神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 第12話

「よっ、はっ、と、とっと」
 ともすれば、左右に大きくバランスを崩れそうになるのを、リズムをとりながら一気に階
段を駆け上がり自分の部屋へと飛び込むと、あたしは両手に持った紙袋を机の上に投げ
出した。
『うワッ? ……あ痛たたタ。 なんだヨ、もォ……ン、ナニこの荷物?』
 思った以上に重量があったのか、紙袋を置いた衝撃で爆睡中だったトロンは、クレイド
ルから投げ出され、お尻をさすりながら眉をひそめて文句を言う。
「あ、ごめん、ちょっと買い物をしてきてね」
 紙袋から出した大小様々な本を机の上に、それこそ文字通り山の様に積み上げられて
いくのをトロンは寝ぼけ顔で見上げていた。
『本? え~ト、「武装神姫マスターブック」、「神姫マガジン」、「三日でなれるA級マスタ
ー」、エトセトラ etc、……それ二「ネクロノミコン」ト「無名祭祀書」あとハ「エイボ
ンの書」カ。うン、ここらへんハ、いいチョイスなんじゃなイ?』
「ん? そんな変なタイトルの本なんて買ったっけ……っていうか何なのソレ?」
『まァ、全人類を幸せに導くための本かなァ、それよりどうしたノ? こんなに本なんか
買いこんデ』
 買った覚えも無いタイトルに首を傾ていたあたしは、トロンの声で我に返った。
「決まってんでしょ? レスティーアよ!」
『レスP? レスPとこの本の山に、ナンの関係があるワケ?』
 大きなあくびをしながら、今度はトロンが納得いかんと首を傾ける。
「なに言ってんのよ! 『レスPに勝ちたい』そう言ってたのはあんたでしょう? こう
なったら、あんたと力をあわせて《打倒 レスティーア!》よッ!」
 語気荒く、部屋の真ん中でこぶしを突き上げ一気にまくし立てるあたしを、しばらく見
上げていたトロンだが、背後の本の山にチラリと目をやると特大のため息をひとつ吐き、
なぜか小さく頭を振るとクレイドルに寝転がり、ポツリと言った。
『ぱス!』
  
         ヲイ! あたしは振り上げたこの拳を、どうすりゃいいのよ?
 
                    わんだふる神姫ライフ
 
               第12話    「武器」
 
『……痛ったいなァ。ボクたち神姫はデリケートなんだヨ? もう少しテーネーにあつか
ってヨ!』
 あまりの態度に、カチンときたあたしはトロンの頭を軽くひっぱたくと、トロンのヤツ
は自分のことを棚にあげて、あたしに食ってかかってきた。
「うるさい! ウチじゃ調子の悪くなった家電は、まず、ひっぱたいてみる事にしてんの
よ! 文句ある?」
 一ノ瀬家に代々伝わる、由緒正しい家電の修理法にトロンは不満そうな顔をする。
『そんなのオーボーだッ! だいたいボクはテレビじゃナイッ! お役所にうったえてや
ル!』
 しきりに頭をさすり、顔を真っ赤にして文句を言うトロンを見ていたあたしは、ふいに
脱力感に襲われた。
「ねぇ、トロン。あんたひょっとして、またあたしの事をからかってたの?」
 机の端に両手をかけ、トロンまであと数ミリというところまで顔を近づけ、あたしは静
かに尋ねた。
『ど、どうしたのさァ、急二?』
 おどろいたトロンが、クレイドルからずり落ちそうになるのを必死にこらえながら聞い
てきた。
 でもあたしは何も答えなかった、答えてほしかったのはあたしのほうだったから。
 
『レスティーアに 勝ちたい!』あの言葉は嘘だったのだろうか? あたしはまた、ト
ロンにからかわれていただけなの?
 
              そう考えると無性に悲しくなった。

『……ふゥ、そんなんじゃないヨ、リン』
 しばらくの間、声もなく、ただ見つめ合ってたいたあたしたちだったが、不意にトロン
は小さく息をはきながらつぶやいた。
『リンがその本の山をぜんぶ読んだとしテ……それでボクのナニがわかるノ?』
まるで、我が子に言い聞かせる母親のような口調で、トロンは静かに話し始めた。
「それって、どういう意味なの?」
『……つまりね。確かにその本には、バトルでの勝ち方とか、ボクたち神姫のデータや、
いろんな情報が載ってるかもしれない……でも、どのページを捲っても“ボク自身”の事
は、何ひとつ書いてないんだよ?』
「あっ!」
『ボクはまず、リンにもっと知って欲しいんだ、“ボク自身”を!』
 あたしは、ハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けていた。トロンの言うとおりだっ
た。自分の神姫の長所も短所も知らないで、あたしは何をやろうとしてたんだろう?
 あまりに考えの無い自分に、あたしは自己嫌悪におちいってしまった。
『わかってくれた、リン?』
「うん、ごめんトロン。あたしが間違っ……あれっ?」 
 ションボリとうな垂れて、トロンに謝ったあたしは、そこでいつの間にかトロンの声が
いつもの間延びした物から、凛とした覇気のある声に変わっていることに気がついた。
 慌てて顔をあげたあたしを、あの金色の瞳が見つめていた。
「トロン、あんた……」
『じゃあ、レッスン1から始めようか?』
 トロンはあたしの顔を見上げながらウィンクすると、笑顔をみせてそう言った。
                        ※
『……と言うわけで、ボク自身の基本データの説明は、こんな感じかな』
 クレイドルの上で胡坐をかきながら腕を組み、ストラーフの特徴などを延々と話し続け
たトロンはそこで一端話しを終えると、あたしが理解したかを確認するかのように、あた
しの顔をのぞきこんでいた。
 正直、理解したのか? と問われれば、かなり怪しいところだったので、あたしはさも
わかったように小さくうなずくと、もう一度、頭の中でおさらいを始めた。
 まず、ストラーフの特徴についてだが、これはあたしもトロンを買う前から色々と調べ
ていたので大体のところは知っていたんだけど、トロンが自分はあまり銃を使った戦いが
好きではないと言ったのには少しおどろいた。
 確かにストラーフは、接近戦を得意とするとは聞いていたけど、基本セットの中にも銃
は入っているし、第一トロンは、レスティーアとの戦いであんなに見事に命中(まぁ、確
かにほめられる方法ではなかったけどね)させたはずなのに。
 不思議に思ったあたしがその事を尋ねてみると。
『まぁ、あれは距離が近かったのと、レスPが油断しまくってたからね』
 トロンはそう言うと、苦笑いを浮かべて肩をすくめた。
 そして、もうひとつ意外だったのは、ストラーフを象徴する装備である強化腕チーグル
などの操作が苦手だと、トロンが言った事だった。
 あれほどレスティーアの猛攻を防いだのにそんなバカな? と思ったのだが、トロンに
言わせれば、まだ扱いなれてなかったせいでチーグルの制御に気が散って、戦いに集中
できなかったそうだ。
『ボク自身がまだ未熟だったもんで、チーグルに頼らざるをえなかったけど、きちんとし
た防御法をマスターできれば、守りに関してはボクの自前の腕だけで充分だと思うんだ』
「自前って、二本の腕で四本以上の働きができるっていうの?」
『わざわざ強化腕を使うぐらいなら、って言う意味でね。それにボクをこんな風に設定し
たのは、リン自身のはずでしょ?』
「う、それは……」
 あまりにしれっと答えるトロンに驚いたあたしの問いは、トロンのみごとなカウンター
気味のツッコミに粉砕される。
 それにCSCの事を言われると、いまさらながら何も言えなくなってしまうあたしだっ
た。
 まさか、エメラルドの持つ特性が搭載された神姫の回避能力をUPさせるものであり、
ただ色が好きだったという理由だけで、CSCをすべてエメラルドで統一されてしまった
トロンは、元々もっていた“ゆがみ”による特性もあいまって極端に回避能力が高い神姫
として眼を覚ます事になったのだ。
 自分の神姫をこんな偏った存在にしてしまったのが、あたし自身の無知と、いい加減さ
が原因なのだから返す言葉もないありさまだった。
『そんなに気にする事ないよ、リン。 それにボクがどんなCSCをセットされたとして
も、必ずしも銃の扱いが巧かったり自分の装備の制御が上手とは限らないんだからね』
 自分の無知っぷりにガックリと肩を落とし、落ち込んでいると、さすがに哀れに思った
のかトロンが意外な事を口にした。
「そ、そういうものなの?」
 にわかに信じられない事だったが、トロンが言うには、けっこう神姫はこういった得手
不得手がはっきりとしているそうだ。
 たとえば、ストラーフと同じ時期に発売された、アーンヴァルと呼ばれる人気の高い天
使型の神姫がいる。このアーンヴァルは本来、高い空戦能力と距離をおいての射撃戦が
得意なのだが、まれにそんなアーンヴァルのなかに射撃が苦手な子や、ときには高所恐
怖症(?)のため、まったく飛ぶ事ができない者までいるという話だった。
 単純に考えてそれは不良品なのでは? などと一瞬考えもしたが、あたしは以前、店長
さんの言った「神姫とは初めから不完全な存在として生み出されたのではないか?」とい
う言葉を思い出していた。
 
そして、そんな神姫たちを導くために、あたしたちがいる……
 
『まぁ、それにボクは今の自分に満足してるし、それに戦いは短所で決まるもんじゃない、
ボクにしかない長所をつかって戦うものだからね』
「……長所って、あの“傷”のこと?」
『へぇ~、これはびっくりだ。 リン、気づいてたんだ?』
 トロンは、さも驚いたといった様子であたしを見上げた。
 でも、そんなトロンのおどけたしぐさを見ていても、不思議と腹は立たなかった。それ
はトロンの顔の浮かんだ表情が、いつものあたしをからかうものではなく、自分を理解さ
れたことへの喜びに感じられたからだった。
 トロンの顔を見ながらあたしの脳裏にはあの時の、レスティーアとの一戦が終わりDO 
ITでのメンテナンスルームでの光景が浮かんでいた。
 それは店長さんが、トロンの身体に刻み付けられた剣による切り傷のほとんどが、内部
まで達していない、と不思議そうにつぶやいたのが発端だった。
 トロンが戦っている最中はパニック状態になっていたあたしだが、今は店長さんの言葉
の意味を考える余裕ができていた。
 確かにトロンは、レスティーアの最初の一撃で片腕が動かなくなるほどの傷を受けたが
それ以外はチーグルやサバーカに比べればトロン自身のダメージは、はるかに軽かった。
 最初はトロンに怒りを燃やしていたレスティーアが、ワザとトロンを嬲るような戦い方
をしてるのでは? などと勘繰ってみたが、すぐに彼女の性格を考えるとそれは有り得な
いと気がついた。レスティーアなら自分が忌み嫌う相手との戦いなど、さっさと終わらせ
ようと考えるのではないんだろうか? なにより全身傷だらけになってもなお戦い続ける
トロンに対して、レスティーアが時折見せた、あの、いらだちの表情の意味していたのは
きっと……
 
「トロン、あんたひょっとしてレスティーアの攻撃パターンがわかってたの?」
『まぁ、途中からだけどね』
 あたしがDO ITで思っていたことを口にすると、トロンはあたしの顔を見てニヤリ
と笑った。その眼は話を続けろと、あたしを促していた。
「やっぱり! あんたはレスティーアの攻撃パターンを把握した時点で、受けに徹したの
ね? 致命傷にならないようにダメージを調整しながら彼女の隙を伺っていた……そして
もうひとつ!」
『ん?』
 ひとりで部屋を歩き回りながら呟くように話していたあたしは、いきなりトロンの方に
向き直ると、机の上のトロンを指差した。
 トロンの瞳に微かな光が灯った。
「あんたが終止レスティーアをおちょくるような態度をとってたのは、生真面目な彼女の
性格を逆手に取ったのね? 確実に隙をつくるために……かなり戦いの終わりのほうで
イラついてたもんね、レスティーア」
『はて? 何のことやら』
 ニヤニヤと笑いながらそっぽを向くトロンを見て、ようやくあたしにも合点がいった。

つまりトロンにとって最大の武器とは、最小限の攻撃で相手のパターンを把握し、その
対応を瞬時に実行に移せる反射速度の高さ。
 そして、もうひとつは、相手の心理の裏を突くことのできる老獪さと言ってもいい程の
悪知恵……ううん、機転の速さ。このふたつというわけか。
 
 ひとり考えにひたっていたあたしは、トロンが目を閉じたまま口元に微かな笑みを浮か
べているのに、この時になって気がついた。
 それは、自分を理解された事を喜んでいるような、そんな風にあたしには思えた。
『もう、ここまで言えばボクのことは理解してくれたよね? あの戦いでは戦闘経験の全
くないボクでも、ボク自身の“武器”のおかげでなんとかレスPと渡り合う事ができた。
でも、ボクも気づいたんだ、それだけじゃレスPには勝てない……絶対に!』
 静かに話し始めたトロンだったが、みるみる言葉に力がなくなり、最後は唇をかみしめ
たまま黙ってしまった。
「ほらっ、元気だしなって! そんなのトロンらしくないよ? あたしにできることなら
なんでもするからさ」
 トロンの落ち込んだ姿に驚いたあたしは、やさしく語りかけた。しばらく俯いていたト
ロンだったが、すがる様な眼であたしを見上げた。
『本当に?』
「うん!」
『じゃあ……リン、ボクに武術を教えて!』
「へ? ぶ、武術?」
 トロンに話しかけながら、自分に何ができるのか思案していたあたしは、まるで思いも
しなかったトロンの言葉にあいた口がふさがらなかった。
『リンは前に学校で、みさキチを投げ飛ばしてたよね。あれは柔道とかいう武術の技でし
ょう?』
「そうだけど。でもトロン、あたしのは正式の武術じゃないのよ? おじいちゃんの我流
だし……そりゃあ、柔術や空手の技も少しは混じってるけど、基本は合気道だからとても
あんたの役に立つとは思えないんだけど……」
『構わない。リン自身の“武器”が、ボクにはどうしても必要なんだ! レスPに勝つた
めに!』
 
 トロンの言葉の真意がわからず、途方にくれるあたしを、机の上からトロンがあの金色
の瞳に不退転の決意を宿し見つめていた。
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コメント


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こんばんは。

きっと純正装備からトロンさん専用装備へとバージョンアップが行われるんだなーとか思ってニマニマしてまする。

本編もそうですが、楽しみが増えますなー

初瀬那珂 | URL | 2012-03-27(Tue)00:05 [編集]


>初瀬那珂さん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

専用装備へとバージョンアップ……やっぱりモロバレですか(苦笑)。

はい、初瀬さんの予想通りです。
もっとも、トロンの専用装備がでてくるのは、もう少し先のことになると思いますが(汗)。

シロ | URL | 2012-03-27(Tue)21:18 [編集]


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