神姫者の巣

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武装神姫 クロスロード 第21話

     
                  武装神姫 クロスロード


         第21話 「トロンVSグリューネワルト その2」


 今の今まで沈黙していた天堂さんだったけど、豹変したリューネに気づくや慌てて止め
に入ってきた。
「おちつけ、リューネ!」
『お黙りなさいッ!』
「……ハイ」
 天堂さんは、必死になだめすかそうとするが、リューネに一括されるとシュンと黙り込
んでしまう。

                   なさけねぇ……

『わたくしの美貌に泥を塗るもは何者であろうと……万死に値しますわっ!!』
 わなわなと身体をふるわせていたリューネが、ビシッと指をトロンに突きつけるが、
トロンは、そんなリューネに呆れたような顔をしながら大げさに肩をすくめてみせる。
『そんなに汚れるのが嫌だったらさ、箱にいれて押入にでもしまっておいたら?』
 無数の青筋が浮かび上がったリューネをトロンは見ていたが、やがてニヤけた笑い
を浮かべながら口を開く。
『ま、ボクが見たところ、そんなご大層な代物にはとても思えないけどね』
 トロンのこの一言に、炎を吹き出すかと思われるほどリューネの顔が朱に染まる。
 一瞬、脳溢血を起こすんじゃないかと(むろん、神姫がそんな状態になれば、だけど…)
思ったけど、おこりのように全身を震わせていたリューネの身体は、なぜかピタリとその
震えを止めた。
『うふ、うふふふふふふふふ』
 心底楽しそうな、それでいて何か押し殺しすような声音でリューネがとつぜん笑い出す。
そう、怒りが限界を超えると、なぜか人は笑い出す。

                少なくとも、あたしはそうだ。

『覚悟はできておりまして? トロンさん……』
 うつむきながら一語一語絞り出すようにつぶやくリューネ。その口調から何かを感じと
ったのだろう。トロンはひざの力を抜くと、猫足立ちの構えをとる。
「ちょっとまて、リューネ! これは……」
『……そぎ落とされたくなかったら、黙ってらっしゃい、恵一郎……』
「ハイ、すみません……」
 腰を浮かせながら仲裁に入るが、またもやリューネに恫喝され、なぜかズボンの前を押
さえながらすごすごと腰をおろす天堂さん。

                ホントに使えねぇ……


『ここまでわたくしをコケにしたおバカさんは、貴女がはじめてでしてよ?』
 リューネの全身から、ゆらりと気が立ち上る。
『“大賢者”と呼ばれたわたくしの力、存分に味併せてさしあげますわ』

                  “大賢者”? 

 ついにリューネは、魔法攻撃を使う気になったようだ。
「トロン、気を付けて! リューネのやつ、ホンキでくるわよ!?」
 あたしのアドバイスが終わる前に、トロンは全力でリューネめがけて走り出す。
 魔法攻撃は強力だけど、“詠唱”と呼ばれるスキルを発動するまでのタイムラグが弱点
だ。トロンはこのわずかなすきに、リューネに肉薄し先手を打つ気なんだろう。
 ところが、トロンの動きなど気にした素振りもみせず、リューネの顔が天をあおぐ。

              まずい、“詠唱”がはじまる!






      『URAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』



「『へっ!?』」
 リューネの口から漏れたのは、呪文……というより雄叫びそのものだった。リューネは
拳を振り上げながら、鬼神も三舎をさけて通りそうな形相を浮かべトロンめがけて殴りか
かってきた。
 てっきり、“詠唱”の時間を稼ぐために後ろにでも下がるかと思っていたあたしとトロン
のあごは、予想だにしないリューネのリアクションにカクンと落ちた。
『URA!』
『うわっ!?』
 かろうじて、リューネの右拳を“一重”で捌くトロン。
『URA!!』
『くっ!』
 間髪入れず繰り出される左拳。トロンは身をひねり、なんとかこれもかわす。
『URAURAURAURRRRRRRRR!!!』
 必死にリューネの拳をよけ続けるトロン。でも、嵐のような連撃はすさまじく、防戦一
方に追い込まれたトロンが、ついにバランスをくずしてしまった。
 リューネの口元に、会心の笑みが浮かぶ。腰を落とし、大きくためをとっていた右拳
をがら空きになっていたトロンめがけて叩き込む。
『URAAAAAA!』
『ぐはあっ!!』
 もはや防御もかなわなかったトロンは、その一撃をもろに受けてしまう。トロンの腹部
に閃光と爆発が起き、トロンはそのままフィールドの端まで吹き飛ばされてしまった。
「トロンっ!!」
 声も枯れんばかりに叫んだけど、フィールドに伏したままトロンはピクリとも動かなか
った。
『いくら呼んでも無駄ですわ、隣さん。わたくしの<ペインナックル>を受けて立ち上が
った神姫は皆無でしてよ?』
「ペインナックル?」
『そう。標準和名は<激痛拳>ですわ!』
「何よッ! 標準和名って!?」
 状況が状況だったけど、あたしは反射的にツッコんでしまった。
「だ、だいたいアンタ、いかにも魔法を使うとみせかけて、肉弾戦挑んでくるなんて卑怯
じゃない?」
 屁理屈なのは百も承知だったけど、なんか納得のいかないあたしは怒鳴り散らす。
『……妙な言いがかりはやめていただけませんこと? それにわたくしは、ちゃんと魔法
を使いましてよ?』
「へっ?」
 切れ長の瞳をさらに細め、自信たっぷりに言い切るリューネ。わけがわからず唖然とし
ていると、リューネはかがやくブロンドをかき上げながら言い切った。
『そう、これがわたくしの──魔法言語でしてよ!』
「『魔法言語じゃね───ッ! ソレは肉体言語だッ!!』」
 一遍の迷いなく言い切ったリューネに、あたしとルーシィは血を吐くようにツッコんだ。

『……あのさあ…バトルの真っ最中に…なに…ボク不在で漫才はじめてるの…さ?』
「トロン!?」
『トロンちゃん!』
 苦痛と呆れをミックスした声に、あたしはフィールドに視線を移した。トロンは、緩慢
な動きで立ち上がるところだった。
『そんな……わたくしの攻撃を受けて、立ち上がってくるなんて……』
『まともにくらったら、さすがに危なかったけどね』
 愕然とするリューネに、トロンが微笑んでみせる。リューネはその笑みを見て、さらに
まゆを寄せた。
『タネ明かしをするとね……こうさ!』
 腹部を押さえていたトロンは、残った手で指を弾くような仕草をしてみせた。
 怪訝な表情を浮かべるリューネの足下で爆発が起こる。リューネは慌てて後ろに跳躍
した。
「……そうか、アレはPBのカートリッジ!」
 思わず打ちならした手の音に、おどろいたルーシィがあたしを見上げている。
『どういうことなんですか、リンさま?』
「トロンのヤツは、カートリッジを指弾にみたてて打ち込んだのよ!」
『しだん?』
 ルーシィは、まだ理解できなかったようだった。あたしは苦笑しながら説明をはじめた。
「つまりね、本来は相手に接触しないとPBはなんのダメージを与えないの。だから、ト
ロンはカートリッジを指で弾いて弾丸のように打ち込んだのよ」
『へ~』
 ルーシィは、まだ要領を得ないのかポカンとしている。
 あたしは、そんなルーシィを見ながら苦笑を浮かべたが、それ以上にトロンの機転に感
心していた。
 確かに、射程も速射性も一般的な銃器に比べればおそまつなものかもしれない。でも、
相手の意表をつくという一点を考えれば、これ以上トロンに適したものはないだろう。
「おそらく、リューネを埃まみれにしたのも、<ペインナックル>の威力を最小限に押さ
えたのも、あの指弾のおかげね」
『……なるほど、そういうことでしたの』
 あたしの解説に相づちを打ったのはリューネだった。
 リューネは自分の右拳を持ち上げ、しげしげと見ていた。拳の中央が大きく窪んでいる。
『わたくしの拳がトロンさんに届く前に……』
『カートリッジを拳に打ち込み、衝撃と爆風でトンズラこいたってとこかな? もっとも……』
 リューネのつぶやきを、破損した腹部を押さえながら補足するトロン。でも、その顔は
苦痛にゆがんでいた。
『けっこうダメージは深刻だけどね』
『そうでなくては、わたくしの立つ瀬がありませんわ』

               吐き捨てるようにつぶやくリューネ。

         でも言葉とは裏腹に、その口元には不敵な笑みが浮かんでいた。
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コメント


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バトル中なのに、なんか和むのが不思議。
アゾンからも魔法服出てましたし、ひょっとして昨今は魔法がブーム?ライダーも魔法使いだったし。
何年か前、世間ではハリポタで一時的に魔法が少し流行ってましたねー
アニメだとスレイヤーズの頃に詠唱とか流行ってたような・・・

進み過ぎた科学は魔法と見分けがつかないという言葉が何かでありましたが
昔の人からすれば今の世界は魔法のように感じるのかもしれませんね。

そういえば、以前教えて頂いた秋葉原のイエサブ行ってきましたよー
ちょっと場所が微妙にわかり辛くて迷子になりましたが(笑)
最初は隣のビルのイエサブ・スケモショップの方入ってしまったり・・・
教えていただいてありがとうございました!

駆炉栖祁(くろすけ) | URL | 2013-11-12(Tue)22:25 [編集]


>駆炉栖祁さん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

どうもすぐにギャグに走ってしまい、中だるみが激しいSSだけにそう言っていただけると励みになります(涙)。

たしかにアゾンの魔法服、出来がいいですね。
私がちょくちょく覗きに行く神姫関係のブログでも、よく目にします。
食傷気味な気はありますが、やはり魔法(少女)モノというのは根強い人気がありますね。

>進み過ぎた科学は魔法と見分けがつかない。
この言葉は本当に真理だと思います。
私レベルだと、神姫は科学の結晶というより魔法の産物といった感じですしね(笑)。

おお、行かれましたかイエサブに?
確かに分かりづらいですよね、あそこは……。
ちなみに私もはじめて行ったときは、隣のビルに入っちゃいました(笑)。

ウォーハンマーの他に、店の名前のとおりボードゲーム関係を扱うマニア向けの店ですが、駆炉栖祁さんのお目当ての品がみつかれば幸いです。


シロ | URL | 2013-11-14(Thu)19:33 [編集]


リューネさんの本来の戦い方「大賢者」の本当の姿を見て、息が苦しいのに大笑いしてしまいましたよw
私をギャグで殺す気ですかいw

大賢者としての戦闘方法が、魔法言語ならぬ肉体言語を用いた<大きいな><拳で語る><者>の大賢者とはw
もう正直に大拳者にした方が周りが受ける精神的なギャップダメージが軽くなりますよねw

しかし、相変わらずのトロンさん。
機転を利かせての行動での被害を最小限に抑える発想と頭の回転の速さが相当な武器になっていますよねぇ。
本来、近接攻撃の威力を上げる為のPBを上手く使って、簡易型のリアクティブアーマーとして利用するとは。

総合的な能力でいえば、レスティアさんの方が数倍上なのでしょうけど、一瞬一瞬状況が変わる様な戦いにおいては、トロンさんの瞬時の状況把握&状況判断による対処能力の高さが今までの戦闘における勝率の高さに繋がっているんでしょうね。
昔の武人の至高の境地の1つに例えられる「常在戦場」を地でいっている感じですなぁ。

とりあえず、リューネさんの初撃は対処しましたが、これから油断等が消えたリューネさんと本番ともいえる戦いに進んでいくので、この先が非常に楽しみです。

これからも楽しい作品を書いていってくださいね~
そして、最近はやけに解説役が板に付いてきた隣さん&リアクション芸人ルーシィさんの戦闘解説もホンワカして楽しく拝見させてもらっています♪

ASUR・A | URL | 2013-11-25(Mon)12:23 [編集]


>ASUR・Aさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

あやうく、小説書いて殺人罪に問われるかと思いましたよ(笑)。
賢者と名乗りながら実はバーバリアン! このギャップを楽しんでいただけたようで何よりです。

><大きな><拳で語る><者>

やっぱり分かっちゃいましたか“大賢者”の意味?
さすがはASUR・Aさんだ……(汗)。

PBを弾に見立てて打ち込むというアイディアはかなり前からあったのですが、ようやく今回使うことができました。
なぜか銃の類を嫌うトロンにはぴったりではないかと、けっこう自分でも気にってたりします。

>常在戦場
「いつでも戦場にいる心構えで事を成せ」
トロンを例えるにしては、少々恐れ多いような……。
どちらかというと、隣に似合いそうな気がしませんか?(笑)

物語の主人公というものは、なにかしらの「強さ」というものを与えられます。
主人公をずば抜けた強さを持った存在にしたくなかった私がトロンに与えた「強さ」は、まさにASUR・Aさんのコメントにあった「状況把握&状況判断の高さ」だったりします。
地味な能力ではありますが、こういう「強さ」があってもいいのでは、と思います。


たしかに隣はバトル中にアドバイスしないので(頭の回転がトロンほど早くないので、アドバイスするとかえってトロンの足を引っ張るため)もっぱら解説役に徹してますね。

そのうち……

隣「あっ、あれは!?」

ルーシィ『リンさま、あの技を知ってるんですか?』

隣「うむ、あれは古代中国より伝わる幻の(以下略)」

みたいな解説をはじめるかもしれませんね(笑)。




シロ | URL | 2013-11-26(Tue)11:11 [編集]