神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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武装神姫 クロスロード 第35話


                     武装神姫 クロスロード

                 第35話   「接触」


「いや、あのねリベルター、これは違うの!」
 呆れきったと言わんばかりのリベルターの声にあたしは慌てて弁解するが、なぜか
インカムは沈黙を守ったままだった。
『……ぷ、うふふふふふ』
「?」
 さすがにこんな状況で笑い始めたあたしたちの不謹慎さに、リベルターも腹を立てたの
だろうと心配していると、インカムの奥から微かな含み笑いが聞こえた。
 あたしが眉をひそめていると、笑い声はだんだんとトーンを上げていった。
「リベルター?」
 ついに我慢の限界を越えたと言わんばかりに、カラカラと笑い始めるリベルター。今度
はあたしたちが沈黙する番だった。
『ご、ごめん…なさい。こ…んな時に』
 息が続かないのか、途切れ途切れに謝る。
『でも、良かった』
「何が?」
 リベルターの声に、あたしの問いが重なる。
『思ったほどみなさんが気落ちしてなかったことがです。“私たち”も少しは救われた気
分です』
 そう話すリベルターの声も、ずいぶんと明るさを取り戻しているようだった。
「リベルター、私だ。そちらの状況はどうだい?」
『店長さん! ご無事でしたか?』
 インカムを通して話しかける店長さんに、リベルターの安堵した声が答える。
『二階に侵入した使徒は何とか撃退しました。また“リベルター”がサーチした結果では、
現在、店内に稼働中の使徒は確認されません』
「そうか、わかった。私たちもすぐに二階に向かう」
 凜とした声に戻ったリベルターの報告にうなずくと、店長さんはあたしたちの方に振り
向いた。
「聞いたとおりだ。みんな、二階の私の私室に行ってくれ」
 店長さんの声にうなずくと、あたしたちは一目散にエスカレーターへと向かった。
『何をやってるんですの、あの人は?』
 電源の切れたエスカレーターを駆け登り、先に進もうとすると、あたしの肩に乗ってい
たリューネが声をあげる。慌てて振り向くと、てっきり後ろにいると思った店長さんがま
だ下の階におり、床にしゃがみ込んでいる。
「どうしたんですか、店長さん!」
 倒れた陳列棚の辺りで、ごそごそとやっていた店長さんはあたしの声に手を挙げ答える
と、すぐにあたしたちに追いついてきた。店長さんは、あたしの肩を軽く叩くと、先を急
ぐようにうながした。
                           ※

 二階の奥にある店長さんの私室に近づいたあたしたちの足は、目の前の光景を目にした
とたん止まってしまった。
 おそらく高出力のビームを打ち合った結果だろう。壁と言わず、天井や床まで、焼け焦
げ無惨な様相を呈していた。足下には下半身だけとなった使徒が断面から白煙を吹き上げ
倒れている。
『リベルターさん!』
 ルーシィの声に、あたしたちの視線が前方に集中する。 店長さんの部屋へと続くドア
の前に、銀髪のアーンヴァルが仁王立ちで浮いていた。
『よくもまあ、あんな武装で……』
 呆れとも感心ともとれる口調でトロンがつぶやく。リベルターが装備していたのは、ア
ーンヴァルの基本武装だった。
 けっしてアーンヴァルの武装を否定するわけじゃないけど、使徒を相手にするには、少
々パワー不足なのはいなめないだろう。にも関わらず使徒と互角以上の戦いをしたんだ。
 あたしは無傷のリベルターを見ながら、彼女の実力の高さを実感していた。
『さあ、みなさん。急いで中へ!』
 リベルターにうながされ、あたしたちは室内へとなだれ込む。あたしたちが部屋に入る
と、重々しい音とともにドアが閉まった。
『こちらに』
 リベルターに導かれるまま、部屋の奥にある扉をあたしたちはくぐり抜ける。部屋に踏
み込むと同時に、まばゆい光が室内を照らした。
『ミナ…サン。ゴ…ブジ…デ』
 非常用の外部電源でもあったのだろうか、いきなり灯ったライトに目をしばかせている
と、押し開けられたドアの奥、部屋の中央に据えられた大型の作業台の上で、もうひとり
の“リベルター”が微笑んでいた。あたしたちは部屋中に散乱しているコードを踏まない
ように気をつけながら歩を進めた。
「リベルター、無事だったか」
『…ハ…イ』
 店長さんの安堵する様子に、“リベルター”も微笑み返す。あたしたちは、“リベルタ
ー”を取り囲むように部屋の中央に集まった。“リベルター”もあたしたちの無事を確認
するかのように、ゆっくりと首をめぐらせる。
『スミ…マセ…ン、ミ…ナサン』
「みんな覚悟のうえよ、気にしないで」
 苦しげにつぶやく“リベルター”に、あたしは元気いっぱいに答える。強ばっていた彼
女の表情が、わずかにやわらぐ。
「一ノ瀬くんの言うとおりだ。それに、無駄に時間を稼がれ精神的に消耗するのを考えれ
ば、こうやって戦力を集中させ使徒たちを待ちかまえられる今の状況は、考えようによっ
ては、我々に有利だ」
 あたしたちを前に話し始める店長さんに、全員がうなずく。
「幸い敵の第一波は退けた。だがこれで終わりのわけがない。今のうちにこちらもフォー
メーションを決めておこう」
「そうですね。こちらの戦力は五人。これを……」
『ちょ、ちょっと待ってください!』
 店長さんの話に相づちを打ちながら、姫宮先輩が話を引き継ぎ作戦を思案し始めたが、
驚いたような声に、我に返った。全員の視線があたしに、というか、あたしのバッグから
顔をのぞかせているルーシィに集中する。
『あ、あの、かおりさん。ここにいる神姫は六人ですよ?』
 指折り数えながら不安さを隠そうともせず、すがるような表情で姫宮先輩に話しかける
ルーシィ。先輩はすまなそうな顔になる。
ルーシィは泣きそうな顔で周りを見回すが視線が合うと、みな目を伏せてしまう。
『酷なことを言うようですが、使徒との戦いはルーシィさんには少々荷が重いのではなく
て?』
 みんなの心情を代弁するかのように、リューネが口を開く。
『そ、そんな。わたしだって戦えます! ねっ、そうだよね、トロンちゃん?』
 今にも泣き出しそうな顔で、ルーシィがトロンにしがみつく。
『もちろん』
 言葉短に答えるトロン。ルーシィの表情が明るくなる。
『……だから、ルゥにはここに残ってほしいんだ』
 ルーシィの方に向き直りながら口を開くトロンに、またルーシィの表情が曇ってしまう。
『え? でも、それじゃ……』
 不満そうに顔で異論を唱えようとするルーシィを、トロンは両手を上げてさえぎった。
『キンちゃんの言うとおり、ルゥがパンチ力に欠けてるのは事実だ。実際、使徒やエーア
ストとの戦いが始まれば、ルゥをフォローする余裕はボクたちにはない』
 きっぱりと言い切るトロン。ルーシィもそれは充分わかってるのだろう。無言で顔を伏
せてしまう。
『だからこそ、ルゥにはここに残ってほしいんだ……リンたちを守るためにね』
『えっ?』
 思いもしないトロンの提案に、ルーシィが顔を上げる。
『フォローできないのは、ルゥだけじゃない。リンたちの守りも手薄になる。だから誰か
に残ってほしいのさ。……わかってくれた?』
『う、うん』
 トロンの優しげな声に、ルーシィは渋々とうなずく。そんな彼女の眼前に、いきなり黒
光りする長大な銃が差し出された。
『これを使うといい、役にたつはずだ』
 声の主、レスティーアはそう言うと、片手に持っていた大型のビームライフルをルーシ
ィに手渡す。だが予想以上に重かったのだろうか、手にしたとたんルーシィはよろめく。
『いいの、レスP?』
『いらん心配は無用だ』
 心配そうに尋ねるトロンに、レスティーアは残る片手に握った大型のライフルと、背部
の強化腕が手にした、さらに巨大な二丁のビームキヤノンを持ち上げてみせる。
『あ、あの、レスティーアさん!』
 トロンたちが振り返ると、そこにはビームライフルを両手で抱え、おぼつかない足取り
のルーシィが立っていた。
『どうした、ルーシィ?』
 レスティーアの問いに答えず、ルーシィは頬を赤くしてうつむいていたが、意を決した
ように顔を上げる。
『あ、あの…このライフルの使い方を教えてください!』
 レスティーアにとっても、この問いは予想外だったのだろう。ポカンと口を開いていた
が、苦笑いを浮かべると机の端の方にルーシィを連れていき説明を始めた。
「あんたの口先三寸もたまには役に立つのね」
 レスティーアの説明に、いちいち律儀にうなずくルーシィを見ながらあたしが話しかけ
ると、トロンは前を向いたまま興味もなさそうに答えた。
『なんのこと?』
「とぼけないで。ルーシィのことよ。あの子を傷つけないためにあんな言い方をしたんで
しょう?」
 あたしが少し声を荒げると、トロンはようやくこちらを向いた。
『ああ、そのこと? 少なくとも半分は本心だよ』
「半分?」
『片桐は、みさキチをも上回るほどの“ピーッ”だよ。ボクたちの隙を作るためなら平気
でリンたちを襲うぐらいするだろうしね』
 あたしを見上げながら、トロンはいたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「あんた、そこまで考えて……」
「なるほど、確かに片桐なら十分使いそうな手だね。ならばこちらも、ルーシィくんがレ
クチャーを受けている間にやることをやってしまおう。一ノ瀬くん。これをトロンくんに
つけてくれ」
 トロンの読みの深さに驚いていると、いきなり背後から感心したような店長さんの声が
聞こえた。振り返ると、店長さんは微笑みながらあたしの前に手を差し出す。
「それって……」
『“黒き翼”だね』
 あたしの声を引き継ぐように、店長さんの手のひらに乗っていた物を一瞥すると、トロ
ンがつぶやく。
「そうだ。さすがにトロンくんでも、飛べないままで使徒の相手をするには限界がある」
 あたしは店長さんが店長さんが手渡してくれた品を、まじまじと見つめた。
 “黒き翼”は飛翔速度などにおいて、本格的な飛行用装備には及ばないものの、気軽に
神姫に飛行能力を与えてくれる武装パーツとして人気があった。
「なるほど、これなら調整にかかる時間も少なくてす……あっ!」
 あたしはそこまで話して、さっき店長さんが下の階でなにかを探していたのを思い出し
た。あたしの考えがわかったのか、店長さんがキラリと歯を輝かせながら微笑む。
「それに、使徒の力はやはり侮れないしね」
「どうしてですか?」
 急に真剣な表情になった店長さんに、あたしは尋ねる。
「いや、さっきトロンくんのパーツを捜しているときにみつけたんだが、スチール製の棚
がありえないほどひしゃげていてね。あれを見ていて、今更ながら使徒の恐ろしさが身に
しみたんだ」
「…………」
「ああ、それは使徒じゃなくて、あたまを使いすぎてキレたせんぱいが……あ痛っ!」
 雷にでも打たれたように直立不動になる美佐緒の横で、これ以上はないというほど引き
つった笑みを浮かべるあたしを見て、店長さんが不思議そうな顔をする。

           ごめんなさい、店長さん。ソレ、あたしが犯人です。

 美佐緒の爪先を踵で踏みしだきながら、あたしは心の中で店長さんに陳謝した。
『それよりも、トロンさんの調整を急いだ方がよろしいのではなくって?』
『そうですね。私も手伝います』
 リューネの声にあたしが我に返り、答える間もなく、リベルターはトロンの背を押し、
隅の方に連れていくと慌ただしく用意を始める。
 正直、あたしが手伝うと、かえって足を引っ張りそうだったので、ポツンと立ち尽くし
ていると、背後から感情を感じさせない声が聞こえてきた。

            『ネツゲ…ン、ハン…ノウヲ、カ…クニン…シマ…シタ』


            “リベルター”の声に、部屋中が緊張に包まれる。
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