神姫者の巣

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武装神姫 クロスロード 第22話

                  武装神姫 クロスロード

         第22話 「トロンVSグリューネワルト その3」


『URAAAAAAAAAAAA!』
『うおおおおおおおおおおおおッ!』
 さっきより一段と鋭さを増したリューネの攻撃を、トロンは少しも臆さず迎え撃つ。
 一見すると優勢に見えるリューネだが、その表情には明らかに戸惑いと苛立ちの色が浮
かんでいる。
「“半歩”」
 敵の間合いに自ら踏み込み、相手の攻撃のタイミングを崩す技“半歩”。その存在を知
らないリューネはいかにも戦いずらそうだった。
 でも、それでも戦いはリューネに優勢にうごいていた。
 何度めだろう……リューネの拳を受け、トロンはフィールドに倒れ込む。
『……くっ』
 そして、これも何度めだろうか。トロンはまた立ち上がる……。
 さっきリューネの顔に浮かんだ戸惑いと苛立ちは、間合い云々よりもトロンのこのリア
クションのためだったかもしれない。
 両手をだらりと下げたまま立ち上がり、ニヤリと笑うトロン。驚愕に彩られるリューネ
めがけて攻撃を再会する。
『くっ!? ……このぉッ!!』
 いままで受けたダメージを感じさせないトロンの攻撃のするどさに、リューネの顔がお
どろきに彩られる。
『いい加減にしてくださいませんこと? いったい、何が貴女をここまで……』
 完全に防御一点張りになってしまったリューネが叫ぶ。でもトロンは、リューネの問い
の答えることなく攻め続ける。
 リューネは唇を噛みしめながらトロンを見ていたが、顔面めがけて突き込まれた拳を無
造作に弾くと攻勢に転じた。
 トロンの態度が、リューネのカンに障ったらしい。
『貴女に何がわかって?』
 リューネの剛拳がトロンを襲う。必死にガードを続けるトロンだが、リューネの声音に
ハッとしたように顔を上げる。
『貴女は何も知らない! 失うことのつらさも……』
 唸りをあげ、矢つばきに繰り出される攻撃を“一重”で捌き続けるトロン。
『悲しみもっ!!』
『グッ!?』
 かろうじて、リューネの攻撃を避けつづけたトロンだったけど、ついに一撃をかわしそ
こねる。巨大なハンマーを思わせる打撃を受け、トロンはまたもやフィールドの端まで吹
き飛ばされる。
 倒れ伏し身動き一つしないトロンを見つめていたリューネは、天を仰いだ。
 その頬に、ひとすじの涙が流れ落ちる。
『カノンさん…ナバトさん……ノインさん。また、あんな思いをするくらいなら……』
『……いっそ…わたくしが全てを背負った方が…マシです…わ……かな?』
『トロンさん!?』
 胸の内を呼んだかのように続けられたセリフに、リューネがおどろきながら前を向く。
 トロンはよろめきながらもフィールドの壁面に手をやりながら、なんとか立ち上がると
微笑んだ。
『……やっとボクにもわかったよ。キミの本心がさ……』
 トロンの言葉に、リューネの顔にけわしさがにじむ。
『……ようやくそれに気づいたというのなら、さっさと降参してくださりませんこと?』
『残念だけど、それだけは無理だ!』
 リューネの言葉を遮るようにトロンが叫ぶ。リューネの目が細まり、かすかに歯ぎしり
の音が聞こえた。
『わたくしの気持ちがわかったといいながらこの態度……ほんとうに、理解しがたい小悪魔
さんですわね?』
 頭を振りながら、呆れたような口調でトロンに向かって歩を進めるリューネ。
『わたくしたちの力の差は歴然──それなのに貴女はなおも立ち上がり挑もうとする……
何が貴女をそこまで駆り立てるのです?』
『キミと同じさ……もう、あんな思いはしたくないからだよ』
 リューネの歩みがピタリと止まる。
『ボクは自分のマスターを……リンを守ることができなかった。もう、あんな思いはした
くない!』
 うつむきながら、つぶやくように話していたトロンが、不意に顔を上げる。
 ボロボロになったトロンの身体。でも、トロンの金色の瞳は、爛々と闘志を宿していた。
トロンと目があったとたん、リューネはハッとしたように身構える。
『トロンさん……貴女は……』
『あんな思いをするぐらいならボクは……戦うッ!!』
 血を吐くような叫びとともに、トロンリューネめがけて突き進む。
『トロンちゃん……』
 そういいながら、無意識にあたしの服の袖をつかむルーシィ。感極まったのか、それ以
上言葉が続かない。

              でも、それはあたしも同じ気持ちだった。

『……あなたも“神姫”でしたのね、一応……』
 あたしだからこそかろうじて聞き取ることができたリューネのつぶやき声。その声音は
慈しみを感じさせ、彼女の口元に浮かんだ笑みは、あたしが一度もみたことがいほどおだ
やかだった。
 でも、それはほんの一瞬のこと。リューネの顔が戦う者のソレになる。
『貴女にそこまでの“覚悟”があるのなら、わたくしも全力でお相手させていただきます
わッ!』
 そう言いながら、リューネの身体が音もなく動く。

『URAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 足下を揺るがすような雄叫びとともに、リューネがトロンめがけて突き進む。

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!』

 トロンもまた、咆哮をあげる。その気迫は一歩もリューネに負けてはいなかった。 

『ペィィィィィンッ──ナッコォォォオオオオオッ!!』

 大気を切り裂き、うなる剛拳。ついにはその速度のなせる技か、信じられないことに、
リューネの拳が炎に包まれる。
 その凄まじい光景にも、トロンはまるで臆することなくリューネめがけて拳を繰り出す。
ところが、トロンはリューネの攻撃を避けるどころか、逆に拳めがけて己の拳を叩き込も
うとしているようだ。
「だめ、トロン! このままじゃ……!?」
 たがいの拳が正面からぶつかると思った瞬間、トロンの拳がわずかに沈み込んだ。この
動きのため、トロンの右腕にリューネの腕が乗り上げるような形になる。
 でも、軌道を逸らされてもなおリューネの拳はとまらない。そのままソウルテイカーの
右肩のアーマーを吹き飛ばす。
 だが鋭い炸裂音とともに、トロンの腕と交差したリューネの手首と肘のあたりで閃光が
走った。
『くっ!?』
 リューネには、それがソウルテイカーの拳と肘に内蔵されたPBによるものとはわから
なかったろう。
 おどろきに顔をゆがめながら自分の右腕をみるリューネ。手首と肘の関節から白煙が上
がりスパークが走っている。
 唖然としてリューネの動きがとまった。でも、トロンはその一瞬のすきをのがさなかっ
た。両手からビームソードを発生させると、リューネめがけて袈裟掛けに切りつけた。
『まだまだぁあああ!』
「なっ!?」
 トロンの起死回生の一撃に、リューネのとった行動はあたしの理解の範疇を越えていた。
リューネは、左腕でもはや動かないと悟った右腕をためらいなく引きちぎると、それを棍
棒代わりに殴りかかったんだ。
 いままさに頭上めがけて振りおろされたトロンの両腕めがけて、横殴りにリューネの右
腕が迎え撃つ。
 トロンの両腕をひしゃげさせながら、リューネの勢いは止まらない。そのまま弧を描き
ながら腕を振り抜き、トロンの身体をフィールドの床に叩きつける。
『があああああああッ!!』
 床を砕きながら、トロンの身体は大きくバウンドした。
あたしの呼びかけにもトロンは微動だにしない。モニターに映し出されたトロンのLP
は0になっていた。

『……マダ……』
 バトルの終わりを知り、うつむいていたあたしのインカムにかすかな声が響いた。
 反射的に顔を上げると、フィールドに横たわっていたトロンがひしゃげた腕をリューネ
に向かって持ち上げようとしていた。
 あたしはもう一度、コンソール上のモニターに目をやった。トロンのLPは0のままだ。

               それなのに、トロンは動いている……

『こ、これは、どういう事ですの?』
 勝利を確信し、トロンを見下ろしていたリューネは、光をなくし虚ろな瞳をしながら、
なおも自分に掴みかからんばかりに腕を伸ばすトロンに、恐怖に顔をゆがめて後ずさる。
『……ボク…ハ、マモ……ル』
「えっ!?」
 インカムから聞こえたかすかな声。あたしがその言葉を反芻しようとしたとき、電子音
が鳴り響き、フィールド上にバトルの結果が表示された。




               ─── WINER トロン ───




 あたしは、頭上の電光掲示板に輝く文字をだまって見つめていた。きっと、いまのあた
しは端から見たらバカみたいに惚けた顔をしていただろう。  
 でも、まちがいなく、敗北したのはトロンのはずだ。

 もし、これが機械的なミスでないのならば、勝敗が表示される前に対戦相手が降参した
ということ……

「天堂さん!?」
 あたしは、ハッとしながら対戦席に目をやった。天堂さんはあたしの顔を見ながら大き
くうなずいた。

『恵一郎』
 背後を振り向きながら、唖然とつぶやくリューネ。
「リューネ。お前にもわかっているだろう?」
 だまって天堂さんを見つめるリューネ。しばらくふたりはそのままだった。

『……恵一郎にしては妥当な判断──ですわね』
 リューネは、頬にかかる金髪をはらいながら微笑んだ。


    こうして、あたしの思いもしない結果でトロンとリューネのバトルは幕を下ろした。
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コメント


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リューネさんとの戦いの中で遂に今まではぐらかして誤魔化して煙に巻き、隣さんにすら打ち明けなかった本心が表に出ましたね~

トロンが隣さんの元へ来る事になった過去の事は今だに闇の中ですが、当時の思いもリセットせずに受け継いでいるからこその、あそこまでの強烈な意思を持っているのかもしれませんね。

今回の戦いの勝利判定は、リューネさんのマスター天堂さんが出したギブアップ判定によるトロンの勝利でしたが、実際には精神的に格段にリューネを上回っていたトロンさんの意思が繋げた勝利でしょうね。
天堂さんがギブアップしなくても、リューネがギブアップしていたでしょうから。

しかし、あそこまで強い意思を秘めているからこそのトロンさんの強さだと言えるんでしょうが、諸刃の剣でもある力ですよね。
大切な人を守る為の強く強固な意思に追いつけない現在の武装は今後使徒と関わってくる様になってくると更に明確なハンデとして浮かび上がってきそうです。
トロンさんの意思に追従出来る様な装備をシロさんが考え付いてくれる事を祈ろう♪

とりあえずのリューネ戦終了お疲れ様です。
続きも楽しみに待たせていただきま~す。
(´・ω・`)ノシシ

ASUR・A | URL | 2013-11-29(Fri)22:36 [編集]


>ASUR・Aさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

やっぱり、マスター(隣)も不器用だと神姫も不器用になっちゃうんでしょうかね……。
まあ、『リンはボクの嫁だ!』とか当回しに自分の気持ちを隣にアピールしているトロンですが、これでは伝わりませんよね(笑)。

トロン自身は過去の記憶をすべて失っていますが、隣に対する想いの強さはトロンの過去に起きた事件と深い関係があります。
ここらへんは、今後少しずつ明らかなっていきます。

「物理的な強さよりも精神的な強さを」。これは、私がトロンというキャラクターに与えたかったものの一つだったりします。
ASUR・Aさんのコメントにもあった「大切な人を守るための強固な意志」……こういったものがあればこそ、トロンは己の限界を超えた力を出せる、私はそう思います。

「諸刃の剣」、たしかにこの言葉は、今のトロンを的確に表現してますね。
トロンの想いの強さとソウルテイカーをもってしても、使徒やこの先登場するラスボスとの戦いを乗り切るのは難しいでしょう。

でもご安心ください(?)。
トロンの最終武装というべきものは、すでに考えてあります。
ただ一つの問題は、私の腕で形にできるかどうかなのですが……。

今後は、だんだんシリアス度も増していくと思いますが、この先もお付き合いいただければ幸いです。

シロ | URL | 2013-11-30(Sat)10:32 [編集]


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