神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 第30話

『ぐっ、わぁあああぁ───っ!』
 大気を切り裂きながら突き進む光の矢が、トロンの身体に吸い込まれていく。咄嗟に
回避したため全弾命中という最悪の事態は免れたが、それでも半数近いビームがトロ
ンに命中してしまう。
『くっ!』
 今の攻撃で多くのLPを失ったトロンが、苦痛に顔を歪めながら、がっくりと路上に膝
をつく。
「トロン、大丈夫? しっかりして!」
『まぁ、大丈夫度は38%ってところだけど、くっ、……まだ……闘れるよ』 
 あたしの方を見つめながら気丈に笑いかけると、トロンはよろめきながらもなんとか
立ち上がる。
 それがカラ元気だとわかってはいても、とりあえず胸をなでおろしたあたしは、いまさ
らながら狐姫の実力を過小評価していたことに気がついた。
 そして、あたしが何気なく言った“玉面公主”という名こそ、狐姫に与えられた二つ名
だとは、この時のあたしたちには知る由もなかった。
 
                       わんだふる神姫ライフ
 
                第30話  「玉面公主 そのに」
 
『ほほほ、ちょうど良い具合に焼きあがったようじゃのぅ、ストラーフよ』
『おかげさまでね。でも、ボクは生っぽいのは苦手でね。どっちかって言うとボクの好み
はウエルダンなんだけど』
『安心せいストラーフよ。お主の願いはわらわが叶えてやろうぞ。どこの神姫か区別も
つかぬほどに黒こげにしてやるわ』
 不敵な笑みを浮かべ、トロンを見下ろす狐姫の瞳がスッと細まると、彼女の周りを漂っ
ていた八機のガン・ポッドが急に統制された動きをみせ、その銃口をトロンに向ける。
『これで最後じゃ!』
 狐姫の言葉を合図に、ガン・ポッドから放たれたビームがトロンの身体を貫いた。
『「えっ?」』
 全身を無残に打ち抜かれ、路上に倒れ伏すトロンの姿を脳裏に思い浮かべてしまった
あたしは、ううん、多分狐姫も同じイメージを抱いていたんだろう。あたしと狐姫の口をつ
いてでた言葉が同じだったのがその証拠だと思う。
 トロンの身体が小さくブレると、その姿がおぼろげになり、八本の光の矢はすべてトロ
ンをすり抜けてしまったのだ。
 最初は単純にビームがトロンを貫通したのかとも思ったのだが、唖然とする狐姫の前に
立つトロンの金色の瞳がそれを否定していた。
 驚愕に彩られる狐姫の表情に反撃のチャンス到来か? と思ったあたしだったが、なぜ
かトロンは身をひるがえすと、さっき逃げ込んだスーパーマーケットの入り口めけて走り
出した。
 背後でトロンに罵声を浴びせている狐姫の声が聞こえるが、トロンはおかまいなしに店
に駆け込むと、一目散に奥の方に走っていく。
「ど、どうしたのトロン? 狐姫に近づく絶好のチャンスだったのに!」
『……今は……ダメなんだよ』
 店の一番奥まで逃げ込むと、壁にもたれ掛かりながらトロンは、あたしの疑問の声に聞
きとれないほど小さな声で答えた。
 あたしはその時になって、トロンの顔がいいようのないほどの苦痛の色を浮かべている 
ことに気がついた。
「今の狐姫の攻撃で、ダメージを受けてたの?」
 絶え間ない痛みに襲われているのだろうか、苦痛に顔を歪めながらもトロンは静かに
首を振ると、あたしの問いを否定した。
『狐姫のビームは全部避けられたんだけどね。痛っ、もっとも、これだったら今の攻撃が
当たってても、たいして変わらなかったかな?』
 自虐気味につぶやくトロンの言葉を、あたしはまったく理解できなかった。そもそも攻
撃は避けられたのに、なんでトロンはこんなに苦しんでいるの?
 あたしの表情から自分の説明が足りなかったことに気づいたトロンが、苦笑しながら話
し始めた。
『リンはボクの“特性”を忘れちゃった? ボクは自分の能力と、リンの選んだCSCの
相乗効果によって回避能力が極端に高まった神姫なんだよ? 今のは、ボク自身に設定
されたリミッターを一時的に解除した結果なんだ』
「トロン、あんたにこんな……ガーネットみたいな能力があったの?」
『うん。ただボクの身体にかなり負荷がかかりそうだったんで、今まで使うのに気が進ま
なくてね。でも、実際ここまで負担が大きいとは予想外だった……これじゃあ、いざとい
う時ぐらいにしか使い道がなさそうかな』
 大きなため息をひとつしながら苦笑いを浮かべるトロンに、あたしはなんと言っていい
のかわからず、口ごもってしまった。
 確かにこの能力は、距離を詰めてこそその真価を発揮するトロンの特性を充分サポート
できるものだったかもしれない。でも、いくら攻撃を避けられてもその後が続かないので
は意味がない。
『まぁ、リミッターの設定をもう少し調整すれば、なんとか使えるかもしれないけどね。それ
にしてもボクの身体の強度を考えると、一度の戦いで使用できるのは一回が限度ってと
ころだろうけど』
「そう。……ねぇ、トロン。それはそうとして狐姫の玉面にどうやって対抗するつもりなの? 
なにかいい方法を思いつかない?」
 ようやく痛みが和らいできたのか、すこし穏やかになってきたトロンの口調に、内心ホ
ッとしながらも、あたしはとりあえず当面の問題を解決しようと努めた。
『ん~、そうだなぁ、ボクだったら……というか、こういう時って、普通マスターであるリン
がボクに妙案を授けるっていうのがパターンじゃないの?』
「え? あ、あはははは………ごめん。ぜんっぜん思いつかない!」
『…………』
 パンッ、と胸の前で手を打ち鳴らし、真面目な顔で拝むように謝るあたしに、呆れた表
情を浮かべるトロン。
「だ、だってしょうがないじゃない! あたしの十七年の人生であんなヘンなモノに追い
回された経験なんて、一度も無いんだもんっ!」
『…………』
「あんな得体の知れないモノを相手にするくらいなら、熊とサシで戦うほうがなんぼかマ
シってもんよ! そうでしょう?」
『いや、「そうでしょう?」とか聞かれてもね。第一、ボクの相手は熊じゃなくて狐なんだ
けど……ま、リンの言うことも確かに一理あるかな?』
 必死に言いわけするあたしを、しばらくジト目で見ていたトロンだったけど、苦笑しな
がらも金色の瞳にかすかな嘲笑が含まれているのをあたしは見逃さなかった。
「じゃ、じゃあ、あんたはどうだっていうのよ。この危機的状況を打開する策があるって
いうの?」
 トロンの態度にムッとしたあたしが、すこし声を荒げて問いただすとトロンは腕を組み
ながらニヤリと笑った。
『もちろん! と言っても問題がふたつほどあるんだけどね……』
 背を反らせ、得意満面の表情をみせたトロンだったが、なぜか語尾が尻すぼまりなっ
てしまう。
「ふたつの問題? それってなんのことなの?」
『うん。ねぇ、リン。この店ってモデルになったスーパーと店内の通路と品物の配置は同
じだった?』
 思いもしないトロンの質問に、あたしはいぶかしげな顔をしながらも、額にシワを作る
と記憶の網をたぐりよせ始めた。
「そうね、店内は現実のものと一緒よ。だからさっきもあんたに道案内ができたわけだし、
品物も入り口に缶詰や特売品を積み上げてたりするところは本物の店と同じだから、た
ぶん一緒だと思うわ」
『そうか。じゃあ、“あれ”の場所もすぐにわかるか……となると問題はあとひとつか』
「“あれ”? あれって何よ? それに最後の問題っていったいなんなの?」
 あたしの答えに満足したのか、あごに手を当てしばらく考え込んでいたトロンだったが、
しばらくするとあたしの方に顔を向け微笑んだ。
『“あれ”に関してはあとのお楽しみというところかな? 最後の問題はボク自身のこと
だからリンが心配しなくても大丈夫。そう、ボクが“あの場所”まで行ければね。……さ
てと、そろそろ限界かな?』
「限界?」
 “あれ”とか“あの場所”だとか、まったく要領を得ないトロンの回答に、いい加減頭
から白煙を吹き上げオーバーヒート寸前になっていたあたしを尻目に、『よっこいしょっ』と
小さくつぶやきながらトロンは壁から背を離す。
『沸点低そうだからね、あのお姫様。そろそろ我慢の限界なんじゃないかな?』
 トロンはいたずらっぽく笑うと、店の外に視線を向けた。
                          ※
『う~~~、もうダメじゃ! 我慢の限界じゃっ!!』
「……ほんとうだ」
 トロンの言葉にコンソールのカメラビューを切り替えると、そこには煮えたぎった大鍋
から引き上げられたばかりのタコかカニのように顔を真っ赤にした狐姫が、足を踏み鳴ら
して怒りをあらわにしていた。
『もう、辛抱ならん! 玉面どもよ。あの不遜なストラーフを灰も残さず焼き尽くすのじ
ゃっ!』
 こめかみを引き攣らせながら狐姫が叫ぶと、フヨフヨと漂っていたガン・ポッドが店の
前に集結し、一斉に店の入り口あたりに照準を定める。
 ガン・ポッドの砲口が放つ光の強さに、今度の攻撃がさっきとは比べ物にならない程の
威力を持っているのは容易にわかった。
「ヤバッ、トロン! ガン・ポッドが店を狙ってる。早くそこから逃げて!」
 カメラを狐姫の方に向けてしまっていたため、店内のトロンの様子がわからなかったあ
たしは、慌ててトロンに連絡を入れる。
でも、なぜかトロンからの返事はなかった。
『消え失せいっ! ストラーフ!!』
「トロンっ!」
 光の矢と化したビームの輝きが眼前の店に吸い込まれた時、全面ガラス張りになってい
たスーパーの一番端の大型のガラスをぶち破りながら、大量のガラス片をお供にトロンら
しきものが突然飛び出してきた。
 曲がりなしにも自分の神姫を「らしき」とは何事だと思う人もいるだろう。でも、今の
あたしにはそうとしか言いようがなかった。
ガラスを突き破って出てきたトロンらしき神姫は真っ白だった。限定版のストラーフだ
ってここまで白くはないだろう? と思うほど、頭のてっぺんから爪先まで白一色に染ま
っていた。むしろ、こんな白いカタマリを瞬時にトロンだと判別できた、あたしの動体視
力を褒めてやってもいいんじゃないかと自分で思ったぐらいだ。
『ゲホッ、ゲホッ……ヘっ、へっくしょんっ!』
 建物から飛び出してきたトロンは鮮やかに受身をとりながら立ち上がり、しばらく咳き
込んでいたと思ったら、特大のくしゃみを一発放った。
 トロンの全身からもうもうと白い煙が舞い上がる。トロンの身体が白いのは、ペンキで
もかぶったせいかと思ったが、どうやら粉まみれになってるだけのようだった。
「トロン、あんた一体何を……」
 事の次第をトロンに問いただそうとしたあたしの声は、突然あたしの耳を襲った轟音に
途切れてしまった。あまりの音の大きさに身をすくませたあたしだったが、眼前に広がる
光景に唖然としてしまった。
 燃えていた。トロンの逃げ込んでいたスーパーが、いや、その燃えさかる建物が、元ス
ーパーだとは誰も思わないだろう。
 四方を囲む壁やガラス窓はきれいに吹き飛び、唯一残った物といえば傾きながらも天を
目指して屹立する塔にも見える数本の柱だけだった。
その柱ですら猛り狂う猛火の舌に舐めとられ、みるみるただの消し炭へと変わっていく。
 スーパーの両隣にあった店も全壊こそまぬがれたものの、紅蓮の炎に包まれ、音を立て
て崩れ落ちていく。
『なななな、なにごとじゃ?』
「ンなバカな! こんな威力があるわけは……」
 これが玉面の真の力なのかと、その破壊力に震え上がったあたしの耳に、桜庭さんと狐
姫の虚ろな声が聞こえてきた。
 ふたりの方を振り返ると、桜庭さんはシートから半立ちの状態で腰を浮かせ、驚愕の表
情を浮かべている。そして爆風で飛ばさせたのか、元居た場所からかなり離れた所で、煤
まみれになった狐姫がぺタンと座り込んでいる。
 ふたりの態度からも、この爆発は予想外の出来事だったのだろう。
それによく見てみると、ポカンとした顔をした狐姫を守るように浮いているガン・ポッ
ドが今は二機しかいなかった。おそらく残りは店に近づきすぎてしまったために、あの爆
発に巻き込まれてしまったのだろう。
 こうなれば、この爆発を起こした張本人はひとりしかいない!
「トロンっ! あんた……あっ!
 事の真偽を確かめようとトロンのほうに視線を移すと、真犯人はあたしに背を向け、通
りの奥にスタコラと逃げ去っていくところだった。
「……トロン、あんたほんとうにやる気ある……あっ!」
 トロンの態度に急激な脱力感に襲われ、コンソールに突っ伏したあたしだったけど、頭
に浮かんだトロンの言葉を思い出すと跳ね起きた。
 
そうか、トロンは向かっているんだ。“あの場所”に。
 
 あたしは、遠ざかっていくトロンの後ろ姿に、この戦いの終わりが近い事を確信してい
た。

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コメント


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粉塵爆発ですと!?トロンさんメッチャククチャですな(笑)

久しぶりの「わんだふる神姫ライフ」の更新!待ってましたっ!

さてさて、そろそろ決着・・・どうなることやら。

初瀬那珂 | URL | 2012-09-12(Wed)22:42 [編集]


久々の「わんだふる神姫ライフ」再開で、ちょっと脳内データ巻き戻したりw
大丈夫、私の中には「わんだふる神姫ライフ」が1話目からしっかりと保存されていますから、思い出すだけで過去の話を思い出せますから。

そして、狐姫さんとトロンさんの戦いも遂に佳境に向かっていますね~
「あの場所」とは何処なのか、そしてトロンさんの秘策は何か続きが楽しみです。

しかし、粉塵爆発とは、中々やりますなぁ。
普段はグータラなトロンさんの発案とは思えませんよw
どうやって思いついたのか不思議に思ったんですが、そういや前に漫画読んでいたりしたから、そこから知識を得たんでしょうな。
まぁ、実際に起これば並みの爆発力では無いらしいですから、店を貫通する威力を予想していたら、店が粉々に吹き飛ぶとは予想外すぎて狐姫も固まってしまうのは仕方ないでしょうな~

今は武装が少ないトロンさんは、自身の身体能力と機転を生かす頭脳を使うしか無いですし、自身を生かせる武装を手に入れるまでは苦戦しそうですね~
予定しているトロンさんの武装がお目見えするまでは我慢ですね。

続きや制作等色々と大変ですが、頑張ってくださいね~

ASUR・A | URL | 2012-09-13(Thu)02:06 [編集]


>初瀬那珂さん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

う~ん、モロバレですね(笑)。
というか、あの状態では、たいてい思いつくものなのかな?
調べるまで、粉塵爆発をよく理解してなかった自分が恥ずかしい(汗)。

ずいぶんと、SSの更新に時間がかかってしまいましたが「待ってましたっ!」
の一言、なによりも励みになります!

次回、狐姫との戦いに決着がつきますが、<あの男>の力を借りるなど
さらにハチャメチャになります。
お楽しみに(笑)。

シロ | URL | 2012-09-13(Thu)07:07 [編集]


>ASUR・Aさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

私は、物覚えの悪さと物忘れの激しさには定評がありますので、他の方のSSとか少し間が空くと混乱をきたしますね(笑)。

いいかげん、書き溜めたものも底をつき、どうしようかと思ってましたが、ケルヴィムの製作の合間に執筆し、少し余裕ができましたので、しばらくは間を開けずに更新できると思います。

次回、狐姫との戦いに決着がつきます。
「あの場所」……そう、<あの男が>立っていたあの場所で……。

ほんとうに、いつも寝てばかりなのに、どこからこういう知識を仕入れてくるんでしょうかね(笑)。

私としては、トロンを強い神姫にしたくなかったもので、己の悪知恵と、まわりにあるものをとことん利用するという一風変わった戦い方をする神姫にしていましましたが、対戦相手からすればかなりムカつく存在でしょうね。

トロンの専用装備。あまり過度な期待をしない方がよろしいかと……。
今のトロンの戦い方に、さらに輪をかけたような……ゲフン、ゲフン。

ま、まあ、あまり無理せずに、これからもやっていきたいと思います。

シロ | URL | 2012-09-13(Thu)07:28 [編集]


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