神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 第22話

「じゃあ、またDO ITに行くわけ?」
『うン!』
 制服の胸ポケットから聞こえる、やる気と眠気の入り混じった声に、あたしは内心ため
息をつきながら、とりあえずDO ITへの道をトボトボと歩き始めた。
 
 ガーネットとの激闘の後、トロンは急にバトルをやりたがるようになってきたのだが、
正直シュミレーターを使うのだってタダじゃないわけで、休日といわず学校帰りにまで戦
いたがるトロンのおかげで日増しに軽くなっていく財布とは対照的に、あたしの心は重く
なっていく一方だった。
『ひっく、えっ……』
「あれ、いま声が聞こえなかった、トロン?」
 微かな泣き声のようなものが聞こえ、あたしは辺りを見回した。
『う~ン、声~。……そんなのしないジャン。また怪しい電波でも受信したノ、リン?』
「おまえと一緒にするなっ! おっかしいなあ~、確かに今……あれっ?」
 まるで興味がなさそうに答えるトロンを一喝しながら、キョロキョロと周りを伺ってい
たあたしは、近くの電柱の陰で小さく縮こまって泣いている紅白に彩られた小さな影に気
がついた。
「これって……神姫?」
 
                   わんだふる神姫ライフ
 
              第22話   「バトル和尚」
 
『あぁ、わたくしは何と運がいいのでしょうか。これも御仏のお導きですわ』
「はぁ、そうですか……」
 あたしはさっきまでとは打って変わって満面の笑みを浮かべる神姫に、言葉少なめに答
えながら肩の上にチョコンと立っているその姿に見入っていた。
 朱色に塗られた大型のフロートパーツに白一色で統一された上半身の装備は、まるで巫
女さんみたいに見える妙な神姫だった。
『あ、そうそう、申し遅れました。わたくし、睦月と申します。この先にある真木寺でお世話に
なっている者でして……』
 それにしてもこんなタイプの神姫なんていたかな? あたしは目の前の巫女型の神姫を
まじまじと見ながらそんな事を考えていたが、睦月の一言で我に返った。
「真木寺って、あんた、和尚さんの神姫なの?」
 睦月の言葉に、あたしは愕然としてしまった。
『あらあら、まあまあ。あなた様は和尚様のお知り合いなのですか?』 
 ぽんっ、と胸の前で両手を打ち鳴らし、破顔する睦月にうなずきながら、あたしは驚きを
隠せなかった。和尚さんは近くの山中にある真木寺の住職なんだけど、聖職者にあるまじ
き戦闘能力の持ち主で、あたしのおじいちゃんが唯一終生のライバルと認めたほどの人物
であったりする。
「それにしてもあの和尚さんが神姫をねぇ。ひとり暮らしが長いから寂しく……ん?」
 胸のあたりに妙な振動を感じて胸ポケットに視線を移すと、マラリアにでも感染したのか
と思うほど、トロンがガクガクと上下に激しく震えていた。
『お寺に巫女……す、すごイ、すごいヨ! これがホントの神仏習合だよネ、リン?』
「……あんた、神仏習合の意味わかってる?」
 とりあえずツッコんでみたが、あたしの言葉などアウトオブイヤー状態のトロンに届く
はずもなく、大きなため息をついていると、今度はあたしの肩のほうでプルプルと震える
感触が伝わってくる。
 なんだか今日はあちこち揉み解される日ね、などと思い何気なく睦月を見ると、さっき
までの明るさがウソのように消え、青ざめ不安そうに辺りに視線を送っていた。
「どうしたの睦月? 顔色わるいわよ?」
『は、はい。あの、感じるんです! 邪悪な気配を!!』
 心配になって尋ねてみるが、睦月はあちこちに視線を投げかけるだけで、あたしの方を
見ようともしなかった。
「邪悪? トロンだったらここにいるわよ?」
『しつれいだナ~、ボクのどこが邪悪なワケ?』
 反射的に指差した先で、この地球上でもっとも邪悪な存在が、自分の立場もわきまえず
ムッとした顔で反論してきた。
「うるさい! 己の胸に手を当てて聞いてみろ!」
 自分の胸に手を当て、しきりに首をかしげているトロンをそのままにして、あたしは睦
月に向き直った。
『違うんです。わたくしの邪悪探知機に感じるものは、もっと巨大で忌まわしい存在なの
です!』
「た、探知機?」
 指し示された睦月の頭に目をやると、そこには巨大なアホ毛がクネクネとのたうってい
た、って言うか、ものすごく気味悪いんだけどソレ。
『はっ、感じます! あなたの後ろに!!』
 バッと背後を指差す睦月に、驚いたあたしも反射的に振り返る。
「あ?」
 あたしの見上げる先には、夕日を背に大きく両手を広げ、今まさにあたしに抱きつこう
としていた美佐緒が立ち尽くしていた。
 
す、すごいよ睦月……その探知機、本物だ!
 
                ※
「ぶ~、失礼しちゃうなあ。わたしちっとも邪悪なんかじゃないもん! ねぇ、ガーネッ
ト?」
 巣篭もり前のリスもここまでは、と思うくらい頬を膨らませた美佐緒が、頭にできた特
大のこぶを擦りながら恨みがましい眼であたしを見ると、肩の上で豪華絢爛な花魁の
衣装に身を包んだガーネットに同意を求める。
『そ、そうでござるな……だ、大丈夫でござるよ、美佐緒どの。何があろうと拙者は美佐
緒どのの味方でござる!』
 
                   ナイスッ! ガーネット!!
 
 やんわりと美佐緒の問いを否定するガーネットに、あたしは最大の賛辞を込めて、心の
なかで親指を立てる。
 
『あ、隣どのにトロンどの。先日はご迷惑をお掛けしたでござる。拙者、このご恩は一生
忘れないでござる!』
「もう、いいって言ったでしょう? これで何回目? ガーネット」
 あたしと目が合うと、櫛やら簪やらが大量に突き刺さった頭を深々と下げ、お礼を言う
ガーネットの律儀さにあたしは苦笑いを浮かべた。
 実際、トロンとの戦いの翌日、校門の前であたしたちを待っていたガーネットに数十分
にも及ぶ御礼の口上を受けたのだが(当然、あたしと美佐緒は遅刻して、担任に大目玉を
くらう事になったのだが……)それでも納得できなかったのか、出会うたびに感謝の気持
を表すガーネットに少しばかり辟易していたが、これもガーネットの性格だと半分諦めて
いたところだった。
『それにしてもさァ。ガンちゃん、そのヘンな恰好なんとかしたラ?』
 ひとり延々と話を続けるガーネットに、胸ポケットから呆れたような口調でトロンが話
しかける。
『はっはっはっ、何をおっしゃるトロンどの。これこそ拙者の鎧でござるよ』
 一瞬、意外そうな表情をしたガーネットだったが、腰に手を当て豪快に笑いながら、ト
ロンの言葉を一蹴する。
 
いや、言っちゃなんだけど、そんな、はんなりとした鎧なんてないって。
 
 とりあえず、心の中で一発ツッコミを入れてみたが、これまた当然のことだがガーネッ
トに届くことはなかった。
「ぶー、ぶー、みんなわたしのこと無視してる~。せんぱい、わたし邪悪なんかじゃあり
ませんよねぇ?」
「……試しにあんたも自分の胸に聞いてみたら?」
 眉根を寄せて不満そうにあたしに聞いてくる美佐緒に、一応好意でアドバイスしてみる
が、どうせ無駄だろうとソッポを向いたあたしの手が急に摑まれると、暖かくも柔らかい
モノにギュッと押し付けられた。
「な、ななな?」
 慌てて振り向くと、美佐緒はあたしの手を自分の胸に押し当て、ニコニコとしている。
「どうですか、せんぱい。わたしの想い、伝わりましたか?」
 シレッと聞いてくる美佐緒の能天気な声も、あたしの掌に納まりきらない質量に唖然と
したあたしの耳に聞こえる筈がなかった。
 
 そりゃあ、美佐緒の胸が大きいのは知ってたけど、な、なんなの? この不必要な大き
さ! 無駄なボリューム!! 一体、何を食べたらこんなになるのよ? ……ち、ちくし
ょうっ!
 
                    あっ、なんか涙でてきた。
 
 いまさらながら美佐緒の巨乳っぷりに愕然としながら悔し涙に頬を濡らしていると、あ
たしの頭上から苦しそうな声が聞こえてきた。
「せんぱい…痛い…」
「へ? あ、ごめん!」
 あたしはいつのまにか美佐緒の胸に爪を立てていたのに気づき、慌てて手を離そうとし
たが、おそるべきスピードでその手を美佐緒に摑まれ、前にも倍する力で美佐緒の乳房に
押し当てられた。
「いや、やめちゃあ……あんっ、もっと…強くぅ…」
「…………」
 あたしは可愛い後輩の願いを叶えるべく、大きく息を吸い込むと、掌のなかの肉のカタ
マリを全力全開で捻ってやった。
                            ※
「さて、と。おまたせ睦月。邪悪な存在もあたしが退治したことだし、あとは真木寺まで
送ればいいのかな?」
 路上にしゃがみ込んで、プルプルと身体を震わせている美佐緒を冷酷な瞳で見下ろしな
ながら、あたしは妙に晴れ晴れとした気分で手をはたくと、睦月の方に振り向いた。
『エ~ッ、そんなコトしてたラ、ボクがバトルする時間がなくなるじゃないカ!』
「んなこと言ったってこのままDO ITに行っちゃったら真木寺に行けないでしょう?
和尚さんだって睦月がいなくなってきっと心配してるだろうし、今日のところはあんたが
我慢しなさいよ!」
 この期に及んで自分のことしか考えず、ゴネるトロンに少しムッとしたあたしが文句を言
うと、あたしの肩の上で黙って話を聞いていた睦月が慌てた様子であたしたちの間に割
って入ってきた。
『あらあら、まあまあ、ケンカはおよしになってください……はて? どぅーいっと?
……あっ! 思い出しましたわ』
 いつの間にかひとりでブツブツとつぶやいていた睦月が、うれしそうに胸元で両手を打
ち鳴らす。急に耳元で音がしたため、驚いたあたしの動きに睦月はバランスを崩し、その
まま地面に落下してしまった。
「ちょっと! 大丈夫、睦月?」
 慌ててあたしが地面から睦月を拾い上げると、最初は何が起きたのか理解できずキョト
ンとしていた睦月だが、あたしと目が合うと愁眉を開いて微笑んだ。
『はい。 あの~、実はわたくし、和尚様とそのどぅーいっととか言う所に向かう途中だっ
たのですわ』
「はぁ?」
 思いもしない睦月の行き先に、あたしが惚けた声で答えたのは、きっかり一分が経過し
た後だった。
                            ※
「じゃあ、この娘はあの真木寺の神姫だったんですか、せんぱい?」
「まあね」
 とりあえずあたしたちと睦月の目的地が同じとわかった以上、往来に突っ立ってても周
りの迷惑だと気づき、再びDO ITへと歩き始めたあたしの背後で、いつの間にか復活し
た美佐緒がまるで痛みを感じさせない朗らかな声で話しかけてきた。
「で、なんであんたまでついてくるわけ?」
「えへへ、それはせんぱいとわたしは一心同体だからですよ♪」

 無言でこめかみに手を当てるあたしに、気にした風もなく美佐緒がにこやかに答える。
『と言っても、今日は習い事のある日でござるよ? 美佐緒どの』
「ぶー、わかってるってばー!」
 早く習い事の時間がこないかなあ~、などと考えるあたしの横で、頬を膨らませガーネ
ットに文句を言っていた美佐緒が、何かを思い出したのか、あたしに話しかけてきた。
「でも、昔お祖父様に連れられて一度だけ真木寺に行ったことがあるんですけど、なんか
本堂とかもボロボロで、子供のころは廃寺かと思ってたんですけどね~」
 唇に指を当てながら思い出にひたっていた美佐緒が、なにを思ったのかニンマリと笑み
を浮かべると、あたしのすぐそばまで顔を近づけヒソヒソと話し始めた。
「そういえば知ってますか、せんぱい? あのお寺に伝わる怪談を……」
「はあ? なによ怪談って、幽霊でも出るっていうの?」
 まるでそういった話に興味のないあたしは、美佐緒のほうに顔も向けずDO ITへの道
を急いだ。
 
だいたい、あんなところに幽霊なんて出て何しようっていうのよ。和尚さん見て、裸足
で逃げてくのが関の山でしょう?
 
「違うんですよ~、せんぱい。真木寺から、時々鐘の音が聞こえますよね?」
「そりゃあ、鐘の音ぐらい聞こえるでしょう? お寺なんだから。それのどこが怪談なの
よ?」
 そういえば幽霊って足なかったわよね~、などと、どうでもいいことを考えながら上の
空だったあたしは、次に美佐緒の口をついて出た言葉にピタリと動きを止めてしまった。
「そこなんですよ~。あの時はわたしもまだ小さかったけど子供心に不思議だな~って思
って覚えてたんですよ。鐘はあっても鐘突き棒はなかったんですよ、あのお寺? でも、
そこから鐘の音が響く……これってミステリーだと思いませんか、せんぱい?」
 道の真ん中で固まったままピクリとも動かないあたしを見て、美佐緒が口に手を当て笑
っていたが、別にあたしは怖くて金縛りになってるわけじゃない。あたしだけが美佐緒の
言う怪談の真相を知ってるからだ。
 あの鐘の音の正体は、和尚さん自らが鐘突き棒と化して鳴らしているのだった。あたし
が子供のころ、おじいちゃんが和尚さんと立ち合いをするというので一緒について行くと、
ウォームアップ代わりに、正拳突きや蹴りであの鐘を鳴らしてたのをこの目で見たので間
違いはない!
 
                 でも、こんな話、誰が信じてくれる?
 
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巫女さん型・・・なんだか旧fgで見かけたような気が・・・あの子かしらん?

いやー、ガンちゃんが元気そうで何よりです!そろそろ、シロさんご謹製のガンちゃんが見られる頃かなーとワクワクしている初瀬那珂です。

それにしても、PCで文章読むのってなんだか大変ですよね。そのうちプリントアウトしてジックリ読もうと思っています・・・すみずみまで(笑)

初瀬那珂 | URL | 2012-06-06(Wed)00:25 [編集]


>初瀬那珂さん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

巫女型神姫。ええ、以前fgに投稿したアレだったりします。
せっかく作ったのでSSに、と思い登場させてみました。睦月には、この後、重要な役割を担ってもらう予定です(笑)。

たしかにPCなどに表示された文字って、なにか読みづらいんですよねぇ。
私も、はじめて横書きの文章を見た時、かなり違和感を感じましたしね。

あ、あはは。ガーネットの立体化……デスカ?
タダイマ、エイイセイサクチュウデスノデ、キナガニオマチクダサイ(汗)。

シロ | URL | 2012-06-06(Wed)07:09 [編集]


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