何か訴えかけるような顔のルーシィが、黙ってあたしを見
上げていた。


       ……ひょっとして、ルーシィもあたしのこと、イヂりたいの?


 言葉に出さずとも伝わったのだろうか? ルーシィは、しっかりとうなずいた。

                        ※

「あっ、そうそう、肝心なこと聞くの忘れてた! リベルター、ルーシィのメンテの結果
どうだったの?」
『はっ?』
 話についていけず、ひたいに手を当てうつむいていたリベルターが、おどろいたように
顔を上げる。
 場の空気を少しでも変えようと、あたしはさかんに目配せを続けるが、恫喝されている
のかと勘違いしたのかリベルターの顔色がみるみる青ざめていく。
『あっ、はいっ。ルーシィにはとりたてて異常は見あたりませんでした』
 ようやくあたしの意図に気づいてくれたのか、リベルターは両手をポンと打ちならすと
一気にまくしたてはじめる。
「そうなんだ? そりゃあ、よかった」
 とりあえず話が逸れそうな雰囲気に胸をなで下ろしながらも、あたしはルーシィの身体
になんら異変がなかったことを素直に喜んでいた。
『ただ……』
「えっ? ただ?」
 急に思わせぶりな口調になったリベルター。慌てるあたしを見上げると、いたずらっ子
のような笑みを浮かべる。
『実は、検査の結果がでるまで時間があったので、ルーシィに射撃のテストをしてもらっ
たんです』
「???」
 話がつながらず怪訝な顔になるあたしだが、リベルターは気にせず話を続ける。
『そうしたらですね。なんとルーシィは、ターゲット撃破率82%をマークしたんですよ?』
 我が子の事のようにはしゃぐリベルターには申し訳なかったが、あたしにはいまひとつ
ピンとこない。
「え~と、……それってすごいの?」
『かなりのものでござるよ、隣どの』
 あたしの問いに、感心したような口調でガーネットが相づちを打つ。
 しかし、まだ釈然としないあたしに気づくと、トロンは大きなため息をついた。
『リン。ルゥは起動してから、まだ数日しかたっていないんだよ? しかも実戦の経験は
皆無ときてる!』
「あっ、そうか!」
 ようやくあたしが理解すると、トロンとルーシィが顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。
 無理矢理話題を変えたのが幸をそうしたのか、一時は荒れた場もなんとか収まり、あた
しはこれ幸いと店の出口へと向かった。
「や~ん。待っててくださいよぉ、せんぱ~い」
「もう、なにやってんのよ? 先に行ってるわよ!」
 トイレに駆け込む美佐緒を、あたしはため息とともに見送った。

        それにしても、ずいぶんと親しい間柄みたいね、あの二人……

 あたしは振り返り、店の奥の方で熱心に何かを話し合っている店長さんと天堂さんの姿
に見入っていた。

『……どうも、グリューネワルトが原因みたいだよ』
「えっ?」
 胸の内に生じた疑問に答えるかのようにつぶやくトロン。驚くあたしを気にした様子も
みせず、にらむように二人を見ている。
『ここ数日、グリューネワルトが胸騒ぎがするといい続けるんで、恵一郎は半年ぶりにこ
こに来たみたいだね』
『だ、だめだよトロンちゃん、そんなことしちゃあ』
 何かに気づいたような顔で、トロンを諫めるルーシィ。どうやらトロンは、二人の会話
を盗み聞きしているみたいだった。
 神姫の目や耳は、高性能のカメラや集音マイクの役割も果たす。それゆえに、他の人の
プライバシーを侵害しかねないこの能力を使わさないようにするのは、神姫オーナーの義
務ともいえた。
「ちょっとトロン! やめなさいってッ!!」
『くっ!? ……ふぅ。そんなこと言ったって、リンだってあの二人に興味があるんだろ
う?』
 あたしの大声を間近で拾ってしまったトロンが、耳を押さえながら反論する。
「べ、別に半年も店に来ないような神姫とオーナーに興味なんて……半年?」
『どうかしたの、リン?』
 彫像のように固まったあたしに、いぶかしげな顔でトロンが話しかけてくるが、トロン
の言葉は一言たりともあたしの耳には届いてはいなかった。

                そう、半年前…この店は……

 あたしの脳裏には、以前桜庭さんから聞いた話が……“ナイトメア”と呼ばれた事件の
ことが思い浮かんでいた。

            じゃあ、天堂さんとリューネは、あの事件に?


                        ※

『あ、あの、リンさま。美佐緒さんをおいて来ちゃってもよかったんですか?』
「……こどもじゃないんだから大丈夫よ」
 ルーシィの控えめな問いかけに、あたしは言葉少な目に答えながらなおも歩き続ける。

 あたしは、さっきから胸を埋めつくす不安感を振り払うかのように頭を振った。

               どうにも嫌な胸騒ぎがした。
 
『リンが望むんだったら、ボクがいつでもあの男にとどめをさしてあげるよ?』
「ば~か、そんなんじゃ……!?」
 トロンの的外れな問いかけに、心の中で苦笑を浮かべるあたしだが、次に紡ぐべき言葉
がでるより早く背後を…いや、夜空を仰ぎ見る。


           頭上には、青白い輝きを放つ満月が輝いていた。

      そして、その光を受け、白い影があたしたちを静かに見下ろしていた。
スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

はじめまして?ではないですがコメントは初めてです。
今までよく見てましたが初コメントってかなり自分では勇気居るので
WEB拍手ばかりでした。WEB拍手って便利ですよね手軽で(オイ

私もかなり昔にArcadiaという投稿サイトでSSを書いてたことありますが
結局仕事やら普段の生活で長続きせず、投げちゃうことが多く書かなくなってしまったので
更新される度にすごいなぁと思ってました。
これからも頑張ってください。毎度更新楽しみにしています。

後、もしご迷惑じゃなければ私のブログのリンクに加えてもよろしいですか?

駆炉栖祁(くろすけ) | URL | 2013-09-03(Tue)03:39 [編集]


>駆炉栖祁さん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

先日はお邪魔しました。
たしかに、初コメって勇気がいりますね(一度すると吹っ切れるんですが……)。

SSに関しては、私も自分に鞭を打ちながら続けてる感じですね。
時々いただけるコメントや拍手がなければどうなっていたことやら。
それより駆炉栖祁さんがSSを書いていたとは知りませんでした。こんどサイトの方に行ってきます!

最後にリンクの件ですが……こんな過疎ブログでよければ是非お願いいたしますッ!!!
ちなみに、こちらの方はことにリンクさせていただきました(笑)。

これからも、よろしくお願いいたします(ペコリ)。

シロ | URL | 2013-09-04(Wed)07:15 [編集]


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。