神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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武装神姫 クロスロード 第33話


                 武装神姫 クロスロード

             第33話   「集結」

 全速力でDO ITまで戻ったがあと少しというところで息が続かず、あたしは足を止め
膝に手を当てあえぐように呼吸を繰り返した。
 妙だった。汗が目に入り歪んで見える建物からは一切の明かりが消え、物音一つしない。
「ま、まさか……」
 あたまを振り、脳裏に浮かんだ最悪の光景を追い払うと再び走り出す。遠目ではわから
なかったけど、正面入り口の横にあるショーウィンドーが粉々に割れ、飛び散っていた。
「やっぱりここから行くしかないわね」
 入り口に下りたシャッターを横目で見ながら、あたしは砕けたショーウィンドーから用心
深く店内をのぞき込む。黒一色かと思った店内は、非常灯のかすかな明かりに照らされ
ていた。
「みんな、行くわよ?」
 押し殺したようなあたしの声に、トロンたちがうなずく。
 床にはガラス片や様々な品物が散乱していて、店内はめちゃくちゃだった。そしてその
中に見慣れた姿があった。
「……使徒」
 そこには、フロアーに倒れ伏した数体の使徒の姿があった。間違いなくここで戦いが起
こったんだ。足下に注意しながらも先を急ぐ。
 あたしは四方に気を配ると、使徒たちの気配をつかもうと努めた。機械である神姫に気
配があるのかと尋ねられれば、答えは“YES”だった。
 確かに神姫の放つ気配は人のそれとは異なるものだった。でも、以前リューネや使徒か
ら感じたように、感情というものを与えられた神姫にも独特の気配があった。

 でも、あたしは使徒の気配にこだわりすぎたようだった。慎重に進むあたしの背後から
伸びてきた繊手に気がつくのが遅れたのだ。
 猛烈な力でいきなり背後から押さえ込まれた。なんとか逃れようとするがびくともしな
い。

                 こ、こいつ、ただ者じゃないっ!

 尋常ならぬ膂力の持ち主に、額に珠の汗が浮かぶ。

「う~~~ん。せんぱいの汗の匂いって、ス・テ・キ♪」
「…………」
 恍惚とした声が背後から聞こえ、髪に顔を押し当てられるのを感じた瞬間、あたしの身
体は反射的に動いていた。
「うおりゃぁぁぁああああああああああああッ!」
「きゃぁぁぁぁぁああああああああああああッ?」
 あたしの身体が弧を描き、全力全開で美佐緒を床に叩きつける。地響きとともに天井の
照明が揺れ、埃が舞落ちる。
「こ、このバカ女! なんであんたがここにいるのよ? ……まさかこの店をこんなにし
たの、あんたの仕業じゃないでしょうね?」
 牙を剥き出し美佐緒に詰め寄るあたしの背後で、トロン、ルーシィ、リューネの三人が
『ンなわけねーだろ?』と言わんばかりに胸元で手を振っていたが、当然あたしは気づか
なかった。
「痛たたた。 ひっどぉい! わたしがそんなことするわけないじゃないですか!」
 おしりをさすりながら、頬をふくらませ美佐緒が反論する。冷静に考えればその通りな
のだが、あたまに血が上ったあたしはそこまで気が回らなかった。
「じゃあ、なんでここにいるのよ?」
「……だって、驚かそうと思ってせんぱいの家のそばで待ってたのに、いつになっても
帰ってこないから、わたし心配になって……」
 あたしの問いに美佐緒は指をくわえながら答えるが、まったく要領を得ない。
「はあ? 何それ? そんなに気になるんだったらあたし携帯に直接連絡すればいいじゃ
ない」
 でも、やっぱり美佐緒の声で話すルーシィはヤだな、とか思っていると、美佐緒の瞳が
これ以上ないほど、見開かれる。
「連絡なんかしたら、不意にせんぱいに抱きつけないじゃないですか! あ痛っ!」
 あたしは胸元でこぶしを震わせながら、頭にできた特大のこぶをさする美佐緒を睨みつ
ける。
「何考えてんのよ、馬鹿! ……ふう、まったく、ここは危険なのよ? 何があってもあ
たしから離れちゃだめよ、いい?」
『……ちょっとタンマ!』
 美佐緒の前に立ち、再び進み出そうとするあたしの動きをトロンの声がさえぎる。
「どうしたのよ、こんな時に?」
 あたしは、両手でTの字を作っているトロンにいぶかしげな顔をする。
『これってヘンだよね?』
「どこがよ? 美佐緒が変なのは、今に始まったことじゃないでしょう?」
 当然といった風に答えるあたしの背後で、「わたし、普通だもん」と、ぶつぶつ言う声
が聞こえてくる。
『いや、みさキチが変態なのはボクも知ってるよ。ボクが言いたいのは、どうしてリンが
ここに来るのをみさキチが知ってたのか? ってことなんだけど』
「あっ!」
 場の視線が美佐緒に集中する。言われてみれば確かに変だ。ひょっとしてルーシィがま
た連絡を? と思ったが、当の本人は首を横に振っている。

 えっと。てことは、この美佐緒は偽者? いや、こんな変人、アカデミー主演女優賞を
もらった俳優だって演じられるわけがない! でも言われてみれば、美佐緒がこんな所に
いるのおかしいわよね? けど、さっきあたしに抱きついた時の怪しい指の動きは美佐緒
にしかできないと思うし…………うう、何? あ、頭が、頭が割れるように痛い……

「せんぱい……どうかしたんですか?」
 ピタリと動きの止まったあたしに、美佐緒が心配そうに近寄ってくる。
「一ノ瀬ドラゴンキィ─────ック!」
「ひぃっ!?」
 うなりを上げて迫るあたしの蹴りを、美佐緒は間一髪でかわす。代わりにあたしの必殺
の一撃を受けた背後のスチール製の陳列棚が無惨にひしゃげる。
 こめかみに手をやり、激痛に顔を歪めながら、あたしはブツブツとつぶやく。
「うふふふ、そうよ。難しく考えることなんかないじゃない。ここでこいつにとどめ刺し
ときゃ、本物だろうと偽者だろうともう関係ないわよね? うん、あたしってば天☆才!」
「あ、あの、せんぱい。目が怖いんですけど?」
 恐怖に顔を引きつらせ、美佐緒は後ずさりを始める。
「大丈夫よ、美佐緒。じっとしていれば一瞬で終わるから……痛だ────ッ!?」
 天使のような(と、思う)笑みを浮かべながら拳を振り上げたあたしだが、猛烈な力で
髪を引っ張られる。
『まったく。どうしてリンはなんでも力技で解決しようとするわけ? そんなんだから、
“脳ミソまでヒッティングマッスルでできた女子高生”とか言われるんだよ』
「初耳よっ! じゃあ、あんたには他に解決の方法があるっていうの?」
 まだトロンがポニーテールにぶら下がっているため、天井に向かって怒りをぶつける。
『もちろん! ボクにお任せあれ』
 自信たっぷりにトロンは言うと、あたしの肩によじ登ってきた。
『みさキチ、これからボクの出す質問に答えてよ』
 トロンは、そこで言葉を区切る。
『正直に答えてほしい……キミの生死に関わる事だからね』
 そう言いながら、あたしを指さすトロン。美佐緒は顔中に脂汗を浮かべ、何度もうなず
いている。
『さて、問題です。 リンの今日のパンツは……』
「ゴールデン・ストライプ!」 
 トロンの声をさえぎるように美佐緒が即答する。
 ふたりはそのまま見つめあっていたが、やがてトロンはひたいの汗をぬぐいながらあた
しに微笑みかける。
『ふぅ……OK、本物だよ。 よかったね、リン』
「よくねぇ───────ッ!」 
 さわやかな笑みを浮かべるトロンに、あたしの絶叫にも似たツッコミが無人の店内に響
きわたる。
「なな、なんであんたたちがそんなこと知ってんのよ?」
 ずばりビンゴな答えに、あたしは顔を真っ赤にしながらスカートを押さえ込む。
「『それは……愛ゆえにッ!』」
 今年一番のヤな笑みを浮かべ、親指を立てるトロンと美佐緒。
『……どうでもいいですけど、あなた方、自分の置かれた状況を理解してまして?』
 切り裂くような冷たさをともなったリューネの声に、あたしはようやく冷静さを取り戻
した。
『そ、そうですよ。美佐緒さんが敵か味方って事だけで、もう三千字以上使っちゃたんで
すよ!』

  さすがのルーシィも、ちょっとご立腹の様子だ。でも、三千字ってなんのこと?

「おほん! じゃあ、話を元に戻して……美佐緒! なんであんたがここにいるわけ?」
「それは、私から説明しよう」
「おひょ!?」
 心臓が止まるかと思った。美佐緒を問い詰めようとしたとたん、いきなり蝶番が軋む音
聞こえ、壁の一部が開くと中から場違いなダンディボイスが聞こえたのだ。
「て、店長さん? 何やってるんですか、こんな所で? それにリベルターは?」
 わずかに開いた隙間から店長さんの顔が見え、あたしは胸をなで下ろし安堵する。
「いや、失礼。いきなり使徒が襲撃してきたものでね。一時的に避難していたんだ。それ
とリベルターなら心配いらない。彼女は今、二階にいる」
 暗闇の中でも不自然に白い歯をきらめかせ微笑む店長さん。聞けば、以前エーアストの
襲撃を受け店の修理をしたさい、退避用のスペースを何カ所か用意したらしい。
「それより、美佐緒をここに呼んだのって」
「すまない一ノ瀬くん。私が呼んだ」
「な、なんでそんなことをしたんですか? 美佐緒には何も関係ないじゃないですか!」
 カッとなったあたしは、隠し部屋の中に顔を突っ込んで文句を言った。あたしの剣幕に
店長さんの顔が奥に隠れてしまう。
「あ、あの店長さん。苦しいんですけど……」
 暗くて奥まで見えなかったんだけど、まだ誰かいるらしい。あえぐような声がする。
「この声……姫宮先輩?」
 恐怖の相を浮かべた店長さんの肩越しに、こっちを見ているのは姫宮先輩だった。
「いったいどうなってんのよ、これ」
「あの、せんぱい、落ち着いて……」
「これが落ち着いていられるか!」
 美佐緒があたしをなだめようとするが、あたしの高ぶった気持ちは収まらない。

『すべては拙者の一存。美佐緒どのや店長どのを責めないでほしいでござる、隣どの』
 暗闇からいきなり声が聞こえた。
 驚いたあたしが目を凝らして見ていると、闇の中から深紅の人影が歩み寄ってきた。
 いつものゴシックドレスは血のように紅い武者鎧に変わり、フリル付きのリボンで纏め
られたツインテールは、あたしと同じように頭の後ろでひとつに縛られていたが、それは
間違いなくあたしの知るガーネットだった。
「ガーネット。なんであんたまでここに?」
『拙者だけではないでござるよ』
 うめくようにつぶやくあたしの声に、困ったような顔をしながらガーネットは振り返る。
 店の奥から重々しい足音が響いてきた。やがて足音は闇の中で巨大な姿を形作る。

                    『レス……P?』

     目の前に立ち止まった人影に、確認するかのようにトロンが口を開く。
 
 
              こうして、あたしたちは一同に会した。
  
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