神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

武装神姫 クロスロード 第20話

                  武装神姫クロスロード

           第20話 「トロンVSグリューネワルト」


 バトルフィールドに足を踏み入れたトロンに、ことにフィールドに降り立っていたリュ
ーネが話しかける。
『隣さんとの今生の別れはすみまして、トロンさん?』
 リューネの辛辣な口調にトロンは顔色ひとつかえることなく、目の前のリューネに食い
入るような視線を投げかけている。
 口八丁手八丁を駆使して相手の心理にゆさぶりをかけ、その隙を突いて戦うのを得意と
するトロンだけど、対戦相手のちょっとした言動に本人のほうが熱くなることが度々あった。
 少し前までのトロンがまさにソレだったけど、どうやら、ほんとうに冷静さを取り戻したみた
いだった。

             いや、それだけじゃないだろうけど……

「まいったわね……」
 シュミレーターに備え付けられたモニターから顔を上げると、あたしは小さくつぶやいた。
おそらく、リューネと対峙しながら同じ行為をしていたトロンも同じ答えだったと思う。
トロンの顔に浮かぶ険しさは、きっとそのためでもあるのだろう。
 一途の望みをかけてルーシィを見るが、申し訳なさそうに首を振っている。

 あたしたちの共通の悩みは、リューネのタイプがわからないということだった。
 ふつう、神姫には固有のモチーフが存在する。たとえば、トロンは(まんま)「悪魔」。
ルーシィたちアーンヴァルは「天使」というふうに。

 ところが、リューネがどんなタイプの神姫だか、いくら調べても皆目わからなかった。 
 いや、実際この店ではじめてリューネと出会ったときにそのことにには気づいていたけ
ど、まさかこんなことになるとは夢にも思わなかったから──あの時は、たいして気にも
とめなかった。

 でも、これは神姫オーナーとしては致命的な失敗だったかもしれない。本来なら、事前
に対戦相手のデータは可能な限り集め、バトルに挑むというのはあたりまえの対策だった
のに。

 さらに、あたしの気をもませる悩みが一つあった。
 それは、リューネが纏っている武装。あたしは、たいして段数もない、記憶という名の箪笥
を必死になって一段一段ひっかき回してみてたけど、これまた該当するような物はなかった。

  ということは、あれはソウルテイカー同様、オリジナル武装ということなんだろうか?

「やっぱり、ちょっと無謀だったかな……」

 あまりにも謎だらけな神姫、リューネ。
ほとんどノリと勢いにまかせて突っ走ったことを悔やみはじめたけど、すべては“後の祭り”
というヤツだった。

『……わたくしは、“賢者型MMS グリューネワルト”ですわ!』
 思わぬところから回答があった。でもそれは、次なる疑問をあたしに投げかけただけで
もあった。
「賢者…型? それに、その名前って……」
 まるで聞いたこともないリューネのタイプも気になったけど、“グリューネワルト”と
いう名前の方があたしの興味を引いた。
 一般的には、神姫にはモチーフになったものの名と、製品名ともいうべき呼び名が与え
られる。トロンなら“ストラーフ”というように……
 とろこが、彼女は自らの個体名を“グリューネワルト”と名乗った。

                    つまり、これって……

『そう、わたくしはこの世界で唯一の存在……』
 あたしの思考を引き継ぐように話し出すリューネ。

 リューネは使徒やエーアストと戦うためだけに創られた存在。その身体も、かなり手を
加えられているだろうと思ってはいたけど、まさか、ワンオフものだったなんて……

『なるほどね』
 納得したようにつぶやくトロン。リューネの唇がわずかにほころぶ。
『それならば、このバトル自体やるだけ時間の無駄と気づいたはず……無駄に時間を費や
すのも嫌ですし、早々にサレンダーしてくださいませんこと?』
 いかにも人を小馬鹿にしたようなリューネの口調に、トロンの眉の端がわずかに上がる
が、それはすぐに口元に浮かんだ笑みに取って代わられる。
『キミの口上は謹んで拝聴したよ。でもね……』
 フィールド上に、戦いのはじまりを告げる電子音が響きわたる。身体をわずかに沈み込
ませ身構えるトロン。
『ボクは、『ザマス』言葉でしゃべるヘンな神姫に下げる頭はもってないよッ!!』
『わたくしが、いつ、そんな喋り方をしまして!?』

 自身めがけて一直線に突き進んでくるトロンに、顔を真っ赤にしながらツッコむリュー
ネだった……

「ちょっと、トロン!」
 あまりに考え無しに緒突するトロンに、あたしは思わず怒鳴ってしまった。

                 いくらなんでも、無謀すぎる!

 リューネが名乗った賢者型というタイプ名が、あたしの頭に引っかかっていた。
 神姫の中には“魔導師型”や“魔女型”と呼ばれるタイプあり、これらの神姫は【魔法】
と呼ばれる特殊なスキルを使用するものがいる。
 このタイプの神姫は、炎や雷を自由に扱い敵に攻撃を加える。これらがどういう仕掛け
なのかあたしにはさっぱりわからないけど、かなりの威力を持っていた。
 そして、むかし美佐緒と一緒にやったゲームにでてきた賢者は、攻撃と防御、双方の呪
文を使っていた。

                    つまり、リューネも……

『大丈夫だって、わかってる!』
 あたしの不安を吹き飛ばすように、トロンの声がインカムから響いてきた。  
『グリューネワルトにブッソウなものを使わせないためにも、距離を詰めておかないとね!』
 どうやら、トロンもリューネの特殊スキルに気づいているみたいだった。だったら、トロンの
対応は理にかなったものだ。あたしは胸をなでおろす。
『うおりゃああああああああああああッ!!』
 一足飛びに自身の間合いに飛び込むトロン。手の甲を覆っていたナックルガードが前方
にスライドし指を覆うと、そのまま雄叫びをあげてリューネに殴りかかる。
 だがリューネは、少しも驚いた素振りもみせず、静かにトロンをみつめているだけだった。
「えっ?」
『なっ!?』
 鈍い衝撃音とともにあがった、あたしとトロンの驚きを含んだ声。
 トロンの右拳は、大きく身体を沈み込ませ頭上で交差させたリューネの両腕に軌道を反
らされ、何もない空間をむなしく突いていた。
 リューネの唇の端が、キュッと持ち上がる。
 お返しといわんばかりに、妙にゴツいリューネの拳が唸りをあげてトロンに打ち込まれ
る。トロンは必死に身体をひねりながら、なんとかこの一撃から身をかわす。
 でも、なおもリューネの猛攻が続く。
『ぅおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
『なっ? えっ? ちょ、ちょっと!?』
 後退しながらも、リューネの連打をかろうじて“一重”で捌く。でも、トロンの表情には、
まるで余裕が見られなかった。
「トロン! なんとか距離をとって!!」
 とっくにトロンも気づいていたんだろう。小さくうなずくと、片手を腰にやる。
 でも、それは無謀といえた。両手を使っても、リューネの攻撃をしのぐのが精一杯だと
いうのに、一瞬とはいえトロンの防御が片手一本になったんだ。
 リューネはこのチャンスを見逃さなかった。
『隙ありですわっ!!』
 その攻撃を、かろうじて“一重”で捌くも、その勢いを完全に反らすことはできなかった。
リューネの拳は、そのままガードを突き抜けトロンの腹部で炸裂する。
『がはッ!?』
 片手一本の攻撃だというのに、トロンの身体は弾丸のように吹き飛んだ。
『ふっ、とどめ──ですわっ!』
 いままさに、トロンにとどめを刺さんと跳躍の姿勢をとるリューネ。宙を待っていたト
ロンは、苦痛に顔をゆがめながらも右手を突き出すと何かを弾くような仕草をした。
 次の瞬間、とつぜんリューネの足下で爆発が起き、その姿が爆煙につつまれ見えなくな
った。
『ゲホッ!……痛でで』
 なにが起きたのか皆目わからず惚けていたあたしは、地面にたたきつけられ苦鳴をあげ
ながらも身を起こすトロンの声で、ようやく我に返った。
「だ、大丈夫? トロン!!」
『ま、まあ、なんとか…ね』
 ぜんぜん大丈夫そうにはみえなかったけど、トロンは気丈にそう答えた。
 トロンの無事に、ホッとしたような表情をみせていたルーシィが、コンソールの一点を
みるや青ざめる。
『リンさま! これを見てください』
ルーシィの声に、釣られて見たモニターには、いままさにトロンが受けたダメージが表
示されていた。それは、たかがパンチ一発で受けるダメージとしては、ありえない数値だ
った。
「な、なんなの、コレ?」
 いまだに目の前に提示されたものが信じられず、モニターを食い居いるようにのぞき込
んでいると、苦笑混じりのトロンの声が聞こえてきた。
『さすがだね。 あの使徒と戦うために創られたっていうのは伊達じゃない』
「ンな悠長なこといってる場合じゃないでしょう!」
 どこまでお気楽口調のトロンに、噛みつかんばかりの勢いで詰め寄るが、トロンの態度
は少しも変わらない。
「と、とにかく、今のうちに対策を……」
『残念だけど、そんな余裕はないみたいだよ?』
 ゆっくりと立ち上がりながら、前方を指さすトロン。
 ようやく晴れてきた白煙の向こうに、静かに立ち尽くすリューネの姿が映った。
 その姿は、硝煙と頭上から降りしきったフィールドの破片のせいで見ているあたしが気
の毒になるくらい薄汚れていた。

 でも、リューネの様子はどこか変だった。
 バトルの真っ最中だというのに、なぜかリューネはブツブツとつぶやき、まるで夢遊病
者のようだ。
『……よくも……こんな……』
 うつむいていたリューネが、いきなり顔を上げた。

 
                  血走った目、耳まで裂けた口……

             これで角を付けたら、どこから見ても立派な般若だった。
スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

遂に始まったトロンVSリューネの戦闘ですが、最初から謎だったリューネさんのタイプが判明した事と、そのタイプ名「賢者型」を裏切る様な近接戦闘能力の高さと対使徒に特化した攻撃力が目を惹きますね。

しかし、近接能力しか見せていないリューネさんですから、今後の戦闘で「賢者型」のタイプ名に合う様な特殊能力も見せてくれるのか今からでも楽しみです。

しかし、リューネさんの最後の姿を想像したら、人形浄瑠璃の「がぶ」が頭に浮かびましたよ。
美しい娘の顔が瞬時に鬼婆や夜叉の顔に変わるアレですな。

ああいう反応は、潔癖症の人等によく出る特徴ではありますが、リューネさんも潔癖症なのですかねぇ?
もしくは、格下と侮っていたトロンさんに反撃されたのが気に食わないのか・・・
思いっきりキレたリューネさんに対してトロンさんがどう反撃するのか!
そして、キレたリューネさんがどう動くかが楽しみです。

続きを楽しみに待ってま~す。

ASUR・A | URL | 2013-11-07(Thu)10:25 [編集]


>ASUR・Aさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

いちおう第2部のレギュラーキャラでありながら、プロローグ以降ほとんど姿をみせなかったリューネもようやく活躍の場がめぐってきました。

本SSでも珍しい特殊なスキルを持つリューネ。
この後の戦いで、彼女の驚愕の能力があきらかになるでしょう。

乞うご期待です!

まさにリューネの怒り顔は、ASUR・Aのおっしゃる「がぶ」というやつですね(イメージはまさにそれでしたが「がぶ」という名は知りませんでした……)。
美人が一転して鬼のような顔になる……こういうギャップって好きなんですよねぇ。

確かにリューネは潔癖の気がありますが、今回の激昂は取るに足らないと高を括っていたトロンの反撃によるものが大きいようです。
傲慢とまではいきませんが、高飛車なのは間違いありませんからね、リューネは(笑)。

シロ | URL | 2013-11-09(Sat)06:37 [編集]