神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

武装神姫 クロスロード 第24話

  

                 武装神姫 クロスロード

              第24話 「渦中の男」


「ふう、一時はどうなることかと思ったけど、なんとか丸く収まったみたいね」
 心底安心したというふうに、姫宮先輩が誰にともなくつぶやく。
『そうですな。どうやらグリューネワルトも納得したようですし……』
 先輩の独り言に、律儀に答えるレスティーア。それを見ていたリューネが、やれやれと
いった様子で尻馬に乗ってくる。
『まあ、赤点ギリギリといったところですけどね』
 ソウルテイカーを脱ぎ捨て、素体状態にもどったトロンが気色ばんで立ち上がろうとす
るが、あわててルーシィがうしろから羽交い締めにする。
 ドゥ、ドゥと声をかけなぐさめるルーシィに『ボクは馬か!?』とツッコむトロン。
 ふたりの即席漫才を横目で見ながら苦笑していると、リューネが呆れ顔で横から顔を出
す。
『まったく、トロンさんはバトルよりもお笑いの方に才能があるようですわね』
「おまえだって、人のことはいえないだろう!」
 むっとした顔でリューネをにらみつけるトロン。でも、本人が口を開くより早く、天堂
さんが冷ややかな声で話しかける。リューネは不服そうな顔をする。
『それは、どういう意味でして、恵一郎?』
「リューネだって、賢者型とかいいながら一度も“魔法”をつかったことがないじゃない
か?」
『うっ!? そ、それは……』
 あからさまに狼狽するリューネだが、あたしたちの視線に気づくと、猛然と天堂さんに
くってかかる。
『わ、わたくしだって<杖>があれば、“魔法”の一つや二つ、すぐにご覧に入れてさし
あげましてよ?』
「……杖?」
 リューネの口をついてでた単語を、思わず反芻してしまった。それは、口論を続けてい
た天堂さんの耳に届いたのか、あたしに背を向けたまま律儀に答えてくれた。
「ああ、なんでも“魔法”を使うときにサポートしてくれるデバイスらしいんだけど……
リューネのやつ、初めてのバトルの時に杖を折っちゃったんだ!」
「…お、折った?」
「うん。いきなり杖で相手めがけて殴りかかってね……対戦相手の神姫の首ごとポッキリ
と……」
「…………」
 当時の惨状が、あたしの脳裏にありありと浮かんできた。
『あ、あれは、不幸な事故ですわ!』
「事故ですむか! あの後、ぼくがどんな思いをしたと思ってるんだ!?」
 そのあとも、しばく喧々号々やっていたふたりだったけど、息が続かなくなったのか、
しばし無言でにらみあっていたが、しばらくすると天堂さんが口を開いた。
「……じゃあ、呪文を唱えてみてくれ、リューネ」
『はっ? いえ、ですから杖がないと……』
「別にスキルを発動させる必要はないさ。ただ、リューネが“詠唱”してるところを見た
いだけだからさ」
 めずらしく、意地の悪い笑みを浮かべながら催促する天堂さん。そんな彼を見ながら、
リューネは顔中に脂汗を浮かべていた。
『……リューネ』
『きさまが、なぜあの戦いで“魔法”を使わなかったのか──ようやく合点がいった』
 口笛を吹きながら露骨に顔をそむけるリューネに、リベルターとレスティーアが愕然と
しながらつぶやいた。
『ははは、キンちゃんはお茶目さんだねぇ』
『だ、だからわたくしは──キ、キン…ちゃん? ちょっと待ってくださいトロンさん!
まさか、それはわたくしのことでして?』
 リューネは、見事に輝くブロンドの髪を振り乱しながらトロンに詰め寄る。
『もちろん、キミの愛のニックネームさ!』
 親指をビッと立てながら即答するトロン。リューネの口元がひきつる。
『じょ、冗談じゃありませんわ!? 誰がそんな品のない愛称を……ん、何ですの貴女た
ち?』
 いまにもトロンに掴みかかろうとするリューネだが、両肩をたたかれ訝しげに振り返る。
 そこには、レスPことレスティーアとギンちゃんことリベルターが、あきらめきった顔
で立っていた……

                         ※


「……ねえ、ちょっと聞いてもいいかな?」
 唐突な問いかけに、三つの視線があたしに集中する。
『どうされたのです、一ノ瀬どの?』
 リューネたち三人を代表するかのように、レスティーアが話しかけてくる。
「うん。もう少し、あたしたちの敵のことを知りたくってね。……レスティーアたちは、
半年前この店でエーアストたちと戦ったんでしょう?」
 少し前までは聞きづらかったけど、今ならだいじょうぶだろう……そう踏んでの質問だ
った。レスティーア、リベルター、リューネの三人は顔を見合わせたが、それはわずかな
時間だった。
 意を決したような表情で、レスティーアはあたしを見上げうなずいた。
『半年前、エーアストの一人“センジュ”と、我々はこの場所で戦いました』
 あたりを見回しながら答えるレスティーア。きっと彼女の脳裏には、当時の記憶が生々
しくよみがえっているのだろう。
「センジュ? ……やっぱり、エーアストって強かったの?」
 レスティーアの表情に、かすかな罪悪感をおぼえながらも、あたしの質問は止まらなか
った。三人は大きくうなずき、今度はリベルターが口を開く。
『はい、とても。……あの日、この場に居合わせた神姫たちだけではとても勝てなかった
でしょう。 カノンとナバトの協力がなければ……』

 カノン、ナバト。 物覚えの悪いあたしでも、その単語は記憶していた。そう、それは
トロンとのバトルの際にリューネの口から紡がれた名前。

「あの、それって……」
『彼女たちは<ナイン>ですわ』
「ナイン?」
 今度の単語は、記憶になかった。
「ナインは、9人の天使型神姫たちの集団。そして、彼女たちは人知れずエーアストたち
と戦っていたの……」
 姫宮先輩の声が、背後から聞こえた。
 あたしは、そんな神姫たちが存在し、あの事件でレスティーアたちと戦っていたなんて
夢にも思っておらず、ただ驚くばかりだった。
「彼女たちの協力で、私たちはかろうじて勝つことができた。失ったものはあまりにも大
きかったが……」
 姫宮先輩の声をついだ店長さんは、そこまで話すといったん言葉を区切った。
「だが、彼女たちの犠牲でセンジュは破壊され、あの場にいた使徒たちも全滅……」
『全滅などしていないっ!!』
 店長さん声をさえぎる大音声。全員の視線が集中する先にレスティーアが立っていた。
その身体は、おこりのように震えている。
『少なくともやつは……アイギスの残骸はあの場になかった!』
 レスティーアのあまりの剣幕に、ルーシィがあたしの背中に隠れてしまう。
『レスP……』
 トロンは豹変したレスティーアに向かっていこうとしたが、あたしはそれを止めた。
『……まだ、終わってはいない……』
 うなるようにつぶやくレスティーア。聞きたいことはまだあったけど、とてもそんな雰
囲気ではなかった。
「そうだな、確かに終わってはいない。……片桐の消息もあの後ぱったりと途絶えてしま
っているし」
 レスティーアを見つめながら、店長さんは誰にともなくつぶやく。その単語が紡がれた
とたん、場の空気がいっきょに変化した。

          
   片桐亮二。そう、エーアストを盗み出し、この惨事を引き起こした張本人!

 あたしは、エーアストや使徒にばかり気を取られて、肝心要の存在のことをすっかり忘
れていた。
「その片桐とかいう男…まだ、野放し状態なんですか?」
 あたしの質問を、店長さんは無言の間で肯定した。
「片桐って、どんな男なんですか?」
 こうなると、いやでも興味の対象は片桐に移ってしまう。あたしは遠慮しいしい聞いて
みた。
『最低のサイコ野郎ですわ!』
 吐き捨てるようにつぶやくリューネ。そのあまりの剣幕に、あたしは二の句がつげなく
なってしまう。周りを見ると、姫宮先輩も天堂さんも神妙な面もちになっている。
 しばらくすると、みんなを代表するかのように店長さんが話はじめる。
「確かに変わった男ではある。天才的な才能の持ち主だが、自分の地位もためらわずに捨
て、M・M社に追われ続けることがわかっていながら、こんな暴挙にでるような男だ。一
連の事件も、まるでゲーム感覚で行ってる」
 店長さんは、独白のようにはなしていたが、いったん話を区切るとあたしの方に向きな
おった。
「確かに、危険な男には違いないな」

 ミラーグラスに隠れて、店長さんの表情はわからなかった。でも、その苦渋に満ちた声
音が、すべてを物語っていた……
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コメント


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おい!!まさか・・リューネさん!?(゚Д゚;)
ww一気に私の中でリューネ株が上昇しましたw
そして、遂に語られ出したナインとエーアストとの戦いの記録!!
次回も目が離せません!!

maki. | URL | 2014-01-13(Mon)17:21 [編集]


>makiさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

makiさんの中でリューネ株が高騰したようで、作者としては嬉しい限りです。あとは下落しなしないように気をつけねば(笑)。

>ナインVSエーアスト
この両者の戦いは、私の脳内SSで基幹となっているものです。本編でどのような展開を見せるのか? 
今後、少しずつ明らかになっていくと思います。
お楽しみに!

シロ | URL | 2014-01-14(Tue)07:06 [編集]