神姫者の巣

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武装神姫 クロスロード 第31話


                   武装神姫 クロスロード

              第31話    「乱戦」

『うわっ!?』
『きゃあああ!』
 文字通り、降り注ぐようなビームの雨に、トロンとルーシィが右往左往しながら逃げ回
る。最初こそ善戦していたトロンたちだったが、使徒たちはすぐに反撃を開始した。
 見事なフォーメーションに翻弄され、トロンたちは防戦一方になっていく。
「こんちくしょー! 降りてきて戦いなさいよ。この卑怯者っ!」
 今のところ、まったく役にたたないあたしは、無駄とは知りながらも足下の小石を拾う
と、使徒めがけて力いっぱい投げつける。
 放物線を描いてひょろひょろと到達した小石を、大げさな動作でよける使徒たち。かす
かに含み笑いが聞こえた。 
 完全に人をなめた態度に頭にきたあたしは、ゴミ捨て場にポツンと置かれた大型のテレビ
を両手で頭上高く持ち上げた。
『……まったく、そんな物で使徒を倒せるわけがないですわ』
 あたしの形相に気をされたのか、わずかにひるんだ使徒たちだったが、頭上から聞こえた
呆れ声に驚き振り仰ぐ。
 そこには、両腕を組みながら使徒たちを見下ろすリューネの姿があった。
『キンちゃん!』
 トロンのうれしそうな声に、空中で器用にずっこけるリューネ。
『そ、その呼び方は止めてくださいって言ったはずですよ、トロンさん!』
「今はそんなこと言い合ってる場合じゃないぞ、リューネ!」

               いたんですか、天堂さん?

 いつの間にか横でリューネに指示を出し始めた天堂さんに出かかった言葉を、あたしは
なんとか飲み込んだ。

             こんな時に、またいじけられたら困るしね。

 リューネは使徒の攻撃を優雅な動きでかわしながら、『わかっていますわ!』と不服そ
うにつぶやくと、猛烈な勢いで使徒めがけて突っ込んだ。
 リューネは驚き硬直した使徒の頭部を鷲掴みにすると、地面めがけて急降下を始めた。
あたしの目の前で、使徒が路面に叩きつけられる。飛び散るアスファルトの破片。
『トロンさん。ルーシィさん。あなたたちのノルマですわ』
 リューネはそう言うと、あたしたちの返事も聞かずスラスターの咆哮とともに使徒めが
けて上昇を開始した。
 星のまたたく夜空で、二対一の不利を感じさせない動きでリューネが戦い始めたのを、
あたしは惚けた顔で見ていた。

  グリューネワルトくんは、使徒やエーアストたちと戦うために造られた神姫なんだ。
 
 店長さんの言っていた言葉の意味を、あたしはようやく理解した。それにしても、リ
ューネを造ったのって、いったいどんな人なの?

『あのさあ、いつまでそんなもの持ち上げてるの?』
「え? ……あっ!」
 足元でトロンの呆れ声が聞こえ、あたしはまだテレビを持ち上げたままなのに気がつい
た。
『そんなもの投げるより、もっといいものがあると思うんだけどね』
「いいものって……それより使徒はどうしたの? 」
 テレビを元の場所に置きながら尋ねると、トロンは無言で前方を指さす。そこにはアス
ファルトに深々とめり込んだ使徒の姿が。
 ルーシィがビームガンの先っぽで恐る恐る突ついているが、ピクリとも動かない。
『まったくキンちゃんのやつ、なにが『ノルマですわ』だよ? あいつとっくの昔に機能
停止してるよ。』
 リューネにしてみれば他意はなく、思いやりのつもりだったのかもしれないが、トロン
はそうは思わなかったようだ。
 いくら基本性能や装備に差があるとわかっていても、トロンがあれだけ苦戦した使徒を
一瞬で倒してしまったんだ。
 プライドを傷つけられたトロンが、不満を隠そうともしないのも仕方のないことなのだ
ろう。
「いじけてる場合じゃないでしょう? まだ戦いは続いてんのよ! それより、さっき投
げるのにいいものがあるって言ってたけど何をよ?」
 気持ちは痛いほどわかるが、状況が状況だ。心を鬼にしてトロンを問いつめる。トロン
も充分理解してたのだろう。あたしを見上げると大きく息を吐き出した。
『……ボクだよ』
「へ?」 
『リンの力で、ボクをあそこまで投げてって言ってるの!』
 トロンの指さす先には、使徒と戦うリューネの姿があった。
「そ、そんなの無茶よ。近づく前に、あんた穴だらけよ?」
『大丈夫だって! 使徒たちはキンちゃんに気をとられてる。今ならやれるよ』
 なおも反論しようとするあたしを制するように両手を上げ、時間がないと言わん
ばかりにあたしを急かすトロン。
「まったく。さっきは小石だって届かなかったのよ? いったいどうする気なの?」
『それに関しては、ボクに秘策あり!』
 トロンを持ち上げながら眉をひそめるあたしに、トロンは不敵な笑みを浮かべる。

         とにかく他に打つ手もないし、今はトロンを信じるしかないか……

 あたしは身体を丸め、ボールのようになったトロンを握りしめると、ひときわ輝く星め
ざしてかざす。
「おじいちゃん、あたしはやるぜッ!」
『……リン。そんなカビの生えたアニメネタはいいって』
「う、うっさいわね。ちょっと気分出しただけよ!」
 右手から聞こえた絶対零度なツッコミに、あたしは顔を真っ赤にしながら投球フォーム
をとった。
『……あのさあ』
 高々と足を上げ、今まさにトロンを投げようとした時に突然トロンが話しかけてきた。
「何よっ、こんな時に?」
『リンのエグれ胸!』
「………………」


「何だとぉおおおッ、バカ悪魔ぁあああッ!!」



 奇跡が起きた。怒りのアフターバーナーに点火したあたしの身体がその瞬間、肉体の限
界を超えたのだ。
 まちがいなく、普段の五割増しぐらいになったあたしの筋力から繰り出されたトロンが
黒い弾丸と化して闇夜を切り裂く。
「バカ野郎────ッ! 二度と戻ってくんなぁ!!」
 あたしは怒りに身体を震わせながら、芥子粒みたいになったトロンに罵声を浴びせる。

                  そのまま星になっちまえ!

 あたしは夜空にそうお願いしていたが、驚いたのはリューネたちの方だったろう。怒声
とともに唸りを上げて迫りくる鋼の球に気づき、慌てて回避を始めた。
 あたしの怒りが物理学の壁を越えたのか、さらに加速を続けるトロンがリューネたちの
間をすり抜ける。
 さっきまで聞こえた戦いの喧噪がうそのように静まり、リューネたちはそろって、なお
も上昇を続けるトロンを見上げている。
『トロン……さん?』
 カクンとあごの落ちたリューネが、ようやく口を開く。
『馬鹿かあいつは? あれでは自滅ではないか』
 嘲笑しながら使徒がつぶやく。
 あたしもまったく同感だが、あのバカ悪魔がこのまま成層圏まで行ってくれるとは到底
思えない。

『ふふふ、ところがぎっちょん!』

                     ほらね……

 インカムから聞こえた忌まわしい悪魔のつぶやきに、おもわずため息をつく。
 まだ飽きずに回転を続ける黒球から、いきなり光の矢が二本、使徒めがけて放たれる。
それが肘のビームソードだと気づいたのは、散開しようと動き始めた使徒の身体を貫いた
後だった。
 苦痛に顔を歪める使徒が刺さったビームソードを引き抜くよりも早く、トロンはソード
につながったワイヤーを巻き取り始める。
 衝突といった方がいいような勢いで、トロンと使徒が空中でひとつになる。
『会いたかったよ、ダーリン♪』
 トロンは使徒をしっかりと抱きしめると、ニタリと笑った。いきなり抱きつかれた使徒
はバランスを崩し、ふたりはもつれるように落下を始めた。
『き、貴様、気でも狂ったのか? このままではふたりそろって……』
『いいや。残念だけど、地面と熱烈な口づけをするのはキミだけさ』
 トロンはそう言うと、唇を耳元までめくり上げた。
 使徒の顔が恐怖に歪む。
 トロンはそんな使徒の表情に満足そうな顔になると、ソウルテイカーの指先からビーム
ソードを発生させ、使徒の背中から生えた巨大な翼を切裂いた。
 何か言おうとした使徒を、乱暴に足蹴にするトロン。
 悲鳴の尾を引きながら落ちていく使徒を、氷のような瞳でトロンは見下ろしている。でも
状況は最悪だ。加速のついた使徒はさらに落下を続けるが、飛べないトロンだって同じ結果
をたどるだけだ。
「あのバカ、なに考えてるのよ?」
 さすがにこのままじゃヤバいと思ったあたしは大急ぎで走り始めた。
『ボクなら心配ないよ、リン』
 落下地点に走り寄るあたしのインカムに、世にも脳天気な声が響く。トロンは上空めが
けてアンカーガンを打ち出した。
「何も打ち込むものもない空中にアンカーなんて打ってどうするつもりなのよ?」
 だが、虚空めがけて突き進むビームソードの柄を、一本の細腕がむんずと握りしめた。
『ありがと、キンちゃん』
『……まったく。貴女は何を考えていますの?』
 トロンの体重プラス落下の勢いを、身体をわずかに揺らしただけで軽々と受け止めるな
がら、リューネが心底呆れたといった表情を作る。
 顔をしかめるリューネを見上げ、トロンが苦笑する。
 その時、ふたりを見上げるあたしの目の前を猛烈な勢いで使徒が通り過ぎる。
 続いて何かが地面に叩きつけられる轟音が響き、あたしはそっと足下に視線を向けたが
その惨状に、すぐに顔をそむけてしまった。
 無言でトロンを見上げるあたしの視界の端に、白い影が写る。
「ふたりとも、危ない!」
 頭上を見上げるトロンたちの瞳に、ブレードを構え逆落としに襲いかかる最後の使徒の
姿が飛び込んでくる。
 リューネは反撃を試みるが、トロンを支えているため間に合わない。
 だが、リューネめがけて降り降ろされた刃は、かん高い音とともに弾かれてしまった。
 唖然とするリューネと使徒の間に、忽然と黒い影が立ちふさがった。


                  「まったく、とんだ茶番ね」


           あたしの背後から、嘲りを含んだ女の声が聞こえた。
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