神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 第4話

「はぁ、はぁ、ふぅ。 あ~、何とか間に合った。まったく、それもこれも全部あのバカ
悪魔のせいなんだから!」
 あたしは校門をくぐり抜けると、ようやく全力疾走を止め、乱れた呼吸を整えようと怒
力する。子供の頃から、祖父に我流の武術の手ほどきを受けていたせいか、荒かった
息も何度か深呼吸をするうちにみるみる正常に戻ってきた。
 腕時計に目をやると、始業までにはまだ少し時間があった。
「まったくもぅ!」
あたしはブツブツと言いながら、いつものように校舎から少し離れた学食の前の、自
動販売機へと向かった。
 自販機のリーダーにカードを通すと、無意識のうちにいつものボタンを押していた。あ
たしは受け取り口に落ちてきたモノを拾い上げると、まじまじと見つめた。
 四角い紙パックの表面には、<超特濃 10・8牛乳>と印刷されている。
「あのバカ悪魔、なにが人の胸を見て『背中?』よ。ホント失礼しちゃう! あたしだって、
こうして人知れず努力してんだからね!!」
寝ぼけ顔でニヤニヤ笑いを浮かべるトロンの顔が、あたしの脳裏に甦る。
 怒りのあまり牛乳を持つ手がぷるぷると震え、なかなか狙いが定まらなかったが、なん
とか差込口にストローを突き刺すと、あたしは一気に中身を吸い上げた。
「んふふふっ。 せ~んぱい」
「    ぶっ!    」
 物凄い衝撃とともにいきなり後ろから羽交い絞めにされたあたしは、日々の努力の一つ
であり、渇いた喉を潤すはずの牛乳を盛大に吹き出すはめになってしまった。
 
                  わんだふる神姫ライフ
 
            第4話  「ギガンティックな女」
 
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ」
「や~ん。一ノ瀬せんぱい、大丈夫ですか~?」
「だ、大丈夫なわけないでしょっ!」
 突然うしろから抱きつかれたあたしは、むせ返りながらも、はるか高みから聞こえる声の
主の方をキッと睨みつけた。
「ちょっと美佐緒、いきなり抱きつくの止めてっていつも言ってるで、って言うかいつまで
抱きついてんのよ、あんたは!」
 いつも、ところ構わずいきなり抱きついてくる美佐緒の図々しさにも辟易するが、それより
も同じ女とは思えないこの力。もはや抱きつくと言うより締め上げられている感じに身体中
が悲鳴を上げる。
「だってせんぱい、ちっちゃくって可愛いんだもん」
「くっ、う、うるさい! 大体あんた、後輩のくせに馴れ馴れしいのよ!」
 さらに両腕にこもる力に、思わずあたしは顔をしかめる。
 で、こんな時になんなんだけど、さっきから全力全開であたしを締め上げてるこの人間
版アイアンメイデンの名前は、神代美佐緒。あたしより一つ年下の後輩だったりする。
家が近いせいか、子どもの時から一緒にいることが多く、何故かあたしのことを姉のよ
うに思っているらしくて、事あるごとにあたしに纏わりついて来るようになった。
根は素直だし悪いヤツでは無いと思うんだけど、何と言うかこの美佐緒、変わった性癖
があっ、って、痛たたたたたっ!
 骨の軋む音とそれに伴う痛みのせいで、無事現実世界に帰還したあたしは、この現状を
なんとかしようと再び必死にもがき始めたが、体格差はいかんともし難く、美佐緒の腕は
ピクリとも動かない。
 体格差と言ったがこの場合、身長が140センチぐらいしかないあたしよりも、身の丈が
優に180センチを超える美紗緒の方に問題があると思う。
「ん~。せんぱいって、やっぱりイイ匂い」
 頭上から聞こえてきた妙に熱を帯びた声にギクリとなり、そうっと視線を上に向けると、
いつも二コニコと笑みを絶やさない美佐緒の瞳に怪しい光が宿り始め、吐く息までが荒く
なっていた。
「うふふっ、このままイタズラしちゃおっかなぁ~?」
「……いい加減にしろ! このバカ女!!」
 怪しげな手つきであたしの身体をまさぐりはじめた美佐緒に、とうとう堪忍袋の緒が切
れたあたしは、怒声とともに美佐緒の足の甲を革靴の上から踏み拉だいた。
悲鳴を上げ思わず緩んだ美佐緒の右袖を左手で、ブレザーの襟を右手でつかむと、まる
で美佐緒を背負うようにその内側へと潜り込み、同時に限界まで力を溜め込んでいた右足
を真上に跳ね上げた。
 あたしの視線の端に、状況がわからず、あれっ? という表情をした美佐緒が肩越しに流
れていくのが見えた。直後に大地を揺るがす轟音が聞こえる。
 
ありがとう、おじいちゃん。 おじいちゃんのおかげで、隣は今日も何とか純潔を守る
ことができました……ほんとうにありがとう。
 
 あたしは空を見上げながら、今は亡き祖父に心の底からお礼を言った。
 気のせいか、雲ひとつ無い澄み切った青空に、親指をビシッと立ててさわやかに微笑む
おじいちゃんの姿が見えたような気がした。
「え~ん、痛い、痛い、痛いよ~」
 妄想の世界で1人エンドロールを流していたあたしは、学食の横の広場に青々と生い茂
る芝生の上で、のた打ち回る美佐緒の声に我に返る。
「ふん。このままアスファルトの方に叩きつけられたとしても文句言える立場じゃなかっ
たんだからね。あたしに感謝しなさいよ!」
 あたしは瞳に冷たい光を宿しながら、まだ、ヒィヒィ言っているセクハラ後輩のすぐ横
を続くアスファルトの道をゆっくりと指差した。
 
もちろん、そんなことするつもりは毛頭ないけどね。でも、美佐緒のヤツにはこれぐら
い言ってやってちょうどいい薬なのよ。
 
『い、いやっ、本当にいい加減にするでござるよ、美佐緒どの……』
「え? ガ、ガーネット!?」
 とりあえず美佐緒の落下地点には多少なりとも気をつかったが、さすがにカバンにまで
気が回らず、アスファルトの上に放り出された美佐緒のカバンの中から必死に這い出てく
る小さな人影に驚いたあたしは、慌ててその人影に走りよった。
「ごめん、ガーネット。あたし、気がつかなくって……」
『いやいや、悪いのは隣どのでは無いでござるよ』
優しくガーネットを抱き上げながらも自分の軽率な行動にシュンとしていると、当のガ
ーネットは、軽く頭を振るとニガ笑いを浮かべながら、あたしを慰めてくれた。
 この娘の名前はガーネット。美佐緒の神姫である。タイプは……
「や~ん、せんぱ~い。わたしも身体中痛いの~、ナデナデして~」
「うるさい! あんたはバッチリ受け身取ってたでしょう!」
 あたしですら思わず舌を巻くほどの見事な受け身を取っておきながら、まだ芝の上でご
ろごろと転げまわりながら猫なで声を出している美佐緒を一喝する。
 実際その長身に比して、と言うわけではないだろうが、同い年ぐらいの男子の筋力や反
射神経を軽く凌駕する身体能力を有する美佐緒のことだ、さっきの背負い投げもアスファ
ルトに叩きつけていたとしても、実際大したダメージは受けなかっただろう。
「あ~ん、せんぱいってば~~~ッ」
「……いい加減にしないとグーで殴るわよ?」
「あっ、なんだかわたし、治ったみたいです~」
 この期に及んで芝生にひっくり返ってジタバタしている美佐緒に、こぶしを握りしめなが
ら押し殺した声でつぶやくと、美佐緒のヤツはぴょんと飛び上がると芝生の上に正座して
ニッコリと微笑んだ。
 あたしは盛大にため息をつくと、巨大な後輩から目をそらし再び自販機の方へ歩きだし
た。後ろからは美佐緒が邪悪なオーラを纏わせながらあたしの後ろにピッタリとついてく
るが、こっちも負けじとSATUGAIオーラを全身から放射しているため、さすがに美佐緒
もおとなしくしている。
さっきと同じ品を自販機で買いなおしながら、あたしは美佐緒と向き合った。
「まったく、いい加減にしてよね? あんたのせいで牛乳全部噴出しちゃったじゃないの」
『全ては拙者の不徳の致すところ、本当に申しわけないでござる、隣どの』
 いつのまに移動したのか、美佐緒の肩の上からあたしに向かって頭を下げるガーネット。
妙にしゃちほこばった彼女の態度に、胸のうちに湧き上がってくる笑いをかみ殺すのに
苦労した。でもあたしは、そんなガーネットの性格が嫌いではなかった。
 むしろ生一本の実直さは、あたしの好むところだったし、ガーネットとの出会いが、あたし
が神姫を欲しいと思うようになった理由のひとつだったから。
「そうよ、ガーネット。済んでしまった事をいつまでもクヨクヨしてはダメよ」
 
それに関しては、あたしもまったく同意見だけど、少なくとも美佐緒。災いの元凶たる
あんたの言うセリフじゃない!
 
とりあえず、心の中で美佐緒に鋭いツッコミを入れると、あたしは牛乳を飲むべくスト
ロ―を手に取った。
「あ、そう言えばせんぱい。あの話、その後どうなりました?」
 いきなり話を振られ、あたしのストローを持つ手がピタリと止まった。
「へっ?」
「もう、神姫ですよ。し・ん・き! この間、神姫を買うって言ってたじゃないですか」
『なんと! 隣どのも遂に神姫を購入したでござるか?』
あたしが今、一番触れて欲しくない事柄をピンポイントで聞いてくる美佐緒に、軽い殺
意を覚えながらとりあえず牛乳にストローを挿そうとするが、再び手が震えだし狙いが定
まらない。
「あ~、うん。 かっ、買ったよ。ス、ストラーフを……」
『ほう、ストラーフ・タイプを?』
 とぼけておけばいい物を、バカ正直に答えるあたしの背中に、イヤな汗が伝わり落ちて
いく。
「でも、姿が見えませんね、そのストラーフ……」
「え? ああ、ホラッ! 起動させたばっかりだからね。今日はその、お、お留守番して
るの」
なんとか平静を保とうと牛乳にストローを挿そうとするが、額を流れる汗が目に入り、
パックの穴が歪んで見え、あたしの持つストローは虚しく牛乳パックの表面で聞く者とて
いないモールス信号を発信するだけだった。
「はぁ、そうなんですか……で、せんぱい、その神姫なんて言う名前なんですか?」
「な、名前?」
 あんまりにも、あたしの心の不可侵空域にズケズケと足を踏み入れてくる美佐緒に悪気
は無いとわかってはいるが、一気に殺意が噴き出す。  
 
あ、ストロー刺さった!
 
もはや限界に達した喉の渇きをうるおすために、あたしは一気に牛乳を吸い上げた。
一瞬で中身が空になった紙パックが、手の中でグシャリとひしゃげる。
「え、え~と。 な、名前は……ルシ」
『まい ね~む いズ、ト・ロ・ン!
「    ぶっ!!   」
 
あたしの足元にあったカバン……いうより、地獄の底から響いてきたような寝ぼけ声を
耳にした途端、あたしの口に含んだ本日2本目の牛乳は、美しく輝く陽光を纏わりつかせ
たまま、キラキラと蒼い空を彩っていた。
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コメント


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何というか、トロンの登場は想定内でしたが、後輩の身長や性格は結構想定外だったりw
そして、今だにタイプが分からないガーネットが気になりますねぇ。
シロさんの性格上、そのまま紅緒やフブキを持ってくる事は無いと思っているので、ちょっと捻ってサイフォスかジルタリアとかを予想してみたり。
シャラタンもありえそうだな~w

さて、トロン登場で終わりましたが続きを楽しみに待ってま~す。

ASUR・A | URL | 2012-01-29(Sun)10:53 [編集]


楽しみにしていた続きが上がっているですよ!

美紗緒嬢ですが、バッキバキのムキムキマッチョとかではナイデスヨネ? 以前読んだラノベでそんなのがいたので(笑)

ガーネットさん、ど直球で紅緒型と見たっ!

トロンさんやガーネットさんの立体化にワクワク^^

それでは

初瀬那珂 | URL | 2012-01-29(Sun)22:04 [編集]


>ASUR・Aさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

私の脳内では、隣はかなり小柄という設定だったりします。
おまけに、かなり腕っぷしが強いので、ちょっかいを出しやすくするために
美佐緒を対照的に大柄な娘にしてみました。

ガーネットのタイプは……次回のお楽しみということで(笑)。



>初瀬那珂さん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

ムキムキマッチョな女の子は、私のストライクゾーンにかすりもしないので、ご安心ください。

美佐緒はただの、ムチムチプリ~ン(死語)な女の子です(笑)。

トロンとガーネットの立体化は、少々問題がありまして、ただいま頓挫中だったりしますが
いずれ紹介できると思います。

シロ | URL | 2012-01-29(Sun)23:17 [編集]


はじめまして、宜しくお願いいたします。
体格差百合があまりにも美味しくてコメントせずにいられませんでした。
いいですねーこの先輩後輩!
先輩がちっちゃいとこが萌えますwww
もがいている所見たいwww

ユキナリ | URL | 2012-02-03(Fri)10:45 [編集]


>ユキナリさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

はじめまして、こちらこそよろしくお願いいたします。

実は、私はいままで百合系には食指が動かなかったのですが
今回SSを書いていて、自分の新たな属性に気づきました(笑)。

つたない文ではありますが、これからしばらくの間、お付き合い
頂ければと思います。

シロ | URL | 2012-02-03(Fri)22:27 [編集]


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