神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 第20話

 
予定通りって……じゃあ、さっきのは全部トロンのお芝居ってことなの?
 
 あたしはガーネットの言葉の意味がわからず、唖然としながらフィールドに視線を移
した。トロンは少し皮肉のこもったガーネットの声を聞くと、おおげさなまでのジェスチャ
ーをピタリと止め、金色の瞳でジロリとガーネットを睨みつける。
『やれやれ、全部お見通しというわけか……やりにくいねぇ……』
 トロンは唇を尖らせながらつまらなそうに呟くと、ガーネットを見つめたまま、足元に
転がっていた物を器用に爪先でひっかけ真上に蹴り上げた。
 それはさっきあたしがトロンに頼まれ、フィールドに転送してトロンの頭を直撃した
武器。レスティーア戦で使ったシュラム・リボルビンググレネードランチャーだった。
『ガンちゃんは、さあっ!!』
クルクルと回転するグレネードランチャーのグリップをがっしりと握り締めると、トロン
は一瞬のためらいもみせずトリガーを引き絞った。
 
                   わんだふる神姫ライフ
 
             第20話  「刃狼 そのよん」
 
 唸りをあげ、白煙の尾を引きながらグレネード弾がガーネットめがけて突き進む。だが
ガーネットの身体が一瞬ブレると、トロンの必殺の闘志を込めた一撃は彼女をすり抜け、
背後の石柱に直撃する。
 直後に起こる爆発を背に、ガーネットは一気にトロンに切りかかる。トロンは短く舌打
ちをすると、ガーネットの刃を転がりながら避け、立て続けにグレネード弾を発射した。
 二発、三発。だがその全てがガーネットの驚異的な見切りと移動能力によって、ことご
とくかわされてしまう。
「まずいわね……」
 あたしは苦々しくつぶやきながら、目の前で起きている光景に注視した。
 本来ならビーム系の武器と違い、火薬を使用した実弾系であるグレネードランチャーは、
直撃しなくともその爆風で相手にダメージを与えることができる。
 だがガーネットは、その都度柱の影に身を潜ませ、自身が受けるダメージを最小限に抑
えている。あたしは今更ながら、ガーネットの経験からくる判断能力の高さに舌を巻いて
いた。
『くそっ』
 トロンは忌々しそうにグレネードランチャーのトリガーを引き続けるが、その攻撃は虚
しく石柱を崩し、地面に大穴を穿つだけだった。
『よく狙ってから撃ったほうがいいでござるよ、トロンどの。拙者の記憶に間違いがなけ
れば、残弾はあと一発のはずでござるからな』
 間一髪で迫りくる銀光をかわしたトロンに、大きく刀を振りぬいた体勢でガーネットが
静かにつぶやく。
『それはどうもご丁寧に。でも、弾は一発あれば充分なんでね』
 あらかた破壊つくされたフィールド内に残った石柱のなかでも、もっとも巨大な柱を背
にしながらトロンが不適な笑みを浮かべる。
 せっかく用意したグレネードもまるで役に立たず、気落ちしているかと思いや、まるで
そんな素振りもみせないトロン。これがハッタリならばこの戦いはこれまでだろう。でも
トロンの瞳はまだ戦意を失ってはいない。
「がんばって、ガーネット! これで人目をはばからず、せんぱいとラブラブな関係に…
…あ痛っ!?」
 対戦席まではかなりの距離があったが、怒りがそれを補ったんだろう。身体をくねらせ
ながら良からぬ妄想を始めた美佐緒のひたいに、あたしの投げつけたインカムが見事に
ヒットし、巨体がシートの後ろに消えた。
 トロンたちはその光景を見て呆気にとられていたが、気を取り直したガーネットが大き
な咳払いをひとつする。
『それでこそトロンどの。では、その“策”とやらを見せてもらうでござる!』
 ガーネットもまた、あたしと同じ考えだったのだろう。自身に狙いを定めているグレネ
ードランチャーの銃口を気にした風もなく、トロンとの距離を一気に詰める。
 トロンは、無防備で自分に走りよってくるガーネットにわずかに目を細めると、最後の
グレネード弾を発射した。
               よりにもよって背後の石柱に……
「『なっ?』」
 あたしとガーネットの口から同時に同じ言葉が漏れる。至近距離で起こった巨大な火球
を背に、その爆風で加速されたトロンが猛烈な勢いでガーネットに迫る。
 『くっ、だが、まだ……!?』
 トロンとは対象的に、爆風によってバランスを崩したガーネットだったが、それでも右
の刀に手を当てトロンを迎え撃とうとするが、自分に巨大な影が覆いかぶさろうとしてい
るのに気づき、思わず上を見上げたガーネットの瞳が大きく見開かれる。
 それはトロンが破壊した石柱の一部だった。短い舌打ちの後、ガーネットの右手が一条
の銀線と化す。見事に両断された石柱にはもう目もくれず、前方に視線を移したガーネッ
トに黒い影が迫る。
 反射的に放った左手の二ノ太刀が眼前に迫る物を見事に切り裂いた。そう、トロンが投
げつけたグレネードランチャーを。
『うおおおっ───っ!』
 死剣と化した両手の刀を振りぬいた姿で無防備と化したガーネットの胸元に、雄たけび
をあげながらトロンが突き進む。
『ぐふっ!?』
 トロンが自分の胸に飛び込んできた衝撃とは別に、焼け付くような痛みにガーネットは
端整な顔立ちを歪める。ゆっくりと視線を移すと、そこには胸元に柄までめり込んだ大振
りなナイフと、自分を見つめる金色の瞳が映った。
『み、見事でござるな。ト、トロンどの』
『ま、まあね。でも……ボクもちょっと、む、無茶しすぎた…かな?』
 苦痛に顔を歪ませながら、苦笑するトロンを見て、あたしは両手を口に当てたまま声も
でなかった。
グレネード弾の爆発をすぐそばで受けたトロンの背中はボロボロだった。アーマーの背
部はズタズタに引き裂かれほとんど原型を留めておらず、剥き出しになったトロンの背中
には大小様々な石柱の破片が突き刺さり、無残な姿をさらしていた。
 ガーネットの斬激を受け、首元に巻いていた布も吹き飛び、トロンの首元から噴出す赤
い液体がアーマーを伝い、みるみる地面に溜まっていく。
『だがっ!!』
 ボロボロになっても気丈に振舞うトロンにガーネットが一瞬相好を崩すが、すぐに厳し
い顔になると、トロンに強烈なひざ蹴りを放った。大きくバランスを崩したトロンに、ガ
ーネットは右手に握った刀の柄でトロンの頬を殴り飛ばす。
『まだまだ詰めが甘いっ! この立ち合い、拙者の勝ちでござるな』
 ものすごい勢いで吹き飛ばされ地面に大の字になっているトロンに、苦痛に顔をしかめ
ながら抜き取ったナイフをトロンの足元に放ると、漆黒のドレスの裾を棚引かせながら毅
然とした足取りでガーネットはトロンに近づいていく。
 おそらくトロンは、今の一撃でガーネットのCSCを破壊してクリティカルダメージを狙っ
たんだろう。でも結果としては、あの見切りの前に紙一重でかわされてしまい、思った
ほどのダメージをガーネットに与える事ができなかった。むしろグレネードの爆発を至
近距離で受けたトロンのほうが、結果として大きなダメージを受ける羽目になってしまっ
た。
 ガーネットの接近に気づいたトロンが、手の甲で口元を拭いながら緩慢な動きで身を起
こす。さすがのトロンも万策尽きたのか、痛みも忘れ悔しそうな表情を浮かべる。
 だが、ガーネットはトロンまであと僅かという所で突然片膝をつくと、そのままの体勢
で動かなくなってしまった。
 どうしたものかと頭を抱え、無い知恵を絞っていたあたしの動きがピタリと止まった。
トロンも怪訝な表情を浮かべている。
 ガーネットは苦痛に顔を歪めながら、震える右手を悔しそうに見つめている。
 あたしはそれを見て、ガーネットがさっきトロンに反撃しようとしたのに、右手に視線
を走らせ攻撃を中止してしまったのを思いだした。
「どうしたの、ガーネット? まさか、もう“時間”がきたの?」
 ようやく起き上がってきた美佐緒が、ひたいをさすりながら硬い声で話しかける。
『だ、大丈夫でござるよ、美佐緒どの。拙者、まだ戦えるでござる』
 珍しく、慌てたような素振りをみせる美佐緒に、優しく笑いかけるガーネット。そんな
彼女に、美佐緒は心底心配そうな表情をみせる。
 
それにしても“時間”っていったい……
 
『くっ、ガンちゃん……キミは…』
 何かを悟ったかのように小さく呟き、全身を襲う激痛に眉をひそめながらヨロヨロと立
ち上がるトロンの姿に、あたしの思考は中断された。
『無様なところを見せて申し訳なかったでござる、トロンどの。お詫びと言ってはなんだ
が、拙者の最大の技をお見せするでござる!』
 微かなうめき声を上げながら立ち上がるガーネット。だが、その唇に不敵な笑みを浮か
べると、震える右手で無理矢理刀の柄を握り締める。
「な、何これ?」
 あたしは、ガーネットの周りの空気がみるみる彼女の右手に……ううん、その手に握ら
れた刀身に凝縮していくのを確かに感じた。トロンも只ならぬ雰囲気を肌で感じ取ってい
るのか、食い入る様な視線をガーネットに投げかけている。
 
『秘剣! 刃狼──ッ!!』
 
 ガーネットは自分に付けられた二つ名と同じ名を叫ぶと、ふたりを隔てる距離はかなり
あるにもかかわらず、裂帛の気合と共に一気に刀を抜き放った。
 
 それは“狼”だった。ガーネットの放った斬戟が、辺りの空気を巻き込みながら巨大な
狼を形作り、トロンめがけて襲いかかる。
『なっ? う、うわああああああっ!』
 予想もしなかったガーネットの一撃に逃げる事もかなわず、トロンは烈風の狼の巨大な
咢に銜え込まれると、そのまま背後にあった石柱に猛烈な勢いで叩きつけられた。
『がはっ!!』
 深々と石柱にめり込むトロン。その衝撃に耐え切れず、無数のヒビを浮かびあがらせた
石柱が轟音をあげて崩れ去る。
「トロ───ンッ!!」
 シートを倒さん勢いで立ち上がったあたしは、思わず声の限りに叫んでいた。だが、唯
一残った石柱の根元に力なく両足を投げ出しているようにみえたトロンは、あたしの声に
もまるで反応しなかった。
 ディスプレーに表示されているトロンのLPは0になっていた。
 あたしは唇を噛み締めながら頭上の電光掲示板に視線を移したが、そこには思いもしな
い結果が映し出されていた。
 
                    ───Draw game───
 
 意味がわからずポカンとしていたあたしは、美佐緒の悲鳴にも近い金切り声に我に返る
と、慌ててフィールドを見返した。
「ガ、ガーネット!?」
 
 そこには刀を握り締めたまま倒れ付し、トロンと同様にピクリとも動かないガーネット
の姿があった。
     
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コメント


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怒涛の展開!?

まだ何かひと波乱ありそうな予感がするので、コメントは次回に(笑)

楽しみすぎてツライ・・・あと、初代ストラーフが欲しくなりましたねー

初瀬那珂 | URL | 2012-05-24(Thu)00:41 [編集]


>初瀬那珂さん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

長々と続いた対ガーネット戦、お付き合い頂きありがとうございました。
もう一波乱! というほどでもありませんが、このエピソード、もう少し続きますので次回もお付き合いいただければと思います。

初代ストラーフ……そういえば、初瀬さんのところは何気に白子率のほうが高いですよね?
いいですぞぉ、黒子も! まぁ、ウチのトロンみたいのだったら止めておいたほうがいいと思いますが(笑)。

シロ | URL | 2012-05-25(Fri)06:32 [編集]


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