神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 第2話

             ほんとうに、何なんだろうコレ?

 あたしは畏まって座っていた椅子から、すぐ目の前の机の上にペタンと座り込んだ何か 
凄く眠そうな顔をした『ソレ』を無遠慮に眺めていた。
『ふわァ~~~。……デ、キミはダレ?』
 鎖骨の(無論、神姫にそんなモンがあれば、の話だが)あたりをポリポリと掻きながら
『ソレ』は、なんともしまらない顔であたしに尋ねてきた。
「あたしは、一ノ瀬 隣。 あなたのオーナーよ!」
『ふゥ~ン……』
 いままでの事もあり、少し威圧的な口調になってしまったが、机の上の当の本人は大し
て興味もなさそうに一言つぶやくと、うつむき黙り込んでしまう。
「……起きろ!」
『あ痛ッ。 もウ、痛いナァ。ボクは精密機械のカタマリなんだヨ? 乱暴に扱わないでよ
ォ!』
 あたしの情け容赦のないデコピンの直撃を額に受けた『ソレ』は、自分のことを棚に上
げて文句を言ってきた。
 しばらく自分の額をブツブツ言いながら擦っていたが、不意にゆるみきった顔であたし
の方を見上げ、しばらくするとポツリと言った。
『……デ、キミはダレなノ?』
「あんたいい加減にしなさいよね。これでもう五回目よ!」 

                  わんだふる神姫ライフ 
  
             第2話    「君の名は……」

『もゥ、せっかくボクが場の空気を和ませてあげようとしたのにさァ。本ッ当にジョーダ
ンが通じないんだネ、キミ』 
 ヤレヤレ、と言わんばかりに盛大にため息を吐き、肩をすくめて見せる目の前の……
(いや、もう認めよう。とりあえずコイツが神姫らしいということを)ストラーフに、あたし
はただ唖然とするしかなかった。

  な、何なのこの態度? 神姫ってもっとこう、オーナーの言う事をなんでも聞いてくれて
友達みたいに接してくれる存在じゃなかったの?

 あたし自身の体験や、テレビや雑誌でオーナーに甲斐甲斐しく尽くすその姿を見て神姫の購入
を決意したあたしだったが、心の中で思い描いていた理想の神姫と、目の前の新種のナニかの
ような存在とのあまりのギャップに言葉も出なかった。
『まァ、キミがボクたちにどんな理想を持とうとキミの勝手だけどさァ、人生ってそんなに甘い
モンじゃないんだよねェ』
「いや、起きて間もないあんたに人生の何たるかを説われる謂れはって、ちょっと、何であたし
の考えてる事がわかるのよ?」
 腕を組みながら、ひとりでうなずいているストラーフの言葉にハッとして、あたしは慌てて問
いただす。
『まァ、ボクくらい人生の達人になるト、色々と、ネ……』
「だからあんたは起動して、まだ一時間もたってないでしょう!」

       あったま痛ぇ~。 だ、だめだ。もう限界! ホント何なのコイツ?

 突然襲ってきた激痛に思わず両手で頭を押さえると、あたしはうずくまってしまった。
『ねェ、だいじょうぶゥ?』
 あたしの頭上から、ちっとも心配してないような能天気な声が聞こえる。思わずキッとにらみ
つけてやるが、本人どこ吹く風だ。
『ねェ』
「何よ!」
『……ケロ〇ン、持ってこようカ?』
「だから、何であんたがケ〇リンなんて知ってんのよ!」 
                     ※
『あのさァ……』
 椅子の背にだらりともたれ掛かり、ゼィゼィと喘いでいたあたしは、こうなった原因に無言の
ままゆっくりと視線を移した。
『ほんとにゴメン。ボク、少し調子にのってたよネ……』
「えっ?」
『ボク、やっと自由になってうれしくっテ、つイ……』
 さっきまでとは打って変わって、机の上でしゅんとうな垂れているストラーフを見て、あたしは
言葉を失ってしまった。
「え~と。いっ、いいんだって、そんなに気にしなくても。ほら、あたしも少し大人気なかったし、
これから長いつき合いなるんだから仲良くやろうよ。 ねっ?」
 あまりの豹変ぶりに驚きもしたが、これならうまくやっていけるかな? と心の中でそんな事を
考えながらストラーフを手のひらに乗せ胸元まで持ち上げると、あたしは優しく話しかけた。
『うン。じゃア、ボクの名前を決めてヨ』
「そうね」
 相変らずねむそうな顔をしているストラーフを机の上の戻すと、あたしはコホンと咳を一つする
と、微笑みながらこの日の為にずっと考えていた名前を口にした。
「じゃあ、あなたの名前は<ルシエル>。 どう、ステキな名前でしょう?」
 その名前を耳にした瞬間、ストラーフは雷にでも打たれたように大きく身体を震わせ、動かなく
なってしまった。
「えっと、どうかした?」
 あたしたちの間に漂う、何とも言えない空気に耐えられなくなったあたしは、おずおずとストラ
ーフに話しかける。
 あたしの声に、はっとして顔を上げるストラーフ。そのねむそうな顔からは、彼女が何を考えてい
るのかあたしにはわからなかった。
『ン~~~、パス……かなァ』
「へっ? な、何よパスって。オーナーである、あたしがつけた名前なのよ?」
 てっきり気に入ってくれるものと思ったのに、すっかり肩透かしを食う形となったあたしは、思わ
ず声を荒げて問いただしていた。
 だがストラーフは、あたしの剣幕に動じる気配もみせず小さくかぶりを振った。
『あのねェ、いくらキミがボクのオーナーだからといってモ、その名前が相応しくないとボクが判断
した場合、その命名に対する拒否権を発動できるんだヨ。マニュアルにもちゃんと書いてあ るでシ
ョ?』
「そ、そうなの?」
 あたしは慌ててマニュアルを手元に引き寄せると、パラパラとページを捲り始めた。
「え~と…………あっ、本当だ、書いてある。でも、確かにそう書いてあるけど、どうしてルシエル
じゃ嫌なわけ? そんなに変な名前じゃないでしょう?」
 あたしがルシエルという言葉を口にすると、かすかにストラーフの眉が寄った。それは何かに耐
えているようにも見えた。
 そのことをかすかに気にしながらも、理屈としては理解できても心情として納得できないあたし
は、ストラーフに食って掛かった。
『まァ、なんてゆうカ、ありきたりと言うカ、ボクのハートにピンとこないんだよネェ。と言うわけデ、
グッとくるやつヨロシク!』
 こめかみの辺りがピクピクと引きつるあたしの眼前で、ストラーフはさっきの複雑な表情は何処
へやら、満面の笑みを浮かべながら親指を立てている。

「……じゃあ、アリシアは?」
『ン~、ナンかちがうんだよねェ~』

「………テグリウス」
『イマイチ』

「…………フェイト」
『もう一声』

「……………なのは」
『ベタ』

「………………マルガリータ」
『ハッ!!』

「……ちょっと待て! お前、今鼻で笑ったろ?」
 思いもしないリアクションに、唖然としながらも震える指で目の前のストラーフを指さすが、
当事者の悪魔型の神姫はまったくその事に気づいた素振りもみせない。
『いやァ~、何て言うかさァ、こういうのってその人の感性とかの問題もあるからねェ。まァ、
ボクが 高望みしすぎなのかな~とか思ったリ。何かもウ、めんどくさくなったからアミダか
なんかでテキトーに決めちゃおっカ?』
「…………」

    な、ななななな何なの? 憎ったらしいこの態度! さっきの殊勝な態度は、どこに
行っちゃったわけ?

 わなわなと怒りに震えるなか、あたしはようやく眼前の悪魔におちょくられていた事に気が
ついた。
 本当に腹が立った。そりゃあ、あたしのセンスはそんなに良くは無いかもしれない。でも、
この日のために一生懸命に考えた名前なんだよ!
 そ、それを何でこんな変な人形なんかにバカにされなきゃなんないのよ!!
 思わずこみ上げてきた涙を何とか堪え、目の前のストラーフを睨みつけるが、諸悪の元凶
はニヤニヤとした笑みを浮かべ、気にした素振りも見せない。

     なにさ。開いてんだか閉じてんだがわからない目、いっつも半開きのだらしのない
口、顔中の筋肉の緩みきったトロ~ンとした顔…………!

「ふ~ん。じゃあさぁ、あんたの名前<トロン>なんてのは、どお? だらしのない顔したあ
んたには、ぴったりの名前だと思わない? 別にいいのよパスしたって、あたしちっとも気にし
ないしさぁ」
 あたしは今までの恨みも込めて、皮肉たっぷりに新しい名前を披露したのだが、ストラーフは
あごの関節が壊れたのでは? と思うほどの大あくびで答えただけだった。
『ふあァ~。何かボクねむくなってきちゃったシ、もうソレでいいヨ。……え~ト、名称入力開始、
ト・ロ・ン っと、ハイッ記録終了。 じゃア、ボク少し眠るかラ、もう起こさないでネ』
「へっ?」
 ひとりでブツブツと言っていたストラーフは、唖然として立ち尽くすあたしを尻目にクレイドル
へと向か って行く。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
 ようやく我に返ったあたしは、慌ててストラーフを呼び止めた。
『ア、そうそウ、これからも長いつき合いになると思うけド、まァ、よろしくネ……リン』
 あたしの声に、というより単に言い忘れがあったからという感じでクレイドルに片足を掛けた
ままの 格好でストラーフはあたしの方を向いてそれだけ話すと、もはやあたしには一片の興味も
失せたと言わんばかりにクレイドルに身体を横たえる。
 嵐の去った後のあたしの部屋に残った物は、微かに聞こえるイビキの音と、人の形をした、
まっ白いカタマリだけだった。


              今日、ウチに神姫がやってきた。名前はトロン。

                     …………だそうです。
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