神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

武装神姫 クロスロード 第36話

                武装神姫 クロスロード

          第36話   「宴のはじまり」

「リベルター。熱源の数は?」
『カク…ニンシタ、ソウス…ウハ、十六…デス』
 店長さんの問いに、“リベルター”の冷静な声が重なる。
「じゅ、十六? 使徒って、まだそんなにいたの?」
『イエ…。シトト…オモワ…レルハンノウ…ハ、十五デ…ス。ノ…コリノ…ヒトツハ、モ
ット…キョダ…イナ…』
『サタナエル!』
 “リベルター”の報告を、もうひとりのリベルターがさえぎる。片桐は言っていた。こ
のパーティーの主役の名を……

『それともうひとつ……人の気配を感じるでござる』
“リベルター”の声に相づちを打ちながら、じっと目を閉じていたガーネットが静かにつ
ぶやく。
「ブラボ───ッ! この混沌とした光景。実にすばらしぃッ!!」
 いきなり階下から、割れんばかりの拍手とともに、感極まったと言わんばかりの声が響
く。あたしは、その声を聞いたとたん、無意識に走り出していた。
「一ノ瀬さん!」
 いきなり横から、あたしに多い被さるように姫宮先輩がしがみついてくる。
「は、離してください! 先輩だって聞こえたでしょう? 片桐のやつが下に来てるんですよ?」
 必死に引き剥がそうとするが、姫宮先輩のどこにそんな力があるのか、あたしの身体は
ぴくりとも動かない。なおもあたしがもがくと、先輩はあたしの襟元を鷲掴みにした。
「だからこそ冷静になって! 彼の挑発にのっては駄目!!」
 そう言いながら、先輩は何度もあたしの身体を揺する。その剣幕に、ようやくあたしは
身体の力を抜くと、大きく息を吐いた。
「すみません、つい……」
 先輩はあたしの声になにも答えなかったが、優しくうなずいてくれた。
『まったく。リンは本当にイノシシ属性だね』
 特大のため息をつきながらトロンが歩いてきた。その背中には、一対の漆黒の翼が動作
確認のためだろうか、交互に羽ばたきを繰り返している。
 いつもだったら売り言葉に買い言葉。たちまち舌戦が始まるところだが、さすがに今回
はあたしの方が分が悪かった。しゅんとうなだれるあたしを見ていたトロンが、姫宮先輩
を見上げる。
『ありがとう、かおリン』
 先輩はかすかに微笑んだ。
「で、肝心の作戦はどうするんですか? このままみんな一緒に戦うとか?」
 美佐緒の心配そうな声で、一同が我に返る。
『だが……使徒の数はこちらの倍以上でござる。一点集中を計ろうものなら……』
『さぞ、いい的になるでしょうね』
 ガーネットのつぶやきに、肩をすくめながらリューネが相づちを打つ。
『ならば、いっそこちらも散開し、使徒を各個撃破するしかないのではないか?』
『そ、それじゃあ、リンさまたちもバラバラになっちゃうじゃないですか! そしたらわ
たし、どうすればいいんですか?』
 レスティーアの提案に、ルーシィが真っ青になりながら反論する。
「はい!  あたしに名案がある!」
 思考のループに陥った一同の視線が、あたしに集中する。
『……何、名案って?』



             ── リンに期待はしてないよ ──



 あたしを見つめるトロンの目が、そう語っていた。

 ムッとしながらも拳をにぎりしめ、あたしは一ノ瀬家に代々伝わる格言を叫んでいた。

「おじいちゃんが言ってた。“迷ったら、殴れ”って!」



              何ともいえないヤな空気が、場を覆った。



『ハイハイ、そうだね。……ところでリン。悪いんだけど、ボクたち今立て込んでてね。
話が済むまで向こうに行っててくれないかな?』
 トロンのヤツは、悪魔のくせに天使のような笑みを口元にたたえ、まるで笑っていない
瞳であたしを見ながら部屋の隅の方を指さす。
 あたしは再び円陣を組んで話を始めたみんなを黙って見ていたが、やがて背を向けると、
トボトボと歩き出す。
「……何よ、あの態度! あたしだって一生懸命考えてるのよ?」
 あたしはしゃがみ込むと、壁に向かって呪詛のごとくつぶやきはじめる。

 しばらくすると、下から片桐の困ったような声が聞こえてきた。
「むぅ、誰も来ませんね~。私が来たと知れば、単細胞の一ノ瀬さんあたりなら意の一番
に降りて来ると思ったのですが……良識ある他の方に止められたのですかね?」


                うっせーよ、メガネ!


 一から十まで当たっているだけに反論もままならず、あたしは壁に向かってツッコんだ。
「仕方ありませんね。私のスピーチは端折って、パーティーを始めるとしますか……では、
イッツ、ショータイムッ!」
 片桐の声が店内に響きわたる。同時に、あたしの背に悪寒が走った。
 階下から人とは異なる気配が複数、あたしたちめがけて高速で移動してくる。

 その小さな気配とは不釣り合いなほど、明確な殺意をともなって。

『みんな気をつけて、使徒だ!』
 トロンの注意を促す叫びが終わる前に、ことにトロンの左右にガーネットとリューネが
並び立ち、その背後にはレスティーアとルーシィがトロンたちを援護すべく手にした銃を
かまえる。
 火力と機動性に優れた武装を持つリベルターは、攻撃、援護両方に対応できるように、
天井すれすれの位置で待機している。
 あたしたちは、トロンたちの邪魔にならないように部屋の隅に移動するが美佐緒は彫像
のように立ち尽くしたままだ。
「後ろに下がって!」
 場に張りつめた空気のせいだろう、いつもの脳天気さは影を潜め、青ざめている美佐緒
を強引に押しやる。
 すばやく配置につき息を殺して唯一の出入り口であるドアをにらみつけるが、待てど暮
らせど使徒たちは部屋に進入してくる気配すらみせなかった。
「レスティーア、聞こえる?」
 どうしたものかと思案していると、背後からささやき声が聞こえてきた。振り返ると、
姫宮先輩が手にした小型の情報端末をのぞき込みながらインカムに話しかけている。
「ドアの向こう側に使徒の反応があるわ。先制攻撃を…」
『御意!』
 姫宮先輩のささやくようなつぶやきに、凛とした声が応える。
『はぁ? 何言ってんのレス…おわッ!?』
 背後で聞こえた声にトロンはいぶかしげに振り返るが、その鼻先を黒光りにした長身の
銃が通り過ぎ肝をつぶす。
『待ち伏せとはくだらん戦術だ』
 レスティーアは吐き捨てるようにつぶやくと、両の強化腕が握りしめるビームキヤノン
と手にしたビームライフルを前方に向ける。
『きさま等すべて……纖滅する!』
 レスティーアが手にした銃が、一斉に火を噴いた。
 三条の光の束が一つになり、前方のドアを貫く。ドアの向こうから小さな悲鳴と、あき
らかに動揺に包まれた気配が伝わってくる。
「……まずは、一人」
 淡々と事務的につぶやく姫宮先輩。いつもとあまりにちがう雰囲気に、あたしは呆然と
先輩を見上げていた。
『ずいぶん長い間お休みになっていたようですけど、腕の方はさほど鈍っていないようで
すわね、<黒騎士>さん?』
『無駄口をたたいている場合か!』
 肩越しに振り返り、少し揶揄したように話しかけるリューネを、レスティーアは氷のよ
うな声で一括する。
『……来るでござる!』
 ガーネットの声を耳にするや、全員の視線が一点集中する。直後にドアを突き破った使
徒たちが、大量の木片とともに部屋になだれ込んできた。


                   こうして宴ははじまった……
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コメント


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レッツ!\\\\٩( 'ω' )و ////パーテー!

ついに始まってしまいましたね…。
トロン達と使徒&タナエルが、どんな激闘を繰り広げるのか…楽しみです。(ゴクリッ

Mr.Potato | URL | 2014-08-05(Tue)10:33 [編集]


>Mr.Potatoさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

いよいよ始まりました、運命の一戦。

前作「わんだふる神姫ライフ」から引きずるに引きずってきた(笑)、トロンの過去などが今後明らかになっていきます。

この先、少しでも期待に沿えるよう、がんばりたいと思います(汗)。

シロ | URL | 2014-08-06(Wed)20:12 [編集]