神姫者の巣

神姫好きの、また~りとしたブログ

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わんだふる神姫ライフ 第35話

『まあ…ン、わらわ程ではないにせよ…ムグ、あのタイガもなかなかの…ムフ…強者。せ
いぜい気をつけることじゃな…ン、甘い♪ ……トロンよ!』
『……あのさあ、アドバイスしてくれるのは嬉しいんだけど、食べるか喋るかどっちかに
したら? お行儀わるいよ、狐姫』
 コンソールの上にペタンと座り込み、自分の頭ほどもある棒つきのキャンディーを幸せ
そうに舐め続ける狐姫を、呆れたような顔でトロンがたしなめる。
 狐姫が夢中で舐めているこのキャンディーは、トロンがどうしても欲しいからと言って
DO ITに来る途中、コンビニで買ったものだった。
 もう桜庭さんとの約束の時間も迫っていてそのまま通り過ぎようとしたのだけど、『約束
だから!』とトロンは頑として譲らない。
 理由がわからず戸惑っていたが、狐姫の嬉しそうな顔を見て、以前狐姫とのバトルでト
ロンが狐姫にアメを買ってやると約束していたのをようやく思いだした。
「へ~、トロンおねえちゃんって、意外と面倒見がよかったんだ?」
『な、なに言ってんのさ! ボ、ボクはただ、約束を守っただけだよ!!』
 口に手を当て、うぷぷと笑いながらトロンをからかうと、珍しく狼狽したトロンはプイ
ッと横を向いてしまう。
 でも、あたしはちゃんと見てたんだけどね。顔をキャンディーでベタベタにしながら舐
め続ける狐姫を、苦笑しながら見つめていたトロンの瞳が柔和な光を宿してたのを……
『おい! そろそろ茶番はやめたらどうだ?』
 嘲笑と侮蔑をふくんだタイガの声に、あたしはハッとしながら対戦者の座るコンソール
に視線を移した。そこにはいつの間にかタイガのマスターが腰掛け、無言であたしたちを
見ていた。
 そしてタイガは、真紅の巨大な装備を纏い、転送されたバトルフィールドから射るよう
な視線であたしたちを睨みつけている。
 その時、無言でタイガの装備を見ていたトロンが、わずかに目を細めながらつぶやいた。
『あれは……真鬼王……』
 
                   わんだふる神姫ライフ
 
             第35話 「ソウルテイカー そのに」
 
「ちょっ、ちょっと待って! それって真鬼王でしょう?」
『へっ、少しはモノを知ってるみたいだな?』
 さも以外だという顔であたしを一瞥したタイガにカチンときたが、あたしが言いたい事
は他にあった。
「そんなことを聞いてるんじゃないわ! それってポイント違反じゃないの?」
 他の神姫センターなどではあまりみられないが、DO ITではローカルルールとして
規定のポイントを定めて戦う、ポイントバトルが一般的に行われていた。
 
 ポイントバトルとは、今回のように互いの基本装備にあまりにも差が生じるのを防ぐた
め事前にポイントを定め、規定のポイント内で装備を整えバトルをするというルールだっ
た。
 少しぐらいのポイントの差だったら、事前に相談してもらえばあたしだってこんな目くじ
らを立てるつもりはなかったけど、目の前のタイガの装備する真鬼王はそんな悠長な事
を言っていられる存在ではなかった。
 真鬼王は、寅型の神姫ティグリースと、彼女と同時期に発売された丑型の神姫ウィトゥ
ルースの武装パーツを合体させたものだった。
 当然のことながら、そのパワーも装甲も他の追随を許さず、彼女たちが発売されてから
随分とたつというのに、その総合的な性能はいまだにトップクラスだった。
 トロンの倍はあろうかと思える巨体は圧倒的であり、その真紅の巨神の放つ威圧感は、
無言で辺りを包み込んでいた。
「では、事後承諾という形で認めてもらえるかな?」
 倦怠感を纏わせながら、億劫そうに話しかけてくるタイガのマスターを、あたしは睨み
つける。
「そ、そんな単純な話じゃありません! だいたいトロンとタイガのポイントの差は、ど
うみたって倍はあるじゃないですか? これじゃあ……」
『まあ、いいんじゃない?』
「トロン!?」
 あたしたちの会話にいきなり割り込んできたトロンにも驚いたけど、その話の内容は、
あたしを唖然とさせるものだった。
『せめて、ポイントでこれぐらいのハンデをあげなきゃ勝負にならないよ』
 モニター越しに、ニヤニヤしながらトロンがそうつぶやくと、キョトンとしていたタイガの
顔がみるみる真っ赤になっていく。
「そちらの神姫は承諾してくれたようだが、君はどうする?」
 あたしが黙っていると、タイガのマスターはさらに話を続ける。
「……それに知りたくはないかい? 何故この店の神姫やオーナーたちが君たちとの対戦
を拒むのか、その理由をね」
 抑揚のない声で淡々と話を続けるタイガのマスターの話が、思いもしない方向に向いた
ことにあたしは眉をひそめる。
「それってどうゆうことなんですか?」
「君の神姫が勝ったら全てを話そう……」
 あたしの問いに短く答えただけで、それ以上話すのを止めてしまったタイガのマスター
に困惑してしまったけど、確かにこの店に集まる神姫たちがトロンとの対戦に躊躇するの
は何故か? それは、あたしもずっと疑問に思っていたことだった。
 どうしたものかとトロンに視線を向けると、トロンは真正面からあたしの目を見据え、
小さくうなずいた。あたしはトロンも同じ思いだということに気づき、うなずき返すと、
タイガのマスターに視線を戻した。
「わかりました。この条件でかまいません!」
 あたしの返答に、タイガのマスターは満足そうにうなずいた。
 
                         ※
 
『ふん。小細工好きなお前のために選んだやったバトルステージだ。感謝しろよ?』
『……それはどうも、お心遣い痛み入ります』
 いかにも人を小馬鹿にしたようなタイガの口調を気にした素振りもみせず、慇懃無礼に
答えながらトロンは辺りを見回している。
 タイガが選んだフィールドは市街地。
 おそらくその装備から見ても、タイガは距離を詰めての戦いを得意としているのだろう。
けど、このフィールドはトロンにとっても大きなアドバンテージになるはずだった。
『さあてと……そろそろ始めるかい?』
『そうだね。っと、そうだ!』
 唇をなめながらタイガが腰をおとし、トロンに襲いかかろうとすると、いきなりトロンは
ポンと手を叩き、素っ頓狂な声をあげる。
『ここまで至れり尽くせりじゃあキミに悪いから、ボクからもキミのためになる話をひと
つしてあげるよ』
『ああ?』
 いきなり出鼻をくじかれたタイガが、不満そうに声をあげ、眉をしかめる。
『今日の“ボクの愛の星占い”によると、仕事、恋愛、金運、どれひとつとってもキミの運
勢は最悪だね。なんか水難の相もでてるし。ほんとうならさっさと家に帰って布団でもか
ぶって寝てろ、って言いたいところなんだけどそうもいかないしねぇ……そこでひとつアド
バイスをしてあげるよ』
『手前ぇ、いいかげんに……』
『災いはっ!』
 いつまでもダラダラと続くトロンの話に我慢の限界がきたのか、唸るように呟きトロン
に襲いかかろうとしたタイガだったが、いきなり変わったトロンの口調に身体を震わせ、
その動きを止めてしまう。
『……汝の災いは……天より舞い降りるであろう!』
 いきなり天空めがけて指を突き立て、両目を閉じながら呟くその姿は、これから起こる
災厄を罪なき民衆に伝える偉大な(偽)預言者にも見えた。
 荘厳な響きを含んだトロンの声音を耳にし、身動きひとつできなくなっていたタイガに、
トロンはゆっくりとした動作で、天を指し示していた指をタイガへと向ける。
『汝……ゆめゆめ油断を怠らぬべし! あっ、ちなみに今日のラッキーカラーはピンク。
ラッキーアイテムは洗濯ばさみなんだけど……ちゃんと持ってる?』
 急にいつもの口調に戻ったトロンは、軽くウィンクすると何事もなかったようにタイガ
に話しかける。呆気にとられていたタイガが我に返ると、怒りのためか全身を震わせ始め
る。
 真鬼王のブースターとタイガが、同時に咆哮をあげた。
『ざけんじゃね─────ッ!』
「は、疾い!?」
 真鬼王のデーターは頭に入ってるつもりだったけど、あたしの予想をはるかに超えるス
ピードでタイガは一挙にトロンとの距離を詰める。
 だが、タイガとの距離が目と鼻の先まで縮まり、真鬼王がトロンの胴体ほどもある巨腕
を振り上げても、トロンは両腕を組み突っ立ったままだった。
 トロンの態度に怪訝な表情を浮かべるタイガだったけど、いまさら繰り出された攻撃は
止まらず、そのまま真鬼王の剛腕は薄笑いを浮かべるトロンの身体を無常に貫いたように
……見えた。
『なっ?』
 真鬼王の腕に伝わる予想外の衝撃に、勝利を確信したタイガの表情が凍りつく。
 トロンの胸元めがけて繰り出された一撃は、トロンではなく背後のビルの壁面に深々と
食い込んでいたからだった。
 「あれって“一重”?」
 視線の先で、真鬼王の巨腕に自らの手をそっと当て、真正面からタイガを見つめ微笑を
浮かべるトロンの姿が目に入った。
 今の真鬼王の攻撃を捌いた動きは間違いなくあたしがトロンに教えた“一重”だった。
 
でも……
 
『手前ぇ、いま何をやりやがった?』
 自身の身の内に生じた疑問を怒りで覆い尽くすように、壁にめり込んだ真鬼王の腕を引
き抜き抜くと、タイガは唸るような口調でトロンを睨みつける。
『はて? なんのことやら……』
 視線を逸らしながら惚けた口調で白を切るトロンの横を、コンクリートの破片を纏わり
つかせながら真鬼王の腕がゆっくりと通り過ぎる。
 微細なコンクリートの粉塵や埃に紛れて、真鬼王の腕から手を離したトロンの掌から一
条の微かな煙が立ち昇ったのに、あたしは気づかなかった。
『この野郎!』
 タイガはその巨体を数歩後退させ、トロンとの間合いを取りながら悪態をつくと、猛然
とトロンめがけて突っ込み、巨大な腕をトロンめがけて振り下ろした。
 だが、必殺の闘志を込めた真紅の戦斧のような一撃は、虚しくトロンの足元を抉っただ
けだった。
『何っ?』
 今度こそ覆いようのない動揺をその顔に色濃く浮かべ、タイガが顔を上げると、目の前
にトロンが涼やかな笑みを浮かべている。
金色の瞳でタイガを見つめていたトロンは、大きく屈んだために自分の背の高さになっ
たタイガの額の前にスッと右手を持ち上げた。
 驚きのために硬直してしまったタイガは、ただその動きを目で追っていたが、トロンは
気にした様子もみせず右手の中指でタイガの額を軽く弾いた。
『……!?……』
 思いもしない行動にタイガが気の抜けた表情を浮かべるが、トロンは二コリと微笑むと、
タイガの耳元に顔を近づけ囁くように話しかけた。
『痛かった?』
 心の底から労わる様な口調で尋ねてくるトロンに、我に返ったタイガの顔がみるみる赤
くなっていく。自信を持って繰り出した攻撃がかわされたのみならず、デコピンという予想
外の反撃を受けたタイガの屈辱は計り知れないものだったのだろう。
 憤怒の形相を浮かべ、折れ砕けんばかりの勢いで歯を噛み締めるタイガの口元から漏れ
る歯軋りの音が、あたしにも聞こえてくるようだった。
「……落ち着くんだ、タイガ……」
 我を忘れてトロンに襲いかかりそうになったタイガだったが、ゾッとするほど冷静な声
で話しかけてくる自分のマスターの声に、ハッとしながら振り返る。
『で、でもよう……』
 不満そうに口答えするタイガだったが、ただでさえ細い目を針のように細めて自分を見
る自身のマスターの姿に、すぐに口籠ってしまう。
「……素直に認めよう。あのストラーフの実力を……桜庭から聞いた話しとは大違いだ。
あの武装パーツの効果なのか?」
 その切れ長の瞳に妖しい光を宿しながら、微かなつぶやきを漏らすタイガのマスターの
口調にわずかな感嘆の響きがこもっている。そしてあたしは、さっき感じた疑問を思い出
していた。
 それは、トロンがタイガの初撃をかわした時に感じていたことだった。確かにトロン自
身もライドシステムを使った特訓や、数々の実戦を潜り抜けてきたために、初めてレステ
ィーアと戦ったころとは比べ物にならないほどに成長していた。
 でも、いかに経験を積もうとも、以前の装備のままだったらあのタイガの一撃を捌くの
は難しかったろう。どれほど己の技量をあげようと、おのずとその限界は決まってしまう
のだから。極論を言ってしまえば、あたしだって爆走してくるバイクを“一重”で捌くの
は無理って事。それぐらいさっきの真鬼王の攻撃は凄まじかった。
『お褒めに預かり恐悦至極だね。でも、そっちだってタダの真鬼王ってわけじゃないよね?
さっきの攻撃、正直肝が冷えたよ』
 あいかわらずの軽い口調のなかにも、どこか真摯さを感じるトロンの声にタイガのマス
ターは能面のような顔を微かに綻ばせる。
「ほう、よく気づいたな。……確かにこの真鬼王はファストオーガへの変形機構をオミッ
トした分、出力や機動性を向上させたカスタムタイプでね……」
 トロンとタイガのマスターの会話を黙って聞いていたあたしは、強化された真鬼王の力
に唖然としつつも、その攻撃をも軽くいなしたトロンにそれ以上の驚きを感じていた。
 以前のトロンの実力だけでは、やはりあのカスタム化された真鬼王の攻撃を凌ぐのは難
しかったろう。ならばあたしが思いつく結論はひとつだけだった。
『お前はそれだけの力を持ちながら、何故あいつのために戦う?』
 それまで会話にも加わらず、ただ黙って何かに耐えるような様子だったタイガが、怒り
もあらわに真鬼王の巨大な指で、ある一点を指し示した。
 
トロンではなく、あたしを……
 
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まとめ【わんだふる神姫ライフ】

『まあ…ン、わらわ程ではないにせよ…ムグ、あのタイガもなかなかの…ムフ…強者。せいぜい気をつけるこ

まっとめBLOG速報 2012-11-13 (Tue) 10:07


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