神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 第17話

『うわァ~、すっごい人だかりだネ』
「……ホント」
 息せき切ってDO ITの二階にたどり着いたあたしたちは、眼前に広がる光景に唖然
としてしまった。
 今日が休日だというのを差し引いても、すごい人の数だった。足の踏み場もないってい
うのはこういう状況をさすんだろう。
「あ~、せんぱ~い。こっちこっち~!」
 小柄なあたしは、どうやってこの人の壁を突破したものかと思案していると、人だかり
の中からあたしを呼ぶ声が聞こえた。
 あまりの大声に見事なくらいに二つに割れた人ごみの奥で、美佐緒が手を振っている。
う~む、器用なやつ、と思いながら紅海を渡るモーゼな気分で歩いていくと、なにやら
周りからヒソヒソと話す声が聞こえてきた。
「おい、あのストラーフか?」
「ああ、そうみたいだな。でも、オーナーの娘ってあんなに小さかったのか」
「そうだな、……どうみても小学生だよな?」
 
 一ノ瀬 隣 十七才 華の高校二年生 只今彼氏募集中! 
 
 瞳に怒りのメッセージをそえ、人だかりのほうをキッと睨みつけると、ヒソヒソと話し
ていた声がピタリと止まる。
『プッ、くくクッ』
  
               おまえも笑ってんじゃねーよ。バカ悪魔!
 
 
                    わんだふる神姫ライフ
 
               第17話    「刃狼」       
 
「あの~、せんぱい。何かあったんですか?」
「……別に」
 あたしの不機嫌そうな顔を見て、心配そうに眉をひそめながら美佐緒が声をかけてきた
が、憮然と一言つぶやくと、あたしはプイッと横を向いてしまった。
『心配しなくってもダイジョーブだヨ、みさキチ。さっきそこでリンの核心をつく発言が
あってねェ~。それにしてモ、さすがリン。“ランドセルの似合う女子高生”の異名は伊達
じャ……AHEAAAAA!』
 怒りに震えるあたしの殺気に気づいたのか、脱兎のような勢いで逃げ出すトロンを素早
くキャッチすると、渾身の力を込めて握り締めていた。
「ふふふ、トロ~ン。あんまり妙なあだ名を人につけないほうがいいんじゃないかしら?
いい加減にしないと、耐用年数までもたないと思うわよ?」
 手のひらのなかから響く、メキメキとかベキッという音が天上の調べのように聞こえ、
うっとりと耳を澄ませていたが、背後から聞こえてきた美佐緒の不満そうな声が現実世界
へとあたしを引き戻す。
「せんぱい! いくらなんでもちょっと酷くないですか? わたし、ずっと待ってたんで
すよ!」
「あっ!」
 そ~っと振り返ってみると、さすがに能天気な性格の美佐緒も、今のあたしの態度には
カチンときたのか、腰に手を当てこれ以上はないというほど頬をふくらませ、あたしを睨
んでいる。
「あ、あはははは……本っ当にゴメン! 全部あたしが悪かった。お願い許して、ね?」
 手のひらを合わせ、愛想笑いを浮かべながら拝むように何度も謝るあたしを、美佐緒は
無言で見下ろしていたが、ちいさなため息をひとつすると、急にあたしに顔を近づけてき
た。
「じゃあ、せんぱい。コ・コ♪」
「?」
 意味がわからず、思わず後退りながらキョトンとしていると、美佐緒はあたしの前で横
を向くと、さかんに自分の頬を指差す。
「さっ、せんぱい」
「う、うん」
 あたしは、促されるままに美佐緒に近づいていった。
「…………あ痛っ! ひっどぉ~い。なんで叩くんですか、せんぱい?」
 手を上げたままのポーズで立つあたしの目の前で、美佐緒が頬を押さえたまま、驚きの
表情を浮かべてこっちを睨みつけている。
「あれっ? ひっぱたけって意味じゃなかったの?」
「そんなわけないじゃないですか! チューですよ、チュー。罪滅ぼしにほっぺにキスし
てくださいって意味ですよ! もうっ。 じゃあ、もう一度気を取り直して……」
「するかっ!」
 そもそもの原因はこっちにあったわけで、そこらへんを考慮して三割ほど力を加減して
放ったスネ蹴りを受け、跳ね回っている美佐緒を眺めていると、コンソールの上に立った
ガーネットが困ったような顔で遠慮がちに話しかけてきた。
『あの~、隣どの。そろそろ手を離してはいかがでござるか?』
「へっ? 手? ……あっ!!」
 ガーネットの言葉に、なにげなく視線を手に移すと、あたしはトロンを握り締めたまま
であることに気づき、慌ててトロンをコンソールの上にそっとおろした。
「あ~、大丈夫、トロン?」
 さすがに気まずく、あたしは愛想笑いを浮かべる。
『それにしても、時間に厳しい隣どのにしては珍しいでござるな。どこかで事故にでも巻
き込まれたのではないかと、美佐緒どのと心配していたところでござるよ』
 苦笑しながらガーネットが話しかけてくる。
「本当にごめん、ガーネット。トロンのやつがなかなか起きなくて遅れちゃったのが一番
の原因なんだけど、一階で変な男の人に呼び止められちゃって」
『なんとっ?』
「それでケガとかはしなかったんですか、せんぱい?」
 トロンを介抱していたガーネットと、まだ足を押さえて飛び回っていた美佐緒が驚いた
様子で尋ねてきた。ふたりの心配そうな顔に、少しだけ機嫌をよくしたあたしはニコリと
微笑んだ。
「ありがとう。あたしなら……」
『「いや、そうじゃなくて相手の身体の方が……」』
「あーそう! あたしなんて心配するに値しないってことよね? どうせあたしは、ヒグ
マと戦ってもケガひとつしないだろうとか、あんたたちそう思ってるんでしょう?」
『「あははははは」』
 ひきつった笑顔で声をそろえて笑うふたりに、そこは否定するとこだろう? と心の中
でツッコミを入れながら、あたしはますます不機嫌になっていく。
『それにしてモ、ずいぶんと混んでるネ。今日はなんかあるノ、ガンちゃん?』
 自己修復機能でも内蔵しているのか、いつのまにか完全復活したトロンがコンソールの
上にペタンと座り込み、ねむそうな顔で大あくびをしながらつぶやいた。
「あっ、そのこと?」
 殺意のこもったあたしの視線を受け、頭から冷水をかけられたかのように汗まみれにな
っていたふたりだが、トロンの一言に地獄に仏といった顔で美佐緒が説明を始めた。
 この人だかりは、レスティーアの戦いでトロンに興味をもった神姫やそのオーナーたち
が、トロンがガーネットと一戦交えるという噂を聞きつけ集まった結果らしい。
 おそらくこのギャラリーの何割かは、トロン云々よりもガーネットがトロンを対戦相手
に選んだという事に関心をもったんだと思う。
 あたしは、みるみる怒りが引いていくのを感じながら、胸中に渦巻く疑問に思いを馳せ
ていた。
 
    何故、ほとんど戦わないガーネットがトロンを対戦相手に選んだのか? 
 
 ガーネットはレスティーアとトロンの戦いを知り、トロンに興味を持ったと言った。で
も、本当にそれだけなのだろうか?
 あたしから武術を習い始めたとはいえ、トロンの腕前はまだまだ未熟だ。あのレスティ
ーアすら勝てなかったガーネットが相手では、とても太刀打ちできるレベルではないだろ
う。
 あたしはこれから始まる激戦に、身が引き締まる思いだった。
 視線を移すと、さすがのトロンも肌で感じるのか身動きひとつせず、ガーネットを見つ
めて……ん?
「おいっ! 起きろ!!」
『んア?』
 あたしの怒声にビクンと身体を震わせると、口元を伝わり流れ落ちるヨダレをぬぐいな
がら、なんとも締まりのない顔を上げる。
『ふァ~、いい気分で寝てたの二。なんの用なのサ、リン?』
「何の用? じゃないでしょう! あんた緊張感なさすぎなのよ!」
 
           ダ、ダメだ。このままじゃ、ガーネットに瞬殺される
  わけがわからずキョトンとしているトロンを前に、両手で頭を抱えるようにしてあたし
はうずくまってしまった。
『ははは、戦いを前にしてその豪胆さ、拙者ますます楽しみでござるよ。では、そろそろ
戦いを始めるでござるか? 隣どの、トロンどの』
 そう言うと、カラカラと笑いながら、ガーネットは自分たちのコンソールへと向かって
行く。
 
 いや、ガーネット。トロンは別に豪胆じゃなくて、ただ空気読めないだけだから…… 
 
 心のなかでそうガーネットにツッコむあたしだったが、無論ガーネットが気づくはずも
なかった。
 楽しそうに去っていくガーネットの後ろ姿を目で追いながら、この先の戦いに絶望的な
気分になったが、気持ちを切り替えるとトロンの方を振り向いた。
「はぁ。じゃあ、あたしたちもそろそろ用意をって……あれ?」
 そこには鼻歌まじりでアーマーを装着しているトロンの姿があった。
「あんたいつの間に……それにしてもずいぶんとご機嫌ね?」
『まあね』
 先日この店で購入したバッフェバニーのアーマーをつけ終え、立ち上がりながら異常が
ないかチェックを始めたトロンが、言葉少なめに答える。その姿は、つい少し前までの倦
怠感をまとわせていた、あたしのよく知るいつもの寝ぼけ悪魔ではなった。
 爛々と輝く双眸は金色に彩られ、口元は歓喜に満ちた笑みを形作る。少しハスキーな
口調もまるで別人のようだった。
「ねぇトロン。あんたひょっとして、ガーネットの噂を知ってたの?」
 あたしとは対照的に、気落ちしたようでもなく、ガーネット以上に嬉々とした様子のト
ロンを見ていて、思わず胸に湧き上がった疑問を口にした。
『ううん。さすがにガンちゃんがそんな大物だったとは、ボクも知らなかったけど、ガン
ちゃんが強いのは知ってたよ』
 ウォーミングアップのつもりか、屈伸を始めながらトロンが軽い調子で答えたのに、あ
たしは驚いた。
「知ってたって、なんでそんなことがあんたにわかったの?」
『ガンちゃんは、レスPと同じ匂いがしたからね』
「におい?」
 まったく要領を得ないトロンの答えに怪訝な顔をしていると、大きく伸びをしていたト
ロンが、イタズラっぽい笑みを浮かべながらあたしを見つめ、こう言った。
 
『そう。強い神姫だけがもつ、あの“匂い”がね』
 
                          ※
                  
                    そこは死の世界だった。
 
 生きる物の気配ひとつなく、ただ、静寂のみが全てをむなしく覆っている。
 無数にそびえ立つ石柱も、かつての面影を残す物はほとんどなく、大半が傾き崩れてい
る。ときおり石柱のあいだを吹き抜けていく風の音は、まるで人知れず忘れられ、静かに
滅び待つ者たちの怨嗟の声のようだった。
 
 この風化し、滅び行く遺跡になかに、音もなく立つ人影がふたつ。
 ひとつは、黒光りするヴァッフェバニーのアーマーを身に纏ったトロン。
 そして、もうひとつの人影は……
『やっぱりガンちゃん、あの格好で戦う気なのかな?』
「そうみたいね」
 呆れたような口ぶりのトロンに、あたしもまったく同じ想いを抱きながら応じた。
 てっきり、紅緒のデェフォルトである甲冑でも装備してくるものと思っていたのに、ト
ロンの目の前にすっくと立ちつくすガーネットの姿は、店内で話をしていた時と寸分変わ
らぬゴスロリルックだった。
 艶やかな黒髪を、巨大なリボンでツインテールに結わえ、身に着けた黒を基調としたゴ
シックドレスは、悪趣味なほど大量のフリルで飾り立てられている。
「あ、あのさぁガーネット、その格好で大丈夫なの?」
『ふっ、心配は無用でござるよ、隣どの。これが拙者のでふぉるとでござる!』
 あまりに緊迫感に欠けるガーネットの姿に尋ねてみるが、当の本人は気にした様子もみ
せず胸をはって答える。うしろで手をたたいて喜んでいる美佐緒を一瞥しながらあたしは
呆れてため息をつく。
「心配無用って、あんなヒールの高い皮のブーツで動けるの……ん?」
 違和感炸裂っぷりのガーネットを頭から眺めていたあたしは、ガーネットの腰のあたり
で目を細める。
 細くくびれたガーネットの腰には、左右それぞれに一振りづつの日本刀が、皮のベルト
に吊るされていた。
『ん。あの刀がどうかしたの、リン?』
 あたしの視線から、目ざとく目的の物を探し当てたトロンが怪訝そうな声で聞いてきた。
 トロンの言いたいことはあたしにもわかってるつもりだ。侍型の神姫であるガーネット
が刀を武器にするのは当然のことだろう。
 そしてガーネットが二刀流の使い手であったとしても、別におかしいことは何もないだ
ろう。
「でも、あの刀の長さは……」
 あたしの口からもれたつぶやきは、戦いの刻を告げる電子音にかき消された。
 
そして、ガーネットの姿が陽炎のように揺らめいた。
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コメント


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遂にガーネットとトロンの戦いが始まりましたねぇ。
会場入りするのに邪魔が入り、入ったら入ったで邪魔が入るのは、今後もデフォルトになりそうな雰囲気がw

そして、刃狼ことガーネットさんの戦いぶりがどうなるのか気になりますね。
開始寸前に気付いた刀の長さも、どう戦いに関わってくるのかも楽しみです。
(刀の長さ&2刀で少々浮かんだ物があるけど、黙っておいた方が良さそうなので、口チャックw)

続きも楽しみに待ってま~す。

ASUR・A | URL | 2012-04-30(Mon)18:47 [編集]


>ASUR・Aさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうごございます。

いや~、すぐに話が豪快に逸れていくのは私の悪い癖でして……ですが、ストーリーがダレない程度に今後もデフォルト化したいと思います(笑)。

トロンVSガーネット。いよいよ、二人の戦いの火蓋が切って落とされました。とはいえ、二人の実力の差は歴然! はたして、悪知恵悪魔の奸計がどこまで歴戦の古強者に通用するのか? 
ここらへんを楽しんでもらえれば、と思います。

ガーネットの二刀流。おそらくASUR・Aさんが考えているほどたいしたことはないかもしれませんが、ま、まあ、乞うご期待、と申し上げておきます(汗)。

シロ | URL | 2012-05-01(Tue)20:20 [編集]


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