神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 第8話

「本当にすみませんでした。いろいろと迷惑をかけてしまって……」
 DO ITの中にある、メンテナンスコーナーの入り口まで来て、あたしは振り返ると
ペコリと頭を下げた。
「いやいや、私にとっても有意義な時間だったよ」
 あたしを見送るためについてきてくれた店長さんが、片手をあげながら、にこやかに笑
ってくれる。
「さっきの話なんだが、私は神姫の短所もまた個性だと考えている。できれば、その個性
を殺さず長所を生かす方法を考えて欲しいと思う」
「長所、ねぇ…………………………………………………………………………………」
「ま、まあ、それは後でゆっくり考えるとして……そうだ、一ノ瀬くん、実は今度こんな
催しをやるんだが参加してみないかい?」
「え?」
 あごに手を当て、まるで思い当たらないトロンの長所について沈思黙考していたあたし
は、店長さんの慌てた口調で我に返った。
 
“DO IT 定例トーナメント開催のお知らせ”
 
 店長さんが差し出した一枚の紙には、そう書いてあった。
 
                    わんだふる神姫ライフ
 
               第8話     「初陣」 
 
「一ノ瀬くんも知っていると思うが、武装した神姫たちが互いに戦う神姫バトルが流行っ
ている。で、ウチでも定期的にこういったイベントをやっているわけなんだが」
 その話ならあたしも知っていた。その基本性能の高さから、多種多様な方面に対応
できる能力を持つ神姫だが、実際には自身の神姫に様々な武装をほどこし対戦させる
神姫バトルに圧倒的人気があるのは周知の事実だった。
「で、でも店長さん、そんな事をして、もしトロンがケガでもしたら……」
「確かに負傷することはある。だが戦うとはいってもあくまで決められたルールの中での
事、もちろん、神姫もしくはオーナーの選択で降参することもできる。それにトロンくんの
持つ“ゆがみ”についても詳しくわかるかもしれないしね」
 心配そうにしているあたしに気を使ってくれているのか、なぐさめるような口調で店長
さんは説明してくれた。
 確かにトロンの“ゆがみ”には、正直あたしも興味がある。でも、あたしが神姫を欲しい
と思った理由を考えると、素直に首をたてには振れなかった。 
第一、あんなボ~ッしたやつに戦いなんてできるはずがない。
「それに、トロンがなんて言うか……」
 あたしは事情を知れば、『めんどイ』とか言いだすのはわかりきっているトロンの性格に
期待を込めて、店長さんにそう言ってみた。
『ン~。おっけェ~』
「だ、大丈夫なようだね」
「ト、トロン、あんた起きてたの?」
 突然あたしの胸元で聞こえた、世にも脳天気な寝ぼけ声にあたしは驚き、店長さんは
必死に笑いを噛み殺している。
「あんたねぇ、自分がなに言ってんだか理解してんの? バトルよ? 戦うんだよ?」
『ダイジョーブだっテ、ボクは神姫なんだヨ、リン?』
 
いや、100%わかってねぇよ、お前!
 
と心の中でツッコミを入れるあたしだが、これ以上の説得が無意味なのは重々承知の
上なので、とりあえず大きなため息をつくと、店長さんの差し出した出場希望者の予約者
リストにサインをする。
「あ、そうだ。店長さん、ひとつ聞きたい事があるんですけど……」
「ん、何かな、あらたまって?」
 あたしのサインした書類を軽くたたきながら整えていた店長さんは、おずおずと尋ねる
あたしに方に向き直ると、にこやかに聞いてきた。
「え~とですねぇ。CSCのことなんですけど、トロンにセットしたエメラルドって、一体
どんな効果があるんですか?」
「え?」
 何気ないあたしの質問を聞いた途端に、なぜか店長さんのあごが、きっかり十センチほ
どカクンと落ちた。
 
あれ? あたし今、変なことを聞いちゃった?
 
『はァ~!』
 理由がわからず、オロオロしているあたしの胸ポケットの中から、大きなため息が聞こ
えてきた。
 
                           ◆
「ふうっ」
『くす、おもしろい人でしたね』
「!? リベルター、いつの間に……」
 自動ドアを通りぬけようとする、一ノ瀬くんの背中を見つめながら、ネクタイに指をかけ
緩めると大きく息を吐き出していた私は、いきなり名を呼ばれた事に驚きながらも声の
した方向を、カウンターの上に視線を走らせた。
 そこにはアーンヴァルと呼ばれる、天使型の神姫がひとり、私の方を見上げながら微笑
んでいた。
『ごめんなさい、勝手にでてきてしまって……』
 私が何も言わず見つめていたのを責められていると勘違いしたのか、リベルターは首を
うな垂れてしまう。
「あ、いや、違うんだリベルター。きみが店にまで出てくるなんて珍しいな、と思ったもの
でね……そんなに気に入ったのかい、一ノ瀬くんを?」
『はいっ!』
 こちらを上目づかいにうかがっていたリベルターだが、私が怒っているわけではないと
知ると、途端にいつもの調子に戻ったようだ。
『 “神姫は人と共に歩む者” まさかこのセリフをこんなところで聞けるなんて夢にも思
いませんでした。“彼女”が知ったらきっと喜びますね』
「……そうだね」
 
 “彼女”か。それにしても、こんなにはしゃぐリベルターを見るのは久しぶり……いや、
私の元に来てからは初めてかもしれない。
 
『それに……』
「ん?」
『トロンには幸せになってほしい。それが、あの娘から全てを奪ってしまった“私たち”に
できる、たった一つの罪滅ぼしだから……』
 急にトーンダウンしたリベルターの声に、私はハッとして視線を落とす。うつむき表情
は見えなかったが、彼女の心中は痛いほど理解できた。
「……リベルター」
『あっ、ご、ごめんなさい』
 私に声に、我に返ったリベルターが慌てて顔を上げる。
「もう、すべては終わったことだ」
『……そうですね』
 まだ釈然としないのだろう。それでもリベルターは私に微笑むと、一ノ瀬くんたちが去
った自動ドアへと視線を移した。
                           ◆
「はぁ~」
『もォ、何さっきからため息ばっかついてんのサ』
 あたしは無言でジロリとトロンを睨みつけると、胸のうちでこれまた盛大にため息をつ
いた。何が楽しいのか、のん気に鼻歌なんぞ始めたトロンを見ていると、あたしの不安は
つのるばかりだった。
 だれがどう見たって、この寝ぼけ悪魔にバトルなんてできると思わないだろう、あたし
もそう思う。
 こんなナマイキなヤツなんか少し痛い目をみればいいのよ! と気楽に考えるのも今
のあたしには無理な話しだった、たとえどんなにムカつくヤツでも傷だらけになったトロン
の姿なんて見たくはなかった。
 
やっぱり店長さんには悪いけど、断ってこよう!
 
 店の前で立ち止まったまま散々考えたあげく、ようやく結論にたどり着いたあたしは、
きびすを返そうとしたが、その考えはもろくも潰えさった。
「一ノ瀬さん」
 いきなり肩を叩かれ、驚きふり返ると、そこには姫宮先輩が笑みを浮かべながら立って
いた。
「あ、あの、先日は、ほんとうに失礼しました。え~と、先輩もこの店に用があってきた
んですか?」
「ううん、実は私たちは朝からいたのよ。一ノ瀬さんがいたのも知ってたんだけど、慌て
た様子でメンテナンスコーナーの方にいってしまったから……あの、トロンに何かあった
の?」
 先日のトロンのことなぞ、すっかり忘れたかのように接してくれた先輩だったが、トロ
ンのことを聞く時は、さすがに心配そうな様子だった。
 聞けば、今日はレスティーアの保守用のパーツを買いに来たそうだが、こんな時間にな
るまで店にいたということは、先輩は何も言わなかったけど、きっとあたしたちを心配し
て待っていてくれたのだろう。
「別にたいした事じゃないんですよ。絶対こいつどこか壊れてるはずだと思って、診ても
らったんですけど、結果は異常なしと、おまけに今度やるトーナメントに参加することに
なっちゃって……」
「まあ、トーナメントに? 奇遇ね、私たちも参加するのよ。ねぇ、レスティーア」
『ハッ』
 あまりの形相にワザと目をそらしていたのだが、先輩が肩から下げていたバッグの
中からスゴイ目でこっち(というか、あたしの胸元にいる物体を、だろうけど)を睨みつけ
ていたレスティーアは、憮然とした表情で一言だけ答えた。
「もう、レスティーアったら……ごめんなさいね、一ノ瀬さん」
「いえ、そんな事、もともと原因はこっちにあるんですから」
『まったくですな!』
 
         気持ちはわかるけど……ツッコミきつすぎない、レスティ―ア?
 
『ふァ~~、うるさいなァ、ゆっくりねむれやしないヨ。 アレッ? レスPにかおリンじゃ
ないカ……どうしたのレスP? まるで親の敵でも見るようナ、おっかない顔しちゃって
サ……む、むグッ!?』
「あ、あはははははは、ご、ごめんね、レスティーア」
 妙に静かだと思ったら寝てたんかお前は! と心の中でツッコミながら、これ以上事
態が悪化するのを防ぐため、とりあえずトロンを胸ポケットにねじ込みながら、目の前で
憤怒のオーラを身に纏うレスティーアをなだめようとしたが、レスティーアは、むすっと
したまま横を向いてしまった。か、かわいくねー!
『ふん、ストラーフ。きさまいったい何を考えているのだ?』
『「 ? 」』
 突然、あたしたちの方に向き直ったレスティーアは、いきなり切りだした。あたしの胸
ポケットからモゾモゾと顔をだしたトロンや、あたしも意味がわからずキョトンとした顔に
なる。
『これはゲームに非ズ。神姫と神姫が己のすべてをぶつけあう真剣勝負の場だ。正直、
きさまのようないい加減な輩に出場されては迷惑だ』
「ちょっと、レスティーア、いくらなんでもそれは……」
 トロンに燃えるような瞳を向けながら、レスティーアは吐き捨てるように言い放った。
『一ノ瀬どの。この際あなたにも申し上げたい事があります』
「え?」
『確かに私たちは神姫は起動したてでは、何もわからぬ赤子と同じ、だがそれをあるべき
道へと導くのがあなたがたオーナーの務めではないのですか? だが、このストラーフを
見る限りあたなのやる気をまるで感じない。このいい加減な神姫を見ているとあなたの人
間性まで疑ってしまう』
『…………』
 あまりと言えばあまりの言われ様だが、あたしは黙って聞くしかなかった。レスティーア
の剣幕に押されというのもあったが、あたしを見つめる彼女の瞳の真剣さに声がでなか
ったからだった。さすがのトロンも、うつむき黙ったままだ。
「いい加減にしなさい! レスティーア!!」
 いつ果てるともなく続くと思ったレステーアのお説教は、姫宮先輩の一喝でピタリと止
ってしまった。
『ひ、姫?』
「ごめんなさい、大きな声を出してしまって。でもねレスティーア、今のセリフはどう考て
もあなたが言いすぎ、二人に謝りなさい」
『な、何故です姫? 私は間違ったことなど何一つ言ってはおりません!』
 必死になって反論するレスティーアを、悲しそうな瞳で見つめる姫宮先輩。あたしも何
て言っていいのかわからず黙り込んでしまう。
『ふ~ン、じゃァ、こうしようヨ、レスP。キミとボクとでバトルをすル。ボクが勝ったらリン
にキッチリあやまル。ソレでどウ?』
『何‥‥だと?』
 いきなりあたしの胸ポケットから聞こえてきたトロンの提案に、あたしたち三人の驚き
の表情が向けられたが、だが、トロンの表情はうつむいて見えない。
『私に勝つだと? 笑止な……いいだろうストラーフ。万が一にもきさまが勝つ事ができ
たなら、きさまの気の済むまで詫びてやる』
『ンッ!』
「レスティーア、あなた……」
『勝手な振る舞いをお許しください姫。ですが私も騎士である以上、挑まれた戦いに背を
向けるわけにはまいりません』
 必死にレスティーアを止めようと姫宮先輩は説得を続けるが、レスティーアはかたくな
に首を横にふるばかりだった。でもそれはあたしの方も同じだった。
「トロン、あんた何を考えてんの? こんなのって……」
『ダイジョーブだっテ、それにボクの装備は持ってきてるんでショ?』
 確かにトロンを検査する時にテストかなんかで使うかもしれないと思って、装備一式は
持ってきていた。でも、まさかこんな事になるなんて……
『リン、ボクを信じて』
「え?」
 暗く沈んだ顔で、思いつめていたあたしは、トロンの妙に静かな声に顔を上げた。
 そして、トロンが指差す場所を、DO ITの入り口に目をやった。
 
 てっきり帰ったとばかり思っていたのだろう。再び入り口をくぐり、入ってきたあたしと
姫宮先輩の姿を見て驚きの表情を浮かべた店長さんは、あたしたちの話を聞いてさらに
戸惑いの表情を重ねていた。
 だが、あたし達から事情を聞いた店長さんは、困惑しながらも納得してくれてシュミレー
ターの準備を始めてくれている。
 
    こうして、あたしの予想もしなかったトロンの初バトルが始まろうとしていた。
 
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コメント


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初陣の相手がレスティーア殿とは。そしてなんだか訳ありな雰囲気も見え隠れしてきてドンドンと面白くなってきそうな予感!

それにしても、あいかわらずトロンさん絶好調(笑) トロンさんの実物が見てみターイとか思ってしまう初瀬那珂でした。

初瀬那珂 | URL | 2012-02-26(Sun)23:34 [編集]


>初瀬那珂さん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

ギャグ主体なのに、こんなに伏線張ってどうすんじゃい? と、自責の念にかられなくもないですが、マイペースでやっていきたいと思います。

トロンの実物の件ですが、現在50%ほどできているのですが、私の脳内設定のおかげで残りの部分で頓挫してたりします。

とはいえ、SSの登場人物の紹介もいずれやりたいですし、その時は、トロンにトップバッターを務めてもらうつもりですので、もうしばらくお待ちいただければと思います(汗)。

シロ | URL | 2012-02-27(Mon)22:45 [編集]


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